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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
九章 妖精界編
132/220

3対3


「堕天……か……。懐かしくも醜く、そして唾棄すべき外見だな。昔の自分がこうなっていたと思うと吐き気がする」

「ルシ、ファー……。ルシフ、ァー……、ル、シフ……ァァァァァィ‼︎殺す殺す殺す‼︎ブチ殺す!肉の欠片すらのこサズゥァアゥゥ‼︎」


正気を失った瞳で、何処までも黒い闇のような瞳で、穴が開くほどルシファーの顔に視線を寄越すガブリエル。


いくらルシファーが規格外に強いと言っても流石に天使を四人相手取って一方的に勝利することなど不可能だ。

ならばなぜ、400年前のルシファーは熾天使(セラフ)の四人をたった一人で制圧することが出来たのか?


その真の理由こそが『堕天』。


堕天とは、自身の理のために動くという欲望が天使の精神を完全に支配したときに起こる黒化現象。


400年前のルシファーは何を犠牲にしてでも結婚したい女性がいた。


そう、何を犠牲にしてでも。


ルシファーが好きになった女性は地上の存在。神族が共に生きることを許されるような種族ではなかった。だが、ルシファーは諦めることができなかった。

その輝くような笑顔を、その女神のような慈愛を。

そうして膨れ上がった『どんな手段を使ってでも手に入れたい』という欲望がルシファーを堕天させた。


堕天した天使の戦闘能力は飛躍的に向上する。自身の欲望を満たす為に。


堕天した時の精神の変化は欲望の種類によって異なる。

そして今回のガブリエルの欲望は殺意。ただただ目の前の男を殺したいという殺意。

嫉妬、羨望、悋気を源とする原始的な殺意だった。

原始的で単純で純粋で無垢で大きくて小さいその感情は何よりも強く、ガブリエルの体躯を突き動かした。

堕天はガブリエルの殺意をより一層ドロドロとしたドス黒い感情へと駆り立て、ガブリエルは堕天をより一層殺意を色濃いものへと変化させる。


「ガブリエル。終わらせよう。貴様は余りに俺を(・・)怒らせた」


ルシファーの一人称が変わると同時にルシファーの放つ雰囲気(オーラ)が全く別のものへと変貌する。

先程までのルシファーとはまるで別人のように黒い魔力が溢れ出ている。


「あまりこの姿は好きではないのだが……。流石に堕天使が相手では手を抜いていては勝てまい。堕天してしまうと魔力を消費してしまうからな……。一気にカタをつけるぞ」


ルシファーの翼が黒く染まる。


ルシファーは一度堕天してしまった自分自身を恥じ、再び堕天することを自ら禁じた。

しかし、その自ら課した禁を破った。


意地を張るには守るものが重過ぎる。


(意地?プライド?そんなモノ、魔王様の命に比べれば塵芥程に軽い!)


「ガブリエル……。今のお前に……加減は出来んぞ……!」

「ル、シ……ファァァァイィァァィぁぁぁぁ‼︎」


二つの黒きシルエットがぶつかり合う。



---リュートside---



「全く、良い加減にしなよ?もう無理矢理に仲良くしろとは言わないけどさ、戦う時くらい真面目にしようよ。ね?」

「お、おぅ」

「あ、ああ」


落ち着いた様子のラファエルは正座しているウリエルとミカエルを説教していた。

俺たちもあたりに広がった酸の所為で身動きが出来ず、その光景をぼんやりと見つめるのみだった。


そして、いつしかジュワジュワと音を立てながら俺たちの周囲の酸は消えていった。


「や、やっと消えたか……。コレってどうやって対処すりゃあ良いんだ?」

「さ、さぁ……?」


この毒、冷静に考えると恐ろしいな……。城の石材をあっさりと溶かしやがった……。


「さてと、じゃあ勇者さん。さっきの続き、やろっか」


小さく笑みを浮かべながらラファエルはこちらを振り返った。

それはまるでオモチャで遊ぶ無邪気な子供のような。異質な笑みだった。


「そうね、私もさっさと終わらせたいし」


しかし、こちらの勇者様も頼もしい笑みを浮かべながら剣をガチャリと握る。

祐奈の全身から神聖力を解き放たれ、欠損していた左腕が光によって補填される。


「『神聖勇剣(セイクリッドブレイブフォース)』!」


ニヤリと笑いながら二人は向かい合う。


「行くよ……、『死毒爪(ヴェノムファング)』!」


ラファエルは毒の奇跡により両腕の爪を禍々しい毒爪に変貌させ、猛スピードで祐奈へと接近した。


しかし、


「『神聖勇覇(セイクリッドディザスター)』!」


祐奈は無造作に前方を必殺の一撃で薙ぎ払った。


いやいや、そこは真ん中でぶつかり合うところでしょうよ。なんで吹っ飛ばしちゃうの?

コレだから男のロマンの分からない女は……。


相手が接近戦向きの技を繰り出してきても関係無い。目の前にきたら薙ぎはらう。そういう事か。


多分祐奈は戦隊モノの特撮でも開始1分でロボット出動させて敵を踏み潰すタイプだな。

ウルトラマンなら開始数秒でスペシウム光線撃つタイプだな。


「い、いきなり何を⁉︎そ、そこは力と力、技と技でぶつかり合うところだよね⁉︎」

「いや、そんなの知らないし。さっさとあんたら全員ぶっ飛ばしてやんよ。覚悟しときなさい」


面倒臭そうな態度そのままに後頭部をガリガリと掻く祐奈。


「それなら僕も戦法を変えさせてもらうよ……!『飛来毒刃(ヴェノムスプラッシュ)』‼︎」


ラファエルの詠唱と共に、無数の毒の刃が祐奈へと襲い掛かる。


「『神聖勇斬(セイクリッドブレイザー)』‼︎」


しかし、祐奈はそれを神聖力を纏った斬撃であっさりと跳ね返す。

やはりこの1年間鍛錬を欠かしてはいなかった様で、去年よりも技がより洗練されている。

コレならば天使、いや、神とも互角に渡り合う事ができるだろう。


「『神聖勇絶(セイクリッドディスペアー)』‼︎」


祐奈は攻撃の手を緩めず、城の天井をぶち破りながら上空へと斬撃を放つ。

すると、一瞬後に光の斬撃が雨の用地降り注いだ。


「くっ……!『紫毒円壁(ポイズンサークル)』!」


ラファエルはすかさず自分とウリエルとミカエルを毒の壁で包み込む。


「ちっ、俺らまで巻き込むなよな……。『雷撃防壁(ボルテクスサークル)』」


俺もすぐにアスタと共に防壁を張ってなんとか凌ぐ。が、それも一瞬の事だった。なんと、余りの威力に所々防壁が崩壊してきたのだ。


「マズイ……!凌ぎきれねえ……!」

「祐奈さん攻撃力高すぎっすよ!」

「俺は防御とか回復は苦手なんだよなぁ……。しゃあねえ、回避するぞ!」

「はいっす!」


俺とアスタはすかさず強化魔法で身体能力を強化し、降り注ぐ光の斬撃を躱す。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎『神聖勇光(セイクリッドディスティニー)』‼︎」


ふとラファエルの防壁の方に目をやると、なんと祐奈が剣を振りかぶって防壁へと肉薄していた。


そして、一閃。


祐奈の放つ攻撃は俺たちの仲間内でも屈指の威力を誇る。それをあんな近距離から食らって仕舞えばひとたまりも無いだろう……。


しかし、


「っぶねぇな……。ったくよぉ……!」


ギリギリ……、と音を立てながらなんと祐奈の剣を素手で掴んで防御していたのだ。

その男は……、


「ウリエル……!」

「なんてパワーっすか……!」


マズイ。あのままでは祐奈が危ない。


「行くぞアスタ。当初の計画通り、俺がミカエルでお前がウリエルだ。多分ウリエルは純粋なパワータイプだ……。お前との相性は悪く無い。やれるか?」

「勿論っすよ!リュート様も、怪我はしない様に気を付けてくださいっす!」


少し機を逸していたが、俺たちも戦闘に参加する時が来たのだ。


「相手が一騎打ちに応じてくれるかどうかだが……、その点の心配はしなくて済む様にしておこうか」


俺は面倒ごとを考えるのは苦手なんだ。


「アスタ、ちょっとだけ離れてろ。『放雷裂撃(スパークブリッツ)』‼︎」


俺は地面に手を当て、電撃で城の床を割り砕いた。

これで無理矢理にでも三分割して仕舞えば良い。


「アスタ、行くぞ!」

「は、はいっす!」


俺たちはそれぞれ定めた敵の方向へと向かった。

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