タイトル未定2025/03/19 20:24
霧が再び濃く立ち込め、空間が歪んでいく。異形の存在は、しばらくの間沈黙していたが、その体からは異様な力が渦巻いていた。私たちの攻撃が効いたはずなのに、それでも異形の存在はすぐに回復してしまった。まるで不死身のような存在だ。
「まだ終わらない…」
私は呟く。時間停止の力が効かないことに加えて、私たちの攻撃が完全に通用しない状況に、焦りを感じ始めていた。しかし、同時に冷静にならなければならないと自分に言い聞かせる。これまでの戦いから学んだことを活かし、今こそ一歩踏み出す時だ。
「エリス、アレン、今がチャンスだ!」
私は必死に声を上げた。異形の存在が力を集めているその瞬間、エリスとアレンが互いに確認し合うように目を合わせた。二人とも少し疲れている様子だが、それでもその目に光る決意が見えた。
エリスが手をかざし、魔法の準備を始める。その顔には、今まで見たことがないほどの真剣な表情が浮かんでいた。
「これが最後のチャンスよ!」
エリスが魔力を集中させ、手を突き出すと、光の弾が異形の存在に向かって飛んでいった。アレンもその瞬間を見逃さず、剣を握りしめ、全力で駆け出す。
「いけ!」
アレンの剣が光の中で輝き、そのまま異形の存在に向かって振り下ろされる。その動きはまるで時間が止まったかのように鋭く、速さを増していった。異形の存在がそれを感じ取り、何かを叫びながらその体を震わせる。
だが、その瞬間、異形の存在の周囲に再び強力な闇の力が渦巻き始めた。まるで時間そのものが逆流しているかのような錯覚が私を襲う。異形の存在が手をかざし、その力が放たれると、私たちは一瞬、何もできなくなった。
「だめだ!」
私はその力を受けて、体が重く感じる。時間停止の力は一切効かない。エリスもアレンも一瞬動きを止められ、光の弾が途中で消えてしまった。
「お前たちは、私の力を前にして無力だ。」
異形の存在が低く、冷たい声で言う。その言葉に、私たちは絶望しかける。しかし、その瞬間、私の心に一つの閃きが浮かんだ。私は無意識に、心の中で力を集めていた。
「みんな、まだ終わっていない!」
その言葉を発した瞬間、私は自分の内なる力を解放した。時間停止の力は確かに通じなかったが、それでも私にはもう一つ、異形の存在に通じる力があった。それは…私の意志、私の絆、私たちの心が生み出した力だった。
「行く!」
その瞬間、私の周りに空間が歪み、時間と空間がほんの少しだけ揺らぎ始める。私はその歪みに意識を集中させ、異形の存在の力を一時的に止めることに成功した。
「エリス、アレン、今だ!」
私は叫ぶと、二人がすぐに反応する。エリスは再び魔力を集め、アレンはその隙に一気に異形の存在に近づいて剣を振り下ろす。その瞬間、私の力がさらに強く作用し、異形の存在の動きが一瞬だけ鈍くなった。
「これで終わらせる!」
アレンの剣が異形の存在に届き、その一撃が深く刻まれた。エリスの魔法も同時に炸裂し、異形の存在を包み込む光となって消え去った。
異形の存在が呻き声を上げ、倒れ込む。その姿は、今まで見たことがないほど脆く感じられた。
「…勝ったのか?」
私は息を呑んでその光景を見つめる。異形の存在が消え去り、霧が晴れ、空間が少しずつ落ち着きを取り戻していく。だが、その安堵も束の間、私はすぐに実感する。これで本当に終わったのか、それとも新たな試練が待っているのか。
「…まだ、終わっていない。」
その時、遠くの空から、再び不穏な気配が漂ってきた。私たちの勝利は確かに大きな一歩だが、どうやらこの世界の試練は、まだ続いているようだ。
「行こう。私たちの戦いは、まだ終わらない。」
私はしっかりとアレンとエリスを見つめ、その言葉を告げる。今、私たちの前に立ちふさがる運命が何であろうと、私たちは共に進み続ける。決して止まることなく、最後まで。