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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十章 獣人界編 其の二
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限界突破


「飛ばすぞカイリ!しっかり捕まれよっ!」

「う、腕が千切れそうです!」

「頑張れ!」


構ってる場合じゃないのでカイリには悪いが1人で頑張ってもらう。

一応最低限の強化魔法は使わせているので腕が飛んで行ったりはしないだろう。


「祐奈があんな切羽詰まった声を出すなんて……何が起こってやがるんだ……⁉︎」

「リュートさん!前方から魔力弾が!」

「ちっ!」


カイリの掛け声に応じてそれを横っ跳びに躱す。

かなりの速度の弾丸だったが避けられないこともない。


「なっ……、リュ、リュートさん……あ、あ……れ……」

「あぁ……?」


カイリの声がおかしい。

何かに恐れ慄いているような……?


その時、視界に入って来たものは。


腹部を貫かれ、ダラリと垂れ下がっている祐奈の姿だった。


俺はすぐさまカイリを下ろし、足が千切れるような速度で祐奈の腹部を貫いているナニカ(・・・)へと突撃した。


「祐奈を……離しやがれぇぇぇぇえぇッ‼︎」


雷の如き速度で貫くような打撃。


ソレはまるで糸の切れた操り人形(マリオネット)のようにガシャガシャとあちこちに激突しながら吹っ飛んで行った。

俺はそれには目もくれず祐奈を揺り起こす。


「祐奈!祐奈ッ!目を開けろ!」

「あ……うぅ……」

「意識はある……。カイリ!祐奈を頼む!」

「ゆ、祐奈……ちゃん……」


側にはマイルもいる。

マイルの腹の傷は塞がっていた。勇者の魔力はやはり凄まじい。不得意魔法など存在しないのだから。これだけ攻撃に特化した性能をしていながら防御や回復も平均以上の実力を持っている。

だが、それほどの治癒能力を持ってしても、腹の傷を表面上塞ぐのがやっとだ。マイルはまだ万全の状態じゃあない。


「カイリ、2人を連れて逃げられるか……?いや、逃げろ。失敗は許さん。出来ないってのも無しだ」

「分かってます。全身全霊を掛けて2人を守り、城に帰還します」

「頼んだ。俺は……コイツをぶっ壊す!」


俺が前方を睨み付けるとソレはガシャガシャと立ち上がった。

ガ○ダムやエ○ァのように完全な人型だ。それでいて体のいたるところが攻撃的なフォルムをしている。

肥大化した両手の平をこちらに向けてくる。そこにはギラリと銃口が鈍い光を放っていた。


「では、リュートさん……御武運を!」


カイリは強化魔法を使い、祐奈とマイルを担ぎ上げて走り出した。


しかし、目の前のナニカ(・・・)は逃げることを許さない、という風に高速で動いた。

異常と言える速度だ。

だが、


「何処行くんだよ」


俺が追いつけないほどじゃない。

俺は行く手を阻みニヤリと不敵に笑う。


「俺と遊んでけよ」

『リュート・エステリオ……』

「へぇ、俺の名前知ってんのか」


ソレは俺の問いには答えず、身体中から煙を吹き出した。

視界を覆い隠す白。


「っ⁉︎」


一体何が始まろうというのだ……?

すると、次の瞬間、ソレの両腕がゴトリと落ちた。

そして両脚、背中、と順に。


「なっ……⁉︎」


更に別のパーツもガシャガシャと落ちていく。

壊れている?いや、これは壊れているというよりも……。


『我が名はデウスエクス・マキナ。神より造られし機械の神。リュート・エステリオ。お前を破壊する』

「デウスエクス・マキナ……か……。人造神だと……?また訳わかんねえのが出て来た……」


デウスエクス・マキナってのはよく知らねえな……。ギリシャ神話ならよく知ってるんだが……。


そして、デウスエクス・マキナは更に全身の硬い鎧を脱ぎ去った。


「なっ……、その姿は……」


出て来たのは俺の予想とはかけ離れたものだった。

子供だったのだ。

小さな子供だ。

まだ年の頃はカレンより年上といった程度だろう。そう、言うなればローグのような少し幼さを残しており、そして何よりも少女然とした姿だったのだ。


「何だよそれ……」

『コレが我が真の姿』


何度見返しても人間にしか見えない。

しかし、確かに5種族の特徴は見られない。強いていうなら人族……か?

確かローグは元々地上の人族だと聞いたが……だからか?


しかし、俺の思考をよそにデウスエクス・マキナは全身から魔力を迸らせる。

白銀の魔力の奔流が辺りを包み込む。

やはり神。人造とはいえ神なのだ。

俺は油断なく周囲から魔力の徴収を始めた。


『征くぞ、魔王』

「へっ……上等だ!」


そして二つの影は交差する。



---ジャードside---



「ヴィシャス!其方は終わったか⁉︎」

「仔細なく……」


流石に多勢に無勢だ。無傷とはいかなかった。

しかし、異常な数の機械兵を相手に一歩も引かず、あまつさえ全滅させてしまうとはやはり2人の王は機械兵をこえる異常だった。


ヴィシャスは血に濡れた黄金の槍を大地に突き刺し、ジャードの肩に手を置いた。

その様子は普段のようにいがみ合っている姿ではなく、昔からの友人の姿を彷彿とさせる。


「ヴィシャス……彼方の空……。少し胸騒ぎがするのだ……」

「リュート達の向かった場所であるか……。だが、我らが信じずしてどうするのであるか……?確かに彼奴らはまだ若い。だが、成し遂げると信じて送り出したのであろう?ならば我らはそれを信じるのみである」

「そう……だな……。余達はここで泰然と構えて居れば良いのだ!フ、フハハハハハ!」

「顎に手を当てていないのに外れていないのである。作り笑いがバレバレである」

「そういうお主こそ羽が貧乏揺すりしておるぞ」

「なぁっ……⁉︎」


2人はお互いのことはお見通しであった。



---アクアside---



「リュート達……大丈夫かな……?」

「魔王様は神をも下すお方。ご心配には及びません」

「ルシファー……行ってあげられない……?」

「申し訳ありません。ここでアクア様達をお守りすることが現在の私の使命ですので」


ルシファーは忠実にリュートの命令を遂行していた。

この部屋に近ずいてくる機械兵を一体残らず破壊していたのだ。

なんの手加減も感慨もなく。氷結魔法による理不尽なまでの制圧能力を持って誰も城に近づくことすら出来なかったのだ。


「ぱぁぱ……」

「ジン……、エマ……、アルバ……」


アクアは少しの不安に駆られて3人の赤ん坊を抱きしめた。

ここに居れば自分は必ず傷一つつくことなく無事でいられるだろう。子供達も絶対に怪我をすることはない。

しかし、リュートは?


「私も……ユウナみたく……強くなりたかった……」


アクアはそう言葉を漏らした。


「アクア様……」


これほど歯がゆいことも無い。

自分は足手まといだと頭ではわかっていても、愛する男が危ない時に何も出来ない。それが堪らなく歯がゆかった。

別の女性はいつでも共に戦場を走り回っているのに。

昔はこうじゃなかった。共に旅をして、共に魔物と戦って。そのあと一緒に水浴びをして……、服を着替えたらご飯を食べて……。

2人でダークネスフレイムの背に乗ったり。ジェイドに怒られたり。

好奇心旺盛な悪ガキだったリュートと共に初めてのものに触れ続ける興奮が常にアクアの体を満たしていた。

リュートのお陰でいつでも不安に駆られることはなかった。

いつか結婚して子供を産むのだと子供ながらに思っていた。

しかし、こんな歯痒い思いをするとは露ほども思っていなかった。


「私……強くなりたい……。ルシファー」

「アクア様……。しかし……」


ルシファーは碌に言葉をかけられなかった。

ルシファーも数百年前、かつて妻に同じ思いを吐露された事があったのだ。



『貴方はいつも、必ず帰ってくると行って出掛けるわ……。貴方はちゃんと帰って来てくれる。でも、私は不安なのよ……?私は魔導師じゃ無いし、戦士でも無い。だから貴方と共には行けない……。いえ、普通の魔導師や戦士でも貴方と共には行けないのでしょうね……』

『すまない……』

『貴方はいつもそればかりね。良いのよ、気にしなくても。でも、私も貴方と共に行けるほどに強くあれば……なんて、何度も思った事があるわ……。これは私の勝手な思いだけれどね。貴方は、私が危険に晒されるのを嫌がるでしょう?』

『当然だ』

『だからここで大人しく待っているわ。必ず帰ってきてね?愛してるわ』

『必ず……帰ってくると、約束しよう』


そう言ってルシファーは妻を抱きしめた。

ただ、ひたすらに抱きしめることしかできなかった。

気の利いた一言を掛けることなどできなかった。私もお前を愛してる、と返す余裕すら……無かった。



このようなやり取りを一度だけした事がある。

ルシファーは何度も先代魔王に付いて戦場へと出向いた。

ルシファーの圧倒的戦闘能力を持ってすればいくら戦場とはいえ死亡するなどということは考えられない。

しかし、それはそれとして心配なものは心配なのだ、と。


「いつの時代でも……妻というものは同じことを考えるものですね……」

「ルシファー……?」

「アクア様。今は信じて待ちましょう。私の主は、そして貴方の夫は……最強の一角である、王の一人なのですから」


ルシファーの重々しい言葉にアクアは少し目に涙をためて小さく頷いた。



---リュートside---



「はぁぁぁっ!」

『…………!』


激突。


俺たちの周囲への配慮の全くない一撃は木々を折り、地面を穿ち、岩を砕いた。

砂埃がまるで煙幕のように巻き上げられる。

しかし、止まらない。


方や無限の再生能力と魔力徴収能力を持つ王の一角。魔王リュート・エステリオ。

方や全ての機械兵を統率する造られし神、デウスエクス・マキナ。


「『魂食(ソウルイーター)』!」


ズズズズ……!


鈍い音を響かせながらデウスエクス・マキナの垂れ流した魔力を拾い上げては魔力弾に変換し撃つ。

デウスエクス・マキナはそれをすぐさま受け流し、身体のいたるところから武装を出現させる。


「くっ!」


ドドドドッ!


尽きることの無いデウスエクス・マキナの弾幕が俺を襲う。

やはり神。攻撃全てに神聖力が含まれている。

弾丸全てを躱すことはほぼ不可能だ。幾ら強化魔法で強化を施しても無理なものは無理だ。

そして当たった所から俺の体の再生は阻害されていく。

さらに敵の使う攻撃方法が魔力攻撃では無いことから『魔力反射(マジックカウンター)』が機能しない。

と言うかこの奥義本当に役立たずだな……。

もっと言うとデウスエクス・マキナは遠距離攻撃主体なので『絶対不侵圏(アブソリュートライン)』すらうまく機能しないのだ。

こんなにも相性の悪い敵はそうそう見ない。


『消えろ……。『魔滅咆哮砲(イービルルイン)』!』


デウスエクス・マキナがノーモーションで魔力をチャージし、極太のレーザーをぶっ放してくる。


「くっそがぁっ!」


横っ跳びに交わし、すぐさま強化術式を使用。もうこの際ジジイの言いつけなんて守ってられない。


「『百重強化(ハンドレッドブースト)』!『雷撃強化(サンダーブースト)』!」


一気に強化術式を上乗せした。

正直言って百なんて体が耐えられる自信がない。


ミチミチと俺の体が悲鳴をあげる。

普段の強化倍率ならば再生が追いつくのだが、流石に100も重ねがけししてしまうと再生よりも崩壊の速度が上回ってしまう。

まるで腐ったゾンビだな。そういや昔自分のことをゾンビだと思ったことがあったっけ……。

アスタならこれほどの強化を施しても大丈夫なんだろうが、俺はもちろんアウトだ。


この強化状態を維持できるのは数分だ。

雷撃強化(サンダーブースト)』は電撃によって俺の能力の全てを強化するので再生速度も上がるのだが、『強化魔法(ブースト)』は違う。

体へのダメージ引き換えに身体能力のみを強化する術式だ。つまり『強化魔法(ブースト)』を使い過ぎるとどんどんな体が溶けていくのだ。

要するに、数分経つと俺の体は完全に崩壊してしまうので短期決戦を決めねばならないと言うことだ。


「一気に決めさせてもらうぜ……」


そして俺は大地を蹴った。


それはまさしく神速。


「だぁぁぁぁあっ!」


次の瞬間俺の拳はデウスエクス・マキナを確かに捉えていた。


『ッ……⁉︎』


まるで訳のわからないと言った表情のデウスエクス・マキナ。

神は地上の存在などに負けるはずがないと言う驕りがあるからな。

俺の速度は既に語感で知覚できるような生温い領域をとっくに超越している。


ビキビキと体へのダメージを実感する。

今の一瞬で足の骨が粉砕してしまったし、殴った瞬間、筋繊維が引き千切れた。

だが俺はそれを表に出さずに無言で再生力を集中させる。

こんな無茶をしてしまうと身体に綻びが生じ、結果として強化を維持できる時間が短くなる。

たが知ったこっちゃない。勝てばよかろうなのだ。


「さぁ立て、5分以内に終わらせてやる」


5分。


どう見積もってもそれまでに俺の体は崩壊してしまう。

そうなる前にこいつをぶっ壊して俺の強化状態を解除しなければならない。


『リュート……エステリオ……。破、壊……する……!』


ギギ……と小さな機械音が静かな森に鳴り響く。

私はガンダムもエヴァも大好きです

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