表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
九章 妖精界編
135/220

最強ジジイ


ドゴォォッ!


「がはぁっ!」


それは一瞬の出来事だった。


轟音と共に土煙が舞い上がり、気がつくと目の前にミカエルが膝をついていた。


あの光速の移動能力を持つミカエルが。


『最近の若いもんは鍛え込みが甘いんじゃ無いかのぉ?』


ジジイはニヤニヤと掴み所のない表情で笑う。

しかし、そのニヤニヤ面を俺の顔でやるのはやめて欲しい。


そうこうしているうちにミカエルが立ち上がる。


「これでも貴様よりは長く生きている……」

『ん、そうじゃったの』


神族は俺たち地上の存在に比べるととてつもなく長寿だ。

というか、寿命という概念がないらしい。だから老いることもないし、普通は死ぬこともない。


「ジジイ……、アンタ強かったんだな……」

『失敬じゃのう。ワシは魔王じゃぞ?王ってのは皆こんなもんじゃ』


あの肉ダルマもこんなに強えのかよ。

確かミドの話では王は五界神の力を直接受け継いでいるから強いだのなんだの言っていたが……、どうやら地上の存在としては破格の強さのようだ。


前にアスタの体を借りたジジイと模擬戦をした事があったが、ここまで強くはなかった。

ここからは俺の推測だが、多分ジジイと俺の肉体の親和性は結構高いのだろう。何せ俺の祖父だからな。

だからジジイがアスタの体を使った時よりも今の方が強い訳だ。

普通に考えたら滅茶苦茶頑丈なアスタの身体を使った方が強いはずだもんな。


「コレが王の実力か……。確かに見誤っていたようだ……。グフッ……!」


先程のたった一撃がミカエルにかなり大きなダメージを与えたらしい。

先程の一撃は速すぎて自分の目ですら視認が難しかったが、どうやら先程はジジイがミカエルの腹部に蹴りを入れたらしい。

俺の身体で起こった事だというのに俺の精神がこの戦闘に追いついていない。


『さっさと片付けるぞ。この戦い……長引かせる訳にはいかんからのぅ……』


また消えたかと思うほどの超高速移動、そしてとても重い一撃。


ゴッ!


「ぐあっ!」


派手に吹き飛ぶミカエル。

やはり、信じられないほどの強さだ。


「何故だ……。何故そこまでの強さを……。何か、特別な魔法を使っているのか……⁉︎」

『いんや?』


ジジイは鼻クソをほじりながら答えた。

ってこのクソジジイ。俺の身体で鼻クソをほじるな。


『普通の強化魔法じゃぞ。まぁちょいと倍率は高いがの』

「何……、倍率……だと……?」

『生前のワシならこれは無理じゃったじゃろう。孫の肉体あってこそのこの肉体強化じゃ。魔王の肉体でありながらここまで高強度に洗練されているとは……ワシも乗り移ってから本当に驚いたわい。魔王として完成されたワシの魔法とこの完成された肉体があれば、天使如きには負けんよ』


つまり、俺の体を使った時だけ強いって事なのか?

まぁ確かに俺は8歳の頃から毎日バカみたいに戦闘の毎日だったからなぁ……。


『ま、お主はそれのせいで魔法が未熟なんじゃがな……。一概に良かったとは言えんな』


確かに、魔法もできた方がいいもんな。


『お主は幼少期に保護者を失い、戦闘に関しては1人で試行錯誤し独学で戦ってきた。じゃからお主は魔法ではなく腕力に頼った戦いを好む傾向にあるんじゃろう。お主の身に宿る龍の血の力もそれを助長しておる』


ぐ……、そう言われると辛いが……。


「成る程、そこで貴様がリュート・エステリオの体に乗り移る事で完璧な魔王になるという事か……。全く……王がここまでの強さだとは思ってもみなかったぞ……」

『それはお主の運の尽きじゃったの。『魂喰(ソウルイーター)』!』


ズズズズ……!


音が大地を揺るがす。

ジジイが周囲から魔力を吸収しているのだろう。周囲の大地や草木から魔力が漏れ出してくるのが見えてくる。

普通魔力は不可視の筈なのにこうして目に見える程に高密度な魔力の奔流だ。


『久し振り過ぎてちょいと鈍っておったからの……。一気に決めさせてもらうぞい』

「何なんだ……、この魔力は……!」


ミカエルの顔が驚愕に染まる。

それほどまでに圧倒的な魔力量。

小細工などが通じる余地のないほどに圧倒的な力の奔流。


「バカな……。コレは最早……神の領域だぞ……」


天の使いであるミカエルをして絶望するほどの力。

実際は自前ではなく魔力を徴収しただけのだが、そんな事は些細な問題だった。


『さぁてと、遺言はあるか?』

「地上には貴様ほどの力を持つものが何人も居るのか……?」

『んー、知らん。自分で考えろ。じゃあの』


鼻クソほじりながら適当な態度でミカエルの問いをバッサリ切り捨てたジジイは無造作に魔力弾を投げつけた。


「ッ⁉︎」


それは白く光ったかと思うと、周囲に光と風を撒き散らしながら爆散した。


「くっ……!ぐあああぁぁぁぁァァァ‼︎」


ジジイは目を開けていたが、俺の精神体は余りの光に目を閉じたい気分だった。


そして、光と風が晴れたと思うと目の前には何もなかった。


何も。


『んー、やり過ぎたかの。城がもう半分消し飛んじまった』

「やりすぎに決まってるだろ。どうするんだよコレ」


しかし、俺があんなにも苦戦していた天使をアッサリとはな。ここまで王が強いとは思ってもみなかった。

まさか、ここまでの差があるとは……。王ってのはバケモノばっかりなのか?

俺の使う能力とは桁が違う。これが年季の差って奴で片付く問題なのか?


『なぁに、孫よ。お主も訓練すりゃあワシより強くなる。バゼルがそうじゃったからの』

「親父も……?」

『奴も小さい頃はワシのようになれると聞いてきたもんじゃ。じゃが、結局奴は歴代でも最強の魔王となった。ま、勇者と共に死んじまったようじゃがの……』

「悲しくないのかよ?」

『奴は戦士じゃ。戦いの中で死んだというのなら奴も本望じゃったろ。じゃからワシは別に悲しまんよ』

「…………」

『それに奴にはお前が生まれる事はわかっていたはずじゃ。にも関わらず奴は死んだ。ま、息子と嫁を残して死ぬ事は感心できんが、奴なりに葛藤があったのじゃろう』


そうだ、今のジジイよりも強いってことはその気になれば逃げる事もできたはずだ……。

なのに、親父は死んだ。

当時の勇者との間に何かがあったのだろうか?

書いてから思ったけど、主人公のジジイ強過ぎ……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ