第二話
目を覚ました私は、自分がまた現実に戻ったことを確認した。ふわっとした寝ぼけた感じを残しつつ、布団から身を起こす。窓の外には、晴れ渡る青空が広がっている。
「まさか、あれ全部夢だったなんて…」
夢の中で感じた興奮と自由。美少女になって、王宮で好き放題にやりたい放題したあの感覚が、今も忘れられない。何か物足りないような、でも、現実に戻ってホッとする気持ちもある。
「でも、もしまたあの力を手に入れたら…」
私は思わず鏡の前に立ち、自分の顔をじっと見つめる。あの美少女の姿をもう一度手に入れることができたら、今度はもっと自由に、もっと冒険してみたい。あの力を使って、何もかもを操れるなんて、まるで夢のような世界だ。
「うーん、でも…あの王宮の生活がそんなに面白いのかな?」
とりあえず、普通の生活に戻った私は学校へ行く準備をしようとしたそのとき、ふと不安がよぎった。もし本当にあの異世界が夢だったのだとしたら、あの力も無かったことになってしまうのだろうか?
「はぁ....またあの力が手に入ったらなぁ...」
強く思うと、胸の中で熱い感情が湧き上がった。その瞬間、奇妙な感覚が私を包み込んだ。
「…うそ?」
もう一度、時間停止の力を使ってみようと、無意識に集中してみる。
「……」
一瞬、何も起こらなかったように感じたが、すぐに周囲の動きが止まった。息を呑んで、部屋の中を見ると、目の前の時計の針が止まり、窓の外で飛んでいた鳥も空中で静止している。どうやら、私は再びその力を手に入れたようだ。
「やった!本当に戻ってきたんだ!」
嬉しさと興奮が込み上げてきた私は、時間を止めたまま部屋を歩き回り、手元にある物を無造作に動かしたり、書類を整理したりしながら、その力を楽しんだ。しかし、すぐにふと冷静になった。
「さて、次はどうしようかな?」
その時、視界に入ったのは、テレビの画面に映るニュースだった。「異世界への転移、未だ解明されず」という見出し。少し前に話題になった異世界転移のニュースが目に入ると、私は思わずテレビに近づいて、その番組をじっと見つめた。
「異世界転移…?」
その言葉に、胸の奥で何かが引っかかる。
「まさか、あの夢の中の世界が現実に…?」
頭の中で一瞬だけ思い浮かんだその考えが、すぐに私の心をざわつかせた。それが本当だとしたら、私はまたあの世界に戻れる可能性があるのでは?
「時間停止の力もあるし…!」
そこでふと気づいた。私はもしかして、異世界に戻る方法を探すことができるかもしれない。そのためには、まずその異世界転移の仕組みを突き止める必要がある。
「よし、まずはそのニュースを調べてみよう。」
時間を止め、無理やりテレビを元に戻して、再び現実の時間が動き出した。私は素早くスマホを取り出し、異世界転移に関する情報を調べることにした。
すると、いくつかのブログ記事や掲示板の書き込みが目に入った。その中で、一つの書き込みが特に気になった。
「異世界転移には、『強い意志』が必要だと言われています。あなたの『強い願望』がきっかけになるかもしれません。」
その言葉を見た瞬間、胸の中で何かが弾けたような気がした。
「強い意志、強い願望…!」
私は決意した。異世界に戻るためには、あの力を使って、もう一度あの場所へ行かなくてはならない。そして、今度こそ、本当の意味で自由を手に入れるのだ。
「行くぞ、異世界!」
心の中で決意を固め、私は再び時間を停止させ、次にどんな手を使おうかと考えながら、異世界転移の方法を探り始めた。