タイトル未定2025/03/19 20:22
霧の中から現れた異形の存在は、私たちの前に立ちふさがった。まるでこの世界の暗黒そのものを宿したような姿。巨大な黒い影が、ゆっくりとその姿を現していく。その顔には、無数の目が浮かび上がり、どこを見てもその目が私たちを見据えていた。
「お前たちが来ることは、予知していた。」
その声は低く、不気味で、まるでこの世界の命運を司る者のように感じられた。私たちの中に恐怖が広がる。しかし、私はそれを感じる暇もなく、冷静に行動を起こさなければならなかった。
「あなたは…一体何者だ?」
私はその存在に問いかける。その目が私を見つめると、どこか遠くから呼ばれるような感覚が走った。これはただの異世界の住人ではない。何かしら、この世界の“中心”に関わる存在なのだと直感的に感じた。
「私は、この世界の守護者。だが、もう守護する者は何も残らない。」
その言葉に、私は息を呑む。その話の内容が意味することを、少しずつ理解し始める。この世界は、ただ美しい場所ではない。この世界には、何かが終わりを迎えている。そして、その終焉の原因は、私たちが手を出してはならないものに関係しているようだ。
「終わり…?」
エリスが呟く。その言葉をきっかけに、私たちの間に一層の緊張感が走る。だが、同時に私は自分の中で時間停止の力を集中させ、その力が今後どれだけ役立つかを考え始める。異形の存在がどんな力を持っていようと、私たちにはチャンスがある。
「お前たちがここに来た理由もわかる。」
その存在が続ける。黒い霧が、さらに濃くなるとともに、その声が一層深く響く。
「だが、知らないほうが良かった。お前たちにとっては、もう遅すぎる。」
「何を言っているんだ?」
私は少し前に踏み出しながらも、冷静に問いかける。少なくとも、私たちはこの世界の謎を解き明かすためにここに来たのだ。けれど、その謎が何か恐ろしいものだとしたら、どうすればいいのか。
「お前たちが目にしているものは、すでに滅びゆく世界の一部だ。もはや、ここに何を求めても無駄だ。」
その言葉に、私は思わず立ち止まる。滅びゆく世界…それが何を意味するのか、まだ完全に理解できなかった。しかし、この世界が崩壊しようとしていることだけは、確かに感じ取ることができた。
「それでも、俺たちは進むしかない。」
アレンが力強く言う。その言葉に、私は心の中で深く頷いた。たとえこの世界が滅びようとしていても、私たちの使命はそれを止めることだ。すべてが終わってしまう前に、私たちはこの世界に希望をもたらすために戦わなければならない。
「進む? ふふ…愚か者たち。」
その異形の存在は、まるで私たちを見下ろすように笑った。だが、その笑いの中には、どこか哀しみと絶望が漂っていた。それが、さらに私の中で不安を掻き立てる。
「ならば、お前たちが進み続けるなら、私の試練を受ける覚悟を持て。」
その言葉を聞いた瞬間、私の体は自然と戦闘態勢に入った。時間停止の力を持ってしても、この相手がどれほど強力な存在であるか、予測ができなかった。しかし、逃げることはできない。私たちは、この試練を乗り越えなければならない。
その瞬間、霧が一気に動き出し、異形の存在の体がどんどん大きく膨れ上がっていった。霧の中から伸びてきた無数の黒い腕が、私たちに向かって迫ってくる。
「時間を止めても、私は動く。」
その異形が冷酷な言葉を発すると同時に、私は全身に寒気を感じた。時間停止の能力が効かない…!?その言葉が、私の心に一抹の恐怖をもたらした。どんな存在が時間停止の力をも凌駕するのか?そして、私たちはどう立ち向かうべきか。
私は一度冷静に深呼吸をし、再度時間停止の力を発動させる。しかし、その力を使った瞬間、違和感が走った。時間が…止まらない。まるで私の力が、何かに遮られているような感覚に襲われた。
「お前の力は、無駄だ。」
その声が再び響く。異形の存在は、確かにただの異世界の守護者ではない。何か深い、強大な力を持っていることが、今の瞬間に如実に現れた。
「どうして…」
私は呟く。全身が震え、恐怖が再び胸を締めつける。しかし、それでも私たちは立ち止まってはいけない。この世界の運命を変えるためには、どんな恐怖にも立ち向かう覚悟を持たなければならない。
その時、アレンが剣を握りしめ、決意の表情で言った。
「俺たちが進む道を決める。どんなに苦しくても、俺たちの手で未来を掴むんだ!」
その言葉に、私は力を得た。時間停止の力を使えなくても、私たちは一緒に戦い抜く覚悟ができている。私たちの絆が、力になってくれるはずだ。
「行くぞ!」
私は叫びながら、再び立ち上がった。