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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
七章 竜人界編 其の二
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祐奈VSハデス


「てめえ!当たってんだよ!邪魔すんな!」

「それはこっちのセリフっすよ!」


二人は押し合いへし合いしながら我先にと死霊(リッチー)を血祭りに上げていく。


「あんたが邪魔なんすよ!俺の邪魔をしないで、もっとあっち行って欲しいっす!」

「んだとコラ!お前から先にぶっ潰してやろうか!」

「やれるもんならやってみろっすよ!」


その二人の掛け合いをよそに「無視するな!」とばかりに二人に襲い掛かる死霊(リッチー)達。

まさにカオス。


二人はお互いを巻き込むように気をつけながら死霊(リッチー)達を屠っていく。

完全に悪意がこもった闘いであった。

ただ一つだけ幸いな点があったとすれば、二人共、範囲攻撃魔法を得意としていない点だろうか……。


しかし、効率よく死霊(リッチー)を倒しているところを見ると、二人の馬は合わない様だが息はあっているらしい。


その時、二人の目の前に巨大な死霊(リッチー)が出現した。


「なっ、んじゃこりゃ……!」

巨死霊(ギガント)っすか……。実物を見るのは俺も初めてっすよ……。にしてもデカイっすね……」


二人は巨死霊(ギガント)を見上げながらぼんやりと呟く。


「巨大化ってなんか最後の手段って感じだよな」

「そっすね」

「って事はあれは、余裕が無いってことで良いんだよな?」

「そうかも知れないっすね」


ジルは少し詰まりながらアスタの顔を見た。


「一時休戦しますか?」


アスタが助け舟を出す様に言った。

流石に意地を張っていて勝てる様な相手では無い。


「しゃあねえな、お前はアレの後だ!」

「アレの後は祐奈さんとリュート様を助けるんすよ」


アスタはやれやれといった調子で肩を竦めた。


「わ、分かってるっての!この闘いが終わったらお前をぶっ飛ばすってことだ!」

「リュート様が言ってたんすけど、『この闘いが終わったら……』とか言う奴は死ぬらしいっすよ?」


死亡フラグである。

しかし、死亡フラグは説明されることによって生存フラグにもなるし、さらにそのメタ発言によって死亡フラグになるのだ。

恐ろしや死亡フラグ。


「じゃあ、リュートが間違ってるってことを証明してやんよ」

「ま、俺はどっちでも良いっすけどね。あんたが死んだら俺は気分が良いし、あんたが生きてたら戦力が減らなくて助かりますし」

「てめえ、今すぐ口きけなくしてやろうか」

「あ、来たっすよ。ちゃんと前向かないと死ぬっすよ」

「ちっ!問答は後だ!」


二人は巨死霊(ギガント)の攻撃をかわしながら同時に地面を蹴った。


---


時間はまた遡る。


祐奈は現在、ハデスと対峙していた。


方や神の一角、死神。

方や神の力を与えられし最強の人族、勇者。


「勇者よ……貴様にも用があるのだ。簡単な用だ……」

「聞くだけ聞いたげる」

「死ね」

「断る」


二人の間に一陣の風が吹く。

ハデスは虚空から大鎌を出現させ、肩に担ぐ様に構えた。

祐奈も油断なく剣を携える。


「ならば、殺すまで!」

「『ブレイブフォース』!」


ガキィィィインッ!


二人は彼我距離の丁度真ん中で剣と鎌を交差させる。


「だぁぁぁぁっ!」


不意に、祐奈がハデスを上空へと蹴り上げた。


「なっ⁉︎」


不意をつかれたハデスは空中で目を見開く。


祐奈の戦闘スタイルは武術や剣術のそれではなく、完全にストリート喧嘩殺法である。


元々は日本でぬくぬくと育った女子高生だった祐奈に武道の心得などあろうはずも無い。

しかし、5年以上の異世界生活によって養われた戦闘センスと元々の運動神経も相まって祐奈の戦闘スタイルは、より勝利することにのみ特化したスタイルとなっていたのだ。


剣術のように剣のみを使うのでも無く、武術のように己の肉体のみで戦うわけでも無い。

祐奈は長い戦闘経験により、1秒1秒臨機応変に、そして素早く対応するための戦闘スタイルを自身で確立していたのだ。


「このガキがぁっ!」


ハデスは空中で自身の体制を無理やり整え、鎌を振り上げた。


「『疾風死鎌(ウインドサイズ)』!」


空を切りながら風の斬撃が飛来する。

しかし、


「ふんっ!」


ぱしぃぃんっ!


祐奈は剣を一振りするとその風の斬撃をかき消した。


「その程度の攻撃が聞くとでも……?今度はこっちの番よ……。たぁぁぁっ!」


祐奈は地面を蹴って空中のハデスを吹き飛ばした。


「ぐおっ!」

「おりゃぁぁぁっ!くたばれぇぇっ!」


祐奈は少し目を血走らせ、ハデスの飛んで行った場所に無数の光の斬撃を叩き込んだ。


「はぁっ……!はぁっ……!」


大地に降り立った祐奈は肩で息をしながら前方を睨みつけた。

敵の放つ殺気は全く衰えていない。


「アンタ……、神の割に弱いね……。それでも神なの……?」

「…………」


瓦礫を吹き飛ばしながらハデスが姿を現した。

先程まで羽織っていた漆黒のローブが何処かに行っている。


「俺が弱い……か。的を得てはいるな……。だが、俺は自分が弱いことは誰よりも知ってるさ……」


そう言ってハデスは自嘲気味に笑った。


「俺はずっとこの能力をもって生まれた自分自身を疎ましく思っていたさ……。ローグが現れるまではな……」

「話長いよ」

「もう終わりだ。俺はこのた他者に対して依存する能力に特化している自分が嫌で嫌で仕方が無かったのだ」


ハデスは目を閉じで続けた。

「まぁ、この話は良いか。長いし。という訳でだ、まぁ俺はローグのお陰で自分に自信が持てたってわけさ。そのローグがお前らを殺せって言うんだから殺す。それだけだ」


そう言ってハデスは両手を広げた。

広げた両手には黒い光が煌々と光っている。


「この能力でな……っ!」


ズズズズズズズ……!


「コレは……っ⁉︎」


周囲に黒い影のようなものが広がり、そこから大量の死霊(リッチー)が出現した。


「俺の死霊術(ネクロマンシー)は地上の魔導士が使う奴とはレベルが違う。あの程度……幾らでも出せる……」

「い、幾らでも……⁉︎」

「あぁ……、幾らでもだ……。ほぼ無限に出せると言ってもいいだろう……」


大量の死霊(リッチー)が祐奈に襲い掛かる。


「だぁぁぁぁっ!」


祐奈はすぐさま『ブレイブフォース』で周囲を一気に斬り払う。


「だから……どうした!だったら、私が全部斬り飛ばしてやる!」


祐奈は龍が咆哮するかのように吠えた。


「絶望しろ。そして死ね。ローグの為に」


ハデスは虚空を見つめながら死霊術(ネクロマンシー)を更に使用した。


「こんな使い方もできる」


死霊(リッチー)が青白い影のような形になり、ハデスの両腕にまとわりついた。


「何を……」


ハデスの全身に青白いオーラのようなものが発生した。

全身のオーラに反応するようにハデスの魔力が上がっていく。


「こうやって死霊(リッチー)から魔力を頂く。そうしたら……俺は弱く無い……」


その時、ハデスの姿が消えたかと思うと祐奈の背後に突然現れた。


「え……っ」


ドッ。


ハデスの右腕がまるで触れるかのように祐奈の右腕を撫でた。


次の瞬間、気が付いたら祐奈は近くの瓦礫の中に頭から突っ込んでいた。


「ぐぅ……ぁぁ……、ううぅ……!」


頭から血がボタボタと吹き出る。


(意味が分からない……。一体何が起こったの……?)


祐奈は頭を押さえながら立ち上がった。


「くっ……、まず、血を止めなきゃ……」


祐奈は治療魔法を使い、頭部の血を止血した。


「何……?あの力……アイツ、突然強くなって……?」

「知りたいか……?」

「っ⁉︎」


ドゴォォッ!


祐奈が振り向いた瞬間にはまた、空中をすっ飛んでいた。


「うああっ……!」

「流石に地上の存在に劣るような実力の訳無いだろ……」


ドスッ!


祐奈の腹部にハデスの蹴りが入る。


「ぐぁっ!」

「ザコが……、粋がるなよ……!貴様ら矮小な存在が俺たち神族に勝てるわけ無いだろうが……!」


ドスッ!


「くうぅ……!」

「お前は人間の割には強かったさ……。ローグに目をつけられたのが運の尽きだったな……」


ドスッ!


「くっ……」

「お前を殺した後は……、あの竜人族と魔族……そして、魔王をぶっ殺して、最後に逃げた妖精王のガキだ」


その時、振り上げたハデスの足を祐奈が掴んだ。


「なっ……」

「お前ぇ……っ!そんな事言って……私が爆発するとか……思わなかったのか……?」

「貴様っ……⁉︎」


祐奈はグッと地面を押しながら振り絞るように声を出した。


「私は勇者だぞ……っ!勇者はなぁ〜……強くて……優しくて……どんな時も格好良い……ヒーローなんだよぉッ!」


祐奈は眩い光を全身から放出しながら立ち上がった。


「全部守るって……リュートさんが言ってた……。だから、私は……その、リュートさんを守る!」


祐奈は目に光を帯びながらハデスを殴り飛ばした。


ドカッ!


「さぁ、来い!私がお前をぶっ飛ばしてやる!みんなには手出しさせないわ!絶対に!」

「全く……一つ学んだぞ……。人間は追い詰めずに殺せってことで良いか?」

「人間に喧嘩売るなってことよ!」

今回は少し長めに書きました。

二日に一回投稿はもう少し続く予定です。

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