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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十章 獣人界編 其の二
152/220

対面


ぐぎゅるぅぅぅぅ〜。


同時にアクアとレヴィアの腹の虫が飯を要求し始めた。

やはりこの二人は気があうのだろう。しかし、腹の虫まで気が合うとは……。こんなところまで相性がいい必要は全く無い。

リーシャはやれやれと首を振りながら嘆息した。


「そ、そろそろご飯の時間ね!さ、行きましょ!」

「……うん」


照れを隠すようにレヴィアが音頭をとる。アクアも少し頬を染めている。

リーシャは笑いを噛み殺しながら二人について行こうとした。


しかし、次の瞬間には飯を食いに行く、なんて言って居られる状況ではなくなってしまった。


ドサリ、と。


突然目の前でレヴィアが地面に倒れ伏したのだ。


「レ、レヴィアっ⁉︎」

「……どうしたの……⁉︎」

「う……」

「まって、すぐに診る」


リーシャは一瞬気が動転したが、すぐに持ち直して冷静に対処しようとした。

この現状を招いた原因は簡単に推測できる。

大方昨日の出来事を引きずっているのだろう。本人はもう大丈夫だと主張して居たが、やはり一朝一夕に治るような状態では無かったのだ。


だが、リーシャが診察したところ特に異常な点は見つからなかった。

どうやら熱がぶり返しただけのようだ。この様子ならとくに問題は無いだろう。寝ていれば治る程度だ。


しかし、それでもとリーシャは独りごちた。


「熱が出てるわね……。それに体力もすっかり落ちてる……。なんでさっきまで元気そうにしてたのか分からないわ……」

「……家に帰ってきて、気が抜けた……とか?」


アクアも無事だと分かったからか、先程の動転した様子は鳴りを潜め、普段のボンヤリとした態度に戻って居た。


「かもね。多分一晩寝れば治るわ。多分だけど。一応私はこの子につきっきりになるから、子供達のことお願いね」

「……ん、りょーかい」


そう言ってアクアは三人の子供を器用に抱き抱えた。

三人とも泣いたりせずにずっとお利口にしてはいるが、きっとお腹が空いていることだろう。


「レヴィアの寝室はどこだろ……。寝かせてくるわ。あ、王様には言っといてくれる?」

「……うん、分かった。後で交代する」

「ん、ありがと。じゃ、後でね」

「……うん」


そう言ってリーシャはレヴィアをおぶってさっさと廊下を歩いて言ってしまった。まるで目的地が分かっているかのようだ。


「……じゃ、行こっか。お腹すいたでしょ?」

「まぁま、ごはんー」「まぁまー」


双子らしく同時に喋るジンとエマ。

この歳からキャラ作りしなくても……。と突っ込む人はその場にいなかった。


「……はいはい。アルバもお腹空いた?」


そう聞くとアルバはコクリと頷いた。

言語を話すにはまだ早いが既に言葉を理解しているようだ。

子供というのはこんなにも覚えが早いものだったのかと感心するアクアだった。


「アクア様。ここにおられましたか。お食事の用意ができてございます」

「……すぐ行く」


どうやらちょうど食事の用意が整ったらしく、メイドがアクアを呼びにやって来た。

お腹が空いていたのでアクアは小さく返事をし、メイドについて行くのだった。


「リーシャ様とレヴィア様はどちらに?」

「……レヴィアの体調が悪くなったからリーシャが付き添って部屋に行った。王様にも行っておいて?」

「なっ……⁉︎」


ものすごく焦った様子でメイドが血相変えて近くにいた他のメイドにに連絡をした。

そのメイドはすぐに表情を元に戻してアクアの引率に戻る。


「行っても良かったのに」

「いいえ、そう言うわけには参りません。お客人の前で粗相は許されませんので」

「……そう」


アクアはリーシャが付いているので別にレヴィアの心配はしていなかった。

仲間内で一番腕のいい魔法使いなのでリーシャに対する信頼度はかなり高いのだ。リーシャにはそれだけの実績がある。


その時、遠くの方から「レヴィアァァァァァァァ‼︎」という大声が轟いて来た。どうやら無事に王様に連絡が入ったらしい。

相当焦った様子でドスドスと床を踏みしめる音が聞こえる。王様がテンパって城を猛ダッシュしているらしい。

アクアは嘆息しながらも聞かなかったことにした。



---リュートside---



「んで、お前らが飯食い終わったところで俺がここにきたってわけか」

「……そう」


しかし、運が良いな。またローグの関与を疑うレベルなんだが……。まさかそんな事ないよな……?

だが、疑っておくに越したことはないだろう。まぁ疑ったからと言って何になるんだと言う話なのだが。


「早くジルとメイを探してあげないと……」


祐奈が眠っているアルバの額を撫でながら呟いた。


「そうだな……」


ジンとエマはアクアがいたから良い。だが、アルバはこんな歳で両親と一時とはいえ離れ離れになってしまっているのだ。

それでもアクアの話では泣いたりせずに大人しくしていたらしい。

確かにアクアは知り合いだから見ず知らずの他人に比べれば安心感あるだろうが、親に勝るものではない。なのに良く泣かずに大人しく出来るもんだ。


「あ、そうだ。そのレヴィアって子のところに行かないか?リーシャも居るんだろ?」

「……あ、忘れてた。リーシャはまだご飯食べてない。交代するって言ってたのに……」

「おい」


これ『天然』で片付けちゃダメな問題じゃないか?


---


このバカみたいにでかい城の最上階にある大量の部屋の中の一室がレヴィアの自室だそうだ。

先ず正確に場所を聞いても一筋縄には到着することができない。広い上にどこの扉も同じに見えるのだ。

俺は王族ではあるが育ちが完全に庶民と同じな上に前世では完全に庶民だったので感覚は庶民的だ。

だがらこんなに部屋を作る必要性もこんなに城をデカくする必要性もわからないし、そもそもなんで自室を最上階にするのかも理解出来ないのだが。

利便性を追求して一階や二階に自室は作るべきだと思う。あと階段の上り下りが面倒なので最高でも3階建てにしたいと思うのだが。


とまぁ何が言いたいかと言うと。


広過ぎる。しんどい。


「はぁ……、ここか?」

「……多分……。ここだけ扉が少し豪華」

「一番豪華な扉が目印って言ってましたし、ここじゃないですかね……」

「……じゃあ多分ここだな」


すでに何度もやっているドアノブをひねる動作を嘆息しながら実行。もちろん事前のノックも忘れない。

俺がトントンとノックをしたら中から「はいはいー?」とリーシャの声が聞こえてきた。

良かった。正解の扉だ。


まるで謎解きゲーをしている気分になっていたが、ようやっとここにきてリーシャと再会だ。


「よっ、リーシャ」

「お久しぶりです、リーシャさん」

「リュ、リュート!⁉︎祐奈⁉︎な、何でここに⁉︎」

「まぁ色々あってな。

その後でアギレラ達が俺たちのいた妖精界まで飛んで来たんだ。

で、事情を聞いてすぐにこっちに来たってわけだ」


俺は簡潔に事情を説明した。簡潔にしすぎて三行で説明が終わった。

俺たちの苦労を「色々あってな」で終わらせてしまった。言ったあと激しく後悔し、詳しく語りたい衝動に駆られたがやめておく。


「へ、へぇ……。それは私達にとって不幸中の幸いだったわね……」

「だな」


この知らせを聞かなかったら俺はこんなにも迅速に動くことはできなかっただろう。その点はフェリアとカレンのお手柄だな。


「で、その子が?」

「うん、この子がレヴィア。で、かなり可愛い顔してない?」

「綺麗ですねー。なんだか『王女様』って感じです」


レヴィアはかなり整った顔立ちをしている。見た目だけはおしとやかな淑女だ。見た目だけは。


「まぁ……可愛らしい顔してるな。それよりリーシャ。お前は無事なんだろうな?怪我とかないか?」

「アンタ……ホンットにアクア以外に興味ないのね……。側室とか……作る気ないか」

「は?何言ってんだ。当たり前だろ」


リーシャはたまに訳の分からんことを言うな。俺は嫁一筋だと何度言ったら分かるんだ。


「……お腹空いた……」


その時、ぱちりと目を開けたレヴィアが一言言い放った。

その時点でこの女の子に対する俺のイメージが凝り固まってしまう。

第一印象って大事。第一声って大事。


「……下にご飯あるよ」

「あっ、アクア!あれ……ここって……」

「ここはあんたの部屋でしょ?倒れたから運んだのよ」

「あっ……あ、成る程。どうもありがとう!で、そっちの人は?」


レヴィアが俺の方に視線をやりながらリーシャに問いかけた。


言葉遣い的に見た目通りのお姫様ではない事はわかっていたのだが、森で倒れていたり野生のウサギを捕獲してその場で焼いたりというエピソードを聞くに祐奈と似たタイプの女の子なきがする。


「この人はリュート・エステリオ。魔王でアクアの夫よ」

「えっ⁉︎ア、アクアって結婚してたの⁉︎」

「アクアが抱いてるこの子達をなんだと思ってたのよ……」

「さ、三人も……、そ、その歳で……?す、凄い……」


物凄い懐疑の視線を俺に向けてくるレヴィア。

レヴィアの目線から見ると俺は自分と同い年くらいの女の子に三人も子供を孕ませた鬼畜野郎である。

って、ちょっと待てや。違う。


「……こっちのアルバは預かってる子。で、こっちのジンとエマは双子」

「あ、そうなんだ。へ、へー、そうなんだー。そか……別々じゃなくて双子か……」

「動揺が滲み出てるわよ。落ち着きなさい、レヴィア」

「う、うえっ?お、おちつているわよっ?」

「舌噛んでる舌噛んでる」


どうやら誤解は解けたようだ。

この世界の結婚適齢期は前世に比べるとかなり若いのだ。アクアやレヴィアの年齢で子供がいてもなんらおかしい事はない。

しかし、三人も子供がいるのは流石に多いというものだ。


その時、窓の外に多くの飛行する人影が横切った。


「何だ今の……?」


俺の何気ない言葉に応えたのはレヴィアだった。


「あぁ、今日は三王会議なの。最近獣人界の隅っこの方で変な奴が暴れたらしくてね。あと、お隣の竜人界でも異変があったらしいからその辺の対策の為に今日は三人の王様が集まるの」


なるほどな……。ルシファーの言っていた会議ってのはこれの事か……。

つまり今窓の外を横切って言ったのは鳥類型の獣人族という事だ。

鳥類型の獣人族にあまり良い思い出はないが、全てが全て俺の敵な訳がないしそこまで身構える必要もないだろう。

寧ろコレは三人の王と会えるまたとない機会なのだ。


すると、レヴィアはもうすっかり良くなったのかベッドから立ち上がった。


「行きましょ!他の王様にも紹介して上げる!」

「お、おぅ」


俺は引きずられるようにしてレヴィアの部屋を後にし、王の集う場所へと向かうのだった。


「なぁ、そう言えば……。ルシファーの奴、どこ行ったんだ?」

「あれ……。そういえば……」


あの天使は一体どこへ行ったのだろうか?

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