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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十章 獣人界編 其の二
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ザインの屋敷


紆余曲折あって俺はザインに誘われてお茶する事に。

まぁ俺としてはお茶するつもりなんて全くないのだが、いかんせんアクア達を探す手立てがない。その為、取り敢えず話を知ってそうなやつについて行ってみることに。


この男、見るからに怪しいというか胡散臭いがルシファーと祐奈もいるし戦闘になっても特に問題はないだろう。


「よし、到着っ」


そう言うと、ザインは羽をしまってその場から地上へと急降下した。

俺たちも急いでそれに続く。


ギュオオオオッ!と風を切りながら翼竜種(ワイバーン)は前傾姿勢で地面に肉薄する。

やはり空の生き物だ。地面にぶつからずにちゃんと着地ができた。


「うおぅ、意外と怖いな……」

「リュートさん。戦闘ではもっと高いところから落下してるのにこれは苦手なんですね……」

「いや、戦ってる時は頭ん中興奮してるから大丈夫なんだよ……」


俺は後頭部をガリガリと掻きながら嘆息した。

俺は昔から絶叫系のアトラクションが超が3個つくほど苦手なのだ。高いところが苦手なのではない。あの落ちる瞬間の浮遊感がたまらなく怖いのだ。

この世界に生まれてから肝っ玉だけは前より太くなったので何とか平気なフリが出来ている。


「お前はジェットコースターとか好きだったのか?」

「はい?あぁ、私は大好きでしたよ!あの落ちる瞬間の浮遊感がたまらなく大好きなんです!」

「そうか」


思いっきり気が合わなかった。

と言うより真逆だった。


「魔王様。先程から話されている『じぇっとこぉすたぁ』とは如何様な魔法で?」

「なんで平仮名発音なんだ……?まぁいいか。ジェットコースターってのは魔法じゃなくて乗り物で、滅茶苦茶速いんだ。人がそれに乗って楽しむためのモノだな」

「乗り物に乗って楽しむ……、成る程。散歩の様なものですか」

「違う」


断じて散歩ではない。あんなに恐怖に彩られた散歩があってなるものか。


「しかし、馬に乗って遠出する様なものでは?」

「それとは違う。あれは異常な速さによって生まれるスリルを楽しむものだ」

「はぁ……?」


ルシファーさんは訳がわからないご様子。

それも仕方がない。実物を見なければ分かるはずもない。


「ジェットコースターなんてものはないけど、ウチの屋敷にはスリルを楽しむ為のスピードワイバーンってのがあるよ?」

「なんだそれ」

「高空まで翼竜種(ワイバーン)に乗って行ってそこから急降下して貰うんだ。君達の翼竜種(ワイバーン)がさっきやってただろ?」

「あれアトラクションだったのか……」


相当上手く調教されているらしい。


「さて、ここが俺のお屋敷さ。遠慮なく入って入って」


そう言ってザインは俺の背中をどんどん押して中へと誘った。


「お、おぅ……。で、ジルの話なんだが……」

「あ、ステラ‼︎お客さんだからお茶を頼む!」

「承知致しました。旦那様」


ザインはすぐそばに居たステラと言うメイドにお茶の用意を言いつけた。

ステラは恭しく一礼し、すぐに踵を返す。


「ここって……、お前の家か?」

「うん、ここの家主は俺だよ。一応結婚して独り立ちしたんだ。どうせ俺は三男で王位継承権は低いからね」


そこまで言った時、前方から1人の女の子が駆けてきた。

年の頃は10歳程度だろうか。可愛らしいが竜人族特有の鋭い目つきをした勝気そうな女の子だった。

ザインとは違って金髪をツインテールにしている。


「パパー!おかえり!」

「おぉ、ノエル!ただいまー!」


一瞬で表情を綻ばせたザインはノエルを抱き上げてその場でクルクルと回り出した。


「きゃはははは!もっともっと〜!」

「あ、ノエル。ちょっとタンマタンマ。お客さんが来てるんだよ」

「お客さん?こいつら?」

「コラ、こいつらなんて言わない!」

「ご、ごめんなさい……」


ザインに怒られると素直に頭を下げるノエル。

どうやらこの甘々親父は一応怒る時は怒ることが出来るらしい。親バカなだけでバカ親ではなかったのでその点は良かった。

そういや俺は自分の子供達に怒ったことは一度もないな……。あんまりあの子達と関わってないし、そもそも俺が怒る様な年齢でもないし……。言ってて悲しくなって来た。


「あなた、おかえり。遅かったわね」


奥の方から1人の女性が歩いて来た。

綺麗な金髪の竜人族の女性だ。

上品そうな顔立ちで上品なドレスに身を包み上品に歩いてくる。何もかも上品だ。俺と身分が同じにはとても見えないな。


「あぁ、『探知魔法(サーチ)』でジル達を探して見たんだがどこにも居なかった。でも諦めきれなくてね……」

「そう……、お疲れ様。今日はゆっくり休んで。それで、そちらの方々は?」

「あ、すまない。紹介が遅れたね。この人は俺の妻のベラだ。ベラ、この方々はジルの友人のリュート、ユーナ、ルシファーだ」

「ども」

「こんにちは」

「どうぞ以後お見知り置きを」


俺たちは短めに挨拶する。


「夫は胡散臭いでしょう?こういう人間なの。仲良くしてあげてくださいな」

「あ、はい」


やっぱり誰から見ても胡散臭いんだな。俺が間違ってるのかと思ったがそうでもないらしい。


「旦那様。お茶の用意ができました。応接室へどうぞ」

「あぁ、ありがとう。じゃ、行こうか」

「パパー!私も行くー!」

「こーら、ノエルはお母さんとこっちに来なさい」


ノエルがザインについて行こうとしたらすぐさまベラがノエルを抱き上げる。


「やーだー!やーだー!」


ベラの腕の中でバタバタと暴れるノエルにベラはこっそり何かを耳打ちした。


「うっ、わ、わかった……」


え、何言ったんだ?何を言ったらあのうるさかったノエルが一瞬で静かになるんだ?物凄く気になるんだが。


「それじゃ、ゆっくりして言ってくださいね?」

「あ、どうも」


俺は少し恐縮して小さく返事をし、ベラとノエルの後ろ姿を見送った。


「綺麗な人でしたねー、リュートさんも目移りしちゃいました?」

「する訳ねぇだろバカ」


俺の嫁の方が可愛いわ。

アクアは世界で一番可愛い。目移りなどするはずもない。


「そ、即答ですか……。ま、そりゃそうですよね。アクアさんめっちゃ美人ですし」

「だろ?」

「なんだ、リュートくんも結婚してるのか。子供はいるのかい?」

「あぁ、双子だ」

「そうか……ウチはベラの体調がイマイチ良くないから2人目は無理かなぁ……。ノエルは弟が欲しいっていうんだが……」


重い話きた。

ベラは体調が悪いのか……。俺の母さんは俺を生んだせいで衰弱して死んだから人ごととは思えねえな。


「でも双子は凄いね。双子ってのはなかなか神聖なんだよ?大体両方か、どちらか片方がすごい力を持って生まれることが多いんだ……」


凄い力……。

思い当たる節がないことはない。


ジンだ。


あの子は常識的に考えて存在がぶっ飛んでいる。

まず生まれてすぐに魔力回復障害が発症しているにもかかわらず『魂喰(ソウルイーター)』を発現させて死亡を回避している。

カレンの話では敵の襲撃をいち早く察知して居たらしい。

そして、エマよりもはるかに流暢に喋る。

時々見せる知性を覗かせる瞳。赤ん坊の探究心を感じさせない怠惰さ。


何度も思ったことがある。


もしかしてジンは……俺と同じ転生者なんじゃないだろうか?


地球で生まれ、地球で死に、そしてこの世界にやってきた。そういう人間なんじゃないだろうか?


だが、今はそれを確かめる術はない。


「そんなこと関係あるか。あの子は俺の子だ」


俺はそう呟いた。


「ん?何か言ったかい?」

「いや、何もないさ。双子が凄いってのは初耳だな。もしかしたらジンとエマは天才なのかもな!」


親バカ発言で誤魔化しておく。俺が今考えるべきは家族の安否であって転生者云々の話ではない。


ザインは椅子に深く腰掛け、居住まいを正した。

俺たちは手持ち無沙汰になったので茶を軽く啜った。


「それで君たちをここに呼んだのは他でもない、ジル達の事だ」

「あぁ、で、何か知ってるのか?」


正直大した情報は見込めないだろう。あれから何がわかるというのだ。ただむらがはかあされていただけだ。


俺の目的は情報というよりはこの男との協力関係だ。

竜人族の王族ならいいコネになる。ここで手を組んで置くことは俺たちの今後にもいいプラスになてくれるはずだ。


「俺が到着した時は村はすでに無残な姿になっていた。で、物は相談なのだが、君たちにはジル達を探すのを手伝ってもらいたいんだ」

「!」


まさか向こうから持ちかけてくるとは思っていなかった。

俺としてはこの話をさっさと切り出したかったのだが、これなら願っても無い話だ。


「そりゃ願っても無いが……。いいのか?」

「なら良かった。君の家族も行方が分からないんだろう?俺にとってジル一家は家族同然だからね。一刻も早く探し出したいんだ」


成る程。

話し方とか見た目とかで胡散臭いと決めてかかっていたが、どうやら良い奴のようだ。


俺は少し隣を見てみた。

ルシファーは不動の姿勢を崩さない。

祐奈に至ってはすでに話を聞いていないのか紅茶の中に目を落としてボーッとしている。

ルシファーは一応きちんと話を聞いてはいるが口は出さない。祐奈にツッコミも入れない。


「竜人界のことなら父に頼めばなんとかなるだろう。問題は国外にジル達がいた場合だが……」


ザインが王族だということはザインの父親は現在国王なのか。

それなら御触れでも出して仕舞えば国内を虱潰しに探すことも可能だろう。

だが、王の威光が届くのは国内だけだ。流石に国外までは届かない。

そこで俺たちってことか?


「なら、俺たちが近場なら探してみる。妖精王にはコネがあるから妖精界は頼めるし、魔界は俺が自分で探す」

「良し、良いね。ところで人間界は……」

「あぁ……、あそこばっかりはキツイな……。彼奴らは人間じゃない種族を嫌ってやがるから……」


ここにきて問題となるのが種族差別だ。

人族は一部の集団ではあるが、種族単位で多種族を嫌っているのだ。

人族以外の種族を許容できないという者も多いと聞く。


「わ、私が一応人族ですから!な、なんとか橋渡しをしてみせます!それでもダメなら……王女様が友達なのでその子に頼めますし!」

「お前以外と顔広いよな。妖精王とも知り合いだったし……」

「これでも勇者ですから」


今後の方針は決まったようだが、まだ問題はある。


「今から俺たちが人間界に行くのか?俺は魔族だから無理だぞ」

「だなぁ……、リュートくんは魔族だから流石に人間界にはいけないね。代わりに俺が行くか……」


ザインがゆっくりと椅子から立ち上がりながら言った。


「おい、良いのかよ?あんたは家族が……」

「弟のためだ。ま、彼奴のことだから死んではいないだろうけど、それでもバカな弟だからね。兄貴は心配なんだ」


ザインの気持ちは分からなくもない。俺にも前世では1人だけ弟がいた。

そういえば俺が死ぬ何年か前から一言も喋っていなかったな……。彼奴は元気にやってるだろうか……。


「じゃあ俺たちは獣人界に向かう。どのみち王様とは会わなきゃいけなかったんだし、獣人界の王と話をしてくる」


俺も腰を上げた。

人間界には行けないのだから俺が獣人界に行くしかあるまい。


「よし、頼んだ。一応音信魔法(コール)の魔力を交換しておこう」

「おぅ。何かあったらすぐに連絡してくれ。俺たちはもう出発する。時間が惜しいしな」

「了解。じゃあ頼んだ。俺もすぐに出発するよ」


そう言いながらザインは屋敷の外まで見送ってくれた。

ベラやノエル、ステラも一緒だ。


「じゃーねー!また来てねー!」

「またいらして下さいね。今度は夕食を食べて言って下さい」


ノエル、ベラと挨拶を交わす。

その時、ザインが俺に駆け寄って来て小さく耳打ちした。


「あ、獣王はまず陸の王に会いに行くんだよ?」

「は?陸?」


なんのことだか全く分からなかったので後でルシファーに聞いてみよう。


なんかちょっと短めになってしまいました

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