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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
七章 竜人界編 其の二
100/220

シャガル内部

祝、100話!



「コレは……」


少し危ない気もしたが、黒い物質に手を触れてみる。

すると、そこには感触はなく、なんの抵抗もなく内部へとすんなり指が入っていった。

不安になった俺はすぐに指を引き抜く。

指はなんの抵抗も無く、するりと抜けてくれた。


どうやらこのドーム状の黒い物質には直接的な拘束力は無いらしい。

一度入ったら出られないといった類のものでは無いという事だ。


「中はどうなってるんだ……?この物質はなんだ……?分かるか?アスタ」

「いえ、ネルヴァ様は心当たり有ります?」

『いや、儂も見た事が無いのお……。困ったもんじゃ』


爺さんでも知らねえのかよ。

本格的に何かわからんぞ。


「どうする?リーシャに連絡がつかないのは十中八九コレの所為だぞ。多分皆中にいるんだ」


この物質が音信を阻害している所為でリーシャからのメッセージが来ないという可能性は大いにある。

皆が中から出てこないという事は何かしらの間接的な拘束力が働いているのだろう。

一体この物質はどんな効果が隠されているんだ?


「取り敢えず入ってみない事には始まらないしな。行くか」

「はい」


俺たちはこの物質の正体が掴めないまま、中へと入っていったのだった。


---


「コレは……」

「ああ……」


息苦しくなってきた。体の動きも少し鈍ってきた様だ……。


どうやらこの場所は俺たちの活動そのものを阻害するらしい。

何やら瘴気の様なものが辺りに漂っている。


「コレって……誰かが人為的に発生させたものっすよね?」

「当たり前だろ。街にだけこれが出現してるのが証拠だ。自然発生するものが人のいないところだけ避けて発生するなんてあり得ないだろ」

『儂はなんとも無いが……お主らキツそうじゃのう……』


爺さんは心配そうに言う。


「アンタだけでも無事でいてくれればいくらかマシだ。周辺の索敵は頼む」

『任せい孫よ!』


爺さんは霊体をフヨフヨと飛ばしながら元気良く言った。

状況に反してテンション高いなジジイ。


「リュート様、アレ!」


不意にアスタが目の前を指差した。

アスタの指す先には一人の女性が倒れていた。

俺たちはすぐにそばに駆け寄った。


「おい、アンタ。大丈夫か?」


俺が女性を揺すると気がついた様で、呻き始めた。


「う、あ、あなた方は……?」

「俺はリュート。こっちはアスタだ」

「どもっす」


俺の紹介にアスタが軽く会釈する。

こういう時、爺さんには黙っていてもらう。説明が面倒だからな。

大体、爺さんが何故霊体なのかなんて俺にも良くわかっていないのだ。


「アンタ、名前は?」

「私はミドと言います。助けてくれてありがとうございます」


ミドと名乗った女性は礼儀正しく頭を下げた。

どこか気品のある所作だ。貴族か?

服装こそ少し破れたりしてボロくなっているが、多分これも元は高い着物だったのだろう。

どうやら大事ない様だ。


「ここで何があった?それと、この空間内部で何が起こっているか分かるか?」


俺は問題の核心を問いかけてみた。

別に期待していたわけでは無いが、聞く価値はあるだろう。


「気がつくと、街全体を黒い何かが覆っていて……。そしたら突然息が苦しくなったのです。そして、何者かが街を破壊して回っているのです」


所々壊されている街並みを見るところそれが真実らしい。

その何者かの正体を知りたいところだが……。

ミドは更に付け加えていった。


「これは推測なのですが、ここでは体の自由が阻害されるだけでは無く、徐々に体内が蝕まれていっているような気がしてならないのです」


身体が蝕まれる……?


成る程。毒か。


俺の体は不死身だから致死性の毒による影響は殆どないだろう。俺の体が今更毒なんぞに根を上げるとは到底思えない。

たぶん、俺にとってどちらかというとヤバイのは麻痺毒だ。体の自由が完全に奪われるからな。


「アスタ。お前、毒は大丈夫か?」

「いえ、種類によります。致死毒なら流石に死にますね」

「アンタ、この中に入ってから何日くらいか分かるか?」


俺はミドにまた別の事を問い掛けた。

これが時間経過で効果が現れる毒なら、まだ症状が現れていないミドよりも後に入ってきた俺たちは当分安全だ。

しかし、入った途端に感染し、潜伏期間を伴って発言するウイルスタイプの毒なら俺たちも終わりだがな。


「正確な時間はわかりませんが、大体三日程度かと……」

「三日か……」


三日。

リミットは三日だな。それ以内に事を終わらせないとアスタの身体が心配だ。

しかし、約三日前からこの空間が発生しているのなら仲間達はどうなる?

毒の進行には個人差がある。身体の未熟なルーナなんかは他の人よりも早く毒が発現しそうだ。


「俺の仲間にジルという貴族が居るんだが、アンタ知らないか?」

「申し訳ありません。存じておりません」

「そうか……、いや、済まなかったな。気にしないでくれ」

「いえ……、申し訳ありません」


ミドは申し訳無さそうに頭をさげる。


しかし、この空間内部では音信魔法が使えない。

早く祐奈達の居場所を突き止めなければ……。


「取り敢えず進みましょう。立ち止まっていても何変わりませんし」

「そうだな。ミドさん、アンタはどうする?一人では危ないと思うけど。何だったら一緒に来るか?」

「お言葉に甘えて、私もご一緒させて頂きます」

「よし、じゃあ行くか。幸い地理は変わってないみたいだし、屋敷の辺りまで行くか。もしかしたら屋敷に隠れてるかも知れないしな……」


俺たちはジルの屋敷があったあたりまで歩き始めた。

隠れてるかもとは言ったものの俺はそこまで期待していなかった。


ゲートによる転移事件によってシャガルの街は一度完全に崩壊していたが、そこまで地理は変わっていなかった。

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