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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十章 獣人界編 其の二
159/220

対機械戦法


敵をなぎ払いつつ先へと進む。

正直、目的は無いに等しかったのだが……。


城の中にはアクア達の他にレヴィアもいるのだ。

その他大勢の非戦闘員がいる事だろう。

王の御付きがこちら側に出ていないということは城内の機械の掃討を任されているのでは無いだろうか?


「祐奈!できるだけ城は壊すなよ!」

「わ、分かってます!」


言いながら祐奈は攻撃の軌道を心なしか城からアウトサイドに逸らした。

自信がなかったらしい。

実際祐奈は多くの前科持ちだ。何かあればすぐ壊す。


「くっそ!此奴ら……ラチがあかねぇ……!」


いくら破壊しても湧いて出てくるのだ。

これは随時戦力が投入され続けていると言うよりも何処かから湧いて出てるのでは無いだろうか?


「リュートさん!あれ!」

「あ……?」


祐奈の指差す方向には何やら大きな機械が。

機械兵か?にしては動きが緩慢でどう見ても戦闘に参加しているようには見えない。


「あれのお腹のあたりを見ていてください……」

「お、おぅ」


言われた通りに腹部を注視しているといきなりガシャンッ!と腹に取り付けられていた扉が開き中からゾロゾロと機械兵が出てきた。

カレンの話にあった白兵機(クローサー)だ。

数は20程度。

すぐに扉は閉まり、中からはゴゥゥンゴゥゥン……。と鈍い音が聞こえてくる。


「まさか、アレが兵を製造してるのか……⁉︎」

「そう……考えたほうがいいですね……。それに、製造ペース的にアレは一機だけじゃ無いです……。戦場のあちこちに沢山いる……!」


祐奈の言う通りだ。

普通に考えてこのペースで20機ずつ製造しても破壊のペースの方が早い。

それだけの兵力がこちら側にはあるのだ。

しかし、それでも敵の戦力が一向に減衰しないと言うことはそれを超えるペースで製造がなされているという事に違いない。


「取り敢えずあのデクノボーをぶっ壊すのが先決か……。このままじゃ地力で優ってるお相手側の有利は揺らがねぇ……」

「それなら任せてください。壊すのは大得意ですから!」

「それが自慢になるの今だけだからな?」


少し心配になってきたぞこの女勇者が。

今は俺より8個も年上だが、昔は俺の方が干支一回りも年上だったのだ。もう心配でたまらない。手のかかる姪を持った気分だ。


「じゃあ索敵は俺に任せろ。破壊は頼んだ。その代わり手際よく一撃で粉砕しろ。出来るな?」

「はいっ!」


そう言って祐奈は元気良く剣を構えた。

ブゥゥゥン……、と光が剣に集まってくる。これほど近距離いると俺も吹き飛ばされそうになるほどの神聖力が集まっている。


「別に周りの雑魚も一緒に倒してしまっても構わんのだろう?」

「まぁ……出来るんなら助かるな」


しっかりとネタをぶっ混んでくる。

正直言ってこの世界では祐奈以外にこの手のネタが通じないので俺の心のオアシスでもあるのだが、もう少し緊張感が欲しい。

いや、原作のあれは一応緊張感のある場面だったんだが……。

しかしネタにはちゃんと答えておくべきだろうか。


「まぁ、遠慮はいらねぇ。ガツンと痛い目合わせてやれ!」

「そうですか、ならば期待に答えるとします!」


祐奈は嬉しそうにそう叫ぶと前方を容赦なくなぎ払った。

それはもうなんの容赦も躊躇もなく。

ハデスをぶっ飛ばした時のように本気で地面ごと抉り抜くように。

そう、この場面において言えば祐奈はアー○ャーではなくどちらかと言えばバー○ーカーなのだ。

勝って当然どころか瞬殺して当たり前である。

どう見ても一兵卒の白兵機(クローサー)などでは祐奈に叶うはずもない。


「ふふふ、敵がゴミのようです」

「文字通りゴミになってんだよ。見たまんまスクラップになったよ」


ゴゥゥンゴゥゥン……。


その時、上空から鈍い音が。


ガギィィン!ガギィィンッ!


さらに硬質な刃の音も響く。


「あ……?」


見上げると、なんとヴィシャスが殲滅機(エクスキューショナー)一対一(タイマン)の戦闘を展開していた。


「なぁっ……!何やってんだあのおっさん⁉︎」


ギュウウウゥゥゥン!


「ふっ!当たらぬのである、その様な雑な攻撃は!」


敵の放った極太の魔力レーザーを華麗にかわし、翼を打った。

すると高速で加速したヴィシャスはまるで彼自体が一本のやりになったかの様に殲滅機(エクスキューショナー)の機体を貫いた。


『出力更ニ5パーセント低下。敵ノ危険度ヲレベル4ニ引キ上ゲマス』

「鈍いのである。その程度の速度では我を捉えるのには数十年は早いのである」


ギュイイイィィィン……。


チャージ音が鳴り響く。

見るからに光の魔力を機体全体に溜め込んでいる。


「おい!危ねぇ!」

「ふっ、リュートか。全くもって心配ないのである」


するとヴィシャスは手に持った金色の槍を腰だめに構え、空いた左腕に魔力を蓄積させた。


「どこからでも撃ってくるが良いのである。我はそれを切り裂くのみ……」


そして、


キュインキュインキュイン!


無数の魔力レーザーがヴィシャスを襲った。


しかし、100にも届こうかと思われるほどの数の砲撃を持ってしても、ヴィシャスを捉えることは出来なかった。


圧倒的な速度。


つまり、当たらなければどうということはない。の理論だ。


しかし殲滅機(エクスキューショナー)はそれでも攻撃をやめない。

当たらないのならばとばかりに避けられないほどの超極太魔力レーザーをヴィシャスに向かって容赦なくはなった。


「不味いッ!」


しかし、俺の声をよそにヴィシャスは余裕の笑みを浮かべ、左腕を無造作に払った。


「『真空爪撃(ガルーダクロー)』」


なんとヴィシャスはそれを切り裂いたのだ。


「我が魔力は全てを切り裂く風の刃。我は全てを穿つ一本の槍そのもの。さて、侵略者よ……。往生の時間である……」

『出力30パーセント低下。敵ノ危険度ヲレベル5ニ……』

「懺悔は……必要あるまい。『金色疾槍撃(ライトニングストライク)』ッ!」


一閃。


ヴィシャスは俺たちですら視認が困難な程の異常な速度で殲滅機(エクスキューショナー)を貫いた。


「フン……、他愛ないのである」


そうしてヴィシャスは敵の最期を確信した様に背を向けた。

それと同時に殲滅機(エクスキューショナー)は爆散する。

どうやら敵の核の様な場所を穿ったらしい。


強い。

強過ぎる。

王の実力は何度も見たつもりだった。

しかし、何度見ても慣れるものではない。

何度も見ることで痛感する。自分達がまだまだ未熟者であるということが。

アクア達が逃げることを余儀なくされるほどの圧倒的な戦闘能力を持つ敵をものの数分で一方的に破壊してしまったのだ。


「リュートよ。無事であったか」

「アンタこそ。やっぱり王様ってのは強えな」

「ふっ、お主も精進するのである。ならば我等の領域を超えることも出来よう」


そう言ってヴィシャスは固まっていた表情をわずかに緩ませた。

やはり戦場では適度な緊張感が必要だ。それは王も同じなのだ。

極度の緊張は体を硬直させることでそのまま死に直結してしまうが、緊張感が無ければ慢心を生み、慢心はやはり死に直結する。


ヴィシャスは直ぐに元の周囲を突き刺す様な雰囲気をまとい、俺たちに指示を出す。


「城内の敵の制圧は我等が成し遂げた。後は外にいる敵兵だが……」

「敵を量産している機体があった。大きめで腹にでかい扉がついている。これをぶっ壊さねえと敵は無限に出てくるだろう」

「委細承知したのである。ならばその機体の破壊を最優先とする様通達するのである。そして、先程の殲滅機(エクスキューショナー)の他にも古龍種(ドラゴン)以上の強力な力を持った機体が存在する。用心するのである」

「了解……!カイリ達は……?」


そうだカイリとマイルがいないじゃないか。

どこ言ったんだ?


「奴等は城内の敵の掃討の補佐をした後、城門の守護についているのである。ジャードは相変わらず敵陣のど真ん中なのである。あのバカめ……」

「だったら俺もそこへ行く」


俺がそう言った時、ヴィシャスは少し眉間にしわを寄せた。

わざわざ危険なところにたった二人で突っ込むのは悪手だ。

だが、ジャードが一人でいるとは考えづらいし、そこに向かったということは強大な敵がいるのだろう。

頭の中が戦いのことでいっぱいなジャードだが、奴は仮にも一国の王だ。戦において無駄な行動を取る男ではない。


ヴィシャスは俺の瞳から何かを読み取った様で満足げに俺たちに背を向けた。


「我は対空部隊を補佐する必要がある。己の身は己で守れるな?」

「当たり前だろ」


俺は悪戯っぽく笑い、ヴィシャスの二の腕のあたりを叩いた。


「ふっ、ならば行くがよいのである。お主は何かとバゼル王に似ているな……」

「たまに言われるんだが……顔が似てるのか?」

「確かに顔も瓜二つだが……。それだけではない。だが、それは我以外に詳しい男がいるのである。それに、今はなすべきことではないのである」

「あぁ。じゃあ、後で話聞かせてくれ」

「良かろう。ならばしっかりと勤めを果たしてみせるのである」


バサバサバサッ!


短く言葉を切るとヴィシャスは空中へと飛翔した。


「よし、行くか、祐奈!」

「はい!」


この場には特に用はない。

次の量産機体を破壊しに行く必要がある。

しかし俺たちは未だに敵の対象の姿を見てすらいないのだ。

この情報のディスアドバンテージは戦局に大きな影響を与えてしまうだろう。

相手からすればこちらの大将首は全て割れているのだから。


「たしか指機官(コマンダー)ってのがいるって言ってたな」

「はい、命令する奴ですよね。でもフェリアさんは……」

「あぁ、指機官(コマンダー)は複数体いて変えが効くと予想されるらしい。でもこの機械兵達を作った大元がいるはずなんだ。量産機体だっていきなり出現したわけじゃないはずだ……」


現在発覚している機体名が指機官(コマンダー)殲滅機(エクスキューショナー)白兵機(クローサー)狙撃機(シューター)補助機(エイダー)偵察機(サーチャー)強襲機(アサルター)だ。

そして名前はわからないが大量に機械兵を生産している量産機体。

発覚しているだけでもこれだけだ。さらにまだ種類はあるのだろう。


「フェリアさんは破壊された機械を治す個体や魔法を使う個体がいてもおかしくないと言っていましたね……」

「実際に殲滅機(エクスキューショナー)の攻撃方法は大口径の遠距離魔力レーザーだったしな」


殲滅機(エクスキューショナー)の攻撃は異様にチャージ時間が短い上に空対空、空対地のレーザーを使い分けることができる。さらには百を越える砲門が全身に取り付けられているのだ。

ヴィシャス程の戦士でなければ対処はほぼ不可能だったことだろう。


『敵将ヲ発見シタ。殲滅スル』


その時、小さな機械兵がこちらへ突っ込んできた。


「なっ!」


祐奈がすぐに迎撃体制に入る。

まて、何故突っ込んでくる?


武装していないのだ。

いや、内部機構に致命的な攻撃方法を持つ可能性はある。

しかし、今のところを武器を出していないのだ。敵の目的は……。


「祐奈ッ!斬るな!逃げろッ!」

「え」


ザンッ!


祐奈が普段の様にキレの良い高速の斬撃を打ち込むと同時にその機械兵はまばゆい光に包まれた。


「じ、じば……?」

「うおおおおおおおおっ!」


カァァァァァッ!


光熱が迫ってくる。

これに触れて仕舞えば俺はともかく祐奈の命が危ない。

俺は無我夢中で地面を蹴った。

後のことなど全く考えずに、周りのことなど意に介さずに生き物からもそうでない物からのも魔力を一気に徴収した。

反動で周囲の木々が一瞬にして枯れた。命を奪ってしまうほどの魔力徴収。周りに人がいたら大惨事になるところだった。


そして俺は背後に防壁を展開しながらありったけの魔力を脚力に回した。

これでダメなら仕方がないという思いもあったがなんとか逃げ切ることができた。


「リュ、リュートさん……。その、ごめんなさい……」

「いや、あそこで躊躇する様じゃお前の持ち味を殺してしまう……。それに、あれが自爆個体だなんて初見で見抜くのは難しい……」


俺は息も絶え絶えにその場に寝転がった。


「リュ、リュートさんッ⁉︎あ、あ、足が……!」

「あぁ?こんなもん放っておけば治る」


そう、俺の足は先ほどの無茶苦茶な強化魔法による魔力運用によって引きちぎれていたのだ。

興奮していたせいか不思議と痛みはない。

自分のキャパシティを越える魔力を無理矢理に使ったのだ。足が千切れるくらいで済んで助かった。

最悪体が爆散している可能性もあったのだから。


「さっきの奴は……?」

「跡形もありません……」


そう言って祐奈は爆心地に目をやった。


やはり自爆目的で突っ込んできていたのだ。敵は人間の様に生にしがみつくという概念がない。だからこの様な戦法が取れる。自らの命を引き換えに敵将を討ち取るという戦法が。


「余裕だと思っていたが、想像以上にしんどい戦いになりそうだ……」

「はい……」


俺は枯れた木の根っこにもたれた。足がないので立てないから今は座り込んでいる。


「悪い。少し再生に時間がかかる。今は『魂食(ソウルイーター)』も上手く作用しねえんだ……」

「いえ、ゆっくり休んでいてください」


祐奈は油断なく周囲を警戒しながら俺の隣にあぐらをかいた。


「もしあれが特別な自爆個体じゃなくて全部が自爆能力を持っていたら……」

「だとしたらこちらの負けですね……。一帯で10人は持っていかれますよ……。でもそれは無いんじゃないですか?」

「だと信じたい……。実際これまでに自爆攻撃を使われたという報告は聞いていないからな。だが、これから出てくるとすれば他の奴らに警告しておく必要があるな……」


しかし今は俺の足がこの様子じゃあ連絡することができない。

足が万全の状態なら走れば城なんてすぐに着くのだが……。


「リュートさん!こんな時に『音信魔法(でんわ)』ですよ!」

「誰に電話するんだ誰に。リーシャに電話しても仕方ねえだろ」

「カイリちゃんの魔力(ばんごう)知ってるじゃないですか!前に教えて貰ったでしょう?」

「あ、確かに知ってた」

「だったらさっさと音信(でんわ)しましょう!こういう時に使うんですよ!」

「よっしゃ!任せろ!」


と、意気込んで音信魔法を使ってみたのだが。


「繋がらねえんだが」


電話って非常時にはあんまり役に立たないのだろうか?

不死身になったらあっさりと身体がバラバラになるのをなんとかしたい

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