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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
七章 竜人界編 其の二
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終結


「おまえたひ、はなひがすすまんへはないか……」


フガフガとアスタお手製のオヤツを齧りながらしたり顔で目を閉じるミド。

ちなみにこのオヤツの正体は不明である。アスタは料理が得意らしいのだが、その全てにおいて正体不明の物を作るのだ。材料も調理方法も、そもそも何を作ったのかすら不明だ。

俺たちはコレを正体不明料理(アンノウン)と呼んで恐れているのだ。ちなみに味は良かったりする。


「まだまだあるっすよ〜。実は……ここだけの話、俺の料理は結構不人気でして……」

「何?ほうなのか……、こんなにふまいのに……」


もごもごと口いっぱいにオヤツ(正体不明)を頬張りながら目を見張るミド。よく口に入れられるなお前。

ゴクリとオヤツを飲み込んだミドは居住まいを正した。


「で、どこまで話したかな……」

「王の力の話だな」

「ああ、そこの役立たずの話までいったな」


ジルを一瞥して言うミド。

全く、ひでえ言われ様だ。


「まあ、そうだな……。魔神と獣神の方には私が話をつけておいてやろう。問題は妖精神だな……。彼奴は気紛れで快楽主義だから理屈が通じんのだ」


嫌な神様だ。ミドも割と変な性格してるがな。


「魔神と獣神には話が通じるのか?」

「ふふふ、奴等は私にだけは逆らえんのだ……」

「え、何で?」

「幼い頃から恐怖を植え込んでやったからな。天に逆らえてもこの姉にだけは逆らえんのだ」

「三姉妹なのかよ⁉︎」

「いいや、獣神は弟だ。魔神は妹だが」


ハイスペックな兄弟だな。

三人共が五界神とは。


「まぁ、魔神はお前達の真祖でもある。私よりも話のわかるやつだし、お前が相手でも問題ないだろうがな。お前達の次なる目標は他国の王との意思の共有だな」

「ああ、すぐにでも動かねえと……」


この世界が破滅してからじゃあ遅い。

ローグが何かする前に俺たちも行動を起こす必要がある……。


「いや、その必要はない」

「な、何でだ?」


ミドが静かに言い切る。

何の根拠があってそんな事言うんだよ?


「神の時間の感覚はお前達地上の存在のものとは根本的に異なる。まぁ、簡単に言うと時間にルーズなのさ……。奴も元は人間とはいえ400年間神をやっているのだ。問題ないだろう。それに……」


そう言いながらミドは俺の顔を見て目を細めた。


「それに?」

「それにな……、お前には何よりも優先すべき問題がある筈だ。分かるだろう?」


え、分かんないんだけど。


「?」

「本当に分からんのか……、飛んだバカ亭主だな……。貴様子供が生まれるんじゃないのか」

「え……あ、あああああっ!」


忘れてた!

いや、忘れてたっていうか何というか、その、頭から吹っ飛んでた!

やべえ!そうだ俺には子供が生まれるんじゃんか!早く帰らねえと!


「早く帰れ。当分は育児に専念すると良い。神々との戦いが始まると家族との団欒なぞ無くなってしまうぞ」

「そうだな!こうしちゃいられねえ!早く帰るぞ!」


と、俺がダッシュで帰ろうとするとアスタが俺の服を引っ張った。


「リュート様、ここからカイル村までどんだけ時間が掛かると思ってるんすか?馬が無いと何週間もかかるっすよ……」

「じゃあ馬!」

「ある訳ないじゃないっすか……」


何やってんだよ俺は早く帰りてえんだよ!

子供が生まれてたらどうしてくれるんだ⁉︎

しかもガチでそろそろ生まれる頃合いなんだよ!これが冷静でいられるか!


と、俺が焦りまくって平常心を失っていたその時、一人の冷たい風が吹き荒れた。


この風は……まさか……!


「魔王様、遅くなり申し訳御座いません。このルシファー、ただいま参上いたしました」


やはりルシファーだった。

もう不自然に風が吹いたら全部ルシファー。そんな感じある。

ご丁寧にシャガルの外に避難させていたリーシャ達を連れてきている。


「リュート!無事⁉︎」

「ああ、何とかな……、ルーナとメイは無事か?」

「一応……ルーナの瘴気は体外に排出したけど……、意識が戻らなくて……」


あとで確認してみたところ、どうやら気絶しているだけのようだ。

体の方は問題なさそうで良かった。


と、メイは意識を失っているジルの元へと駆け寄る。


「ジル!大丈夫⁉︎ごめんね……私の為に……」


うん、確かにお前のために怪我したんだけど、多分お前が想像してる理由とは違うと思うな。


「メイ、こんなクソトカゲとは別れてほうが良いわ!コイツ鬼畜よ⁉︎」


お前は変なことを吹聴するな。認めてやれよ良い加減。

あとクソトカゲって……竜人族も鬼畜も何の面影も無くなってしまった。


「もう……お姉ちゃんってば……。ジルは良い人だよ?優しいし、強いし……」

「私のほうが強いのに!」


祐奈が剣を地面に何度も突き刺しながら駄々っ子のように言った。

拗ねるなよ。

お前のほうが強いことくらいみんな知ってるさ。


「はいはい、お姉ちゃんのほうが強い強い。だって勇者様だもんね」

「分かればいいのよ。あ!そ、そんなことより体は大丈夫なの⁉︎吐き気とか気怠さとか無い⁉︎」

「?」


ある訳無いだろうが。

ミドの口ぶりからして妊娠してまだ数週間も経ってないだろう。

そんな短期間でつわりが来る訳無いだろ。ちょっとは考えろよ。


どうせあのシスコン勇者の事だ。

妹が妊娠したと聞いて冷静な判断が下せていないのだろう。

というか、メイもルーナも祐奈の妹ではなく従者という立ち位置のはずなのだが……いつの間に妹認定してたんだ?

俺たちと出逢う前のこいつ達の生活がそこはかとなく気になる。


というか、メイはまだ自分が妊娠していることを知らないだろう。


「言ってやれよ、祐奈」

「うぐぬぐぐぐぐぐ!この鬼畜を殺して私の子供ってことにするのは……」

「ねえよ!」


このバカ!変な事考えてねえで早く言え!

大体、ジルを殺してもお前の子供ってことにはできねえよ。


「メイ、よく聞いて?実は……メイは今妊娠してるの……」

「え……?」

「ショックだよね……?こんな鬼畜トカゲの子供だなんて……」


おい良い加減にしろ。もうそこまで行くと洗脳作業じゃねえか。

しかし、メイは祐奈の態度など意に介していない様だった。


「ううん、私……嬉しい……」

「………………」


祐奈さーん。白目剥いてますけど大丈夫ですかー?

口からエクトプラズムしてますけど大丈夫ですかー?

髪の色まで白くなってきてますけど大丈夫ですかー?


メイは少し頬を赤らめて意識の無いジルの側に膝をついた。


「ジル、ねえ起きて、ジル」


揺すっても起きない。

だって先程祐奈の怒りの鉄拳が顔面に突き刺さって思う存分脳みそをシェイクしたからな。

流石にまだ目は覚めないだろう。


「もう……!ジルってばしょうがない人」


そう言ってメイは片手でジルを担ぎ上げた。

流石、女性とはいえ獣人族。膂力は相当なものだ。


「あっちにルシファーさんの持ってきた馬がありますから、それに乗って帰りましょう」


メイはそう言ってさっさと行ってしまった。

後ろにルーナをおんぶしたリーシャが続く。

俺とアスタと祐奈も黙ってそれに続いた。


「ミド、今回は本当に助かった」

「何、お互い様だ。何かあれば相談しに来い。……と言いたいところだが、私の家にお前達は物理的に来れないからなぁ……」


物理的に行けない場所なんだな、天界って。まぁ予想はしていたが。


「ルシファーよ、お前が伝言役として来い。出来るな?」

「はっ」


ミドとルシファーは知り合いなのか?まぁルシファーも有名人らしいしお互いに知り合いでも不思議じゃないか。

それにルシファーだけは俺たちの仲間内で神族だからな。天界への行き来も可能だろう。


「では、帰りましょう。魔王様。アクア様がお待ちしているでしょう」

「だな。じゃあミド、世話になったな」

「なら、子供が外出出来るようになったらルシファーにうちに連れてきてもらえ。お前の子の顔を見てみたい」

「すっかり婆ちゃんだな」


今のあんたは孫ができたら連れてこいっていってる婆さんだぞ。


「失敬な。私は歳は取っているが、この通り肌はピチピチだ」


ピチピチだって言っても所々鱗でガチガチなんだが……。

まぁ、見える範囲の肌は確かに張りがあってとても4000年も生きているようには見えない。神族は歳をとらないのだろうか?


「では早く帰れ。お前達には帰りを待つ者が居るのだろう?」

「ああ。じゃあな、ミド」

「さらばだ。お前達の無事を祈っている」

「ありがとうございましたー!ミドさーん!」


メイとルーナを抱きしめながら祐奈が大声を出した。

ミドは普段の優しげな眼差しでそれを見つめる。


「ミドガルズオルム様、我が主を救ってくださり感謝の言葉もありません」


ルシファーが跪いて礼を言っていた。


「ああ、堅い堅い。窮屈だ。さっさと行け」

「はっ!この恩はいつか必ず!」


ミドは何も言わずヒラヒラと手を振った。

すると、一瞬の内にミドの姿はどこにも見えなくなった。

また神の不思議な力とやらで何処かへ行ったのだろう。奴らに俺たちの常識は通じない。

ちなみに日本の常識はこの世界に既に通じないので悪しからず。


「さてと、帰るか」

「そっすね。早く帰ってゆっくり布団で寝たいっすよ〜」


アスタは髪をかきあげながら気怠げに伸びをした。

今回は激戦だったからな……明日には全身筋肉痛かな?いや、鍛えてるし大丈夫か……?大丈夫だと良いのだが。

しかし、これでやっと少しの間平和になるな……。


「やっと一息つけますね。当分はジルのドタマをカチ割ることが増えるでしょうけど……」


平和とは程遠い不穏なセリフが聞こえたんだが?


「殴るなとは言わん。ドタマカチ割るのだけはやめてやれ」

「分かってますよ。冗談ですじょーだん!」


本当に冗談なのか?


俺たちの竜人界での戦いはこうして幕を閉じた。

振り返ってみると戦闘自体は呆気なかったがな……。

だが、俺たちの今後の課題や、目的が決まった上に様々な情報を手に入れることができ、強大な戦力が仲間に加わった。


「よし、早く帰って嫁の顔見ねえとな!」


俺は力強く膝を叩いた。

今から少しドキドキしてきた。


「ですね、既に生まれてたら目も当てられないっすけど」

「やめろよ!フラグになったらどうすんだ!」

「大丈夫っすよ、そんなことぐらいでリュート様は死なないっすから!」

「お前、フラグは死亡フラグだけだと思ってんの?」

今回でこの章は大体終わりです。後は後日談とか

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