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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
七章 竜人界編 其の二
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鉄拳制裁


人神(ヒトガミ)……?それってさっき言ってた人神(ジンシン)と何が違うんだ?」


多分字面は同じだよな……?それ。


「簡単だ。人神(ジンシン)とは生まれながらに神である、人族の創造主だ。対して人神(ヒトガミ)とは元は人間だった神だ。お前たちには驚きかもしれんが、ローグは元々地上の存在だったのだ」

「う、嘘だろ……?」


いま明かされる驚愕の真実。

というか、確かに今思い返してみるとローグの話し方は人間臭い。というか世俗に染まった感じがする。


「400年前、ローグが神になった時の詳しい事は私にもわかっていない。ただ、奴が人間から神になった事以外はな。そして、結果だけを述べると、ローグは人神(ジンシン)と当時の人間界の王族であったダリオ家を滅ぼし、人神(ジンシン)の後釜についた後、新たにガレア家を人間界の王の座につかせたのだ」

「だから今の人間界の王族だけは違うって言ってたのか……」


神も死んで王も滅びた国。それが人間界。

でも、それじゃあ……。


「王は五人揃って初めて神を殺す力を発揮する。つまり、この時点で地上の存在が唯一持っていた神に抗う手段を失ってしまった事になる。そこで人間達が生み出したのが『勇者召喚システム』だ」


ここで『勇者召喚システム』?

勇者って確か……。


「おいおい、勇者って魔王を倒すために召喚されるものだったんじゃないのか?」

「それは違う。勇者召喚システムとは王族としての力を突然変異的に持ってしまった人間を別の世界線から無理矢理に召喚する特殊召喚術式だ。勇者とは、王族ではないにも関わらず神を殺すことのできる存在なのだ。勿論他の四種族の王の力を必要とするがな」


勇者とは世界を救う存在。

つまり、魔王を倒すためではなく、神を殺すための存在だったのだ。


「でも、ちょっと待てよ。なんで神を殺す必要がある?ローグみたいな奴が天界にはごろごろいるってのか?」


あんな横暴で自分勝手な奴が何人もいたらそれこそ既に世界は滅んでるだろ。


「天上の存在と地上の存在は根本的に価値観とが違う。更には世界に及ぼす力の強さもな。ただ神々が癇癪を起こすだけで地上の世界は滅びる。その為の抑止力が神殺しの力だ。だから地上の世界で唯一神に対する抑止力を持つ王族が権力を握っているのだ」


色々謎が解けてきたが……。

それでもまだ疑問はある。


「だったら何で勇者と魔王は争ってるんだよ?」

「勇者と魔王の争いは人族と魔族の代理戦争に過ぎない。二種族な争い始めたのはここ10年ほどの出来事だ。丁度ダークネスフレイムとケンカ別れした時期と一致するからよく覚えている。これは推測だが、人間界のバカな魔導士が勇者を戦争の道具に流用したのだろうさ」


「嘘……」


祐奈が小さく呟いた。

目には暗い光が差している。


「嘘でしょ……?あの人達は……私を騙してたの……?」


祐奈が召喚された時に世話になったという人族の事か。


「そうだ。残酷な様だがな。勇者の本来の役目は空いてしまった王の役目の補完だ。魔王を倒すことでは断じて無い」


今のミドの話を聞く限り勇者は魔王を倒してはいけないのだ。それは逆も然り。

神に対する抑止力を保持し続ける為には両者は争ってはいけないのだ。絶対に。


「これが真実だ。奴らがお前達を殺そうとしている。それ即ち自分達が殺される様なことをするつもりなのだ。ローグは一体何をしようとしているのか……。それを知る必要があるな」

「だな。相手の目的も分からなくちゃ止めようがない」

「そう……ですね。私も王としての役目を果たしたいと思います。まぁ、王では無いですけど……」


祐奈は自分を召喚した人間に騙されていたことを知ったのが相当ショックだったのか、かなり元気が無い。

普段ならここでテンションあげて叫んだりするところなのに。


「だったら逆に俺たちは王族が殺されるのを阻止しねえとな……」

「先ずは近場の獣王と竜王に声を掛けるべきだろうな」


ミドが思案顔で頷く。

しかし、獣王だの竜王だの俺は知らんぞ。会えるもんなのか?


「お前が魔王だという証明が出来れば謁見は容易だろうがな……。だが、その点は気にせずとも良い。これを持って竜王に会いに行け。話に応じてくれる筈だ」


ミドは俺に何やら指輪を差し出してきた。

キラキラと緑がかった淡い光を薄く放っている。


「何だこれ」

「私の鱗から作った装飾品だ。竜人族なら見ただけで価値がわかる」

「え、いいのか?そんなもん貰っちまって」

「構わんさ。気にせず受け取れ」


至れり尽くせりだな。

フレイム……。お前の母ちゃんいい奴だな。性格悪いとか言ってごめんな。


俺はその指を右手の人差し指にはめた。

ちなみに左手の薬指にはちゃんと青い宝石のはまった指輪がキラリと光っている。

あの激戦の中でも微塵も光が色褪せていない。

というか、何で砕けてないんだ?そりゃあ砕けてない方が嬉しいけどさ、普通壊れるだろう。あんなに激しい戦いだったのに。


「さてと、そこの二人。起きてるだろう。寝たフリをするな」


ミドがジロリと後ろで寝ているジルとアスタを振り返りながら言う。

ビクッと震えて二人は渋々といった様子で起き上がった。


「は、はい……すいませんっす」

「何だよ……?龍神サマ」

「お前、竜人族のクセに態度がなっていないな……?」


ミドがジルの頰をギチギチと抓る。

このギチギチという音は肉が悲鳴をあげている音だコレ。

ヤバイヤバイ、千切れるだろ。やめてやれよ。


「すいませんでした!やめて下さい!」


耐え兼ねたジルがいつものコイツからは想像も出来ない声を漏らした。

物凄く情けない声だった。

事情は分かってるし、仕方が無いのも分かるけど情けなかった。


というか、この場のパワーバランスがどう考えてもおかしいだろう。


「お前、竜王との謁見の用意を整えてやってくれ。出来るな?」

「何で俺が……」


ジルが面倒くさそうに言った。

そりゃジルがいくら竜人族の貴族とはいえ、王様に謁見する用意なんて整えられる訳ないだろうに。


「何で?私が自分の領域の内部の事をなにも知らないとでも?言っておくが私は王族の事情くらいは把握している」


王族?

いやいや、ジルは王族じゃないだろう……。

え、もしかして……?


「お前、王族なのか⁉︎」

「違う」


なんか違うっぽい。口調がガチだった。


「分かったよ……、話してやる。俺の親父が平民出身って話はした事あるよな?」

「ああ、聞いた事ある」

「で、俺は貴族だ。まぁ、今や領地がなくなって没落貴族だがな。でもな、普通平民はどんなに頑張っても貴族にはなれねぇんだよ」


え、そうなの?

じゃあ、どうやって貴族になったんだよ?


「俺の親父の事を気に入った前竜王が親父に自分の娘を嫁にくれてやったんだよ。だから親父は貴族になったんだ」

「それって……つまり……」

「俺の爺さんは前竜王って訳だ。俺のお袋は王女だ。元だけどな」


え、じゃあコイツ王族じゃん。

王の力を受け継いでるんじゃん。


俺は目を見張った。

まさか長く共に行動していたにも関わらず俺の全く知らなかった事実がこんなところで明かされるとは思っていなかった。


しかし、驚く俺をよそにミドは俺の肩に手を置いて言った。


「リュート、コイツには王の力は無い。王の力を受け継ぐには二つの条件があるのだ」

「条件?」


王族の血を継いでるだけじゃダメなのか?


「一つは王族の血を継いでること。そしてもう一つは王族の家名を受け継いでいることだ。ジルは後者の条件を満たしていない」

「じゃ、じゃあ……」

「残酷な言い方だが、ジルは神との戦いではなんの役にも立たんのだ」


ミドは静かにそう言い切った。


「おい……そんな言い方無いだろ!」

「やめろ、リュート。良いんだ。俺が役に立たねえのは事実だ」

「貴様が今の家名を捨て、王族の名を継げばいい。それでお前は戦う力を手に入れることが出来る。どうだ?」


コレが最後の手段なのだろう。

ミドは腕組みしてそう問いかけた。


「断る。確かに俺はあの家は嫌いじゃねえよ。でもな、親父の名を捨てるのはお断りだ!」


そうだ。ジルがこの名を捨ててしまったら、ドラグーンの名が消えてしまう。

ジルはそれだけは容認し難かったのだろう。


「まぁ、そう言うと思ったさ。ならば、貴様が力を持つことは難しいな」

「何が言いたい……?」

「貴様の子供をドラゴニス家の養子にすればいいのだ。それでお前の子が戦う力を得ることが出来る」

「それもお断りだ。俺には子供はいないし、もし居たとしても他の家にやるつもりなんて微塵も無い!」

「いるさ」

「あ?」


ミドの静かなセリフにジルが惚けた声を出した。


「貴様の子は既にこの世に生を受けている」


その時祐奈の身体がブレた気がした。


「死ねえええ!」

「あぶねぇぇぇぇ!」

「うおおおおおおお⁉︎」


祐奈がジルに飛びかかった。ジルは流石の反射神経で飛びずさる。

祐奈は片手に『ブレイブフォース』で強化された両手剣を握っている。

完全に真っ二つにするつもりだったのだろう。殺気が全身から放たれている。

祐奈はミドのセリフで察してしまったのだ。

自分が実の妹のように、いや、それ以上に溺愛している女の子に種付けした鬼畜竜人が目の前に居るのだと。


俺は咄嗟に手が伸びて祐奈を羽交い締めにした。


「落ち着け祐奈!正気に戻れ!」

「ガルルルルルル!ゴロス!ゴロス!」

「おいお前誰だ⁉︎」


もう祐奈が見た目以外原型をとどめていないのだが。

何だこのバーサーカーは。って力強いな!この力をさっきの戦闘で発揮しろよ!


「この鬼畜竜人!あの子になんてことを!この鬼畜!鬼畜野郎!死ね!」

「鬼畜鬼畜言うな!俺は鬼畜じゃない!」


必死の弁明。そりゃジルだって命は惜しいに決まっている。

というか勇者に殺されたくはないだろう。


「このやろおおおおおお!じゃあ一発殴らせろおおおお‼︎リュートさん!放して下さい!放せえええええ!」

「落ち着けえええええええええ‼︎」


ダメだ!コイツ力が強くなり過ぎてる!本当に女なのか?コイツは。


「これが修羅場ってやつっすよ、龍神様」

「ほぅ……これが噂に聞く修羅場か……。中々興が乗る光景だな……」


なんかすぐ側でアスタとミドが仲よさげに話している。

いいから取り敢えずこのバーサーカーを止めるのを手伝ってくれ。ってか興が乗ってんじゃねえよ。


「お姉ちゃん結婚なんて許さないからね!こんな鬼畜トカゲなんかと!」


この場にメイは居ないというのに、祐奈は何故かメイに言い聞かせるよう言った。

あと竜人をトカゲって言うな。こいつは普通に人っぽい見た目してるだろ。ところどころに鱗あるけど。


「良い加減鬼畜鬼畜言うのやめろ!」

「まぁ待てよ、まだメイとの子だと決まった訳じゃねえだろ?」

「何⁉︎女を取っ替え引っ替えしてたのか⁉︎メイとは遊びだったのか⁉︎殺してやる!」

「ややこしいなお前⁉︎」


俺は祐奈の蒸気した態度を収めるために行ったのに完全に逆効果だった。すまん、ジル。


「お前はどうしたら納得するんだ?メイがジルに振られたら良いのか?」

「コイツがメイを振る⁉︎何であんな良い子を!ブチ殺すに決まってます!」

「じゃあどうすりゃ納得するんだ⁉︎」


もう必死だ。

祐奈はさっきから剣にかけた手を離そうともしない。

気を抜いたら抜剣してジルの首を斬りとばす勢いだ。


「メイがコイツを振るなら許します。でもメイは良い子だから振るのならそれ相応の理由があるはず。その理由如何によってはやはりブチ殺します。そしてメイを孕ませていたら、その罪で八つ裂きにします」

「ジル、諦めろ」


もうダメだこいつ。話が通じないんじゃない。既にジルに未来なんてなかったのだ。ちゃんちゃん。


「ちなみに、ジルの子供はメイという獣人族の女との間に出来た子供だ」

「やっぱ殺すぅ!八つ裂きにするぅ!」

「お前は少し黙ってろ、ミド!」


余計なことを言うな!ジルの死期が早まったじゃねえか‼︎


その時、ジルは地面に膝を着いて土下座の姿勢をとった。

まさか、この状況で「お義父さん、娘さんを僕に下さい」をやる気なのか⁉︎お前正気か⁉︎


「俺はメイと遊びで付き合っていたつもりはない。お前が長いこと面倒見てきたんだ、いきなり俺みたいな奴が結婚すると言っても納得出来ないのは分かる。でもこの通りだ。必ずメイを幸せにしてみせる。だから怒りを収めてくれ。頼む」


ジルは完璧な土下座をやってのけた。地面から1cmの所で額を固定して動かない。まさに完璧な社畜のポーズ。

貴族の生まれでプライドの高いジルの事だ。土下座なんて生まれてから一度もやろうと思った事すらないだろう。


くっ……感動だ……っ‼︎


「いや、それでも一発殴るけど」


無慈悲。


ドゴォォッ!


「ぐぼあぁぁっ!」


しっかりと『ブレイブフォース』で腕を強化して光の打撃をジルの顔面に突き刺した。

もう比喩表現でも何でもなく、突き刺した。


ぐったりとしたジルを一瞥すると祐奈は拳を収めた。


「村に戻ったらメイとルーナと四人で家族会議よ」


『家族会議』とは……。お義父さんは一応新しい息子を認めるには認めたらしい。

まぁ全く話の通じない奴じゃないしな。


祐奈は少し晴れやかな顔をしていた。


水を差すようで悪いんだが、あの……多分ジルのやつ……気絶してるんだけど……。

祐奈のこのセリフを聞かせてやりたかったな……。

ジルとメイの話を番外編とかで書きたい。

どのタイミングで書くべきか悩んでる。

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