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いろいろおかしい国の婚約破棄

作者: 山田 勝
掲載日:2026/09/08

 普通、王妃教育って・・・



『エステリア、この本の要点をまとめなさい』

『はい、国史ですね。既にまとめております』

『まあ・・』



『エステリア、これが貴族の席順です。覚えなさい』

『既に覚えておりますわ』

『さすが大国の王女・・・』



『エステリア、王城の抜け穴を教えます。この教育を受けたら後戻りが出来ませんわ。覚悟は如何ですか?』


『はい!覚悟の上です。王国と国民のために誠心誠意精進致します』




 でも、現実は・・・・




 ☆☆☆



【エストリア様~、転進!始め!】


 カン!カン!カン!


「はい!転進ですわ!」


 土嚢を二個ほど担いで二キロ全力疾走する。


 お付きのメイド達も併走するわ。



「エステリア様、気張って下さいませ!」

「一キロ通過ですわ!」


「はあ、はあ、はあ、はあ・・・」


 この教育の趣旨は・・・王城が反乱軍に襲われたら子供を2人担いで逃げる訓練だわ・・・・

逃げることを転進と言うらしい。


 意味が分からない。



 この王国はおかしい。



 魔王軍が来襲しようものなら皆は喜ぶ。



『やった!出世のチャンスだぜ!』

『おう、オーガをやってやる!』

『恩賞!恩賞の機会キター!』



 この王国の兵科は重装弓騎兵と歩兵のみだわ。

 重装弓騎兵って意味が分からない。拳ぐらいの矢尻と二メートルくらいの大弓を使う。


 そして、魔族を倒したら首を刈る。

 その際、近づいたら手柄を横取りされると思い攻撃されるから近づくのは厳禁と教わったわ。



『な、何だ、この国は!魔王様に報告だ!!』


 魔王軍が逃げだしたら、農民達が石を投げていわゆる落ち魔族狩りをする。


『角は売れるぞ!』

『ヒヒヒヒヒ、生け捕りで身代金要求も捨てがたい!』



『お前ら農民だろ!それはクワだろ!侵略しないから魔王様に報告させろ!』


 まったく、意味が分からない。

他国では国民総冒険者と言う方もいますわ。



・・・・・・・・・



「はあ、はあ、はあ、着きましたわ・・・」


「エステリア様、とうちゃーく!」



 そして、王妃殿下直々の教育は・・・



【やあ、やあ、耳をかっぽじって良く聞きなさい!軍記物を音読しますわ!】



「はい・・・・」


王妃殿下直々の音読だわ。耳で覚えろとの趣旨だわ。


「・・・ギルダー将軍は釣り天井で講和に来た魔族の幹部を一網打尽にしたのであった!さあ、その後の残存魔族は・・」


 どうやって軍を動かすか。かなり卑怯な内容が盛り込まれている。



「・・・そして、火を放ち。皆殺したのであった!!」


 もお、こんな内容ばかりだわ。嫌だわ・・・耳が腐る。


「魔族族滅編終わりましたわ。エステリア、質問はありますか?」



「はい、王妃殿下。ギルダー侯爵は正々堂々と一騎打ちをする高潔な武将とされますが、違う戦いでは背後から急襲しました。また、騙し討ちもしていますわ。この違いが分かりません・・」



「よく気がつきました。異民族、魔族に対して卑怯は認められます!同じ民族に対しては男気を見せるのです」



 認めるんじゃーないですわ。訳分からないわ・・・・・



 そんな私も遂に学園で婚約破棄をされた。



「エステリアよ。何故、この~、ああ、ピンク頭をイジメない!?」

「そうよ。こんなに小癪に振る舞っているのに私を全然シバかないんですよ!ヒドいのだから!」



 もう、訳が分からないのは日常だわ。内容は分かるけど、何故、それを言っているかは6年この王国で過ごしていても分からない。



【全然、構ってくれないのです!ヒドい!】


「そんな女は婚約破棄だ!国へ帰りやがれ!」


「はい!」


 少し声が弾んだ。


 私は王宮に戻らずにそのまま国を出た。


 お付きのメイドが・・・


「ヒドいですね!あのピンク、ボコボコにして市場で吊しましょう!」


「・・・ミリヤ、やめて、本当にやめて・・・今までお世話になりました・・グスン」


 本当にやるから怖いわ。


 喜び勇み故郷に帰ったわ。

 私は隣国の王女で10歳の頃からこの王宮で王太子の婚約者として過ごしていたの。




 ☆☆☆ノースリア王国


「おお、エステリアよ。良く帰って来た」

「グスン、ヒドい辱めを受けたのね・・」


「エステリアよ」

「姉上!」

「お姉様!」


 家族が歓迎してくれたわ。



 もう、あの鬼畜な王妃教育を受けなくてすむと思うと涙が出てきたわ。


「グスン、グスン・・・」



「うぬ。許せぬ。小国のくせにエステリアを泣かすとは!ブラウン将軍前へ!」


「御意!我が方はすぐに10万の軍勢を展開出来ます。敵はせいぜい3万から4と見積もられます」



 え、あの国を攻めるの?



「あの、お父様、そこまでしなくても・・・」

「いや、大国として懲罰するべきだ」


「そうだ。エステリアよ。兄が先陣を切るぞ」



 やめて・・・皆、殺されますわ。


「うむ。あの国は中々言う事を聞かない。だから、エステリアを政略として使わしたのだ。是非もなし」



【本当にお止めになって下さいませ!】


 ズボッと将軍のノドをついて足をかけ転ばした。


「グハ、何を・・・」



「良いですか?私はあの国に6年いました。それだけでもこのぐらい力が付きましたわ」


 将軍の両の足首を掴み。そのままグルグル回したわ。


「・・・エステリア様、何故?ワシを?・・・おお、目が回る~」



 力を見せつけて出兵を思いとどまらせた。



「しかし、様子を見ようか・・・」


 その後、斥候を国境に放ったが。報告はとんでもない内容だった。



「国境沿いに石垣が出来ております・・・そして・・・」





 ☆☆☆



 王太子と名前不詳のピンクブロンドの令嬢が先頭に立って石垣を築いていたそうだわ。

王太子と令嬢が土木作業をしている・・・意味が分からないと星の数ほど思いましたわ。


「おりゃ!ノースリア王国が攻めて来るぞ!期日まで石垣を作らない奴は死刑な!」


「おう、恩賞が向こうからやってくる。ヒヒヒヒヒ」



「「「「聖女になったエストリアが攻めて来るぞ!」」」

「「「「おんどりゃー!おんどりゃー!」」」」


「ヒーローを連れて攻めて来るわ!」

「「「「おんどりゃー!おんどりゃー!」」」」



 おんどりゃーの鬨の声が10キロ先の我が方の街まで響いたと云うわ・・・



「もう、あの国は封鎖でよかろう・・・」

「はい、お父様・・・」



 鎖で国境を封鎖したいわ。鎖国というのかしら。

 しかし、ヒーローとか、私が聖女になるとかは意味が分からない。


 それだけは更に意味不明だわ・・・


「エステリア様!聖女の後光が差していますわ!」

「まあ・・・」


鑑定をしたら・・・『狂聖女・・・』


ということはヒーローが現われるのかしら。


厳に警戒するべきね。おんどりゃーだわ。



・・・エステリア王女殿下は時々あの国の気風が垣間見える時があったと伝えられている。




最後までお読み頂き有難うございました。

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― 新着の感想 ―
>「もう、あの国は封鎖でよかろう・・・」 呆れ返ってるのがしみじみ感じられて吹き出しちゃいました(´∀`*)面白かったですー!
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