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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十章 獣人界編 其の二
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獣人界への飛翔


「さてと、じゃあ行くか。ルシファー!」

「はっ、ここに」

「ええ、いつの間に⁉︎」


ルシファーは俺が呼ぶと一瞬で背後に現れるという性質を持っている。

俺は流石に慣れたが、祐奈はまだ驚いているな。まぁそれも仕方がないか。


「アギレラとフェリアの容体はどうだ?」

「フェリアは先ほど意識が戻りました。アギレラは未だに……」

「そうか、じゃあ一応フェリアに会いに行くか。まだ彼奴も状況が飲み込めてねえだろうしな」


俺は翼竜種(ワイバーン)の手綱を引っ張って2人の患者が寝ている場所へ向かった。


「フェリア!目が覚めたって?」

「あ、あぁ……リュートか……。どうして……?」

「おかーさんの魔法で気がついたら私達ここにいたの」


カレンは目に涙を浮かべながらフェリアの胸に顔を埋めていた。

フェリアは愛おしそうにカレンの頭を撫でる。


「そうか……。リュート。カレンから話を聞いたか……?」

「あぁ……。聞いた。今から獣人界に向かう。お前はここで休んでろ。アギレラの意識もまだ戻ってない」

「そうか……、すまないな……。私達が弱いばかりに……」


フェリアは悲しそうに目を伏せる。


「俺がそんなこと思った事が一度でもあると思うか?お前達が生きてて良かった」


フェリア達は弱くなんかない。

子供のために命を張れる人間を弱いなんて誰に言わせるものか。


俺はフェリアの元へ座り込みカレンの頭を撫でた。

相変わらずカレンはフェリアから離れずにずっとくっついている。余程母の感触が恋しかったのだろう。治療の間は傍でずっと大人しく待ってたからな。


「アギレラは治るのか……?」

「治る。絶対だ」


確証なんてどこにもないが、不安げなフェリアとカレンの手前そう言うしかない。

もうアギレラのタフネスに賭けるしかないのだ。


「俺たちはすぐに出発する。治療はルーナとルーナの姉のサリアに任せてある。心配するな」

「それは良いのだが……、リュート。奴らは……」

「大丈夫だ。危なくなったら逃げるさ。それに、今回はアクア達を連れ戻すだけだ」

「そう……だな……。どうか、無事に帰って来てくれ」


フェリアは俺の言葉に弱々しく頷いた。

そしてすぐに体制を戻し寝転がった。


「少し疲れた……。私は眠るとしよう……」

「ああ、それが良いさ。じゃあな」

「ふふ……」


その時、フェリアが小さく笑った。


「ん?どうした?」

「いや、あの小さかったリュートがこんなに頼もしくなった事が少し感慨深くてな」

「あんたも昔よりは落ち着いたよ。親になったからか?」

「その話はもう言いっこなしだぞ」

「子供の前ではいいかっこしたいのか?じゃあな、行ってくる」

「あぁ、行ってらっしゃい」


まるで親子の様に俺たちは別れの挨拶を交わした。

フェリアとは一緒に旅をしていた時期は短かったが、付き合いはかなり長い。時が経つのは早いもんだ。


「ねーねー、何の話?」

「何でもない。お母さんは疲れたから寝る。カレンは静かにしていてくれ」

「えー!言ってよー!」

「おやすみ」


そんな親子の掛け合いを尻目に俺は祐奈とルシファーと翼竜種(ワイバーン)達の待つ場所へと向かった。


「遅くなって悪かったな。行くか」

「はい!私も準備は万端です!」

「私はいつでもどんな時でも準備は出来てございます」

「本当にお前達は心強いな。フットワーク軽すぎだろ」


祐奈は飯の心配なんてしなくても現地で取れば良いという思考のためかあまり食料を持ち歩かないのだ。

剣と鎧はいつも装備してるやつと同じで厚手の皮袋を肩に引っ掛けている。

ちなみに中身は剣の手入れ道具とかナイフとかが入っている。おおよそ女子の持つものでは無いが、流石に俺も慣れた。


ルシファーに至ってはどう見ても手ぶらである。

まぁルシファーのことだし、異空間に手を突っ込んでものを持ってくるぐらいはやりそうである。

俺の中ではルシファーは何でもありって感じだからな。


とまぁ2人がこんな感じなので水を保存しておく水筒や、干し肉などの保存食は俺が準備しておく必要がある。

困ったものだ。食うものどころか生き物がいないところに放り込まれたらどうするつもりなのか。

いつも通りポケットにジジイのドクロをぶち込んで準備完了だ。今回はアクアの指輪も忘れない様にしないとな。


「爺さん。起きてるか?」


俺は姿勢をそのままにの状態で爺さんに声をかけた。


『起きとるよ。そろそろまた動けそうじゃ』

「ま、今回は休んでな。あんたは一回動いたら次に動くのに時間がかかるからな……」

『すまんの、孫よ』

「なぁに、気にすんな。もういいぞ、引っ込んでろ」

『なんか冷たく無いかの?』


言いながらもジジイはドクロの中に引っ込んでいった。

ジジイは持ち運びが便利だからだいたい連れて行く。このドクロをなくしたらやばいけども。


「ではな、リュートよ。健闘を祈るぞ」

「ああ、あんたにも世話になったな。戻ってきた時に礼はさせて貰うよ」

「ヌハハハ!気にせずとも良いのだ!」


妖精王は豪快に笑い飛ばした。相変わらず声の大きさがおかしい。


「リュート様!やっぱ俺もいっちゃダメっすか⁉︎」

「ダメだと言っとるのに」


食い下がってくるアスタをあしらいながら俺は祐奈とルシファーにアイコンタクト。

そろそろ出発しなければ。ことは急を要する。


「さてと、じゃあお前達。頼むぜ!」


俺は先程ハチと名付けた翼竜種(ワイバーン)の首をポンと叩く。

ハチと呼ぶと機嫌が悪くなるので呼ばない。本当の名前が何なのか分からないのでジルに会った時にでも聞いておこう。


俺たちは翼竜種(ワイバーン)の背に跨って一気に上空へと飛び上がった。



---



「到着です!」


時間にして約1日と言ったところだろうか。

取り敢えず獣人界に到着した。特に何も無かったので道中の事は割愛する。


森のど真ん中に着陸するのは危ないのでカイル村のはずれに着陸した。ここからは自分の足で少しばかり歩かねばならない。


「それにしても早いですねぇ……」

「空路を使うとやはり早いですね……。魔王様、我々も飛行生物を飼い慣らすべきでしょうか」

「どうだろうな」


竜人界を跨ぐという大移動にも関わらず移動に1日もかからなかった。

途中で一度地上に降りて休憩したが流石の飛行速度だ。

しかも翼竜種(ワイバーン)はスタミナがかなりあるらしく三日近く休憩なしで飛び続けることができるらしい。

竜人族は陸路でも馬を使うことは殆どない。双腕種(ワイアーム)という地上を走ることに特化した竜種がいるのでそれに乗るらしい。曰く、馬の何倍もスタミナがあって馬より早いらしい。

流石の竜種でも妖精界の幻想種である一角馬(ユニコーン)なんかには敵わないらしいが。


「リュートさん、村に向かいましょうよ!」

「ああ、そうだな。行こう」


そんなことを考えていたら祐奈に急かされてしまった。

そうだな、こんなところでウダウダやってる暇は無いのだ。


俺たちはすぐにカイル村へと向かった。



---



眼前に飛び込んできたのは変わり果てた村の光景だった。

地面は焼け焦げていたり大きなクレーターを作っていたりと激戦の様相を窺わせる。


「これは……!」


一体何があったらここまで凄惨な光景が出来上がるのだろうか。

家はいくつも破壊されており、木々は燃やされて灰になっている。

あの緑の豊かだったカイル村はすっかり灰と黒の二色に染まってしまっていた。


「そんな……酷い……!」

「話には聞いていましたが、ここまでとは……」


祐奈は両手で顔を覆い、ルシファーは目を瞬かせた。

8歳の頃の魔王城を彷彿とさせるこの光景に俺は吐き気すら覚えた。


「コレは……、おい、祐奈!ルシファー!」

「何かあったんですか⁉︎」

「いや、これを見てくれ」


俺が差し出したのは機械の破片。

これがカレンの言っていた機械人形の一部だろうか。

何やら細かいパーツで構成されており、どう考えてもこの世界の科学技術水準で作ることのできる代物では無い。

というか、多分俺の前世の世界でもこんなものを作り出すのは不可能だ。


「コレは、魔法で作られたってことだよな……?」

「多分……。だってこんなの作れっこ無いですよ!日本ならまだしも……」

「いや、日本でもこんなものは作れねえよ。カレンの話では勝手に動くって事だしな。自動で動く機械人形なんてモノが魔法なしで作れるとは思えねえ」


勝手に動くなんて、少なくともあらかじめ決められた動きしかできないはずだ。

臨機応変に全ての局面に対応する戦闘用機械人形なんてモノが魔法なしで作れるハズが無い。


「しかし、これほどの代物を魔法で作り出すにしても膨大な魔力が必要です。地上の存在にどうにかできるような魔法では無いかと」

「って事は今回にも何らかの天界の奴が絡んでるってことかよ……」


何より数が数だ。

これほど大量の瓦礫とともに破片が転がっているのだ。元々どれ程の数の機械人形が居たのかは想像に難く無い。


俺たちは少しの間村を捜索してみたが人っ子一人いなかった。

敵の機械人形も壊れたパーツが残っているのみだった。


「チッ、やっぱり誰も居ねえ……。無駄足か?」


俺がイラついて瓦礫を1つ蹴った時、森の奥から声がした。


「いや、無駄足では無いさ。君ならくると思っていた」

「あ?」


俺たちは瞬時に戦闘準備を整え、声の下方向へと向き直る。

祐奈はすでに神聖力を剣にチャージし今すぐにでも大魔法を前方にぶっ放すことができる。


「姿を表せ!何者だ!」


ルシファーが眉根に皺を寄せて言う。


「3秒以内に姿を見せろ。でなければ攻撃する!」

「ああ、タンマタンマ。戦いは勘弁よ」


そう言ってでてきたのは長身の男だった。

銀髪の長い髪を後ろでくくってポニーテールのようにしている。

目つきは悪く無いが、その眼光は怪しい光を放っている。


「竜人族……。何故、竜人族がここに居る?」


そう、その男は竜人族だったのだ。

確かにここ、カイル村は竜人族との界境に近いが、何故この破壊された村に居るのか。

これは偶然では済まされない。


「俺は弟の身に何かあったんじゃないかと思って来たんだ……。知らない?ジルって言うんだけど……」

「ジル⁉︎」


ジルが弟って……、いや待てよ。あいつは自分のことを一人っ子って言ってなかったか⁉︎


「ああ、ごめんごめん。ジルは俺の本当の弟じゃない。従兄弟なんだ。でも従兄弟だって兄弟みたいなもんだろ?だから弟ってことにしてるんだ」

「なぁんだ、ジルのお兄さんか。良かった〜」


祐奈は息を吐いて剣を下ろし、その場にへたり込んだ。

だが、ルシファーは気を抜いていなかった。


「証拠を見せろ。貴様がジルの関係者である証拠があるか?」

「ん〜、これでどうだろうか。ダメかな?」


そう言って男が取り出したのは1つの宝石。何だか前にミドにもらった指輪にはまっていた宝石に色が似て居るような……。


「それは……、わ、分かりました。結構です」


ルシファーは納得した様子でいつもの丁寧語に戻った。


「あんたの名前を聞いていいか?俺はリュート・エステリオだ」


ルシファーが納得した所で俺たちの間にあった緊迫した雰囲気が少しだけ緩和した。

一応相手の名前を聞くので自分から名乗っておく。


「俺はザイン・ドラゴニス。一応竜人族の王族だ。以後よろしくな、魔王殿」

「魔王様。先ほどの宝石はザイン殿が王族であると言う証なのです」

「成る程な……。って、俺が魔王だって知ってんのか?」

「当たり前だろ?弟に話は聞いて居るよ。強いらしいね」

「ま、まぁ……弱くはないと思ってるけど……」


一応鍛えてるし。

鍛錬は毎日怠っていない。神との戦いに備えてちゃんと強くなって居るハズだ。多分。


「あいつ、俺の話なんかしてやがるのか……クソ恥ずかしい……」

「リュートさんは男にも好かれますね!」

「何だその言い方。まるで俺のこと好きな女がいるみたいだな。俺のこと好きでいてくれる女なんてアクアしかいねえよ」

「えー、そんなことないと思いますけどねぇ……」


祐奈は素知らぬ顔で空を仰いだ。

何だその含みのある言い方は。フラグなんかどっかで立てたか?


「ここにいても事態の解決は見込めないだろ?ウチに来ないか?ここから近いし、翼竜種(ワイバーン)も居るみたいだし。お茶でも出すよ」


ザインは俺たちにそう言って踵を返した。

そう言われれば是非も無い。正直情報を共有できる人間がいてくれた方が楽でいいしな。


「ここらは確認したのかよ?」

「まぁね、これでも魔法は得意なんだ。『探知魔法(サーチ)』を使って捜索した所生き物はいなかった」

「そうなのか……。い、生き物は……?」

「気付いたか……。そう、人っ子一人どころか動物もいないよ。みんな殺されたのかもね」


そう言ってザインは体を少し屈めた。


「『竜化』‼︎」


バキバキと背中から大きな翼が。

背後からは刺々しい尾が。

体のいたるところからは鋭利なフォルムの棘が姿を現した。

その目はギラギラとした眼光を放っており、口からは鋭い牙が覗いている。


「俺は自分で飛べるから君達は翼竜種(ワイバーン)に乗っておいでよ。誘導するから」

「その見た目で気さくに喋りかけられると調子狂うな……」


ジルの竜化に比べると格段に竜っぽい。

竜化ってのは人によって個人差のある変化の様だな。


「取り敢えず行きましょう!」

「あ、あぁ……」


俺たちはザインに着いて竜人界へと向かう事になった。

ザインが胡散臭過ぎる

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