『牛乳』『ティシュー』『こま』
短いですが…
箱から覗いたティシューがふわりと揺れた。
風?
感じなかった。
なぜ?
わからない。けど、今はそれどころではない。
子どもが泣いている。
牛乳をこぼして泣いている。
私は急いでティシューを引き抜く。
シュッ シュッ シュッ。
無意識の内に三枚。きっと、この数字に意味なんて無い。
テーブルの上に広がっていく牛乳。まさにミルク色のそれが、何かの形に広がっていく。
それを認識する間もなく、わたしは手にしたティシューを乗せた。
牛乳を吸い上げ、テーブルにふにゃりとはりつくティシュー。
ほんのりミルク色にそまったそれは、偶然の形を写し取る。
私はふと、その形をマジマジと見た。
なんだろう?
「ねぇ、これ、何に見える?」
わたしは思わず、子どもにたずねる。
「わ―…m……ふぇ?」
泣いていた子どもがわたしを見て、わたしが指さすそれを見た。
「うま!」
しばらくマジマジ見ていたそれに子どもが命を吹き込んだ。
ふむ。うん。見えなくもない。
というかもう、馬にしか見えない。
なぜ、わたしにはそれが出てこなかったのだろう?オトナになってしまったから?
なぜか少し、さみしくなった。
「うまー」
パッカ パッカ パッカ パッカ。 ヒ ヒーン!
子どもが笑顔で踊っている。
こまのようにクルクルと。
ティシューが笑ったようにふわりと揺れた。
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