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救済しようなどと思っていない小説エタり時保健室  作者: 風待月
エタらないためのブレイクスルー
10/18

キャラ増加:(逆)ハーレム≒エタる原因

【キャラの増加でエタった場合】



 前項【ネタ切れⅡ アイディアは無限じゃない】と内容がかぶっていますが、キャラクターの使い方についてもう少し。


 物語が進むにつれて、キャラクターがどんどんと増えて、主人公の目的と行動を共にする仲間たちが増えます。

 するとやがて、主人公以外は空気キャラが集まった、薄っぺらい作品になります。

 これではまずいと思い、作者さんは頑張って、キャラクターたちをどんどん行動させようとします。

 すると不思議なことに、逆に空気キャラ化が加速します。


 このエッセイを読んでくださっている作者さんは、もしかすればこんな経験がありませんか? あるいはこうなった作品を見たことないでしょうか?

 ご自身の作品がこうなった場合、なぜエタったのか理解できていないのではないかと思います。



 話の規模が大きい物語を書こうとすれば、どうしてもキャラクターが多くなりがちです。

 現実に起こっても不思議ない、小さい規模の話を書こうとしても、それなりの文章量があれば、やはりキャラクターは増えます。

 しかしキャラが増やすことは、同時に作品自体を陳腐にする可能性が増え、筆が止まる危険性も増えるのです。



 考えてみれば、単純な理屈です。

 仮に主人公と、もうひとりのキャラクターAの会話劇を、10000文字使って書いたとしましょう。

 ものすごく単純に考えると、主人公とキャラAで半々、5000文字ずつ使うことになります。


 次に、主人公・キャラA・キャラBの3人での会話劇を、やはり10000文字で書いたとしましょう。

 すると3人のキャラクターで文字数を等分し、それぞれ3333文字を使っていると思われるでしょうか?


 違います。

 文章の人称形、キャラクターの口数や積極性も絡むので、実際には一概に言えませんが、原理的にはそうなりません。


 会話はキャッチボールです。誰かが発した言葉に対して、別の誰かが対する受け答えをするのが基本です。

 そして3人のキャラクターで文章量を等分するということは、『主人公とキャラAの会話』『主人公とキャラBの会話』だけでなく、『キャラAとキャラBの会話』が必要です。

 一人称、三人称を問わず、小説は多くの場合、ある特定の人物を中心に据えて、その場面の情景を文章に起こすものです。そして中心に据える人物は当然主人公です。

 主人公が会話に参加しない『キャラAとキャラBの会話』は、存在しないか、あったとしても全体の割合からすると少なくなります。

 なのでキャラ3人の会話劇10000文字の割合を単純に分けると、主人公が5000文字使い、残りの半分をキャラA・Bで等分して2500文字ずつになるのです。


 こういうことを言うと、『全キャラクターが同じ分量だけ活躍している文章を書ける』と言い張る人がいるかもしれません。

 しかしそうすると、今度は『誰が主人公?』という疑問が生まれます。全員が同じくらいに目立っているなら、特別目立つ人物はいないのですから。


 3人ならまだなんとかなりますが、これがキャラ4人の会話劇になれば? 5人になれば?

 主人公以外は1キャラの割り当て、つまり出番がどんどん少なくなります。

 更に10000文字、やや長めのひとつの場面ではなく、その10倍、書籍小説一冊分で起こったとすれば?

 『主人公』と『その他』という空気キャラ集団が出てくる、つまらない作品に仕上がります。


 キャラクターが増えるたびに、逆にキャラが空気化するジレンマが存在するのです。

 その上で前項のように、主要キャラクター全員を常に一緒に行動させてイベント消化すると?

 結果は考えるまでもありません。書いている作者さん自身も面白くなくなり、頑張って続けようにも続けらなくなります。

 作品はエタります。



 ヒロインを描くのが目的ではない。一人称文章で主人公の心情を書くのが目的だから、空気キャラばかりと構わないとお思いの人もいるかもしれません。

 書籍小説一冊分、12万~15万文字くらいなら、それでも作品を作ることは充分に可能でしょう。しかし、それ以上の長編を書くつもりなら、まず不可能です。


 なぜか、という説明の前にお訊きしますが、自叙伝や伝記を読んだことがあるでしょうか。有名人の生い立ちや経歴が、自分ないし他人の手で書かれた本のことです。人生の転機にこんなことを思った、こうした、その結果こうなった。そんなことが書かれています。

 そしてその手の本で、一冊に収まらない本を見たことがあるでしょうか?

 まずないと思います。それ以上となれば、一般的な読み物ではない、研究書になってしまいますので。


 自伝を作るつもりで、ご自分の人生で振り替えってください。

 『人生の一大イベント』と呼べるものは、いくつありますか?

 そんなオーバーな言い方をしなくても、『鮮明に思い出せる記憶』を数えてみてください。ボンヤリではなく、強烈な印象で覚えている思い出です。

 数十年間生きている人でも、そう多くはないです。無理矢理挙げようと思えば挙げられるでしょうが、本当に『無理矢理』になるでしょう。『UFOを見た』とか『正夢で10円拾った』とか、人生に影響があったわけでもない、割とどうでもいいような内容に。

 ちゃんと読み物にしようと思って厳選すれば、かなり減ります。


 前項にも通じますが、喜怒哀楽を感じるイベントのパターン――それも鮮烈な記憶に残るほど大きな出来事となると、限られるのです。

 『人が一生で感情が動く回数』なんて数えられるはずないですから、ここでは仮に冠婚葬祭で考えると。

 自分の誕生と葬式は、記憶がないでしょうから除外するとして。


・七五三

・成人式

・結婚

・子供の出産


 この辺りは当てはまるでしょう。


・誕生日

・入学式

・卒業式

・クリスマス


 こんなものもありますが、たびたびやっていれば通年行事化しますから、鮮烈な印象に残ってる年は限られるはずですので、それぞれ一つと数えるとして。


・就職

・親の死去


 こんなのもあるかもしれません。

 中には『初恋は思い出深い』『恋人と別れた時は泣いた』『離婚した』『ケガで入院した時は印象的だった』という人もいるでしょうから、それを加味して。

 仮に5倍で考えても、50です。

 『人生の一大イベント』と呼べる出来事は、実は少ないのです。

 50もあれば充分と考える人もいるかもしれません。

 でも実際に小説を書くつもりで50個もイベントネタを考えるのは、かなり大変です。納得できなければ、人間誰しも喜怒哀楽を浮かべる場面を、正確に思いつく限り列挙してみてください。


 そしてそのような出来事は、他の人間が関わることがほとんどです。結婚ならば当然相手が必要ですし、自分以外の葬式ならば、死んだ相手が必要です。そもそも子供の時分に誕生日やクリスマスは一人では祝えません。


 しかし『空気キャラばかりの主人公ひとりのための小説』を書こうとするのなら、逆に他人との深い結びつきを描いてはいけない、ということです。そんなイベントは描かない、あるいは描いたとしても、サラッと流さないといけないのです。

 人生に影響を与える誰かと出会っても、その相手とどんな会話をしたか、どんな様子だったか、書いてはいけないのです。

 その人と別れる時も、惜しみながら別れる様子を描写してはいけないのです。

 アツアツな新婚生活の描写なんて言語道断です。結婚三〇年目の熟年夫婦のように淡白な文章で書いてください。


 ひとつのイベントを、仮に3000文字程度で流すように手早く書き、50個のイベントを起こしたとすると、3000×50=150000文字、文庫本一冊程度です。

 かなりアバウトな概算なので、正確性はありません。

 でも『自分ならこの10倍は書ける』とおっしゃる方はいるでしょうか?

 そう思う方は実際にやってみてください。

 エタるか、文章の体を成さないはずです。



 ネタの数は限りあるのです。なのにひとつの事を深く描こうとせず、早々に消化すれば、すぐにネタ切れになるに決まってます。本一冊程度に収めるならば、ネタ切れ前に完結させられるでしょうが、もっと長い文章にしようと思えば、こんなやり方では不可能です。

 空気キャラばかりにすることに利点などなく、長い文章を書く上では、ネタ切れを加速させる大きな制限なのです。


 それを防ぐにはどうすればいいか、という話になるのですが。

 キャラを減らすという話は、ここでは除外とします。それができれば誰もそうしますし、最初から不必要なキャラを増やすなって話ですから。

 それ以外、増やす必要があって、管理できなくなる前の対処です。

 考え方は2通りありますが、どちらも共通して言えるのは、割り切ってしまうことです。



 ひとつは、キャラが薄かろうとなんだろうと我が道を行き、管理できなくなる前に話を終える。上記で書いた『空気キャラばかりの主人公ひとりのための小説』を書き切ってしまうことです。

 ただ、人の一生を本一冊程度、12~15万文字程度を書こうと思えば、かなりスピーディに書かないとなりません。ひとつの物事を深く掘り下げようとする、一般的な小説の書き方をしていては、不可能です。


 歴史上の人物をクローズアップする某放送局の大河ドラマでは、一人の人間の人生を描くのに、45分×50回=2250分も使います。

 ものすごく単純に小説へ換算するとすれば、読むスピードが1分500文字程度ですから、2250分×500文字=1125000文字、書籍小説9~10冊分の長編連載です。


 それらを踏まえれば、本一冊に人間一人の一生を詰め込むのは、相当キツい作業になるのは、想像できるかと思います。

 冒頭から活躍できないといけません。幼少期編なんて無視。

 戦いが起こったら、戦局の変化や背後関係なんて無視して、即勝利。

 運命の相手と出会ったら、恋愛模様や紆余曲折の描写はせずに、即結婚。

 できてしまいそうですが、普通は誰でもかなり作りにくい文章になります。

 しかし決して不可能ではありません。



 もうひとつの方法は、一般的に使われているシナリオ構造です。映画や1クール放送のドラマではわかりにくいですが、アニメなどではわかりやすいです。

 その手の作品は、最初は主人公を中心にして、設定説明や状況説明的なストーリー展開がされます。

 しかしある程度ストーリーが進むと、別のキャラクターをクローズアップした回があります。萌え系アニメだと『○○(キャラの名前)回』と呼ばれるエピソードが、絶対にあるはずです。


 複数のキャラクターが増えれば、空気化していくのは、どうしようもないのです。

 だから『全ての場面で全てのキャラを目立たせようとする』という考えを切り捨て、普段目立たないキャラを、ひとつの場面でも、思い切り目立たせてやることです。

 仲間が増えたからといって、いつでも全員一緒の必要はないのです。主人公とそのキャラのみで話が進展してもいいのです。他のキャラは舞台裏で動き、後で合流してもいいのです。

 小説であれば、クローズアップは2回以上あるのが望ましいです。あるキャラクターが仲間になるエピソードではすごく活躍しているのに、仲間になった後は空気化した、なんてことはよくありますから。


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