表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
八章 日常編
119/220

1年後


子供達が生まれてから大体一年が経った。


俺たちは相変わらずこのカイル村に住んでいる。

半年ほど間にジルとメイは竜人界に戻っていった。

勿論心配性の祐奈はルーナを連れて一緒に竜人界へ。ジルの心の休まる場所をあげて欲しい。


他はあまり変わり映えしない。

俺たちの育児の手伝いをフェリアがやってくれるお陰で、慣れない子育ても割と円滑に進んだと思う。

ジンの容態も急変する事なく、二人共すくすくと順調に成長している。


俺はといえば毎日仕事らしい仕事をせず、大体畑仕事だ。

アギレラに労働力としてこき使われていると言う方が正しい気がするが、とにかく毎日食うものには困っていない。


しかし、今日は久しぶりに仲間が集まる日だ。

今日はジンとエマの誕生日で、ジルとメイも生まれて約3ヶ月の子供を連れて久しぶりにカイル村にやってきたのだ。

勿論祐奈とルーナも一緒だ。


彼奴ら早く来ねえかな……。暇だ……。


久しぶりに会えば会話に花も咲くだろう。だが、ひとりでは暇すぎる。

黙って土いじりでもしていれば良いのだが、それもあまり手につかなかったのだ。

俺も仲間に久しぶりに会えるという事で、割と今日という日を楽しみにしていたのだろう。


「リュート」


近くから声が聞こえた。俺が一番よく聞く声だ。


「アクアか。どうした?」


薄っぺらい普段着に身を包んだ俺の嫁がこちらに歩いてくる。

そういや、最近はかなり涼しくなってきたな。


「ジル達……もうすぐ着くって。フェリアが」

「い、意外と早かったな……。もうちょっとゆっくりでも良かったのに」

「嘘。楽しみにしてたくせに……」


何故バレてるし。


「そ、そんな事より、ジンとエマはどうしたんだ?」


俺は慌てて話題を変えた。

そうだ、アクアのやつ、今はどちらも抱っこしていない。


「カレンちゃんと遊んでる……。あの子良い子」

「だよな」


カレンは良い子だ。

よく気がつくし、手伝いはしてくれるし。可愛いし。明るいし。

多分お姉さんらしいところを見せたいのだろう。ジンとエマが近くにいるとより一層張り切るのだ。


「エマは随分懐いてるけど、ジンは……」

「相変わらずか……」


俺後頭部をぽりぽりと掻きながら嘆息した。


どうやらジンは人の好き嫌いが激しいらしく、俺とアクアとフェリア以外にはあまり懐いていないのだ。

抱かれた途端に泣き出したり、ぐずって暴れたりするのだ。


「さっさと戻るか。そんな感じじゃあフェリアが掛かりっきりだろ」


最近はフェリアとカレンはずっと俺たちの家に入り浸りだ。

ジンとエマの世話を手伝ってもらっているのだが、アギレラまで来た日にはもう完全に同じ家に住んでるみたいだな。


「あ、来た」

「え?」


アクアがそれを指差したと思うと、次の瞬間には激しい風とともに頭上に翼竜種(ワイバーン)が現れていた。


「よっ、リュート」

「お久しぶりです」

「ジル!メイ!久しぶりだな!」


顔を上げると翼竜種(ワイバーン)の背にはジルとメイ夫婦が乗っていた。

メイは小さな赤ん坊を抱えている。


「ジル、メイ……久しぶり……。赤ちゃんも元気そう」


アクアが少し微笑みながら赤ん坊の頭を撫でた。


「なんて名前なんだ?」

「ああ、アルバっていうんだ。どうだ、良い名前だろ?」

「ふふ、アルバはジルに良く似てるでしょう?」


そう言われれば良く似ている。

間だっれて三ヶ月とは思えないくらいに良く似ている。

少し吊り上がった目元とか、ツンツンした固めの銀髪とか。


「こりゃお前に似て厳つい顔になるぞー」

「なんねーよ!まあ、強い男には育って欲しいがな」

「ってか、なんでここに来たんだよ?家の方は?」

「祐奈とルーナは転送魔法で直接行ったんだが、家族三人旅は初めてだしな。瞬間移動よりはこっちの方が良いと思ったんだよ」


ジルはメイからアルバを受け取ってニヤッと笑った。


「で、飛んでたらお前らを見つけたから降りてきたんだよ。あ、ご苦労さん」


言いながらジルは翼竜種(ワイバーン)の翼をパシンと叩いた。

すると、翼竜種(ワイバーン)は『ギャオォ!』と一鳴きしてその場から飛び去っていった。


「飼い慣らしてるのか?」

「まあな。ウチの近くに調教師が居てな。アレも一時羽を伸ばしてるだけだ。そのうち戻ってくる」

「成る程な。便利な生き物だな」

「言っとくが、竜人族にしか飼い慣らせないぞ?」

「別に使わねえよ」


無くても馬で十分だ。確かに空路を使える上、速いのは魅力的だがな。


「それよか、早く戻ろうぜ。客がいつまでもこんなとこ居てどうすんだよ」

「だな。行くぞ」

「アルバは寝てるんだから。ゆっくり安全にね?」


メイがアルバを抱いているジルを危なっかしく見つめながら心配そうに言う。

ジルに抱かせていて大丈夫なのか?俺も心配だ。


「おう。任しとけ」

「不安だ……。やめとけよ」

「メイ……。アルバはメイが抱っこした方が良いと思う……」


俺とアクアは口々に言う。

だってジルって子育てとかするイメージないぞ。上から目線で人に命令してるイメージが強い。

でもよく考えたら俺と出会って間も無く没落したからそこまで態度のデカイところは見ていないのだ。


「失敬な!子供の面倒くらい見れる!」

「はいはい、じゃあジル。アルバが怪我しないように気をつけてね?」


なんだか姉さん女房みたいだな。メイの方が年下なのに。


メイは人を引っ張っていくのが上手いタイプなんだろうな……。

祐奈達の旅の話を聞いてもメイが大体のことを決めていたらしいし。ってか勇者ホントにポンコツだな。

戦う以外に能がないのか?


と、俺がそんなくだらないことを考えていたら三人はさっさと先に進んでいた。


「リュート。置いてくよ。早く……」

「おう」


今日は祐奈やルーナともかなり久し振りに会える。

あの二人は転送魔法で村に直接行ったらしいので、家に戻ればすぐに会えるだろう。


俺ははやる気持ちを抑えながら家路につくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ