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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
九章 妖精界編
141/220

突然の再会と激動の獣人界


---リュートside---


「ルシファー!」

「魔王様!御無事で!」


少し手間取ったが、やっと合流出来た。

どうやらガブリエルとの決闘は終結したらしく、2人とも大人しくしている。俺の命を撮るのも諦めた様で、俺を目の前にしてもガブリエルは微動だにしない。


これで今回の山場は全部乗り越えた感じか?


「妖精王様と祐奈はどちらへ?」

「ああ、ルーナとサリアを探しに行った。祐奈が2人のいる部屋に結界魔法を張ってから来たらしいから多分怪我は無いと思うが……」


アスタは祐奈の魔力供給能力で自己治癒能力を促進し、その上祐奈の治癒魔法で怪我を全部治してしまった。

このタフネス恐るべし、だな。俺も人のこと言えないけども。


「ウリエル……」


ルシファーはアスタの背後に背負われている金髪の男に目をやりながら呟いた。

ルシファーも思っていなかったのだろう。

まさか敵であるウリエルを生かして、しかもこうして連れ回しているなど。


「ウリエルも負けたのか……。お前達、本当に地上の存在なのか?」


虚空を見つめながら問いかけるガブリエル。

ガブリエルにはラファエルやミカエルが倒された事もわかっているのだろうか。


「生憎、こいつをぶっ飛ばしたのは俺じゃねえよ。ま、あのおっさんはマジで化け物じみてるけどな。本当に地上の存在なのかも疑わしい」

「クッ、違いない」


ガブリエルは王の実力を知っているのだろうか。

曲がりなりにも神族である天使を一方的に倒すなんて……実際目にするまでは信じられない程の強さだ。


しかし、神はほぼ全員が天使をはるかに超越する神聖力と特殊な力を持っている。

ハデスは死者を自身の配下にしたり、エレボスなら異常な再生能力だったり、だな。


「ヌゥゥン!」


と、その時、瓦礫の山からサリアとルーナを抱えた妖精王と祐奈が姿を現した。御丁寧に周囲の瓦礫を木っ端微塵にしながら。


「ふぅ、何とか無事に脱出出来ましたね!2人のいる部屋が瓦礫で塞がってた時はどうしようかと思いましたよ……」

「もぅ!置いてかないでよね!私だって戦えるんだから!」

「ヌゥ、しかし我は2人は残っていた方が賢明だったと思うのだ。正直言うとルーナもサリアも鍛錬が足りんからな!ヌハハハハハハ!」


笑い飛ばしながら自分の娘を嗜める妖精王。

確かに、天使が相手だったら実戦経験を積んでいるルーナでも及ばないだろう。

というか、祐奈ですらギリギリ凌いでるって感じだったしな。


「不甲斐ないです……。私勇者なのに……」

「あれは相性の問題であろう。気にするでない。祐奈よ、お主の力は折り紙付きだ。我が保障しよう」

「本当ですか⁉︎」


ま、確かにな。

祐奈は純粋なパワーで押し切るタイプの能力だ。それが効かないとなると途端に対処出来なくなるのは仕方がないと言えば仕方がないのだろう。


「でも、あの手の生き物にもちゃんと対処出来るようにならないとダメですよね……」

「で、あるな。それは鍛錬あるのみだろう」


そう言って妖精王は背後の廃墟と化した自分の城を見つめた。


俺は少し申し訳ない気分になってしまった。

が、よく考えたらこの城ぶっ壊したのは半分以上祐奈なのだが、妖精王も自分で破壊してた。あまり気にしなくてもいいだろう。

それに、妖精王は細かいことをネチネチ言うようなみみっちい男じゃないしな。


そして、妖精王の反応は案の定といったものだった。


「むぅ、建て直しだな!ヌハハハハハハ!それまでどこに住もうか!」

「お父さんお父さん!私野宿出来るよ!」

「何、本当か⁉︎我の娘も逞しくなったものよ!ヌハハハ!」

「わ、私だって野宿くらい出来ます!」

「え〜、お姉ちゃんは野宿なんてやったことないでしょ〜?」


確かに一国のお姫様が野宿なんて好き好んでするはずもない。

と思ったが、目の前の元気な幼女エルフは好き好んで勇者にホイホイついていったんだったっけ……。


「まぁ野宿の準備は大体メイがやってたんですけどね……」

「お前ら本当に野宿出来るんだろうな?」


祐奈の冷や汗混じりのセリフに俺は半眼で問いかける。

賭けてもいい。こいつらは1人では野宿できない。

俺も結構長い事野宿なんてやっていないが、多分アクアでもできるぞ。アイツは割とそういうところしっかりしてるからな。面倒臭がってやらないけど。

しかし、コイツ等は相当メイに寄りかかって生活してたんだな……。アイツの苦労が透けてくるぜ。

ま、それだけメイがしっかりしていたという事だろう。ジルの家は安泰だな。


「リュートよ、城のことは気にするでない。この程度、我が国の魔法士達がいればすぐに建つ!ヌハハハハハハ!」

「マジでか」


俺は自分の家を苦労して自分で建てたんだが?

え、魔法使えば一瞬で建つの?俺の苦労を返して欲しい。

一応小さい頃にアギレラの家造りを手伝った経験があったので勝手知ったるって感じだったが、それでもしんどかったんだぞ。


「てか、近衛の騎士団とかは居ねえのかよ?」

「ん?あぁ、奴らは黒い鎧の兵共にやられてしまっていたわ!ヌハハハハハハ!これは近衛も鍛え直しだな!ヌハハハハハハ!」

「それかなり深刻な問題じゃねえか」


近衛が弱いのか、敵が強かったのか……。

まぁ敵は神様の声が頭の中で響いていたらしいし、士気だけでいうなら誰も及ばなかったのだろう。


「しっかし、今回は割と本気で王の首を取りに来たのかと思えば、熾天使(セラフ)の目的はどっちかと言うと妖精王じゃなくて俺たちだったし、一体ローグは何がしたかったんだ……?」

「確かに……仰る通りです……。王族を殺すのに熾天使(セラフ)を起用するのは良い策だったでしょう。しかし、ガブリエルは妖精王では無く、我々を狙うようにと言付かっていた……」


と、その時、俺たちの背後に突如魔法陣が出現した。


「ッ⁉︎」

「一体……⁉︎」

「これは……!転送魔法陣!」


俺とルシファーは勢い良く振り返り、臨戦態勢を取る。


一体何者なんだ……?


しかし、そこから姿を現したのは敵ではなかった。

俺が最も古くから知る友人の姿がそこにあった。


「ア、アギレラ……?それに、フェリアとカレンも……。一体何で……?」


そう、俺たちの目の前に突如現れたのはカイル村に残してきたアギレラ一家だった。


しかも普段とは違い、アギレラの身体は傷だらけで、既に満身創痍の容貌を呈している。

フェリアもかなり深い傷を負っており、意識を失った2人にしがみついてカレンが泣きじゃくっている。


「お、おにーさん⁉︎おにーさん!おとーさんとおかーさんが!」

「カ、カレン落ち着け!すぐに治療する!事情を話してくれ……。祐奈、ルーナ!治療を頼む!」

「は、はい!」

「う、うん、わかったよ!」


俺の指示にすぐに応じて祐奈がアギレラをルーナがフェリアの治療を開始する。

祐奈は何でもできる万能タイプの勇者様だ。そして、ルーナは補助魔法に秀でている上、魔力適正値が極めて高いエルフの中でも折紙付に高い。

2人なら十分に治療出来るだろう。


「おにーさん!」


ドスッ!といつものように俺の胸に飛び込んでくるカレン。

少し背が伸びたのか、金的に頭がぶつからなかった。しかし、腹部にヘッドバッドを食らったのでやはり痛かった。が、茶化していい雰囲気じゃないので黙っておく。


「こ、怖かったよ……、怖かった……。村がね……ううぅ……っ!」

「カレン……、落ち着くんだ……。大丈夫だ。今はおにーさんがついてる。安心しろ……」

「うん……うん……」


どうやら相当凄惨な光景を見せられたのだろう。抱きしめた小さな体からまだ震えが伝わってくる。

あの明るい性格のカレンがここまで打ちのめされるなんて……。それに、大人の獣人族であるアギレラをあれ程までにボロボロにするなんて……、一体何があったというんだ……?


「村が……、村がね……」


カレンはポツポツと拙い言葉で話し始めた。



---カレンside---



その日は良く晴れた日だった。


カレンはいつものように父と母に行ってきますを告げるとリュートの家へと向かった。


勿論目的はジンとエマだ。


自分はお姉さんなのだから、ジンとエマの面倒をみないといけないのだ。それに、リュートにも直接頼まれてしまった。コレはお姉さんになる者としての責務なのだ。


カレンは鼻歌交じりにエステリオ家のドアを開け、中へと声を掛けた。


「おねーさーん!おはよー!」

「……、カレンちゃん……。おはよ……」


子供が生まれてからは以前より早起きになったアクアが眠そうに目をこすりながら奥から姿を現した。

早起きになっても眠いものは眠いのだ。低血圧は治っていない。

まだ子供であるカレンの目線から見ても相変わらずの美人だ。

相変わらず綺麗な青髪が朝の日差しを受けてキラキラと輝いているように見える。

リュートはいいお嫁さんをもらったものである。


「ジンくんとエマちゃん起きてる?」

「……うん。ジンはまだ寝てるけど……」

「エマちゃん抱っこしてもいい?」

「……良いよ。連れてくるから座って待ってて。朝ごはん食べた?」

「うん!食べないとおかーさんに叱られるし!」

「……卵焼き食べる?」

「食べる!」


相変わらず好奇心も食欲も旺盛なカレンは家で朝ごはんを食べてきたにも関わらずアクアにも朝ごはんを貰うようである。

しかし、これはいつもの風景だったりする。


カレンがお利口に椅子に座って卵焼きをパクついていると寝室からアクアがエマを連れてやってきた。

ジンは寝ているところを起こすと非常にうるさいので自然に起きるまで待つ。


「エマちゃーん!おはよ!おねーさんだよ?」

「おあよー」


エマは最近よく言葉を話すようになった。一歳になる少し前くらいから話すようになっていたのだが、最近は目に見えて話せる単語が増えてきた。

勿論アクアのことを「まぁま」と呼ぶことも出来る。しかし、リュートの事を一向に「パパ」と呼んでくれないので本人は嘆きに嘆いていた。


エマはカレンに抱っこされると気持ち良さそうに目を細めてカレンの頬にペタペタと手をやったりした。

アクアはそれを眺めながらモサモサと卵焼きを頬張る。


妊娠する前は良く朝ごはんを抜いていたのだが、やはり子供が出来てからはそうはいかない。

そしてアクアの朝ごはんを食べる習慣は妊娠期間中にすっかり身についてしまったのだった。

出産後も毎朝しっかりとごはんを食べている。


「……ん、エマにも朝ごはんあげて……?」

「りょーかいです!」


そう言ってカレンは箸で器用に卵焼きをつまんで差し出した。

1歳ともなると結構普通に大人と同じ者を食べるようになるのだ。

ちなみにこの箸という食器はリュートが自作した者でアクアとカレン以外は上手く扱えないのだ。カレンも最初は上手く扱えなかったのだが、幼さ故の柔軟さか、すぐに扱えるようになった。

最初の頃はカレンも「なんだろう、この変な食器は?」と思ったものだ。

しかし、箸は子供にご飯をあげるのに割と適している気がする。フォークは鋭くて危ないし、スプーンでは卵焼きをすくいにくいので、箸を使えばなかなか円滑に食事が進む。


「おいしー?エマちゃん」

「おいしー」


意味が分かってるのか分かっていないのか微妙なラインだが、エマはこうしてカレンの言葉をよく反芻する。


「ごはんだよ、ごはん。ごはん美味しいって言ってみて?」

「ごあん」

「あはは、まだ難しいのは無理かなぁ……」

「ごあん、おいしー」

「凄い凄い!おねーさん見て!文章で喋った!天才かも!」


生後1年を過ぎると大多数の子供が喋り始めるのだが、カレンはそんなこと知らないので感激して大はしゃぎである。


「……、カレン。エマを下ろしてあげて」

「?」


それを見たアクアは含み笑いをしながらエマを地面に下ろすように促す。

少しワクワク顏で何が起こるのかと嬉々としてエマを下すカレン。


すると、


「え、えっ!」


カレンの驚きも無理もない。


なんと、エマは机にしがみついて立ち上がったのだ。


「た、立てるの⁉︎」

「……うん。まだそんなに歩けないけど。こうして訓練するの、大事」

「まぁま、まぁまー」

「……エマ、おいで」


わぁわぁと騒ぎながらヨタヨタとアクアの元へ歩み寄ろうとするエマ。

しかし、途中でべちゃっ!と転んでしまった。


「ああっ!大丈夫⁉︎」

「……大丈夫。エマは強がりだから泣かない」

「うぅ……」


半泣きになりながらもなんとか再度立ち上がり、アクアの元へとゴール。


「凄い凄い!エマちゃん凄い!」

「……良くできたね。よしよし」


アクアに抱きしめられて柔らかな表情を弛緩させるエマ。とても愛らしい。


「ねえねえ、次は私のとこに来て!エマちゃん!」

「……エマ、行ってあげて」

「あいー」


しっかりと返事をして歩き始めるエマ。とても和やかで微笑まし光景だった。


そう、あの出来事が起こるまでは。

祐奈「ここまでの話って要ります?」

リュート「娘の成長話だぞ!いるに決まってるだろ!ところでエマはいつになったら俺の事をパパって呼んでくれるんだ?」


つまりそういう事です。(どういう事だ)

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