束の間の休息
最近なかなか話が思い浮かばなくなってきた
「って!繋がらねーんじゃ何の意味もねえじゃねえかよ!」
「お、落ち着いてください!交戦中かもしれないじゃないですか。それに、やっぱり今は難しいですよ……周りのみんなが魔法を使っていて魔力がうまく伝わらないかもですし……」
「ちっ……!」
俺は舌打ちして地面を殴りつけた。
イラついてしまったが祐奈のいう通りだ。
音信魔法は周囲に魔力が高濃度で充満していた場合精度が落ちて繋がりにくくなるのだ。
それに、カイリ達が戦闘中で答える事の出来ない状況である可能性も高い。
しかし……俺の足の再生が遅い……。
普段ならばいくらひどい怪我でもそろそろ回復し始める頃合いだというのに未だに足はウンともスンとも言わない。
「魔力供給しましょうか?」
「いや、魔力は足りてるんだが……。どうも治りが遅い……」
まさか、先程の自爆型機械兵には神聖力が含まれていたのか?
だとすればかなり苦しい戦いを強いられる事になるだろう。
一応此奴らが神々の被創造物だという事の裏付けになるので一概に悪いこととは言えないが。
地上の存在は神聖力を持つことは出来ないからな。まぁ、例外が目の前にいるのだが。
「リュートさん、あっちでジャードさんが……」
「あぁ……。平常運転だな」
祐奈の指差す方向を見てみると「フハハハハハ!はがぁっ!」と言いながら敵をメッタメタのギッタギタにしているジャードの姿があった。
戦闘中なのに顎が外れる癖は全く抜けていない。どこかで致命的なスキにならなければいいのだが……。
「祐奈。あれ呼んできてくれ。一応事情を説明しておこう」
「はい!」
言うと祐奈はすぐさま走り出した。
獣の王が暴れ狂う台風の目に単身突撃して言ったのだ。
祐奈が強いのはわかっているのだがあまりにも無謀……と言うか無茶だ。
徒手で数百という機械兵達を完全に制圧しているジャードには本当に驚かされる。
「邪魔よっ!」
ザンッ!
気が付けば祐奈はいつもの様に敵の機械兵を切り刻みながらシャードに近づき肩をチョンチョンと叩いていた。
「ぬぅ、祐奈か!どうした!」
「ええとリュートさんが呼んでます」
呼んでます。じゃねえよ。
要件を言いなさい要件を。
「用があるのではないのか⁉︎」
「い、いいですからきてください!」
説明が面倒になったのか祐奈がジャードを引きずり始めた。
やはり祐奈は戦闘能力を引き換えに知能を失っているのだろうか?
「だぁぁぁあっ!」
最後の締めとばかりに祐奈が纏わり付いてくる機械兵を木っ端微塵にしてこちらへとやって来た。
ジャードは困惑した様子だ。
「お前……、はぁ……まぁいいや」
「リュートよ、酷い怪我だ。一体何があった……?」
「少しドジ踏んだだけだ。すぐ治る……ハズだ。それより、敵に結構ヤバい奴がいるんだ……」
俺は落ち着いてジャードに自爆攻撃型機械兵について知っていることを話す。
「フム……自爆……か……。確かに厄介だ……。ヴィシャスに連絡をしておくとしようか……。ロウルよ!」
「はっ!」
「お前いたのか」
ロウルはよく考えたらジャードの御付きなので一緒にいるのは当然なのだが、よくジャードの動きについてこれるものだ。ルシファーの様に突然現れた。
ロウルは普段の様子からは考えられないがかなり優秀な様だ。
「直ちに城へ向かい、情報を伝達せよ。自爆攻撃型には直接攻撃してはならぬ。範囲外から遠距離攻撃で破壊せよ、とな」
「承知致しました」
そう言ってロウルは素早くその場を離れた。
ルシファーの様に瞬間移動をするわけではないが、ロウルはイヌ科の獣人族だ。走る速度は他の種族に比べると段違いで早い。
というか、ルシファーが異常なのだ。
「しかし……、お主がここまでやられるとはな……」
「大丈夫だ。現にもう治って来た」
「ごめんなさいリュートさん……。私のせいで……」
「気にすんな。確かにめちゃくちゃ痛いけどお前だったら死んでたんだ。ラッキーって思ってろ」
「……はい……」
祐奈は沈んだ様子で俺の横に座り込んだ。
周囲にはジャードが破壊した機械兵の残骸が広がるのみで敵影は見えない。
と、その時。
俺たちの丁度上空に無数の機械兵達が群がっていたのだ。
「なっ……⁉︎」
「くっ……!リュートよ、下がっておれ!」
「私達が守ります!」
二人が俺の前に立ちはだかったが、機械兵達は俺たちを無視してなんと撤退しているのだ。
「なっ……撤退……だと……?」
「一体何故だ……?」
俺たちは不思議に思って遠方に目を凝らすが何も情報は伝わってこない。
「奴等……何故撤退したのだ……?」
「さぁ……?案外燃料切れとか?」
「んな訳ねーだろ。ま、ラッキーだ。取り敢えず城へ戻ろう。彼奴らは無尽蔵のスタミナをしているが、こっちの兵達は休まねえとな。勝てる戦も勝てなくなる」
「そう……だな。うむ、ではリュートよ。余が負ぶってやろう。なに、大した重さではない。フハハハハハ!」
ジャードが下顎を抑えて笑いながら立ち上がった。
少々乱暴に背中へ無理やりおんぶされる。
「なんだか気恥ずかしいな……」
「いい歳しておんぶもないですよね〜」
「俺はまだ16だ。いい歳ってほどでもない」
そもそも足が欠損しているのだから仕方がないだろう。
戦闘が終了し、神聖力を解除したのか祐奈の光の左腕がキラキラと光の粒子を散らしながら霧散した。
「では戻るとするか!なにがあったのか真相を知る必要がある!祐奈よ、付いて参れ!」
「はいはい」
「はいは一回だ!」
「はーい」
「はいは短く!」
「ハイッ!」
「よし、行くぞっ!」
「はいはーい」
「おいやめろ」
ジャードがまた煩くなるじゃないか。
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「魔王様!」
俺たちが城へと到着するとルシファー達が城門の前で待っていた。
「おう、どうした?」
「なっ……その足は……一体何がどうなされたので……?」
「それはおいおい話をする。ヴィシャスとカイリを呼んでくれ」
「はっ!」
俺の命令に従順に頷きその場から消え去るルシファー。
いつも通りだな。
「アクア達は無事なのか聞きそびれたな……」
「リュートさんはそそっかしいですねー。でもルシファーさんの態度からして無事だと思いますよ?」
「だろうな。責任感の強い彼奴のことだ。アクアに何かあったらハラキリをしかねない」
何だか昔の戦国武将みたいな性格してやがるからな。
主人への忠誠心とか。