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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十章 獣人界編 其の二
172/220

別れの時

投稿ちょい遅れ


俺は直ぐにジャードにその旨を伝えた。


「と言うわけで、妖精界に戻ろうと思う」

「フム、そうか。いや、余は止めぬぞ。短い間ではあったが余も楽しかった。また来るが良い」


ジャードの反応は思いの外淡白だった。

俺もその言葉に無言で頷く。

さっきまでしこたま飲んで居たはずなのにまるでシラフの様だ。

本人が言っていた「自分は酔わない」発言は結構本当だったらしい。

ほろ酔いぐらいはするのだろうが、全く会話に支障が出ないとは驚きだ。


「えええええ!アクアちゃんとお別れ⁉︎ジンとエマとアルバとも⁉︎リーシャちゃんともユーナちゃんとも⁉︎」


一番ショックを受けて居るのはレヴィアだった。

というかウチの女連中とは軒並み仲良くなってんだな。

ってかコミュ力高いな。そのコミュ力くれよ。


「リュートさん、私達も国に帰ろうと思います。いつまでも王が不在でいるわけにも行きませんし」

「そうだったな。帰るなら早いほうがいい」


そう言えばここは陸の種族の王国だ。海の種族と空の種族は自分たちの国がある。

カイリ、マイル、ヴィシャスの三人もそもそも帰らねばならないだろう。


「余達は共に闘った友だ。何かあれば駆けつけよう」

「我らは如何なる時も仲間である。励めよ魔王」

「リュートさん、次に会うときは私達もこの方々に並ぶほどに強くなっておきます。また会いましょう」

「陸のおっさん、空のおっさん、カイリ。ありがとな。また会おう」


俺たちは決意を新たに旅立つ。

カイリとヴィシャスは王としての責務を果たすために国に帰る。

俺は……ジル達を見つけ出さなきゃいけない。

ジルの従兄弟であるザインが現在人間界へと向かっているのだ。色よい報告はあるだろうか。

帰り際にザインの屋敷に寄るか。


「さて、ミドはどこ行ったんだ?」


俺は週を見渡しながら祐奈に尋ねる。

あいつそう言えば酔いつぶれてたからな。

何も言わずに帰ったらまた怒るだろう。一応話だけでもしておくか。


「あ、リュートさん。ミドさん居ましたよ」


すると、祐奈がボロ切れの様になったミドを引きずってきた。

俺は頭を抱えたくなった。何だこれ。


「また飲んだみたいなんです……」

「しゃあねぇな……。ちょっとの間引きずって連れて行くか。まぁ放っておいても問題ないだろうが、俺に絡んできそうで怖いし」

「ですね……、まぁ、酒乱じゃないだけましですよ」

「そう思うことにするか」

「ぐがー、ぐごー」


汚ねえいびきだ。

俺は嘆息しながら神様を引きずる。全く起きる様子を見せない。


ウチの女性陣は驚くほどフットワークが軽いので準備はすぐに終わる。

アクアに至っては子供三人を抱き上げて「準備完了」と言う始末だ。

荷物も纏めろや。


「ルシファー、いるか?」


俺は虚空に向かって声をかける。

ルシファーは常に俺の声を聞いているので、コレで何かしら反応を起こす。


「荷物の整理が完了いたしました」

「お前本当に有能すぎるわ」


例によって瞬間移動の様に俺の背後に現れたルシファーは俺たち全員分の荷物をまとめて居た。

天使の不思議な力によって荷物が宙に浮かんでいる。


「さてと、じゃあ行くか。翼竜種(ワイバーン)は来てくれるかな」

「呼んでみましょう!ぴひゅー」


祐奈の口からスカスカの空気が出る。音が出てない。

と言うか普通に口でぴひゅーって言ってやがる。


「お前本当に口笛下手だな。俺に任せろ」

「あ、来ましたよ」

「来たのかよっ⁉︎」


驚くべきことに祐奈のクソ下手な口笛で翼竜種(ワイバーン)たちは俺たちの元へとやって来た。

ジルが昔、竜人族にしか飼い慣らせないとか言ってたけど絶対嘘だろ。祐奈にめっちゃ懐いてるんだが?


『グルルォォ』

「ちょ、くすぐったいってばー」


声は少し怖いが人懐っこそうに目を細めながら祐奈へと額を寄せている。

こうしてみると顔は怖いが仕草は可愛らしいな。


「なんだ、結構慣れてるんだな」

『グルギャオッ!』


俺がそう言って触ろうとすると物凄い形相で噛みつかれかけた。

ヤバイ、コイツ……俺には当たりキツイ。


俺たちが出立の準備を終えたところで皆んなが出て来た。

見送りに来てくれたらしい。


俺たちはといえばすっかり準備は完了し、既に翼竜種(ワイバーン)の背に乗っている状態だ。

勿論大いびきをかいているミドも一緒だ。


そして、俺たちのそばにやって来てジャードが厳かに口を開いた。


「それでは、別れの挨拶を……」

『ギャオオオオオ!』

「わ、ちょ、おまっ⁉︎」

「あわわ……」

「なっ⁉︎」

「あちゃー……」


突然雄叫びを上げながら翼竜種(ワイバーン)は空中へと飛び上がった。

別れを惜しみたいところだったのだが爬虫類にそんな都合は通じないらしい。

唯一アクアだけが楽しそうに鼻歌を歌っている。珍しくテンションが高いな。子供達も絶叫系はお得意のようだ。

俺の三半規管は遺伝していないようだ。


「悪い!また来る!世話になった!」


俺は手短に別れの言葉を叫んだ。

そうしなければ声が届かない程の速度でびゅんびゅん風を切りながら翼竜種(ワイバーン)は次の目的地を目指しているのだ。


そして、俺の声は届いていたらしい。


「全く……慌ただしいな……。余の挨拶を聞いて行かぬか」

「クハハ、奴等らしいのである」

「さて、マイル。私たちも帰りますよ。直ぐに修行を開始しましょう。時間は有限です。一分一秒を惜しむのです」

「カイリはせっかちなんだから〜。でも、私も賛成かな〜」


そう言って4人は背を向け、城へと戻るのだった。


---


ところで、この翼竜種(ワイバーン)達はどこへ向かっているのだろうか。

ちゃんとザインの屋敷に向かってくれているのだろうか?


「祐奈、大丈夫なのか?ザインの屋敷だぞ?」

「一応伝えましたから大丈夫ですよ〜。……多分」


多分かよ。

まぁ、この翼竜種(ワイバーン)達の飼い主は俺や祐奈ではなくジルなのでなんとも言えない。

犬より頭がいいのか悪いのかすらわからないのだから。

だが、交通手段として使える上、手綱も付いているのだ。いざとなれば誘導すればいいか。


「いやぁ、気持ち良いねー。翼竜種(ワイバーン)なんて初めて乗ったわー」

「……私も。初めて」


そう言えばこの2人は来るときは転移魔法で来たんだったな。帰りは翼竜種(ワイバーン)による空路だ。

俺は何度か使っているのでなれたものだが、高所にいると付きまとって来るゾクゾクとした感覚には未だに慣れることは出来ない。


「綺麗ねー」

「……うん。すごい」


リーシャとアクアは高いところがお得意らしく周囲の景色を楽しんでいる。

勿論俺にはそんな余裕はない。翼竜種(ワイバーン)による移動なんて速いから使っているのだ。

実際はこんな物に乗りたくない。俺は高いところがあまり得意ではないのだ。

というか今にも吐きそうだ。


「ザイン殿の屋敷にはどの様な用事で?」

「まぁ経過の確認だな。もしかすると見つかってるかもしれないし」


だが、その可能性は薄いだろう。

俺は一応ジル以外の仲間が見つかったことを報告しに行く必要があると思ったのだ。

そうなれば俺もジルとメイの捜索を手伝うことが出来る。


「ザイン殿の屋敷は……」

「あの辺にシャガルの街が見えるだろ?ザインの屋敷はシャガルの少し向こう側にあるウイガルって街にあるんだが……」


翼竜種(ワイバーン)に乗れば数時間の距離だ。

どの道これから丸一日かけて妖精界へと戻るのだ。それに、ウイガルは妖精界へ行く道中にある。

確かに地上に降りるのは一々手間かも知れないが、まぁその程度だ。ついでだついで。


「みて、リュート。シャガルの街……」

「懐かしいな……」


俺たちの真下には既にシャガルが見え始めていた。

ここは俺たちにとっても馴染みの深い街だ。

俺とリーシャが三年間拠点にした街でもあり、アクアとジルが三年間共に過ごした場所でもあり、俺とアクアが再開した地でもあり、ハデスと言う神との決戦の場でもあり、そしてゲートへと転移された時もこの街にいる時に起こった出来事だ。

あまりに多くの出来事が起こった場所だ。良い思い出も悪い思い出もここには沢山ある。


「ゲートの事件から結構経つからな……、かなり復興が進んでやがる……」

「……ジル、頑張ったんだね」


この街の元領主であるジルは二度も破壊されてしまったシャガルの街並みを復興させる為に奔走し続けたのだ。

俺はそのジルの苦労を知らない。

まあ、その間ずっとゲートの中に閉じ込められていたのだから仕方がないのだが。


そうこうしている内にシャガル上空を通り過ぎる。

そしてウイガルの街並みが見えて来る。

ここもゲートの被害にあったのか所々街並みが破壊されている。

だが、シャガルよりよっぽどマシだったのだろう。大半が整備されつつある。


「あ、見えて来ましたよリュートさん!アレですよね?ザインさんのお屋敷!」


祐奈の指差す先にはザインの屋敷が見えて来た。

しかしこうして上空から眺めるとでっかい屋敷だ……。

あんなでかい屋敷に三人家族で住んでいるのだから勿体無い……。どうせ三人家族なんだったらもう少し小さくても良いだろうに。


「さて、じゃあ行くか。おい、降りてくれるか?」

『グルル』


まるで「了解」とでも言う様に低く唸って翼竜種(ワイバーン)達は高速で着陸した。

相変わらず心臓に悪い。

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