第七話
「力を手に入れる者には、必ず試練が与えられる。」
その声が、私の頭の中に響き渡った。空気が急に重くなり、部屋の温度が下がったような気がした。アリアは私を見つめていた。
「今のは…何?」
私は声が出せず、ただその声がどこから発せられているのかを探し続けた。しかし、部屋のどこにもその源は見当たらない。まるで、空間そのものが声を発しているかのようだった。
「姫様…気をつけてください。」
アリアが私に低い声で警告する。彼女も何かを察知したのだろうか。
「試練…」
私はその言葉を呟いた。強大な力を手に入れるためには、確かに代償があるというのは理解していた。
その時、突然、部屋の空間が歪み、目の前に異世界の景色が広がった。私は驚きのあまり、足を一歩後ろに踏み出した。目の前に現れたのは、魔法のように浮かぶ不安定な光景だった。
「これは…?」
私はその光景を見つめると、それが一種の異次元空間であることに気づいた。周囲には古代の遺跡のような建物や、空を覆うように立ち上る巨大な塔が見える。そこには、明らかに異世界の要素が強く感じられた。
「お姫様、この空間は試練の場です。」
アリアが冷静に説明する。
「あなたが力を求めるなら、この空間で試練を受けなければなりません。成功すれば、あなたの力はさらに強化されます。しかし、失敗すれば、全てを失うことになります。」
「全てを失う…? 冗談じゃない!お前、やっぱり嫌いだ!後で覚えておけ」
その言葉に、私は心の中で一瞬、恐怖を感じた。失敗すれば、力を失い、元の世界に戻れなくなるのだろうか?それとも、命を落とすことになるのだろうか?
「姫様...この道を選ぶことにしたのは姫様ですよ?」
アリアが私を見つめ、静かに問いかける。
「チッ...仕方ない。もうどうにでもなれ!」
その瞬間、空間の歪みがさらに強くなり、目の前に巨大な門が現れた。門は黒い魔法のエネルギーで輝いており、まるで異世界への入り口のようだった。
「試練の始まりです。」
アリアが言うと、私の手を引いて門の前に立たせた。
「さあ、姫様。中に入ってください。」
私は一度深呼吸をし、決意を固めてその門をくぐった。
⸻
異世界の空間に足を踏み入れると、私は一瞬で別の場所に移動した。周囲は荒れ果てた大地と、朽ちた建物が並ぶ場所だった。空は血のように赤く染まり、風は冷たく吹き荒れている。
「これは…」
私はその不安な気持ちを胸に抱きながらも、進むべき道を探し始めた。空気が異常に重く、足を一歩踏み出すごとに重さが増していくような感覚があった。周囲の景色から目を離すことができないほど、何か不穏な気配が漂っていた。
「試練…本当にあるのか?」
その時、遠くから低い唸り声のような音が聞こえてきた。私は瞬時に振り向き、その音の方向を見定めた。何かが近づいているのは間違いない。
すると、巨大な影が地面を揺らしながら現れた。それは、異形の怪物で、体の上には無数の触手が生えており、その目は赤く光っている。
「こいつを倒せってことか...」
私はその巨大な怪物を見つめながら、心の中で覚悟を決めた。時間停止の力で対抗することはできるかもしれないが、それでは試練を乗り越えたとは言えないだろう。私は新たな力を手に入れるために、この試練を乗り越えなければならない。
「来い!」
私はその怪物に向かって駆け出した。時間を止めて一気に距離を縮め、目の前に迫るその怪物を倒す方法を模索しながら、頭の中で冷静に戦術を立てていく。
だが、その時、突然、空間の中に響く声が聞こえた。
「お前はなぜ戻ってきた? なぜ力を求める?」
その声は、まるで空間自体が問いかけているかのようだった。私はその声に答えるように、さらに力を込めて戦い続けた。
「うるさい! 邪魔をするな!」
私は怪物に立ち向かうのであった。