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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十章 獣人界編 其の二
158/220

混乱


ゴゥゥゥン……。


と鈍い機械音を響かせながら順調にこちらへと進軍してくる機械兵達。

しかし、こちらの兵力も負けては居ない。

空中には鳥類型の獣人族が、陸には哺乳類型の獣人族が武装して待機している。

流石に海中で無ければ全力を出すことが出来ない海洋哺乳類型の獣人族は出張って居ないが。


「征くぞ!これは戦争だ!機械兵なんぞに遅れをとるな!一体残らず破壊せよ!さぁ皆の者!鬨の声を上げよ!勝者は我等だ!」


「「「うおおぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉ‼︎‼︎」」」


城から進み出て拡音魔法で全員に聞こえるように演説をするジャード。

流石は王様だ。中々決まっている。


「見て下さい。中に数機ですが、凄いのが居ますよ」


祐奈が空を指差していう。

確かに何機かデカイのがいる。

それに、どう見ても雑魚じゃない重厚な感じを醸し出している奴が数体。

油断はできない。だが、


「あぁ、殲滅機(エクスキューショナー)だけじゃねぇ……。だが、負ける要素はねぇな」

「ですね」


戦闘準備は万端だ。

ヴィシャスは金に輝く槍を持って空中に踊り出した。

ジャードの戦闘スタイルは無手のようだ。武器を持たずに吠え猛っている。

カイリとマイルは魔法による中距離戦闘だ。前にも見たが、この二人は各々の魔法を合体させる事でさらなる効果を生み出す、なんて運用方法が出来るのだ。

双子だから出来るのか、それとも別の何かがあるのか。


「さぁ、行きましょうか……。勝利は我等にあり!ですね!」

「行くぞ!」


そして、俺の掛け声と同時にジャードが大声を張り上げた。


「全軍!進撃開始ィ‼︎」


「「「うおおぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉ‼︎」」」


そして、これは戦闘などではない。

そう。戦争が、始まった。


---


「俺たちはどのタイミングで行けばいいんだ?」

「時が来れば自ずとわかる。どう考えても一兵卒では叶わん敵が出て来る」


何か確信めいた物を持った瞳でジャードが力強く首肯する。


「分かるのか」

「経験という物は歳をとれば自ずと現れる。余は生を受けてからというものかなりの時間を戦場で過ごして来た」

「アンタ……普段からは考えられねえほど凄えんだな」

「一言余計ではないか?」

「はは、違いない」


話しながらも油断なく目の前の空を見据える。

敵の大将の情報だけはアクアからもリーシャからも得られなかった。

情報戦では既に負けている。しかし、負けるわけにはいかないのだ。

戦力ではほぼ確実にこちらが優勢と言っていいだろう。

兵士は一人一人が屈強な獣人族の戦士なのだ。そして何よりも圧倒的な戦闘能力を持つ王がこちらには俺と祐奈を数えると5人もいるのだ。

ここまでオーバーキルな戦力を揃えることが出来たのは奇跡に近い。

ならばこそ、ここで勝たなければならない。


「ジャード。敵が動いたのである。何かが高速で近づいて来るのである」

「速度はどの程度だ?」

「……すまんな。今すぐにでもここに到着するほどだ」

「なぁっ⁉︎」


ドガシャァァァァンッ!


城壁と窓を一気に破壊しながらこちらへ何かが突っ込んで来た。

いきなり単騎で此方の大将首を取りに来ただと⁉︎


『敵将ヲ発見シタ。直チニ殲滅機スル』

「ちぃっ!ヴィシャス‼︎責任もって撃破せよ!敵がここになだれ込んで来るぞッ!」

「了解したのである。武運を祈る」


言いながらヴィシャスは先程突っ込んで来た敵の機械人形に槍を突き立てる。


「あんたなにやってんだ!ここまで来させちゃダメだろ!」

「スマンスマン、油断したのである」

「強い奴はこれだから!」


俺は文句を言いながら風穴空いた城壁から空の景色を見た。

そこには何機も群れをなして機械人形が高速で此方へ飛翔して来る。


「おい!鳥のおっさん!めっちゃ来てんぞ!」

「気にするでない。全て我に任せるのである。ジャードと共にゆけ!リュートよ!」

「だぁぁっ!死ぬなよ!」


俺はそう叫んで部屋を後にした。

なんでこのおっさん達はこんなにも自信満々なんだ。

幾ら何でも敵の数がおかしいだろうが。


「何でこんなに城内に侵入されてんだ!」

「敵が空から来てるのであろう。ならばそれを問題ない。城内の敵を掃討し、外に出るぞ!」


そう言ってジャードは単身でどこかへ言ってしまった。

いつの間にかカイリとマイルも居なくなってしまっている。

何で王連中はこんなにも自由なんだ……。戦争じゃなかったのか?戦争ゲームなのか?


「アクア達がヤバイってのに……。城の中に敵を入れてんじゃねぇよ……」


ブツクサ文句を垂れながらも敵を破壊しておく。


「魔王様。アクア様は私が……!」

「あぁ、頼んだ!」


そう言ってルシファーはいつものように俺たちの目の前から消え去った。いつも思うのだがこのような非常事態の時はともかく、なんの危険もない時でも消える必要はあるのか?


とまぁどうでもいい思考は置いといて。アクアの部屋は最上階ではなく中層階なのでそこまで大きな危険はないだろう。

それにアクア達の元へはルシファーが向かったのだ。問題無いだろう。俺は目の前の仕事に集中するんだ。


「リュートさん!こっちの通路を使いましょう!近道出来ますよ!」

「お前、道知ってんのか?」

「当たり前ですよ!こういうのはちゃんと探検しておきました!」

「せめて調査って言ってくれ!お前歳考えろ!」


俺は辟易しながらも走り出す祐奈についていくのだった。

なんだかんだ言ってこういう子供っぽいところが役に立っているので強く言えない。いや、もう強く言ってた。

と、走行しているうちに出口が見つかった。白い光が漏れている。外との光の差だろう。この通路はかなり暗いからな。

そして、走り抜けた先は何と城の裏側のお堀につながっていた。


ヒュウウウゥゥ……。と風が吹いている。

階段とかなにも無い。このままここから飛べばお堀に直下落下コースだ。


「って……、絶壁じゃねぇか!」

「そーですよ」


呆気からんと言う祐奈。

そーですよじゃねーですよ?


「え、飛ぶの?」

「飛びます」

「え、マジで言ってんの?」

「マジです」

「…………」

「マジです」


大事な事なので二回言いました。みたいな顔してやがる。


別に飛んでも大丈夫だとは思う。怪我はしないだろう。なんだかんだ言って俺の身体は尋常じゃ無いほどに頑丈だからな。

しかし俺は絶叫系のアトラクションが苦手なのだ。

戦闘中なら頭の中に興奮物質がドバドバ出てるから気にならないが、今のように冷静になっている状態で飛ぶのはかなり躊躇してしまうのだ。


「行きますよー、どーん!」

「あっちょ、まっ!まだ心の準備が……あああぁぁぁぁあ‼︎」


背中押された。


「ひゃっほーい!」


楽しそうに声をあげながら俺の後に続く祐奈。

ひゃっほーい!じゃ無いんだよぉぉぉぉ!


おばばばばぱばばばばば怖い怖い!無理無理!尻のあたりからへその辺りにかけてゾワゾワとした感触が襲って来る!

もうなんていうか怖い。怖い以外の感想が出てこない。そして何故まだお堀に落ちないんだ?滞空時間長く無いか?

これは思考が加速してるってことか?もしかして走馬灯なのか?

何でもいいから早く地面について欲しい。


「『氷結魔法(フリーズ)』」


後ろから不穏な声が聞こえた。

まさか……。


「ぶぇぇっ!」


バガンッ!という轟音と共に凍りついたお堀の水に激突した。


「てめぇ……なにしやがゴヘッ!」


さらにヒュルルル……、と俺の背中に着地する祐奈。

まさかの仲間からの起き攻め。


「てめぇ……祐奈ぁぁっ……!」

「えっ、ご、ごめんなさい……。濡れるの嫌かなぁって思って……」

「普通に考えて氷に全身強打するよりマシだろぉがぁぁっ!」


ゴツン!と久々に祐奈の頭に思いっきり拳骨を叩きおとした。


「いだぁっ!」

「ったく!いつになっても要所要所でバカやりやがる!大人になれよいい加減に!」

「大人でしょう?セクシーでしょう?」

「黙れクソガキ」


セクシーなのは否定しないが、そもそもアクアの方が胸デカいし。

残念だったな。


「今は私の方が年上ですぅ〜、残念でしたぁ〜」


祐奈の言い方がウザすぎて眉間にピクピクと青筋が浮かんできた。


「フン……行き遅れめ……」

「ちょっ!なんてこと言うんですか!24は行き遅れじゃないですよ!」

「この世界では行き遅れですぅ〜、残念でしたぁ〜。おい、この言い方されたらどんな気分だ?」

「物凄い不快です。二度としないでください」

「数秒前のお前のセリフだぞコレ」


と、その時シュルルル……、と音を立てながら魔力弾が飛んできた。

しかし祐奈はそれを見向きもせずに剣で切り裂いて文句を垂れる。


「私だって気にしてるんですよー?」

「はいはい、悪かった。しっかしよそ見しながらとか……場慣れしてきたなぁ俺たち」

「ですね……。あ、見てください。めっちゃ来てますよ」

「取り敢えず敵将の首を取るのが俺たちの役目だ。雑魚は……まぁぶっ飛ばしとくか」

「ですね……。じゃ、ちょっと離れてて下さいね。いきますよ……『神聖勇覇(セイクリッドブレイヴァー)』‼︎」


前方から押し寄せる機械兵たちを一瞬にして薙ぎ払う。

何度見ても理不尽な攻撃力だ。地面ごと抉りながら光が迸る。

俺たちの立っている場所が凍り付いたお堀の上じゃなかったら上出来だったのにな。


ビキビキビキッ!


音を立てながら崩壊する足場。


「全く……後先考えろよなっ!」


俺は祐奈を抱えて跳躍した。濡れたく無いからな。

しかし、氷の足場ごと破壊するのは良い策だったかも知れない。

先ほどの祐奈の一撃で倒しきれなかったやつも水の底に沈むからな。

お堀の深さがよくわからないが機械って水に弱そうだし、このままこいつらが少しでも立往生してくれれば儲けもんだ。


「リュートさんっ!下ろしてください!は、恥ずかしいですよ……」


何だか顔を赤くした祐奈が訴えかけてくるが無視の方向で。


「今さら何言ってんだ。お前もっと恥ずかしいこと何回もしてるだろーが」

「えっ、ちょっ、具体的に教えてください!何したんですか私⁉︎」

「自分で気付け。だからお前はガキなんだ」

「えーっ!あ、敵が出て来たら下ろして下さいね」

「当たり前だろ。あ、敵だ」

「早いッ!」


ゾロリと並ぶ機械兵たちを殲滅しながら俺たちは結局戦場のど真ん中へと向かうのだった。

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