第四話
「しかし、これで、こっちの世界に来たのが俺だけじゃないって証明されたな」
龍樹が腕を組んで便所の壁に寄りかかる。
当然、祐平も同じコトを考えていた。
EWのキャラクターだけでなく、モンスターも現れているのだ。
「当然、龍樹とメカ・ドックだけじゃないよね?」
「だろうな。他のヤツらも、こっちに出てきてると思うぜ」
本当に、この世界はどうなってしまったのだろうか。
次々と現れるゲームの世界の住人達。
この世界は狂ってしまったのだろうか?
それとも自分の頭がおかしいのだろうか。
「とにかくさ、俺達は一心同体なんだ。これからもよろしく頼むな」
龍樹が右手を差し出す。
祐平はしぶしぶと握手を交わした。
「運命共同体――――か。かっちょいいな、俺達」
「……龍樹って、そんなに能天気だったんだ」
「本来のお前も、こういう性格なんだぜ?」
そんなコトを言われても実感が沸かない。
それに、その性格は、容姿が良くて強くて仲間がいる龍樹だから振舞える態度なのだ。
「僕は……」
ぱっとしない見かけ。
勉強もスポーツもできないし、礼二たちのせいで友達もいない。
「きっと変われるさ。俺は、お前が望んだ本来の姿だ」
それは自分が自分に言い聞かせているようなものだった。
無理なのは分かっていても、龍樹に言われると不思議とそうなれるような気がしてくる。
「ホント、能天気」
苦笑いで返し、龍樹と肩を並べてマンションに帰る。
この時、もう世界の全てがおかしいことに、二人はまだ気づいていなかった。
祐平と龍樹の戦いは、始まったばかりだ――――。