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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十章 獣人界編 其の二
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反撃の時間


「くっ……いでで……」


ミチミチと嫌な音を立てながら俺の足はゆっくりと再生を完了させた。

やはり敵の攻撃には神聖力が多大に含まれており、俺の再生を遅らせる効果を持っている。


「リュート……、大丈夫……?」

「あぁ、かなり痛いが問題無い」


アクアが心配そうに俺にも脚に触れる。

現在、俺たちは一旦休みという状態だ。

アクア達も一緒にいる。子供がうるさくするかもしれないが、まぁいいだろう。


一応敵の攻撃からローグがまた絡んでると予想し、話してみると、ジャードが少し低く唸って言った。


「神々か……。リュートよ、それが本当であれば我々が手を組まねばなるまい……。しかし、国同士が手を組むにあたっては問題が一つある」

「なんだ?問題……?」

「お主の故郷の話である。現在魔界は魔王不在による内乱状態。それを統一しようとして新政権を樹立しようという動きもある。我々にとっては隣の国の話。とても他人事では無いので事前に情報を収集していたのである。更には人間界の動きもきになるところである。奴らは他種族の中でもとりわけ魔族を目の敵にしているのであるからな……」


ジャードの言葉を受けてヴィシャスが続ける。

俺が長いこと故郷をほったらかしにしていたツケがこんなところで回ってくるか……。

一応俺にも事情があったのだが……そんなもの魔界にいる魔族達には関係無い。


「内乱状態にある国との国交を結ぶことは難しいのである。ついては……」

「リュートよ!魔界の内乱を沈めて参れ!話はそれからだ!」


ジャードが大きく胸を張って言った。

いやいや、簡単にいうが……。


俺たちは獣人界でまずこの機械兵との戦いを終わらせ、妖精界に戻る必要があるのだ。

そして行方不明のジルとメイを探さなければならない。その為にジルの従兄弟であるザインとも連絡を取らなければならない。

そして更に魔界の内乱の終結……?


どう考えても俺の腕が足りないのだが……。


「物事の優先順位を考えよ。今のお主にとっては何が最も大切なのか……。お主自身の立場を鑑みて考えよ」


ジャードが重苦しい声音で言った。


そうだ。俺は王なのだ。

こんなにも長いこと魔界を放っておいたのだ。俺が全てを丸く収めなければならない。


「アクア……悪い。家族でゆっくりは当分出来そうにない……」

「うん、知ってたよ……」


気丈に微笑むアクア。

知っていたと言われると何だか釈然としないが。俺は国だけでなく家族もほったらかしにしていたのだ。


「……でも、魔界に行くのなら私も行くよ……?」

「え」


俺は少し思考をフリーズさせた。

アクアがこんなことを言うのは珍しい。

コレは俺が反対するのを承知した上で言っているのだ。


「でも子供も小さいし……」

「ううん。この子達のお父さんの故郷だもん。連れて行かないと……。リーシャも来る……?」

「勿論。久しぶりの魔界ね」


リーシャもなんだか乗り気だ。


「あんたは心配性ね。ルシファーもユウナもいるのよ?大丈夫。それに、アンタもいるでしょ?」

「しかし……内乱状態にあるって聞いてなかったのか?危ないんだよ……。それに、俺はずっと魔界をほったらかしにしていた魔王だ。既に違う奴が魔王をやってるのかもしれないし……」


俺が歯痒さを隠しながらなんとか言葉を絞り出すとリーシャは少し眉をひそめて俺の背中を思い切りぶっ叩いた。


「しゃんとしなさい!自分に自信を持って!アンタなら出来るわ!」

「…………」


全く痛くもなんともなかったが、なんだか背中にヒリヒリとした感触が広がった。

それはまるで鳥肌の様に背筋を駆け巡って。


「ジルとメイなら大丈夫よ。あの子達は絶対に死んでやしないわ。だからアンタは魔界のことに集中しなさい。二人のことは他の仲間達に任せるのよ」

「……わかった」


しかし戦力のほぼ全てを俺が持って言ってしまう事になるが……。


「その二人の捜索には竜人界がついておるのだろう?ならば任せておくが良い。我が国内ならば我々も手を貸そう!」

「あぁ、すまないな。でも、それをやるにしても先に目の前の仕事を片付けないとな」


ならばと目の前の出来事に意識をシフトチェンジする。

今は機械兵との戦いを終わらせる事に集中しよう。

この件が終わればまた忙しくなる。


「はい。敵の種類は大まかに把握しましたので今度はこちらが攻勢に打って出る番です」


カイリがグッと手を握ってフフンと鼻を鳴らす。

マイルはみんなの分のお茶を入れてこちらへやってきた。


「お茶ですよ〜。どうぞ〜」

「頂こう!…………美味いっ!」


ジャードが数秒で飲み干した。紅茶の入れがいのない奴だ。


「もうちょっと味わって欲しかったな〜」

「すまぬな。余には無理だ!」


断言しやがった。寧ろ男らしいな。

俺たちも一時の休息を味わうのだった。


「さて、攻勢に打って出るのだ。一番槍は……」

「我が行こう」


ヴィシャスが名乗りをあげる。

確かにヴィシャス程の力があれば一番槍は問題無いだろう。

たった一本の槍で殲滅機(エクスキューショナー)を一方的に倒してしまったのは記憶に新しい。


「先程は先手を取られてしまったからな。ヴィシャスは手勢を率いて空からかかれ。余は同じく手勢を率いて正面から攻めよう。そしてリュートよ、ユウナとカイリと共に混乱に乗じて敵の大将を叩くのだ!」


ジャードの指示に全員が黙って頷く。


「じゃあ行くか」


俺たちが見据える先は敵の拠点とみられる森の中心地。

斥候によるとそこに陣のようなものを構えているらしい。

『陣の様なもの』と言う表現だが、陣というにはいくらかお粗末なものだとの報告だ。まぁ相手は機械だからそれも致し方なしか。


それに、森の中なら隠れるのにも遊撃にも適している。更に、敵からの襲撃にも対応しやすい。森に陣を構えたのは理にかなっているだろう。


「だが……、考えが及ばなかったな……」


そう、ここにいる俺たちは常にこの場所で生きてきたのだ。

俺も普段から森のそばで生活していたため、森の中や森の近くでの戦闘には慣れている。

俺が現在手を組んでいる獣人族達は言うに及ばないだろう。生まれた時からずっとこの森のそばで生きているのだから。


「何方が上手か……目にもの見せてやるぜ……」


ここに攻め込んできたことを後悔させてやる時がきた様だ。

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