表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十章 獣人界編 其の二
148/220

陸の王 ジャード・シャルリア


俺たちはザインに聞いて獣人族の王都までの空路を翼竜種(ワイバーン)に乗って飛行していた。


「ルシファー。陸の王ってなんだ?」

「獣人族の王の1人です。獣人族は様々な種族が混成する種族。少し見た目が違うだけでいがみ合いを起こすほどに好戦的な種族でもあります。その為、複数の王が民を統率しているのです」


犬耳と猫耳で喧嘩するってことか?

外見的特徴の差異が原因でいがみ合いが起こるってのはどこの世界でも同じなんだな。

純粋な獣人族はアギレラしか知り合いがいないからなぁ。あいつは多分穏やかな方なんだろう。

カレンも優しい両親に育てられたせいかかなり素直な性格で可愛い。


しかし、複数の王か……。


「ってことは王様が2人いるってことか?」

「いいえ、3人です」

「えっ、3人も居るんですか⁉︎多くない?」


祐奈が翼竜種(ワイバーン)から少し身を乗り出して質問した。

祐奈の事だから落ちても死にはしないだろうけど危なっかしくて心臓に悪いからやめて欲しい。


「はい。陸の種族を束ねる陸の王、そして空の王と海の王の3人の王が獣人界を統治しています。我々が今向かって居る場所はリマ・シャルリア。陸の種族の王都です」

「へぇ……。じゃあさ、ルシファーは陸の王に会ったことあるのか?」

「はい。バゼル様の外交の際に数回程度ですが……。一応全ての王に面識があります。ですが……先代の海の王は御逝去されてしまった様でして……。現在は私の預かり知らぬところでございます。なにぶん天界に幽閉されていた間の出来事ですので……」


忘れがちだが親父が死んでから俺が13歳になるまでの間ずっとルシファーは天界に閉じ込められていたんだったな。


「ルシファーさんは顔広いですねー。私たち大助かりですね!リュートさん」

「だな。本当に助かる。ルシファーには」

「いえ、そんな……恐縮です……」


ルシファーにとっては俺なんてガキ以下の年齢なのに敬語と謙虚な態度を一切崩さない。良くやるなぁ……俺には真似できないな。


その時、少し遠くの空に高速飛行する人影がいくつも目に飛び込んで来た。


「な、なんだあれ?」

「鳥……?人……?」


俺と祐奈が揃って首をかしげる。


「アレは獣人族の空の種族ですね。鳥類型の獣人族です。しかしここは既に陸の種族の領域のハズ……。まさか、今日が王会議なのでしょうか?」

「なんだそれ?」


俺を耳慣れない単語をルシファーに問い掛けた。


「王会議とは獣人族の3人の王が集まっての会談です。数年に一度行われるのですが、獣人界に何か大きな異変が起こるとそれに合わせて緊急で会合が開かれます」

「今日は……緊急っぽいな」


最近起こった出来事を加味すると緊急だと考えるのが自然だ。


「はい。ここ最近は何かと大きな出来事が起こっています。竜人界のハデスによる事件や、最近ではカイル村の機械人形襲撃事件など……。獣人族にとっては懸案事項は多いでしょう……」


竜人界は獣人界の隣に位置する。

そこで大きな事件があったら獣人族も他人事ではないだろう。


「ってことは、三人の王が一堂に会するって事か……」

「種族間の抗争の絶えない種族ですから……何かと問題は起こるでしょうね……」

「それって大丈夫なんです?」


どう考えても大丈夫じゃない。

ま、王様がいるんだしなんとかなるだろう。

妖精王並みの化け物揃いなんだろ?どうせ。


「どの道三人の王は会うんだし手間が省けてよかったじゃないですか!やりましたね!」

「それもそうか。……そうか?」

「事前にアポイントメントを取っていないのが問題といえば問題ですが……。まぁなんとかなるでしょう」


そうこうしているうちにリマ・シャルリアに到着した。

ここには関所の様なものが設置されており、許可無く国に侵入したものは殺されてしまうらしい。


ルシファーが門番らしき豹の獣人に話しかけた。


「我々はエステリオ魔公国のものです。陸の王に謁見を求めたい」

「……もしや、リュート・エステリオ殿ですか?お待ちしておりました。此方へどうぞ」

「へ?」


何やらトントン拍子に話が進んでいく。

話が読めない。一体何がどうなっているんだ?

もう少し一悶着あるかと思っていたのだが……。拍子抜けだったな……。


俺とルシファーは門兵についていきながら小声でヒソヒソと話し合う。


「魔王様、一体何が起こっているのでしょう……」

「分かんねえよ」


しかしでかい城だ……。

ミストレア城に負けずとも劣らない。

内部の装飾なども絢爛豪華で魔王城を思い出す。

アレからもう6年以上が経つが、あの頃の記憶は何1つ色褪せていない。昨日のことの様に思い出すことができる。

もしかすると頭の中で過去を美化しているだけなのかもしれないけど。


その時、俺たちの引率をしていた門兵が大きな扉の前で立ち止まった。


「リュート・エステリオ様。此方へ」

「お、おぅ」


門がギギギと鈍い音を立てて開く。


「……リュート……!」


俺を呼ぶ声と共に胸に柔らかく、暖かい感触が。


「ア、アクア……?」


そう、アクアだったのだ。

別れた時と同じ服装で背後に見える小さなベッドに子供が三人眠っている。

どうやらアルバとジンとエマのようだ。


「リュート……!無事でよかった……!」

「アクア……お前、何でこんなところに……」

「フェリアの魔法でここの近くに飛ばされてて……」


アクアがそこまで言ったところで背後の扉から1人の大柄な男が入ってきた。


「そこからは、余が話そう……!」

「だ、誰だ……?」

「フフフ……、余の名を聞くか……。良かろう、無知なる其方に教えよう。されば傾聴せよ!この余の名を!余こそが、この国の王である!ジャード・シャルリアである!フフフ……フハハハハ!よく来たな魔王よ!歓迎すろっ!す、するぞ!」

「噛んだ……」


見た所ライオンの獣人族だ。

大きなタテガミに鋭い牙と爪、そして爛々と輝く瞳。まさに百獣の王者の風格を備えていた。

噛まなければ完璧だったのに。


ジャードは先ほど自分が噛んだ事を無かったことにしたかのように話を続けた。


「フフフ……。アクアは余の国の内部に無断で侵入したのだ。許されることでは無い。しかしな……、世の娘の命を救ったのもまた事実!ならば許すしかあるまい!そう!余は寛大であり、感謝の心を忘れん男だからだ!フハハハハ!フハハハハ!はがっ!」


今度は笑いすぎて顎の関節が外れたらしい。締まらないな。

ゴキリと音を立てながら無理やり顎の関節を元に戻すジャード。


今完全にわかった。この男。バカだ。


「……私は侵入したんじゃ無い。気がついたら居たって何度も言ってる。なのに信じない。バカ。アホ……」


どうやらアクアさんは子供たちの命が一時危険にさらされたのを根に持っているらしい。

その気持ち、非常によくわかる。


「リーシャはいないのか?」

「……ううん、いるよ。……リーシャはジャードの娘のレヴィアの面倒を見てる。まだ全快じゃ無いから……」


成る程な。レヴィアという女の子の命を助けたからこの国で一定の立ち位置を手に入れることができたわけか。アクアもなかなかいい(モノ)を持ってる。


「それと……、ジャード。お腹減った……。ご飯」


アクアが半眼で飯を要求した。

一応国の恩人扱いだからか待遇はいいらしいので大体のワガママは通るとのことだ。


「何ぃ⁉︎お主先程食したでは無いか!まだ食うのか!しかしその食べっぷり、実に良い!たんと食すが良い!料理人よ!料理を持って参れ!もののついでだ、余も食事にするとしよう!フハハハハ!」


高笑いしながらジャードは部屋から出て言った。どうやら誰かに料理を言いつけに言ったらしい。

遠くの方から「はがぁっ!」という声が聞こえて来た。また顎が外れたのか。


「何なんだあのテンションは……。ついていけねえ……」


俺は嘆息しながら部屋のベッドに寝ている子供達の隣に座り込んだ。

三人とも気持ちよさそうに寝息を立てている。


「お父さんだぞー。ふふ……可愛い顔しやがって……」


俺は起こさないように声を掛けては顔を綻ばせた。

目に入れても痛くないね。

アルバも無事でよかった。この子も責任持って親の元へと送り届けねばならないが……いかんせんその両親の所在が不明だ。

どうやらここにはリーシャとアクアと子供達しか居ないらしい。


「……リュート。無事でよかった……。一応私たちはフェリアのお陰で大丈夫だったけど……」

「ああ、フェリアたちから一応の話は聞いた。フェリアは俺たちの居た妖精界に転移して来たんだ」

「……そうなの……?」


アクアは驚いたように両の瞳を見開いた。

青く煌めく双眸にくっきりと俺の顔が写っている。


「私達が一件落着と思って居たら後ろにパッとあ突然現れたんです」

「フェリアとアギレラとカレンがな……。一応治療はしたが、アギレラの怪我が深刻でな……」

「……死なないよね……?」


アクアは心配そうに上目遣いで問い掛ける。


「ルーナとルーナの姉貴に治療を頼んでこっちに来た。だから、大丈夫」


俺はまるで自分に言い聞かせるかのように「大丈夫」と繰り返した。

あれほどの大怪我だ。俺の様な超再生能力がなければ普通は助からない。だから賭けるしかないのだ。アギレラのタフネスに。


「大丈夫ですよ!ルーナ達は凄く魔法が得意だし、アギレラさんは丈夫だし!だから、大丈夫!」

「ああ……」


祐奈の言葉に俺は不安を振り払うように首を振り、再度アクアに別の質問を投げかけた。


「ジルやメイは……居ないんだよな……」

「……居ない。私達は転移するときも少し離れた場所にいたし……。ごめんなさい……」

「いや、謝らなくていいんだ。ジルとメイなら心配いらないだろうしな……。そのうちケロっとした顔して帰ってくるさ……」


ジルはカレンの話では怪我しては居なかったらしいし、メイも成人した獣人族なのだ。あの2人ならそうそう殺されるなんてこともあるまい。


「お前が転移した後のことを話してくれないか?何があったんだ?」

「……うん、分かった」


そう言ってアクアはポツポツと話し始めた。


転移した後の事を。

ジャードさんがここ最近の登場人物で一番好き

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ