俺の死んだ日
俺の名前は朝比奈龍斗。27歳童貞の冴えないサラリーマンだ。
今日もブラック企業である勤め先で上司に嫌味を言われながらコキ使われた。
ちなみに職業はSEだ。言っておくがSEは人間のする仕事じゃ無い。絶対SEになるのは止めたほうがいい……と少なくとも俺は思う。
まぁ、唯一いつもと違うところがあるとすれば朝帰りってところだな。ちなみに既に三回社泊してからの朝帰りである。
最近は修羅場なのだ。今日帰れるのも奇跡である。
今日は月に数回の休みだ。ちなみにこの休みは無い時もある。というか殆どない。
今から家に帰ってもほとんど一日中休めるな、なんて事を考えながら、俺はうきうきする気分を抑えてプラットホームに並んだ。
辺りにはサラリーマンや学生が溢れかえっている。当たり前だ、時間帯的には通勤ラッシュなのだから。
楽しそうに話す学生を見て、自分の学生時代を思い出しながら電車を待っていた。
俺にもあんな時期があったんだよなぁ……。特に女の子とフラグ立てるとかも無く終わったなぁ、学生時代。
なんて考えてたら何だか悲しくなってきた。もうこんなこと考えるの止めよう。
そう思い直し、呑気に今日の昼飯のことを考えながら電車を待っていた。
「きゃぁぁぁっ!」
その時、近くから女性の大きな悲鳴が上がった。
「な、何だ何だ……?」
近づいて俺は息を呑んだ。
なんと、女子高生が1人線路に落ちていたのだ。
おいおい、もう電車来るぞ。というか誰か助けろよ……。
辺りがザワザワと騒ぎ出す。
「おい、誰か助けろよ」「お前いけよ」「何で俺が」「あれ危なくない?」「やばいよ、あれは…」「あれ終わったんじゃね?」
好き勝手なことを言うが誰も行こうとしない。
当然だ、誰だって死にたくないもんな。俺だって死にたく無い。
女子高生はパニックになって助けを求め続ける。かなり思考が疎かになっている様子だ。
だが…、
「まったく、勘弁してくれ。会社に遅れたらどうしてくれるんだ」
そんな声が聞こえた。
俺はそいつを思い切り睨みつけた。
壮年の男性でイライラしたように線路に落ちた女子高生を眺めている。
「こんな時ですら自分の心配かよ!」
俺はその自己中心的な物言いにカッとして声を荒げた。
もうすぐ電車が来る。来てしまったらあの子は轢かれて死んでしまう。
誰か助けろよ。いや、誰かじゃダメだ。誰も行くわけが無い。
俺が行くしか無いのか……?
でも間に合わなかったらどうする?俺だって死にたくない…。
刻一刻と電車の来る時間は迫ってくる。
「迷ってる暇なんて《○○行き 電車が通過します》…⁉︎」
その時、プラットホームに絶望のアナウンスが響き渡る。
「クソッ‼︎」
もう考えている時間も迷っている時間もなかった。思考も何もかも頭から吹っ飛んで気が付いたら体が勝手に動いていた。
バカか、俺は。
今から来るのは通過列車だぞ?速度が緩む停車列車なんかじゃない。
十中八九引かれたら挽肉になる。
だが、俺はそんな考えをすべて捨てて、 すぐに線路に飛び降りて女子高生をプラットホームに押し上げた。
「早く上がれ‼︎」
「あ、ありがとうございます…!」
女子高生はしどろもどろになりながらも何とか這い上がる。
よしっ!後は俺が上がるだけ……、
そう思って顔を上げた、その時。
既に眼前に電車が迫っていた。
一瞬意識がスローモーションになって、俺は轢かれる寸前にこんな事を考えていた。
せっかくの休みだったのに……惜しいことしたな……。
その日……俺は死んだ。
初めての投稿なので拙いですが、ご容赦を