思いがけない再会
完全に投稿を忘れてて深夜になってしまった
「ルシファー!」
俺は取り敢えずルシファーを呼んでみた。
コレで出てこないのならどうせ俺の力で見つけ出す事はできないので勝手に出てくることを期待するしかない。
「んー、出てこないですねー」
「ま、ほっときゃ勝手に帰ってくるさ」
「あ、リュート!あれがパパよ!」
「あぁ、知ってる」
その時レヴィアが前方を指差して元気よく言った。
その指差す方向には先程挨拶を交わしたばかりのジャードの姿があった。
父親の顔を指さすのは良いとして王様の顔指さすのはどうかと思うぞ。
「ム、レヴィア!体調は良くなったのか!すまなかったな、見舞いに行こうとは思っていたのだがこいつが煩くて……」
「王よ……。三王会議だと言うのに直前で席を外せるわけがないでしょう……」
苦労人のロウルがやれやれと首を振りながら言った。
「あ、ロウル!後で話があるって言ったのに!すっぽかしたわね!」
「いや……、姫様倒れてたじゃないですか……。さっきまで寝てたんでしょう?」
「うるさいわね!不敬罪よ!黙りなさい!」
「はい……」
理不尽。
俺はいたたまれない気分になったのでロウルの肩をポンと優しく叩いた。
「……お前、苦労してるんだな」
「初見でそれを悟らせてしまって本当に申し訳ありません……」
「いや、いいんだ。強く生きろよ」
「なんか……その……、ありがとうございます……」
俺だけでもロウルには優しくしてやろう。
「そうだ、さっき窓の外に……」
「そうなのよパパ!もう空の人たち来てるわよ!」
「ひ、とが……。……」
祐奈が先程鳥類型の獣人族が来ていたことを報告しようとしたのだがレヴィアが祐奈のセリフに重ねて発言したので祐奈は尻すぼみに口をつぐんだ。
「ム、もう来ておるのか。と言うかどちらかと言うと海のが遅いんじゃないか?」
「そうですね。空の王は正規の時間に到着です。しかし、まだ準備が完全に整っているとは言えません。此方が昨日のトラブルのせいで全体的に予定が遅れていることが原因でしょう」
「私のせいって言いたいわけ?」
「まぁ……姫様のせいですし……。いでででででっ!ギブッ!ギブギブギブ!」
ロウルがセリフを言い終わる前にレヴィアの裸絞めが決まった。
ギリギリバキバキと人体からなってはいけない音が鈍く響いてくるので非常に怖い。
そしてその後、ロウルの必死のタップをガン無視してヘッドロックに移行するレヴィア。
というかタップを無視するんじゃない。
「ええいレヴィアよ!やめんか!そのようなこと後でするが良い!」
「後でもダメだろーが。止めろよ」
俺は横からツッコミを入れておく。ロウルへの同情のレベルがうなぎ登りである。
「陸王様!海王様たちがご到着なされました!」
「ム、そうか。直ぐに向かう!」
その時伝令が入った。
どうやらすでに到着している空王と今ついたという海王との対面の時間のようだ。
「では向かうとしようか……。リュートよ、ついて参れ!」
「お、おう」
と、俺たちが階下の広間に向かおうとしたらそれを呼び止める声がした。
「王よ!服装にもう少し気を使って下さい!襟が折れてます!」
「ええいうるさいヤツめ!これで満足か!」
ジャードは言われるままにちゃちゃっと直すが、まだ完全とは言えない。まだ所々乱れているところがある。
「まだヨレてます!そんな事では王の威厳が問われますぞ!王は手先が不器用なのですからメイドに任せれば良いのです!」
「全くうるさい側近だ……!もういい分かった!」
小さくボヤくとジャードはその場にどっかりと腰を下ろし、側にいたメイドに命令した。
「服装の乱れを正してくれ。ガキがうるさいのでな」
「は、はいっ!」
メイドは直ぐにジャードの服装の乱れを正し始めた。
というか、乱れ過ぎである。
ロウルも慣れているのか、ジャードの物言いに反論することはしない。この言い合いは割と日常茶飯事なのだろうということが伺える。
「リュートさん。私はどうしましょうかね」
祐奈が小声で俺に耳打ちした。
「お前も来い。アクアとリーシャは席を外してくれるか?」
「……どうして?」
少し不機嫌そうに言うアクア。
祐奈が良くて何故自分がダメなのか。と、目で訴えかけている。
しかし、俺はそれに対して冷静に受け答えた。
「子供抱えて来るつもりかお前は」
「……確かに。それはマズイ気がする……」
得心した、と言うふうにポンと手を打つアクア。
「リーシャと一緒に子守でもしてろ。直ぐ戻るさ」
「じゃあ私もアクア達と一緒に行こっと」
と、レヴィアが言いながらジンとエマの頰をつつく。
「じゃあな。行くぞ祐奈」
「あ、はい」
「……祐奈にエッチなことしたらダメだよ?」
「なぁ、俺が今から何しに行くと思ってるんだ?お前は」
「……会議でしょ?」
「会議中にエロい事なんてするかっ!」
失敬過ぎる。
大体俺が何で祐奈にエロい事せねばならんのだ。するならまずお前にするわ。
「アクアさん、心配いらないですよ。リュートさんはマジでアクアさん以外の女性に興味ないですから」
「おい黙れ。さっさと付いて来い」
祐奈が余計なことを言い出したので耳を引っ張っで俺は部屋を後にしようとした。
「あっ、ちょっ!痛い!痛いです!」
「フハハハハハハハ‼︎賑やかだな、お前達は!フハハハハハハハ!はがぁっ!」
「おい、また顎外れたのか。もう笑うのやめろよ」
このおっさんは笑うと顎が外れるらしい。何故学習しないんだ?
俺はそんなことを考えながら広間へと向かうのだった。
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広間に到着すると扉の前にルシファーがいた。
「お前こんなところにいたのか。何してたんだ?」
「空王様と少しお話を……。一応昔からの知り合いですので。無断で席を外してしまい、申し訳ありません」
本気で申し訳なさそうな表情を作るルシファー。
特段責める気など起きず、俺はさっさとその話題を打ち切った。
「いや、気にすんなよ。それより海王は知り合いじゃないのか?」
「はい。先代海王は既に御逝去されておりますので」
「へぇ、いつの事だ?それ」
「ごく最近と聞き及んでおりますが……」
「ふぅん……」
そして、その時、広間の扉が開いた。
「リュートよ、気後れするでないぞ。王はどいつも曲者揃いだが、お前も割と曲者だからな!」
「それ褒めてないよな」
そして、そこには思いがけないことに知り合いがいた。
「あ〜、リュートくんだ〜。それにユウナちゃんも〜。久し振りだね〜」
「いることは知っていましたが会議にまで顔を出すとは……陸王の信頼をうまく勝ち取っているようですね」
「え……」
「う、嘘……」
俺と祐奈は揃って絶句した。
知り合いがいると言う時点でかなり異常な事態ではあるのだが、その知り合いがいる可能性を全く視野に入れていなかったのだ。驚きもするだろう。
「カ、カイリ……。マイル……?」
「あ、覚えててくれたんだ〜。嬉しいな〜」
「ふっ、忘れていたら怒るところでしたよ全く。お久しぶりですねリュートさん。祐奈さん」
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「さて、申し遅れました。現海王のカイリ・オルガと申します。以後お見知り置きを」
「王の御付きのマイルです〜。どうぞよろしくお願いします〜」
まさか二人が王になっているとは思いもしなかった。
「お前ら、王族だったのかよ……⁉︎」
「そうだよ〜。私達も知らなかったんだけどお爺ちゃんが前の王様だって話でね〜」
「まぁ、紆余曲折あって私が王となりました。本当は私の王位継承権は最低レベルどころか無いに等しかったのですが……。まぁ、色々ありまして……」
少し肩身の狭そうな表情のカイリ。
マイルは双子の妹のはずなのに御付きをしていると言うのも何か引っかかりを感じてしまう。
そして、二人の自己紹介が終わったところでずっと沈黙を守っていた空王が口を開いた。
「現空王のヴィシャス・ガレオンである。見ての通り鷹の獣人族である。新しい海王と魔王よ。よしなに頼む」
「御付きのドーリスです」
ヴィシャスは白い体毛の鷹の獣人族でかなり大柄な男だ。
ドーリスは無表情で考えが読めない。この二人はなんだか近寄りがたいオーラを発している気がする。
猛禽類特有の鋭い視点に少し気後れしながらも俺も自己紹介しておく。
「魔王のリュート・エステリオです。よろしくお願いします」
気の利いた言葉が見つからなかったので短く自己紹介を終了する。
「えーと、勇者の佐藤祐奈です。え、祐奈・佐藤?どっちがいいんでしょうか」
「どっちでも良いっての」
「えーと、まぁ、よろしくお願いします!」
体育会系よろしく大きな声でガバッと頭を下げて挨拶する祐奈。
考えながら喋るのやめたほうがいいな。バカに見える。
「御付きのルシファーです。宜しくお願い致します」
ルシファーが自己紹介を終えたところで全員の視線が陸王へと向かった。
「フム、空王が何故余にお見知り置かなかったのか甚だ疑問だがまぁ良いわ……。余が現陸王!ジャード・シャルリアである!全ての獣人族よ!余にひれ伏せ!」
何言ってんだこのバカは。
今ここで言うセリフでは全く無い。セリフに思慮がないとか以前にバカまっしぐらだ。
と、どうやら俺の思考に賛同する人がいたようで。
ヴィシャスが言った。
「このバカはまた世迷言を抜かしているのである。聞かなかったことにするのが良いのである」
「何ぃ⁉︎このクソ鳥め!貴様今度は八つ裂きにして焼き鳥にしてやろうか!」
「頭の弱い猫には我の言葉が理解できなかったと見えるのである。と言うわけで端的に、そして簡単に我の考えを述べるのである。バカは黙っていろ」
「良かろう……、ならば戦争だ」
「良い度胸なのである。我も戦の準備はとうに完了しているのである。今日の夕餉は猫鍋である」
コイツら……。ぶっ殺すのはまぁいいとして。いや、良くないが。まぁ100歩譲るとして、何故食うことが前提なのだ?
お互いがお互いを方や焼き鳥に、方や猫鍋にしようとしている。
「おい、カイリ。こいつらいつもこんなんなのか?」
俺が小さく耳打ちする。しかし、乖離からの返答はあまり参考にならないものだった。
「いえ、私達もお二人とは初めてお会いするので何とも……」
「だね〜。仲良くすれば良いのに〜」
「仲悪いって良いことないですよねー」
「だな」
俺たちの会話を聞いてか、ルシファーが言った。
「お二人は大昔からのライバルでございます。何かあればすぐに喧嘩をしておりました。ちなみにこの二人を完全に御していたのが前海王でございます」
「マジかよ……」
「お爺ちゃんって凄かったんだね〜」
「見てください。ドンパチ始まってますよ」
二人がこの場を会議の場であると言うことを忘れてなのか、戦闘を開始してしまった。
「うわっ、空王のおっさん速ぇぇ……」
「何ですか陸王様は。攻撃効いてないんですか?」
「空王様が消えたんだけど〜」
「ジャードさんも消えましたよ」
「お二人共おやめに……、って聞くようなお人ではないか……」
俺たちは思い思いに感想をこぼした。
俺はひっそりと思った。こんなのが王様で大丈夫なのか?獣人族は、と。
「あのー、俺がまだ自己紹介してないんですけどー」
悲哀に満ちたロウルの声が聞こえたのは多分俺だけだと思う。




