危険な模様
「やる事もないし、瓦礫の掃除でもするか」
大体敵の兵士達を縛りおえた俺たちはやることがなくなったので城の瓦礫の撤去をし始めた。
正直重労働になると思っていたのだが、全員魔法が使える上かなりの身体性能をしているので文字通り一瞬で終わった。
「魔法ってホント便利だな……」
「ですね」
元異世界組の俺と祐奈はその光景にすっかり目を見張った。
長いことこの世界に住んではいるのだが、やはり約30年間向こうに住んでいたのだからギャップに困惑してしまう。
俺は理系だったから肉体労働はあまりしてこなかった。しかし、あの中々家に帰れない日々は肉体労働と言っても過言ではないのではないだろうか。
ひたすらデスクでPCとにらめっこするのも大変だ。
「ただいま帰った!道中面白い植物を見つけてな!調理しようと大量に採取してきたぞ!」
と、その時丁度妖精王が森から帰ってきた。
その大きな両手に抱えきれないほどのキノコを持って。
しかし、持ってたキノコがいけなかった。
「え、なに?そのキノコ……」
赤地に白の斑点がついている。
おおよそ摂取してはいけないだろうという憶測が簡単につく代物だ。
え、なんでとってきたの?食えるとか思っちゃったの?
「うわぁ、身体大きくなりそうですね……。具体的には身長が2倍になりそうです……」
「だな。大きくなるのに身体性能は上がらないって感じするよな」
で、ダメージ食らったら元の大きさに戻るんだろ?
「うむ、齧ってみたところ毒はなかった!食えるぞ!」
「なぜ齧って確かめたし」
ペロッ。コレは……青酸カリ‼︎みたいな危なさがあるな。アンタは毒に耐性でもあるのか?
「ルシファー……。これ大丈夫か?」
「多分……。いえ、念のため毒味を……」
「じゃあ俺が!」
「お、おいアスタ……!」
俺が何か言う前にアスタがキノコをさっさと口に入れてしまった。しかも生である。絶対美味しくない。
「う……ゴムみたいな食感で乾いたパンみたいなパサパサ感があってクソ不味いです……。でも毒は無いっぽいっすね……」
毒味ありがとう。食うのは止めておきたいところだな。
「よぉし、我の得意の炎魔法で一気に焼き尽くしてくれるわ!」
そう言って妖精王はまるでキャンプファイアーの様に炎を燃え上がらせた。
「おい、焼き尽くすなよ。流石に炭になったら食わねえぞ。ってか炎が得意なのか?」
「我は全部得意だ!これでもエルフだからな!」
エルフは魔法の得意な種族だ。魔力適正値もダントツに高い。だが、こんなガチムチなおっさんが魔法得意って言ってもあまり説得力がないよな。
「あ、やっぱエルフだったんだな。オーガだと思ってたわ」
「ヌハハハハ!よく言われるわ!ヌハハハハハハハハ!」
笑い事か?それ。よく言われるって……、よく言われちゃダメだろ。
「よぉし、良い焼き加減だ。味付けがないのでそのままでいくか」
そう言って妖精王は大口開けてキノコを放り込んだ。
焼く前は赤字に白の斑点だったキノコはなんだか茶色くなっていた。
「うむ!不味い!お前達もたんと食べよ!」
「不味いって言ったのに食わせるんだな……」
「勿体無いからな!ヌハハハハ!まぁ我慢せよ!」
「アンタって人間を測りかねてる……。大らかなのか……それともただのバカなのか……」
もしかして後者なんじゃないだろうな?いや、一応これでも王様なんだし前者であってくれ。頼むから。
---
「さてと、俺たちがここで大人しく寝ていられるわけもねえしな。誰か夜番をするべきだろう」
俺は寝る時になってアスタとルシファーに向かって提案した。
流石にここで油断してぐっすりというわけにもいかないだろう。
もしここで大群が攻めてきたら目も当てられない。
「ですね。我々が交代出番をしますので、魔王様はお休み下さい」
「いや、そういうわけにも行かねえよ。お前達にばかり苦労をかけるのも悪いし、これは俺の問題でもある」
もう十分かもしれんが、これからの神との戦いに妖精王も協力して貰いたいしな。俺もこうして戦闘に参加しておくべきだろう。
「それに、普段は分割したほうが良いだろう。お前達は重要な戦力なんだし、休める時に休んどけよ」
「は!魔王様のお言葉のままに……!」
「リュート様がそう言うなら了解っす!」
コイツら基本的に俺を優先するからな……。それは良いのだが、その所為で七大罪はマジで滅びかけた事あるしな……。
今思ったら魔王に対する忠誠心高過ぎだろ。俺の親父の求心力は一体どうなってるんだ。
その日の夜は俺たちは交代で見張りをする事になった。
近くで寝ているのか妖精王の「ぐごぉぉぉぉぉお……」といういびきが廊下から聞こえてきた。うるさい。
妖精王の名前はまだ考えてない。
ガチムチな名前が良いな。カズヤとかゴスケにしようかな(冗談です)。