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Electric World  作者: 静野月
兄弟
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第二話

{ElectricWorldへようこそ。キャラクター 霧谷龍樹 さんがログインします}



ディスプレイの画面が暗転し、刹那、眩い光りの世界が広がる。



ミッキーナ:≪あ!マスターがキタ=====ヽ(゜Д゜)ノ=====!!!≫

泰造:≪龍樹だー! オハー!≫

シュン:≪たっちゃんだー! こんちー≫

UUJ:≪こん~≫

あかり:≪こんばんわー!≫

ナスカ:≪こん~≫



次々と、引っ切り無しに挨拶が始まった。

視界に広がるのは、先月の戦争で獲得した新しいアジトのリビングだ。



細身に見えるが筋肉質の長身に、長めの茶髪。

瞳の色も髪と同じブラウンで、装備は最強だが、オシャレ装備の『ガクラン』をグラフィック加工した黒い装備。


そして、画面に広がるのは造られた仮想空間の世界である。



データの読み込み作業が終了する。


入野裕平(イリノユウヘイ)は、霧谷龍樹(キリヤタツキ)となった。




姿が見えないのに声が聞こえてくるのは、ギルドボイスという機能だ。

ギルドボイスとは、集団(ギルド)に加入している者だけが聞こえる特化音声チャンネルである。



ギルドの名前は【シトロン】。

総数五十を超える大所帯で、今は三十一名がログインしている。


そして龍樹は、その頂点、『シトロン』のギルドマスターだった。



龍樹:≪こん。みんな、早いな。ちゃんと飯食ってる?≫

龍樹は、あまりにも多いメンバーのログイン数に驚いた。

今日は平日で、水曜日だ。



ミッキーナ:≪食べてる! 食べてる!≫

泰造:≪ミッキーナなんて、一日五食食ってるらしいよ≫

ミッキーナ:≪んもう、失礼ね! 私はね、超ナイスボディーなの!≫

シュン:≪キャラクターがね≫

ミッキーナ:≪ぢゃない! リアルよ! リアル!≫


三十一人もいると、さすがに騒がしい。

だが、これこそがMMORPG=多人数同時参加型ロールプレイゲームの醍醐味でもある。


声はリアルの声がそのまま反映されるか、ゲームで用意された音声を選択できるシステムで、みんなほとんど声優のボイスを使っている。

だから同じ声優の声を使っているとややこしい事になるので、画面には話しているキャラクターの名前が点滅をする仕組みになっている。




あかり:≪早速なんですけど、龍樹さん、一緒に【ビックブラフト】のダンジョンに行きませんか?≫


その発言に、ミッキーナが待ったをかけた。


ミッキーナ:≪ちょ、うちらだって龍樹待ちだったんだから! 今日こそ、一緒にクエスト進めようよ。マスター、最近、手伝いばっかで自分のクエスト進んでないじゃん≫


ミッキーナのちっとは遠慮しろよ! みたいな発言に、あかりが萎縮する。


あかり:≪そ、そうですね。すみません……≫



一瞬、ギルドチャットが静かになった。


龍樹:≪おいおい、待てって。みんなせっかちだな。俺は、色々と忙しいの。準備できたら、適当にどこかのグループとつるむから、俺抜きで行きなさい≫


リーダーは、ギルドのムードメーカーだ。

まとめるのはもちろん、接続(ログイン)すると一気にギルド内の空気が変わると言われている。


シトロン内部でも、それなりに仲良しチームみたいのが出来上がっていたが、龍樹は、どこにも所属しないようにして、上手く立ち回っていた。


それが、大所帯をまとめるギルドマスターの役目でもあり、内部分裂をさせない一番の方法だ。




そして龍樹は、この世界で一番有名なギルドのリーダーであり、職を極めた英雄であり、男女問わず憧れ的存在だった。


もちろん装備も良くレベルも高いが、慕われる一番の理由は人柄だ。

優しく男気があって、面白いし面倒見も良い。

それに龍樹は、対人戦のセンスが飛びぬけて上手かった。



EWは、脳波の信号をヘッドセットに取り付けてある装置が感知してキャラクターを動かす。

歩いたり走ったり、という移動だけではなく、飛んだり、スキルを発動したり防御したり――――と、他のロールプレイゲームにはない格闘ゲームの要素もあった。

マウスとキーボードだけでは大変だが、特別製のヘッドセットで操作する事によって可能になったのである。




霧谷 龍樹はギルドメンバーの象徴であり、誇れるリーダーであり『ElectricWorld』の世界のカリスマ的キャラクター。

そのため、いつも【シトロン】に入りたいという希望者が多くて困っている。



それでも、不特定多数のメンバーを加入させることは不可能だ。

ギルドはマックスの人数が決まっていて、五十五名までしか受け入れられない。


今は、そのマックスの状態なので、誰かが脱退しないと新しい加入者を受け入れることができないのだ。

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