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Electric World  作者: 静野月
晴天の霹靂
11/31

第四話

「これで、あいつらが僕を許すと思うの?マジで迷惑なんだよ。これで明日から……僕はもっとイジメられる……」


裕平は、青年の顔をみようともしない。

壁に身を預けたままぐったりとしている。



「お前は、それでいいのか?」


青年に問われて、裕平の中で何かが音を立てて切れた。


子犬のような瞳を見開き、髪の毛をかきむしる。



「いいわけねーだろ!! 僕だって嫌だよ!! でも、仕方ねーじゃん!! 僕は、あんたみたいに強くねーんだ!!!」



本当は嫌だ。


こんな世界、住みたくない。


イジメられたくない。


他の生徒みたいに、学校が楽しいと言ってみたい。


もう、止めたい。



止めたい。



止めたい。



本当は、誰かに助けて欲しい。


でも、誰も助けてなんかくれないんだ。


助けて欲しい。



助けて!



助けて!!





「助けて……、助けて……、助けて……、助けて……、助けてよ……」



呪いのように呟いた。


青年が、すっと壊れた眼鏡を裕平に手渡した。



「強さってのは腕力や権力じゃねぇ。強くありたいって【心】なんじゃねーの?」


「【心】? そんなもの……何の役にも立たないよ」


「俺は、そうは思わないね。弱さは自分の心の中にある。それが克服できなきゃ、ずっと弱いままだ」



「それって……」



やっと裕平が顔を上げた。


夕日に照らされた青年の顔を見上げる。



前髪の長い茶髪に、細身だが均整の取れたスタイル。

一見、制服にも見える服装。



「まさか……」



目から眼球が零れ落ちそうなほど見開く。

派手な金糸で縁取られた詰襟、ジャラジャラと飾りの付いたジャケットにパンツスタイル。


まるでコスプレ。

そして、その服装を裕平は良く知っている。



それは――――、最近、ネットゲームの中で獲得した【装備】にそっくりだった。



「まさか、まだ、分かんねーの?」


と、青年がニイっと両方の口角を吊り上げる。


裕平は、ふるふると首を振るだけだ。



「俺は霧江龍樹(キリエ タツキ)だよ」


「そ……そんなはず、あるものか! ぼ、僕をからかってるんだな?!」


「からかってねーよ。なぜか【こっちの世界】に出てきちまったんだ」



それでも、まだ裕平は必死に首を振っていた。



「なら、これは夢だ! どう考えても、こんな事、現実にあるわけないじゃないか!」


「だよなぁ」


と、龍樹が苦笑いを浮かべる。


「でも、まあ、これは現実なんだから仕方ねーだろ」


「……いや、きっと僕はさっき殴られて気を失っているんだ。それから、後は全部夢で……もしくは、もう全部……夢なんだ……」



祐平が地面に額を付けて倒れこむ。



「ヤレヤレ。重症だな」


と、龍樹は呆れ顔で裕平の体を起こした。



「とにかくさー。出てきちまったもんは、仕方ねーだろ。っつー事で、よろしくな【俺】」


と、爽やかな笑顔を浮かべる。





一体……どういう事なんだ?


何が起こったんだ?


と、裕平が頭の中でパニックを起こす。




こうして、裕平と龍樹は十一月の夕暮れ。


【現実の世界】で出会った――――。



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