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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
八章 日常編
120/220

拗ねる神

二話連続投稿です


俺たちが村に戻るとそこには祐奈とルーナの姿があった。

俺たちの姿を確認した二人はこちらへと駆け寄って来る。


「あ、皆さん!お久しぶりですね!」

「おう、祐奈もルーナも久しぶりだな」

「久し振り。元気にしてた……?」


俺とアクアが会釈を返す。


「よう、二日ぶりだな」

「ゲ!トカゲ‼︎早かったわね……」

「トカゲやめろ」


こいつら会うたびにこのやりとりしてるんじゃ無いだろうな。


「メイ、アルバ、無事で良かったよ……。翼竜種(ワイバーン)になんか乗らないで瞬間移動したら良かったのに……」

「もう、お姉ちゃんは心配性なんだから……。大丈夫だよねー、アルバ」

「あぅ」


メイのセリフに返事をするようにアルバが小さく声を出した。


「全く、心配しなくても俺たちは大丈夫に決まってんだろ〜が」

「アンタの心配はしてないわよ」

「そこはしてくれよ」


すっかり家族だな。ジルと祐奈も。

この掛け合いを見ていればわかる。


「皆お久‼︎ジンくんとエマちゃん大きくなったね〜!」


ルーナは抱いているエマを揺らしながらにへらと笑みを浮かべた。

さっきから黙っていたのはエマに夢中だったからか。まあ仕方ないよな。可愛いもん。


そう、今の所祐奈はジンを、ルーナはエマを抱っこしているのだ。

人の好き嫌いが激しいジンがぐずらないのは珍しいな。祐奈は大丈夫なのか?


「そういうお前は少し背が伸びたんじゃないか?」


俺は久し振りに会う親戚の子供にやるようにルーナの頭にポンと手を置いた。

まぁ、前世では親戚筋の集まりなんて殆ど行かなかったんだがな。


「もう!子供扱いしないでよ!言っとくけど私はレディなんだからね!」

「はいはい、レディレディ」

「態度‼︎」


俺はルーナを適当にあしらいつつ、家の中へと入っていく。


俺は1年前にこの村で自分の家を作ったのだ。

現在ここで四人暮らしというわけだ。

この一年で子供達の夜泣きにも慣れたものだ。

エマは好奇心旺盛ないたずらっ子で何にでも手を出しては大体壊す。

逆にジンは無愛想で物静か。基本的に自分からは動かずに生活している。

赤ん坊の間は別に構わないが、その内自分で動けよ?


俺はと言えば手に職を持っていないので基本的にアギレラの家の畑で農作業をしたり、近場のギルドで冒険者稼業に精を出したりだ。

一人でクエストに行ってはサソリの鋏をかじるのは俺のひそかな楽しみの一つだ。


子供が1歳になってもやはりアクアの忙しさはあまり変わらないらしく、毎晩疲れた表情をしている気がする。

ここで俺が育児を放棄すると家庭内で戦争が始まるので俺はちゃんと手伝う。というか、アクアの冷たい視線が怖い。

図らずともアクアが家庭内で権力を持っている様子である。


「さてと、あいつらももう1歳か……早いもんだ……」


この1年間、ローグ達神々の事はあまり考えずにひたすら目の前のやれる事をやってきた。

ミドの言っていた神々は時間にルーズというのは本当らしい。


俺が少し黄昏ながら窓の外の景色を眺めていた。

外では相変わらずジルと祐奈が口喧嘩をしている。ま、喧嘩するほど仲が良いとか言うし放っておくか。


その時、


バリバリバリバリッ‼︎


俺の視線の端にあった大木に雷が落ちてきた。


家からは距離の離れた位置に生えている木だったので特にこちらに被害はなかったが、あまりの衝撃にもの凄い旋風が巻き起こった。

そして当然の如く落雷が直撃した大木は見るも無残な姿に成り果てていた。


「な、雲なんて出て無いのに……!まさか、神……?」

「そう、神だ」


俺の素っ頓狂に呼応した声は聞き覚えのある声だったのだが。


「よう、リュート」


あまりの威圧感に俺の体は硬直した。

背後からヤバイものが近づいてくる。俺の体は今すぐ逃げろと警告していた。

しかし俺はその場から動かずゆっくりと振り返った。


「み、ミド……」

「どうした?リュート。何かあったのか?」


にこやかにこちらへやってくるミド。しかし、目が笑っていない。

俺は何か怒らせるような事をしたのだろうか。

あと、何故俺の家の中に突然現れてるんですかね?


「おい貴様。私がなぜ怒っているのか分かるか?」


やっぱり怒ってる。しかもド怒りだ。

分かりません。なんて言えないので俺は適当に謝っておく。


「ごめんなさい」

「質問に答えろ」

「分かりません」

「殺すぞ」


怖い。

ギロリと俺を睨む瞳は威圧感たっぷりだ。さすがは龍の神。


「貴様、一年も経つのに何故一向に子供を連れてこんのだ⁉︎」

「はい?」


え、怒ってた理由それ?


拍子抜けする俺をよそにミドはまるで駄々をこねる子供のように怒鳴り散らす。

しかも少し涙目。いちいちあざといな。4000年も生きてる神様のくせに。


「待てども待てども貴様は一向にやってこんし……、気になって地上(した)を覗くと何やら楽しげな雰囲気だし……」

「そ、その……すまん」


そんなに子供の顔見たかったのか……ごめんな、お婆ちゃん。

おいそこ、指先ちょんちょんすな。唇尖らせるな。あざといな、やめろ。


「で、あまりにイライラしたからそこの木に当たり散らしたのだ」

「木に謝れ」


あんなデカイ木はそうそう無いと言うのに……このバカ神め。


「神様は時間にルーズっていってたからてっきりミドもそうだと思っていたんだよ……」

「あのな、貴様に比べれば私もルーズだろうがな、この世には一日千秋という言葉があるのだ」


この世界にもあるのかよ。

てかそんなに待ち遠しかったの?そりゃあ自分の子をそこまで可愛がってもらえるのなら俺も嬉しいけどさ。


「悪かったよ。あ、そうだ、ミドも飯食うか?今からなんだけど」

「食う。飯など久方ぶりだ。リョーマが死んでからは殆ど食べていないからな」

「お前飯食わなくても生きれるんだな」

「当然だ。神がそのようなものに縛られてたまるか。全能だから神なのだ。だが、リョーマがあまりに美味そうに飯を食らうものだから私も昔は毎日食べていたのだ」


へぇ。確かに人の食ってるものって無性に美味そうに見えるよな。分かるわ。


「おいリュート!今そこに雷が落ちたんだが見たか⁉︎」

「ああ、うん。その原因がここにいるわ」


少し慌てた様子で俺の家に駆け込んできたアギレラに俺はげんなりしながら答える。


「貴様がアギレラか。リュートから話は聞いているぞ」

「え、言ってなくね?」

「そういえばそうだったな……」

「俺を知ってるのか知らないのかどっちなんだ⁉︎」


全能の龍神様はデタラメがお好きなようだ。

このチート神の事だ、どうせ上から覗いたとかで済ます事だろう。


「狼獣人の男で家族構成は妻、娘の三人家族。成人し、冒険者になって数年経った時にベルナ・ベルグスに捕らえられ奴隷となる。そこから数年後リュートに助けられ、その後奴隷時代に主人の屋敷で知り合ったエルフのフェリアと結婚。更にその後二人で故郷であるこの村へと帰り、そこから約1年後に一人娘であるカレンが生まれ今に至る。そして娘は現在6歳であるという事ぐらいは知っているな」

「詳しっ!」


怖いわ。アギレラの人生の一部始終を短く纏めやがったなお前。


「な……な……、は……?」


アギレラは訳がわからないといった様子で口をパクパクさせる。

見ず知らずのやつが自分の事を尋常じゃないほど詳しく知っているのだからそりゃ開いた口も塞がらないよな。


「ところで、お前の子供たちはどこだ?」

「ああ、アクアが今は抱いてるんじゃないか?」


俺はといえば知らんのに適当な事を言う。

ジル達が来てるからアクアもフェリアも忙しいだろうし案外祐奈が面倒みてるのかもな。


「フム、では先に行くぞ」


ミドはさっさとアギレラの家の方向へ行ってしまった。凄え速い。流石は神。

しかも移動に迷いがない。どうやらカイル村の地理は予習済みの様子だ。どんだけ楽しみにしてんだよ。

しかし何度見ても恐ろしい移動速度だ。ちゃんと到着するまでにはスピード緩めろよ?


「一体なんなんだ?アレ」

「アレ呼ばわりはやめとけ。一応神だから、アレ」

「お前も控えればどうだ。それより、神ってのはあんなロクデナシばかりなのか?」


アギレラはローグやハデスの話をした時も同じような感想を漏らしていたな。


「あいつも今変なスイッチ入ってるだけなんだ。普段はもうちょいマシな奴なんだ」


多分な。俺は心の中でそう付け加えた。

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