第六話
アリアの提案を受け入れることにした私は、彼女の話をじっくりと聞くことにした。冷静で計算された言葉の一つ一つが、私にとって新しい視点を与えてくれるような気がしていた。彼女が語る魔王討伐のための道筋、そして代償について、私は慎重に考えながらも、心の中で決意を固めていた。
「では、まずはあなたの力を強化するために、必要なものを手に入れましょう。」
アリアはゆっくりと続けた。
「この王国には、古代の魔法の遺物や強力な武器が眠っている場所があります。それを手に入れれば、あなたの力はさらに増し、魔王を倒すほどの力を持つことができるでしょう。しかし、そこに辿り着くには、いくつかの障害を乗り越えなければなりません。」
「障害…?」
私は彼女の言葉に興味を持った。障害が何であれ、時間停止の力を持っていれば、乗り越えるのは簡単だろうと思っていた。しかし、アリアはその目を鋭くして、私に警告するように言った。
「その遺物が眠っている場所は、決して簡単に手に入るものではありません。古代の魔法が封印しているため、ただの力では突破できません。特に、時間停止のような力に対しては、異なる種類の魔法や呪いがかけられているかもしれません。」
その言葉を聞いた瞬間、私は再び自分の力の限界を考えた。時間停止の力は確かに強力だが、魔法や呪いにはどう対処すべきかがわからない。
「それなら、どうすればいい?」
私が問いかけると、アリアは一度静かに考え込み、そしてゆっくりと口を開いた。
「まず、力を増幅させるために、私が持っている古代の魔法書から、あなたに合った呪文を教えることができるかもしれません。それが、直面するであろう魔法的な障害を突破するための鍵になるかもしれません。」
「呪文…?」
私はその提案に少し驚いた。時間停止の力には、確かに呪文を使うという要素はなかったからだ。しかし、アリアの目には確かな信念が宿っている。彼女は私に、目の前の障害を乗り越えさせるための手立てをしっかりと考えているようだった。
「でも、その呪文が本当に効果があるのかどうかはわからないんじゃない?」
「それはわかりません。しかし、私が持っている知識と、あなたの力が組み合わされば、きっと道は開けると信じています。私を信じてください」
アリアの言葉に、私は少し考えた後、頷いた。
「わかったわ。あなたを信じる。」
私の答えに、アリアは微笑みながらうなずいた。
「では、準備を整えましょう。まずは私の屋敷に向かいます。その後、必要な呪文を教えます。」
その後、私はアリアと共に王城を後にし、彼女の屋敷へと向かった。途中、城の外で不安そうに私を見つめる騎士たちの姿が見えたが、アリアは何も気にした様子はなかった。
屋敷に到着すると、アリアは私を一室に案内した。その部屋には、無数の古代の書物や巻物が整然と並べられている。どれも、かなり古く、時を感じさせるものばかりだ。
「こちらです。」
アリアは一冊の大きな魔法書を取り出し、私に渡してきた。表紙には、古代文字が刻まれており、何かしらの強い力を秘めていることを感じさせる。
「この本の中には、古代の呪文がいくつかあります。ただし、使うには折れない強靭な心が必要です。心が乱れていると、呪文が逆にあなたを害することもあるのです。」
「準備…心の準備か。」
私はその言葉を胸に刻んだ。力を得るためには、冷静さと強い意志が必要だ。それを理解して、私は本を開くことにした。
ページをめくると、いくつかの呪文が書かれており、それぞれに意味があり、使い方も書かれている。私の目は、次々に呪文に吸い寄せられていった。
「これだ。」
一つの呪文が目に留まった。それは、時間を制御する力をさらに強化する呪文だった。
「これなら、私の力を増すことができるかもしれない」
私はその呪文を声に出さずに心の中で唱え、力を込めた。すると、体の中から温かいエネルギーが湧き上がるのを感じた。その感覚に、私は再び力強い決意を持った。
「よし、これで準備は整っただろう」
だが、その時、部屋の中にひとしきりの静寂が訪れ、突然、どこからともなく声が響いた。
「力を手に入れる者には、必ず試練が与えられる。」
その声は、まるで空間全体を揺さぶるかのように響いた。私の背筋が凍りつく
「これが古代の呪文です。この試練を突破しなければ、あなたはその呪文を扱うことはできない」
「強靭な心...そういうことね」