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初陣

「では瑠璃さまの初陣の課題をご説明させていただきます」

縁はあたしのそこはかとない殺意を感じ取ったのか、軽く咳払いをして話題を変えた。

「瑠璃さまには、初陣の課題として座標3,-27地点にある☆1の領地を獲得していただきます」

「ちょっと待って、座標3,-27……と」

あたしはカードを取り出して、座標を入力した。

このカードは武将を召喚するだけではなくて、こうやって座標を入力するとその位置や状況を教えてくれたりする、とっても使える便利グッズなのである。

普段はフィールド上で離れた位置にいるプログラムナビゲーターの縁とも、このカードを通じて会話ができるし、その他にもあたしの知らない機能がわんさとありそうだ。

基本あたしは取扱説明書を読まない人種なので、詳しいことは知らない。

「えっと……ここからだと、そんなに遠くじゃないわね」

あたしはカードを覗きこんだ。

「ええ、この位置からですと、北に少し進んだところにあります」

縁のいう☆1とか☆3というのは、獲得する領地のランクを示したものだ。

「だけど☆1って……」

あたしは不満げに唇を尖らせた。

このフィールドには☆1から☆8までの領地が存在する。

領地にはそれぞれに『資源』があり、その『資源』をもとにして自分の領地を運営していかなければならないのだが、☆の数が多い領地ほど、『資源』が豊かなのである。

戦いに勝つためには、うまく領地を運営して富ませ、それを元手にして強い軍隊を育てていかなくてはならない。

当然誰もが☆の数が多い領地を求めるのだが、しかし☆の数が増えるにしたがって、入手の際の危険度も上がるというわけだ。


「本来武将を従えての初陣でしたら、通常は☆3からのスタートになるのですが、武将不在の瑠璃さまには☆3は危険ですので、安全面を考慮してとりあえず☆1の領地獲得を課題にさせていただきました」


縁の説明に、またしてもあたしの気持ちは重くなる。

また、このカードのせいで足を引っ張られるのだ。

こんなわけのわからないカードを引いたせいで、人より出遅れて損をしなきゃなんないわけで、あたしはなんだかこのカードのことが恨めしくなってきた。


しかしまあ、そんなことは今さらいってもはじまらないのだ。

カードなんかに頼らなくても、あたしは自力で課題クリアくらいしてやるわよ。

そう思って、縁からもらったハリセンを強く握りしめた。


すると握りしめたハリセンが、あたしの気持ちに呼応するかのように熱をもち、鈍く光り出した。

「え? なにこれ?」

ハリセンの反応に、一瞬『気持ち悪っ!』と思っていたら、ハリセンは一気に巨大化した。

「うおおおおっ、なんじゃこりゃ?」

紙っぽかったハリセンが、なんか鉄っぽくなって巨大化している。

「あっ、これ、なんか強そう」

あたしはまんざらでもなく、しげしげとハリセンを見つめた。

これ、いけんじゃね?

なんかそんな気持ちになってきた。


「あらあら、まあまあ」

モニター越しにその様子を見ていた縁が、驚きに目を見開く。

「瑠璃さまったら、差し上げました初期アイテムの破莉(ハリ)(セン)の威力を一瞬で最大レベルまで引き出されてしまわれましたわ。うふふ、やはりあなたが選んだ主だけのことはありますわね」

縁は楽しそうに呟いた。


縁に指示された場所に向かう途中、プログラミング兵士に周りを囲まれた。

いよいよ、これがあたしの初陣である。

兵士を前に、あたしの鼓動は緊張で張り裂けんばかりに高鳴る。

恐い。

それが敵を目の前にして、まず第一に思ったことだ。

ハリセンを握りしめる手が、汗ばんでいる。

怒号を上げてこちらに突撃してくる兵士を認識し、あたしの意識はまっ白になる。

恐怖と理性の吹き飛んだその瞬間に、微かに感じてしまったのは後ろめたいような快感で、

気がついたらあたしは竹槍で突撃してきたプログラミング兵士をかわして、その後頭部を思いっきりぶっ叩いていた。

ダメージを受けたプログラミング兵が、微かに歪んで姿を消した。

それがあたしの中で眠っていた闘争本能が目覚めた瞬間だった。

恐怖を圧した興奮の波が冷めない。

血が熱い。

猛る衝動とともにあたしは咆哮した。

「よっしゃ、やりぃ!」

あたしは、一気に指示された座標(3.-27)、☆1の領地に足を踏み入れた……はずだったのだが……。


「瑠璃さま! そこは(3,-27)の☆1の領地ではありません。(3,-26)☆8の危険領域です!」

突如、縁の金切り声が聞こえてきた。

「え? えええ? ちょっ……ちょっ、ちょっ、あたし間違えちゃったってこと?」

頭から冷水を浴びたかのように、一気に血の気が失せた。

「逃げてください、瑠璃さま」

縁が悲痛な声で叫んでいる。


刹那、木の陰に人が姿を現した。

しかし恐怖に膝が震えて思うように走れない。

木の根っこに足を取られて見事にすっ転ぶと、目の前には、とっても気合いの入った感じの山賊コスチュームに身を包んだお兄さんたちが整列していた。

「あははははは……どもっ!」

とりあえず、あたしはひきつった笑いを浮かべて、挨拶してみた。

「誰だ貴様は……」

そういって山賊のお兄さんは冷たい剣の切っ先を、あたしの首筋に押し当てた。


こうしてここに、悲しき死亡フラグがたってしまったのでした。

あたしはもう、ひたすら笑うしかなかった。


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