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聖なる泉へ

「失礼しまーす」


 環はそう言ってドアを開けた。部屋には数人の侍女らしき人がいた。カレンが目で合図をすると、侍女達は礼をして部屋から出て行った。


 環は黙ってベッドのそばまで歩いていくと、そこで寝ているヨウコの顔を見た。


「意識は戻ってないんだな」

「はい、医者の話では命に別状はないようですが、闇王の呪縛から解き放たれたのはヨウコ様が初めてですからくわしいことは何もわかりません」

「でも案外簡単に目を覚ましそうに見えたんだけどな」

「それはタマキ様の巨大すぎる魔力が呪縛に影響を与えたのだと思います」

「それじゃあ俺の魔力を注ぎ込めば目を覚まさせることができるんじゃないか?」

「おやめください。最悪命に関わります」

「駄目か。じゃあ、どうすれば目を覚まさせることができるんだろうな」

「ロレンザ様なら何かご存知かもしれません」

「あの最初に魔法を教えてくれた人か。賢者さんてやつ?」

「賢者? そうですね、そう呼ぶのもいいかもしれません。今度からそうしましょう」

「じゃ、行こう」


 2人は部屋から出て、祭壇のあるホールに向かった。ホールではロレンザが分厚い本を開いて何かを調べていた。


「賢者ロレンザ様、タマキ様が伺いたいことがあるそうです」

「賢者とは何事ですか? カレン」


 ロレンザは軽く笑って振り向いた。


「ヨウコさんのことで聞きたいことがあるんだ。あの人の目を覚ます方法は何かないのかな」

「目を覚ます方法ですか。今ちょうど調べていたところです」

「それで、何かわかったりしたのかな」

「ええ、これは我が国に古くから伝わる伝説ですが、北にある森の中心に、精霊の泉というものがあります。その泉には邪悪な力を浄化する力があるというものです」

「精霊の泉ね。そういうことならさっさと行こうじゃないか。場所は?」

「タマキ様、少々急ぎすぎではないでしょうか」

「いや、そんなことはない」カレンの質問に環は首を横に振った。「闇王ってのがまだいるんだろ、いつ攻めてくるかわかったもんじゃないし、それにミヤザキさんだってほっといたらどうなるかわからないじゃないか」

「たしかにそうかもしれませんね。ですが、それには1つ問題があります」

「問題?」


 ロレンザの言葉に環は首をかしげた。


「精霊の泉が応えるのは精霊の加護を受けた者だけです」

「精霊の加護っていうのは、それは誰なんだい」

「エバンス様です」

「つまり、王子さんに同行してもらわないといけないのか。それは面倒くさいことになりそうだ」

「残念ですが、それほど面倒なことにはなりません」カレンは大して残念でもなさそうに言った。「エバンス様であれば喜んで同行するかと」

「そうなの?」


 環の疑問にロレンザは笑顔でうなずいた。


「はい、その通りです」



 3人はエバンスを探して城内を歩いていた。なぜかカレンはその居場所がわかるようで、環の手をひきながら、迷うことなく進んでいった。


「カレン、本当にこっちにエバンスがいるのか」

「はい、この時間は庭園にいらっしゃいます」

「庭園、そんなものまであるんだ」

「もちろんです。ところでタマキ様、それよりも新しい魔法を契約していただかなくてはいけません」

「魔法か、確かに2種類じゃ寂しいよな。あと何種類ぐらい覚えればいいの」

「あと6種は契約していただきます」

「6種類か、それって大変?」

「大丈夫ですよ」ロレンザはスペルカードを取り出して微笑んだ。「タマキ様ほどの魔力があるなら、簡単にできることです」

「そっか、じゃあ庭園で練習できるかな」

「それはご遠慮願います」

「わかったよ」


 カレンにたしなめられて環はうなだれた。そうこうしているうちに、庭園に到着した。そこにはカレンの言った通り、エバンスがいた。花の手入れをしているようで、環達には気がついていないようだった。


「土いじりって楽しい?」


 環が声をかけると、エバンスは振り向いた。穏やかな顔をしていた。


「楽しいぞ。それより3人揃ってどうしたのだ」

「エバンス様、ヨウコ様のことで新しくわかったことがあるのです」

「わかったこととはなんだ? ロレンザ」

「ヨウコ様は眠ったまま目を覚ます気配がありません。しかし目を覚ますことができる方法が見つかりました」

「精霊の泉か」

「はい」

「私の出番のようだな」

「ですが、いいのですか? 今はそうできる状況ではないと思いますが」

「我々を救えるのはタマキだけだ。だから、その願いをかなえるのは何よりも最優先にすべきだ。これは信義の問題なのだから」

「さすがエバンス。わかってらっしゃる」


 環は満面の笑みでエバンスの肩を叩いた。


「ああ、邪魔がはいらないうちにさっさと出発しよう」

「また王や大臣達が色々と心配されると思いますが」


 カレンのつっこみに、エバンスは首を横に振った。


「かまわん。今はそんなことよりやるべきことがあるのだ。行こうタマキ」

「おお、早速出発だ」

「カレン、バーンズを呼んできてくれ。裏の門に集まることにしよう」

「はい、ただちに」


 カレンは音もなくその場を去っていった。


「さて、ヨウコを乗っけていくための車を用意しよう。タマキは一緒に来てくれ、ロレンザは裏の門までヨウコを連れてきてくれ」



 しばらくして、一行は城の裏の門に集まった。

「準備はいいな」

「ちょっと質問なんだけど、精霊の泉ってどれくらい遠いのかな。あと馬車で行けるの?」

「ゆっくり行っても日が沈む前に帰ってこられる程度の距離だ。道もあるから馬車も通れるし、特に危険もない」

「そっか、それならさっさと出発だ」

「タマキ様」


 早速歩き出そうとした環をカレンが止めた。


「タマキ様は馬車に乗ってください。到着までにスペルカードの契約を済ませてしまいましょう」

「みんな乗らないのか?」


 環の言葉にエバンスは首を横に振った。


「私は歩く、こんな機会でもないとなかなか森を歩きまわることもできないからな。バーンズ、御者を頼む。ロレンザはタマキと一緒に後ろに乗ってくれ」


 ロレンザとバーンスは言われた通りにした。環とカレンもロレンザに続いて馬車に乗り込んだ。馬車の内部はヨウコが寝かされていて、あと3人も入るとほぼ満員だった。カレンは6枚のスペルカードを取り出して環に手渡した。


「これはそれぞれどんな魔法なのかな」

「それは私から説明いたしましょう。まず一番上のカードはアイスバイト、氷の牙を出現させるます。次がファイアボール、これは爆発する火の玉を作り出します」

「うんうん、それでこの3枚目は?」

「それはライトニングボルト、雷の矢を作り出します。次はプロテクション、それは魔法の盾を作り出します」

「魔法の盾? ストーンスキンとはどう違うの」

「ストーンスキンは直接体の防御力を高める魔法ですが、プロテクションはあくまでも魔法の盾です。ストーンスキンでは炎や氷、雷にはそれほどの効果はありませんが、プロテクションを使えばそれらも全て防ぐことができます」

「そりゃすごい、それでこの最後の2枚のカードは」

「1つはヒーリング、体力の回復をする魔法です。軽傷ならばすぐに治すことも可能です。そしてもう1つがマイティ、身体能力を向上させます」

「身体能力の向上か。あのでかい骸骨と戦った時は魔力を使ってすごい力が出せたんだけど、それと同じかな」

「いえ、マイティではあそこまでの力は出せません。しかし、マイティならば一度使えばしばらくの間は有効ですし、他人にかけることもできるのです」

「確かに、あのやりかたは瞬間的にしか使えないみたいだもんな。他人にもかけられるのも便利そうだ。魔法様々」


 カレンはその環の言葉にうなずいた。


「その通りです。タマキ様は非常識な魔力をお持ちですが、それもまともに使わなければ効率は悪いですし、制御を失敗することもあるかもしれません」

「なるほどね。しっかり覚えないといけないんだな」

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