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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
七章 竜人界編 其の二
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合わない二人


俺はすぐに突っ込むことはせずに少し距離を置いた。

爺さんに『魂喰(ソウルイーター)』を使用されてしまった今、突っ込むのは得策とは言えない。

先程の爺さんのように、今度は俺が待ちに徹して『絶対不侵圏(アブソリュートライン)』と『魔力反射(マジックカウンター)』で迎え撃つ方がまだマシだ。


しかし、まだマシという程度なのだ。


実際問題、爺さんに『魂喰(ソウルイーター)』を使われてしまうと俺はもう尋常じゃ無いくらいにやばい状況なのだ。


ヒュッ!


不意に、初級雷魔法の『雷弾(ブリッツボール)』が飛来した。

何発も放っているところ牽制弾の様だ。

俺はそれを躱しながら高速で移動する。


「はぁぁっ!」


そして、俺は仕掛けた。


このまま待ち続けても埒があかない。

このまま遠間からちまちま攻撃されて時間稼ぎをされる様では意味が無い。

この勝負はさっさと決めたいのだ。


「悪いな、爺さん!」


俺は身体を一気に強化し、高速で接近した。

もし、カウンターを食らった場合は『絶対不侵圏(アブソリュートライン)』でなんとか迎撃するしか無い。


俺は拳を振りかぶり、打ち抜く様に振り抜いた。

しかし、そこに爺さんはおらず、いつの間にか俺の真下にいた。


「なっ⁉︎」


ドゴッ!


俺は下から上空へと蹴り上げられた。

やばい、逃げ場が無くなったッ!

下からはこちらへと狙いを定める爺さんの姿が。


これは本格的にやっべぇな……。


俺は妙に冷静だった。


どう考えても逃げ場が無い。

身動きの取れない空中で『魂喰(ソウルイーター)』によって得た多大な魔力の塊を向けられているのだ。

魔力反射(マジックカウンター)』による攻撃反射も間に合わないほどの猛攻を浴びせられるのは既に決定事項であろう。


なのに俺は冷静だった。


これは、走馬灯だろうか?俺は昔のことを思い出していた。


どこかで聞いたことがある。走馬灯とは、自分が危機的状況で生き残る為に自身の記憶を一気に検索する行為によるものだと。


でも俺は生き残る方法なんて見ては居なかった。


俺は落下しながら異常に加速した思考で昔の思い出に浸っていた。

仲間達のことだ。

仲間達との楽しかった思い出や、仲間達の笑顔が瞬時に頭の中を駆け巡る。


「死なせねえ」


俺は一言呟いた。


俺は何をされても死なない。

神々などの訳の分からん存在ならまだしも、少なくともジジイの攻撃なら、いくら食らっても死ぬことは無い。


どのみち反射は間に合わない。


だったら魔力を温存しよう。


爺さんの手が光り輝く。

今にも俺に多量の雷魔法が襲いかかるだろう。

俺は不死身だが、痛覚が消えているわけでは無い。もちろん俺は痛いのが好きな変態でも無い。


それでも俺は次へと繋げるために。


「『魂喰(ソウルイーター)』」


あえて防御は何もしない。


俺は両手を広げて叫ぶ。


「うおおおおおおおおおああああ‼︎‼︎」


次の瞬間、俺の身体は消し飛んだ。


---


俺は朦朧とする意識の中、ぼんやりとだが、明確な目的意識があった。

それは身体を消し飛ばされる前に考えていたことでもある。


俺は身体を一気に再生させた。


俺の体の再生速度はかなり異常な速度ではある。

しかし、エレボスなどの様に一瞬で再生するわけでは無い。

常人やトカゲとかと比べると比較にならないくらいには早いが。


しかし、俺の体の再生能力は魔力によってブーストすることができる。


俺は爺さんから攻撃を食らう前に一気に『魂喰(ソウルイーター)』によって魔力を周囲から無差別に吸収した。

俺に向かっていた高い魔力エネルギーを蓄えていた雷魔法からも一部魔力を奪っていたのか、それはそれは信じられない様な量の魔力を吸収していた。

それらを全て使っても完全な再生には至らなかったが、動くのには十分だった。


俺は土煙が起こる中、爺さんを見据えていた。


爺さんは勝敗は決したとでも思っているのか、俺に背を向けている。

どうやらジルとアスタの元へと向かうつもりらしい。

全く、ツメの甘いジジイだぜ。

こういうところで潜在的に俺と爺さんは似てるんだろうな。遺伝子って怖いわ。


「待てよ」


俺は『魂喰(ソウルイーター)』を使用し魔力を再充填しながら言った。


爺さんは瞬時にこちらを振り向き、振り向きざまに高出力な雷魔法をぶっ放してきた。

流石の反応速度だ。


しかし、俺はそれを躱して一気に接近する。


やはり不意を突かれたら少しテンパるんだな……。

狙いが滅茶苦茶だぜ?


「今度こそ寝てもらうぜジジイ‼︎『轟雷音震(ライトニングロア)』‼︎」


俺は地面に向かって『轟雷音震(ライトニングロア)』を放った。

地面を伝う雷と音によって爺さんの動きを止める。


「『轟雷天衝(ライトニングスフィア)』‼︎」


動けなくなった爺さんを俺は一気に消し飛ばした。


これは先程俺を吹き飛ばした魔法と同じくらいの威力だ。

普通に木っ端微塵になるほどには本気で撃ち込んだからな。ジジイもどうせ消し飛んでるだろうな。


だが、あのジジイの本体は一応霊体だ。

俺はジジイにまともに触ったのは今日が初めてなのだ。

多分霊体の状態ならば俺の攻撃も通用しないはずだし、ピンピンして帰ってくるだろう。


その時、俺のポケットの中に入っている髑髏の装飾品がカタンと音を立てた様な気がした。


俺はそれを取り出しながら少し笑って言った。


「おかえり」


俺はなんだか力が抜けて地面にぶっ倒れた。


『心配かけたの……孫』

「いいって事よ、気にすんな」


---


時は少し遡る。


アスタとジルは数百体もの死霊(リッチー)を相手に大立ち回りを演じていた。

中には上級死霊も混じっており、二人はかなりの苦戦を強いられているらしい。


「ジルさん!もうちょい大規模な魔法は使えないんすか⁉︎」

「竜人族にそういうの求めるな!竜人族は小規模で効果の高い魔法なら得意だが、大規模殲滅型の魔法は苦手なんだよ!それよりお前魔族だろ!なんとかしろ!」

「無理っすよ!俺も苦手なんすよ!大規模殲滅型魔法は!」

「役に立たねえ将軍サマだなぁ、オイ‼︎」

「アンタ、人のこと言えるんすか⁉︎」


二人ともあまり馬が合わないのか、先程からずっと口喧嘩しながら戦っているのだ。


魔王軍三大将の中でも大規模殲滅型魔法に秀でているのはベルとルシファーであって、アスタは苦手なのだ。

種族単位で見ると妖精族や人族は大規模殲滅型魔法をそこそこ得意としているが、竜人族や魔族は苦手なのだ。

ちなみに、獣人族の一部の部族に至っては魔法を全く使えない種族すらいる。


つまりこの二人、大群の敵を相手取るのにこの上なく適していなかったのだ。


しかし、二人とも化け物じみたほぼ無尽蔵の体力とお得意の身体強化能力によってその場を力でねじ伏せているのだった。


まさに阿鼻叫喚。地獄絵図。

この二人、武器を持って戦うのでは無く、素手で戦うからさらにタチが悪い。

殺す瞬間に完全にR15いや、Z指定すらされるレベルのグロ映像が広がるのだ。

唯一の救いは殺られているのが死霊(リッチー)だから死体が一瞬にして消え去るという点だろうか。


腕力で力任せに引きちぎる、蹴り砕く、貫く、圧し潰す、殴り飛ばす、投げる、ぶん回す。

おおよそ考え付く限りの暴力がそこにはあった。


「ああもう!誰かさんが役に立たないからめっちゃ時間かかるじゃないっすか!」


アスタは恨みがましい視線をジルに向けながら嫌味を言う。

この二人は本格的に馬が合わないらしい。

ジルは嘆息しながらジロリとアスタを睨みつける。


「お前ブーメランって知ってっか?」

「何が言いたいんすか!」

「お前も役に立ってねえって言ってんだろーが!」


二人はいきり立って叫ぶ。

二人とも先程の戦闘で脳内に興奮物質でも分泌されているのか、興奮した様子で言い合いをしている。

周囲にはまだ死霊(リッチー)が残っているというのに。


「言ったっすね⁉︎じゃあどっちの方が多く死霊(リッチー)をぶっ殺したか勝負っすよ!」

「おお、望むところだ!負けた方は土下座な!」

「俺が絶対勝つっすから、土下座どころか足を舐めてやるっすよ!」

「じゃあ俺はお前の言うこと一個だけなんでも聞いてやんよ!」

「じゃあ勝負っすからね!ヨーイドン!」

「あ、テメエ!卑怯たぞ‼︎」


なんだか二人の戦いが水面下で始まってしまった。

この二人……楽しそうですね。

後ろでリュート様が死ぬ気で戦ってるのに……。

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