第八話
メカ・バードの集団がランチョムに気づく。
まだ、最初の群れを倒しきらないうちに、七体もの機械化モンスターが下降を始めた。
「――――っ」
ランチョムが、後退しながらモンスターを倒していく。
引き狩りをするにも、場所が狭すぎた。
隠れるところもなく、本来のスナイパーの能力が発揮できない。
「ランチョム!!」
「サンダートライク!」
祐平が叫ぶ声と同時に、視界がスパークした。
無数の稲妻が飛び散り、下降してきたメカ・バードの集団を襲った。
「「「キーーーーーーーーーーーーッ!」」」
叫び声を上げて、一斉にヘイトの矛先を変える。
「……なっ」
祐平は、まだチカチカする瞳を開けた。
サンダーストライクは、ファイターの範囲攻撃スキルだ。
威力は小さいが、ヘイトを集める時に使用したりする。
その、スキルで集められたメカ・バードが、どんどん殴り倒されていく。
「うっし。全部撃退ましたぁ。つか、お待たせですぅ~」
祐平も、ランチョムも呆然とその姿を見ていた。
長身に茶色の髪。
切れ長のブラウンの瞳に、改造したガクラン。
見かけは龍樹とそっくりだ。
しかも、腕にはドラゴンナックルを装着している。
だが、そのキャラクターがあまりにも違った。
祐平は同化していないし、口調がおかしい。
「龍……樹?」
祐平が半疑問系で問いかける。
「あ-、うんうん、そう。これ、龍樹の体」
「ど、どういうこと?!」
祐平は、給水塔の影から飛び出して龍樹に詰め寄った。
現れたのはいいが、大分、様子がおかしくなっている。
「ちょーっと借りてたんですぅ。ごめんなさーい」
龍樹が武器を外す。
青年の体と、女性の体が重なった。
「あなたが、龍樹の中身?!」
間抜けな声を上げたのは、ランチョムだ。
「各地にレイドモンスターが沸いちゃったんですよぉ。で、この体だと不便だから龍樹の体を借りたんですぅ」
顔は可愛いが、どう見てもアニメで出てくるメイドの姿だ。
しかも、長い髪はお下げで眼鏡をかけている。
そして、どこに視線を合わせていいのか分からないほど巨乳で、スカートが短かった。
絶対領域の下は、スラリとした足が伸びている。
「だ……誰?」
祐平がぽかんとしながら、少女を見る。
少女は、言い難そうに頬をピンク色に染めていた。
「んーと、私は、この世界の【管理者】の一部なんですぅ。あなたたちのパソコンにウイルス撃退ソフトが入ってるでしょう? イメージ的には、そんな感じなんですぅ」
「そんな感じじゃ、全然分からないよ」
「でも他に例えようがないんですよねぇ。ウイルス駆除システムの末端だから。んで、この性格と服装は、開発者の趣味ってことでよろしくですぅ~」
「「「……」」」
ランチョムも龍樹も黙ったままだ。
祐平は、まだ唖然としながら少女の説明を聞いている。
「んー、困りましたねぇ。私は、ただのウイルス駆除システムなので、滅多なことは言えないんですけどぉ、ちょーっと説明をすると、今、この世界は壊れかけちゃってるんですぅ」
「ど……どうして?」
「外部からハックされて、悪質なウイルスを流されちゃったんですよぉ。で、駆除システムである私が動いて、ウイルスを撃退しているんですけどぉ。同時に、この世界に住む人たちを守らないとえらいこっちゃでぇ」
「……ごめん。よく意味が分からないや」
祐平が頭を抱える。
パソコンがウイルスに感染するというのなら、分かるが世界がウイルスに感染したと言われてもピンとこない。
「ですよねぇ。肝心の部分をはし折っちゃうと、意味分かりませんよねぇ」
少女がテヘっと笑った。
なんの緊張感もない態度に、頭痛がしてくる。
「あ、今、【ジリオン】から回答が来ました。入野祐平、根岸美寿々の二名にレベルHまでの情報を開示していいそうです。許可は下りましたが、これから私が説明することは、この世界の国家機密に値するものなので他言無用でお願いしますねぇ。うっかりしゃべっちゃうと、しゃべった本人はおろか聞いた人も存在を抹消されますぅ」
少女が物騒な話をしれっと話し出す。
それは、とんでもない、世界の真実だった――――。