タイトル未定2025/03/19 19:31
「すべてが…」
エリスは目を閉じ、息をつく。周囲の静寂は、先ほどの激しい戦闘が嘘のように包み込んでいた。私たちはその場で立ち尽くし、呼吸を整えることしかできなかった。
影の怪物たちが消え、闇が引き返したとき、私たちは一瞬の平穏を取り戻していた。しかし、それはあくまで「一瞬」のことであり、破滅の神殿の試練が終わったわけではない。
「一体…どうしてこんなに多くの試練が?」
アレンが呟く。私も同じ疑問を抱えていた。これほどの存在を倒したとしても、この神殿にはまだ未知の力が眠っている。それを感じずにはいられなかった。
「試練は、すべて私たちの心を試すものだ。もし、恐れや疑念が心に残るなら、さらに強力な試練が襲ってくる。」
エリスはゆっくりと立ち上がり、何かを見透かすように目を細めて言った。その言葉は、私たちの心の中に潜んでいた不安を見透かされたかのように感じた。
「心を試す…」
私は口に出しながら、自分の内面を見つめ直していた。恐れ、迷い、後悔…。そのすべてが、試練に影響を与えるのだろう。ならば、私たちはどうすれば良いのか。
「もう、後戻りはできない。」
私はその時、ふと覚悟を決めた。私たちの進むべき道は、恐れを乗り越えることだ。それをしなければ、どんな試練も乗り越えられない。
「行こう。破滅の神殿に…」
私が言い終わると、突然、地面が震え、再び空気が重くなった。私は驚き、周囲を見渡す。すると、さらに深く暗闇が広がり、地面の亀裂から不気味な光が漏れ始めた。
「またか!」
アレンが叫ぶ。その光の中から、今度は不気味な顔をした巨大な扉が現れた。扉の表面には、古代の文字が刻まれており、それは私たちに語りかけるようにゆっくりと動き始めた。
「これは、次の試練の扉だ。」
エリスが冷静に言ったが、私たちの胸にはまた新たな恐れが湧き上がった。扉の前に立つと、文字が発光し、扉がひときわ大きな音を立てて開き始めた。
「いよいよ…」
アレンが腰に手を当てながらも、その目は決して不安を見せなかった。私たちも自然とその決意に引き寄せられるように、扉の中へ足を踏み入れる。
扉を越えた先には、広大な空間が広がっていた。まるで異次元に来たかのような、無限に広がる闇の中。だが、そこにはすぐに異常なものを感じた。
「これ、何かがおかしい。」
私の言葉に、アレンも頷く。彼の視線がゆっくりと空間を巡る。
「何かが…動いている。」
その瞬間、空間の中に無数の光が現れ、それぞれが私たちの目を追うように動き始めた。目の前には、無数の眼が浮かび上がり、その瞳は私たちをじっと見つめていた。
「目…!? これって一体…!」
アレンの声が震えていた。それもそのはず、目の数は無限とも言えるほどの量で、しかもそれらが私たちを囲むように動き始めたのだ。
「これが、破滅の神殿の試練だ。」
エリスは冷静だったが、その顔にはわずかな恐怖が滲んでいた。私は一瞬、それに気づき、深く息をついた。
「私たちの心を試すものが、今まさに目の前に現れている。」
エリスがその言葉を発した瞬間、私たちの体に何かが伝わってきた。それは、私たちの最も深い恐れ、隠された不安、過去の失敗。それらがまるで目の前に浮かび上がり、私たちの心をじわじわと侵食してくるようだった。
「恐れるな。」
私は思わず、アレンに声をかけた。彼は驚いた顔をしながらも、やがて深く頷いた。
「恐れずに進もう。私たちの心が試されているなら、私たちはその試練を乗り越えてみせる。」
その言葉に、エリスがわずかに微笑んだ。
「その通りだ。試練を恐れるのではなく、それを受け入れ、乗り越えればいい。自分を信じることが、今一番大切なことだ。」
その瞬間、目の前に浮かんだ無数の眼が、私たちを包み込むように一斉に動き出した。そして、それぞれが私たちの心の中に問いかけてきた。
「お前たちは…本当に、心を試される覚悟があるのか?」
その問いに対し、私は深く息を吸い、胸を張った。
「ある。だからこそ、前に進むんだ!」
その言葉が、周囲の空間に響き渡った瞬間、目の前の眼が消え、空間が一瞬で静まり返った。試練の一部が、また一つ終わりを迎えた。
だが、これはほんの始まりに過ぎない。
破滅の神殿は、まだまだ多くの試練を私たちに課し続けるだろう。そして、私たちはそれを一つ一つ乗り越えて、最後に待ち受ける「本当の試練」に立ち向かわなければならない。