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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十章 獣人界編 其の二
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攻勢


「どうだ……?」

「はい、余裕ですね。アイツらジャードさんやヴィシャスさんに釘付けですよ……」

「やりましたね。それにしても……私たち四人での行動は本当に久しぶりですね」

「そうだね〜、一年半前だっけ?時間がたつのは早いな〜」


そんなに経つのか……。本当に時間が経つのは早いものだ。


と、俺たちが現在話している場所は機械兵団の本拠地近くの森である。

どうやら敵は魔力を感知するだけでなく、生き物の生態磁場まで感知するらしい。この話をしてもこの世界の人間には全く通じないのだが。

まぁ細かい事情は良いとして、敵の索敵に長けている上、高い戦闘能力を保有するカイリとマイル。

そして言わずもがな最強の人族である祐奈を連れて敵陣の殆どど真ん中である。


「みて下さい。竜巻起こってます」

「アレは……陸のおっさんか……?」

「う〜ん、アレは……ヴィシャスさんじゃないかなぁ〜」


どうやらヴィシャスが空から風魔法による竜巻で地上を薙ぎ払ったらしい。


「二人とも規格外だってことは分かりました」

「私達も精進しなければいけませんね、マイル」

「そうだね〜、でもあんなに強くなれるかなぁ〜……」

「それは俺も不安ではある」

「私もです」


ここにいる四人は出自は違えど全員が立場を同じくしている。

そう、神への切り札として絶大な力を持つ各種族の王なのだ。

祐奈は厳密には王では無いのだが、勇者召喚システムによって召喚されたので王としての力を十分に持っているのだ。

しかし、俺たち四人はまだまだ未熟だ。歳も若い。

だからこそ、目の前のバケモノ染みた強さのおっさん達を見ていると自分たちの将来に不安を感じずにはいられない。

今まで見てきた先人達。先先代魔王、妖精王、陸の獣王、空の獣王。このレベルまで達するのはやはり難しいだろうな。


「さて、お二人が陽動に回ってくれているのです。私達も私達の仕事を致しましょう」

「だな。いくぞ!」

「はいっ!」

「お〜」


俺たちは敵陣を背後から撹乱するのが目的だ。

撹乱といっても「別に壊滅させてしまっても構わんのだろう?」ということで基本的に任務の自由度は高い。

とりあえず大魔法で後ろから不意打ちするだけで良いのだ。


「いくぜ!『雷光天衝(ライトニングスフィア)』!」


俺がいつものように最大出力の雷魔法を放出する。

既にこの一連の動作が身に染み付いている。

通常のこの技は自身の身体すら焼き切るほどの出力を誇る。しかし、俺には自傷のデメリットは無いに等しい。


「はぁぁぁぁぁ……!『神聖勇覇(セイクリッドブレイヴァー)』ッ‼︎」


更に祐奈が続けて前方を薙ぎ払う。祐奈の左腕から光の奔流が目に見えて流れている。普段は不可視の魔力が可視化する程の高濃度の魔力が渦巻いているのだ。

やはり祐奈の一撃はとんでもない威力を誇る。実際問題、仲間内では敵に回すと一番面倒な相手でもある。


「行きますよマイル」

「いつでもオッケーだよ〜カイリ〜」


二人がお互いに声を掛け合って手を繋ぐ。

まるで手を繋ぐことでお互いの体がつながったかのように魔力が二人の間を伝搬する。


「「『海神召喚(ネプチューン)』!」」


詠唱と共に二人の頭上に巨大な槍を携えた水の巨人が出現する。


「「『海神槍撃(ネプチューンホーン)』!」」


さらなる詠唱と共に俺と祐奈の放った大魔法の上から覆いかぶさるように巨人の槍が敵の陣地を無慈悲に突き穿った。


俺たちの不意打ちの特大魔法は敵陣地で停止していた機械兵達の大半を完全に破壊した。


「よしっ!」

「油断するな、祐奈。まだ全滅させてはいない」

「は、はい」

「妙ですね……、なぜ反撃しないのでしょう?」

「さぁ〜……、あうぁっ!」


ギュンッ!


まるで視認できない程の速度で一筋の光がマイルの腹部を貫いた。


「マ、マイルっ⁉︎」

「うぅっ……」

「ちっ……!カイリ、マイルを連れてどっかに隠れろ!」

「で、でも……どこへ⁉︎」


あれほどの貫通能力を持っているのだ。生半可な壁では防ぐことは不可能だろう。

木……下手すれば岩すら貫通する可能性がある。


「危ないッ!」


ギュィンッ!ガギィィンッ!


その時、寸分の狂いなくカイリの顔面を狙っていた光の一撃を祐奈の剣が捉えた。


「祐奈!カイリは⁉︎」

「無事です……!これなら私が防げます!」

「くっ……流石だ……!だったら祐奈はマイルを守れ!カイリ。俺と狙撃手を倒しにいくぞ!」

「は、はい!」


まさかあれ程の断続の光魔法すら弾くとは……。勇者の身体能力をやはり尋常では無い。


「一気に接近するぞ。強化魔法は使えるか?」

「はい、問題無く」

「よし、いくぞ『雷光強化(ライトニングブースト)』!」

「『強化魔法(ブースト)』!」


俺は雷魔法を使い、身体能力を強化。

カイリは通常の強化魔法だ。特に両者に違いはない。勿論どちらも重ねがけしすぎると身体が崩壊する。


俺たちはそのまま最短距離で狙撃手の元へと向かう。

俺は敵の撃ってきた方向が割れているのですぐに見つかると踏んでいた。


「おいおい……遠いな……」

「まさかの長距離射撃ですね……。これほどの距離まで魔法が届くなんて……」


俺たちはそろそろ1キロ近く走っていた。

走っている間も敵は俺たちに向かって攻撃を続ける。その上、敵の攻撃は一本では無い。どうやら狙撃兵は何体もいるらしい。

リーシャの話では確か狙撃機(シューター)ってのが居たな……。

俺たちが魔法で薙ぎ払った場所周辺にはもう敵影はなかった。

つまり、狙撃機(シューター)は離れた場所に陣取って居ただけだと言うことだ。

一応遠距離戦闘用だからそれも理にかなってはいる。

しかし、大将までそこにいるのだろうか?だとすれば俺たちの作戦が読まれて居た可能性があるが……。


「そうか……、確か観測機(サーチャー)とか言うのも居たな……。それで俺たちの行動はバレて居たってことかよ……」


しかし、俺たちは先ほど大量の機械兵を破壊した。

俺の予想通りだとすれば囮のためだけにあれほど大量の兵を犠牲にしたと言うことにもなる。


「そんなことありえるか……?」


俺はその予想をカイリに話してみた。一人で悩むよりは建設的だ。


「敵は機械。私たちを確実に殺すためにその行動に踏み切る可能性はゼロとは言えません。それに、敵は兵を無限に生み出せるようですし……」

「だとすればそれで辻褄があう……か?」

「リュートさん、見つけました。奴等です」

「おしっ、気を引き締めるぞ」

「はいっ!」


俺たちは一段階だけ強化魔法を重ねがけし、敵兵へと接近した。


「破壊します!『水流双刃(スプラッシュデュアル)』」


カイリは両腕に水の剣を出現させ、狙撃機(シューター)達を切り裂いていく。


「『雷撃槍撃(ライトニングスピア)』ッ!」


やはり接近戦になった時の狙撃機(シューター)の戦闘能力は低い。

破壊するのは簡単だ。


と、その時、俺宛に音信魔法(コール)が届いた。

相手は……祐奈?


「どうした?」

『す、すぐ戻って来てください!きゃぁあっ!』

「ゆ、祐奈ッ⁉︎」


俺の声に返事はなく、音信魔法(コール)は途切れてしまって居た。


「カイリ!すぐ戻るぞ!祐奈とマイルが危ない!」

「そ、そんなっ……⁉︎」


驚愕の表情を浮かべるカイリをよそに俺はすぐに走り出した。

すぐにカイリも続く。


カイリのペースに合わせて居ては少し遅くなってしまう。

カイリは体の崩壊が始まってしまうと致命傷になってしまう。


「カイリ、俺に負ぶされ!」

「えっ……でも……」

「早くしろ!」

「は、はい……!」


俺は崩壊が始まるギリギリまで強化倍率を引き上げた。コレなら別々に走るよりもカイリをおぶって走った方が早く着くだろう。


「しっかり掴まってろよ……!」


俺はカイリに一声かけ、祐奈達の元へと猛然と走りとした。


「頼むぞ……!間に合ってくれ……!」

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