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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十章 獣人界編 其の二
155/220

締結


「して、リュートよ。頼み事とは何であるか?」

「まぁ結構簡単な頼みごとでもねえんだが……。バラバラになっちまった仲間を探すのを手伝って欲しい。俺がここに来たのは神との戦いに備えての同名の申し入れの為でもあるが、仲間たちを探しに来たのもあるんだ」


俺の遠慮のかけらもない申し入れに対してヴィシャスは二つ返事で頷いた。


「成る程。あい分かった。我らはこれより同盟関係。共に志を同じくする仲間である。手を貸す事に微塵の惜しみもないのである」

「助かる。ここでアクア達が見つかったのは不幸中の幸いだった。あと見つかってない仲間は二人。竜人族のジルと猫の獣人族のメイだ」

「猫か……。それでは親戚筋がウチにいるかもしれぬな……」

「あ、それはないと思います。メイは人間界の外れにある獣人族の集落出身だから……」


祐奈が口を挟んだ。

そういう細かいところは祐奈しか把握していない。


「成る程。世界各地に散らばっているとは聞いていたが人間界とは……。さぞ肩身の狭かったことだろう」

「メイは人族に破壊されてしまった集落の生き残りなんだそうです。それで、奴隷にされかけていたところを私が助けて……」


祐奈の言葉に対してジャードは低く唸った。

やはり人族と他種族は根本的に対立関係にあるらしい。

妖精族は知らないが、獣人族と魔族は人族と非常に仲が悪い。


「ムゥ……。このような事例があってしまっては人族への反感は募るばかりだな……。このことは他言無用で頼む」

「まぁ昔の事ですし私は構いませんけど……。メイが公表するといったらしますよ?」

「それは困るが……、仕方がない。人の口には戸は立てられぬというものだ。それは本人の意向に任せよう」


まぁメイはそんな昔の事を吹聴するような奴じゃないし、その心配はないだろうがな。

祐奈もわかっていて意地の悪い返しをしているのだ。


「じゃ、リュートさん達はここに当分滞在するのですね?」

「まぁそうなるな。それに、敵もすぐに俺たちを探し出す事だろう。そうなると嫌でも戦いになる。それまではここで厄介になる事になる……んだよな?」

「その通りだ!フハハハハハハ!」


珍しく顎が外れなかった。

なぜかと思って顔を上げるとジャードは顎を片手で抑えながら笑っていた。学習してやがる。


「そして、第二の議題だ。つい最近竜人界で起こった黒い空間と更にその前のゲート発生の件だが……」


そういって話を新たにするジャード。

しかし、この議題については俺たちは全容を理解している。

というか、ほかのやつにとっては何が何だか訳がわからない事だろう。


「こうも立て続けに隣の国で大規模な災害が発生しているのだ。注意するに越したことはないだろうが……」

「これは自然発生した災害なんかじゃないぞ。人為的に発生したモンだ」

「何故そのようなことが分かる?」

「どちらも俺が当事者だからな」

「何ィ!?」


ジャードが驚いたように大口を開けて叫んだ。

うるさい。


「ほ、本当ですか……?で、でしたらアレは一体……?」

「アレのことも説明しないとなぁ……」


少し面倒だが話が進まないので詳細を説明する必要がある。


「リュート。私が話そうか?」

「頼む」


もう全部リーシャに丸投げする事にした。

リーシャは「さて」と前置きしてハデスとのいっけんについて話し始めた。


---


「ムゥゥ……。この獣人界の懸案事項2つに大きく関わっておる者がこの国に来ておったのはもしや大きな僥倖なのかもしれぬな……」

「何でだ?」


話を一通り聴き終えたジャードは重々しく口を開いた。

しかし、言葉の真意が見えない。寧ろ俺たちは邪魔者だと思うのだが。


「もちろん敵を一網打尽にできるからに決まっておるわ!フハハハハハハ!」

「ククク……お主らしいのである。しかし、概ねその通りなのである」

「お二人共、落ち着いて下さい!国民を危険に晒すおつもりですか⁉︎」


焦った様子でロウルが仲裁を入れる。

この二人の王様は何かと喧嘩しているが相性は抜群である。


「何をいっておるのだロウル。余は落ち着いておる」


しかし至って落ち着いた様子のジャード。普段の様子からは想像もできないほどに落ち着いている。


「なっ……、だったら何故……」

「先程カイリが言っておったであろう。我らは国を守るのに全力を尽くすと。そしてこれは余の持論だが、自分に自信がなければ他を守るなぞ不可能!」


ジャードは堂々と言い放った。

自分に自信がありすぎるのも如何なものか。


「リュートよ。お主は当初の予定通り囮としてこの城に留まってもらう!良いな⁉︎」

「お、おぅ」

「先程の話を信ずる限り、竜人界に発生したゲートや黒い空間のことは一旦考えの隅に置いてしまうのが良いのである。まずは一つずつ、問題を潰していくのが先決である」


少し黙っていただけでトントン拍子に話が進んでいく。

このノリノリの二人を止めることができる人間はこの場に誰一人としていない。

カイリやれやれと手を振り、マイルはにこやかに笑っている。

ロウルはため息をついて頭を抱えていた。ヴィシャスの御付きのドーリスはずっと無言。


「おい、それで良いのか」

「良い良い!フハハハハハハ!貴様の仲間とやらは獣人界内であれば捜索をしよう!特徴はどうだ?」

「あー、一人は短い銀髪で目つきの悪い竜人族の男で……」

「もう一人は超絶可愛くて赤い髪の猫獣人です!」


俺が説明していたのに祐奈が食い気味にセリフをかぶせて来た。

確かに美人なのは認めるが超絶可愛いとか言って大丈夫なのか?


「成る程、銀髪の竜人族の男に赤髪の獣人族の女であるか。あい分かった、この条件で捜索してみるとするのである」


ヴィシャスが短くそしてわかりやすく俺たちの言葉をまとめ、そう締めくくった。


「それでは今回の会議はこれで終わりとしようか!余は腹が減ったぞ!ではさらばだ!フハハハハハハ!」


高笑いしながら颯爽と退室するジャードに誰も何も言わない。

どうせ止めても止まるような男ではないことがこの短時間でわかってしまったというのもあるので俺たちも何も言わない。

廊下の向こうから「はがぁっ!」という声が聞こえて来た。油断するとすぐ顎が外れるな。


「ふぅ、あの男も仕方のない奴なのである。昔から変わらない。では、我も失礼するのである。少々腹を満たしてくるとしよう」


ヴィシャスはそう言うとさっさと出て行ってしまった。


「あ、じゃあ私もお腹減ったのでご飯欲しいですねー」


祐奈がそれに続く。

お前食堂の場所とか知ってるのか?


「私は長旅で疲れたので部屋で休ませて頂きます」

「じゃあ私はカイリと一緒に休もうかな〜」


二人は一緒に部屋に戻るようだ。

俺はどうしようかな……。

少し周囲を見渡すとヴィシャスの御付きのドーリスはいつの間にいなくなっていた。どうやらヴィシャスについて行ったと考えて良いだろう。


「はぁ……。ではリュート様。私は先に休ませて頂きます……。失礼致します」

「あ、あぁ……。ゆっくり休んでくれ」


俺は退室するロウルに優しい言葉をかけてやった。

しかしこの後ロウルにはレヴィアの部屋に呼ばれているのだ。彼奴も心労が絶えないな。


「ルシファー。俺は部屋に戻るお前はどうする?」

「私も部屋で待機しております。御用の際はひと声お呼び頂ければ」

「あぁ、分かった。今日は休んでくれ。大方近いうちに襲撃がある……」

「はっ!」


そう言ってルシファーは目の前から一瞬で消え去った。

こんな時まで時間凍結使わんでも……。


「さて……戻るか」

「そうね」


会議室に取り残された俺とリーシャは共に部屋へと戻る道を歩くのだった。

ちなみにリーシャと俺の部屋は別々だぞ。断っておくけど。

短め

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