タイトル未定2025/03/19 19:25
拠点を制圧し、村の安全を一時的に確保した私たちだが、心の中では新たな不安が広がっていた。倒した魔法使いの顔に浮かんでいた冷徹な表情。その死後に発せられた、わずかな残響。全てが示していた。これは、ただの小手調べに過ぎないということを。
「背後に、もっと大きな力がいる。」
私はアレンと目を合わせて呟いた。彼もその不安を感じ取ったのだろう。どこか遠くの空が、陰鬱に曇っているように感じられた。私たちは、戦いを終わらせたと思ったが、始まりに過ぎなかったのだ。
「私たちが倒した魔法使いが言っていたように、裏で糸を引いている存在がいる。もっと強力な魔法使いか、それとも…」
私の言葉が途切れると、アレンが不安そうに答えた。
「もっと大きな力…?」
私の胸に沈んだ不安が、言葉として口に出るのを恐れていた。だが、私はその予感を否定できなかった。
「この先、敵はただの魔法使いではない。もっと暗黒の力を持った存在が、私たちに迫ってくる。」
その時、空気が一変した。遠くから、かすかな呻き声と共に風が吹き荒れ、何か不吉な気配が漂ってきた。
「これは…!」
私の体が微かに震え、時間が止まる感覚が一瞬だけ襲ってきた。しかし、すぐにその感覚が消える。代わりに、目の前に現れたのは、全身を黒い鎧に包んだ巨大な影だった。
「き、君は…!」
アレンが声を上げ、後ろに下がる。その影は、ただの人間の姿ではなかった。背が高く、骨のような顔をした鎧の中から、冷徹な目がこちらを見据えている。まるで死神のような存在だ。
「貴様らが、村を守ろうなどと愚かな真似を…。」
低い声でその影は呟き、無表情な顔からは一切の感情が読み取れなかった。しかし、その声には確実に力が宿っていると感じた。周囲の空気が、圧倒的な力に押しつぶされそうだった。
「こいつは…一体、何者だ?」
私は、思わずその人物に向かって叫んだ。その影は、私の問いに対して一度冷笑を浮かべ、そして静かに答える。
「我が名は、アザリウス。闇の使者であり、この世界を支配する者の名の下に動いている。」
その言葉を聞いて、私は背筋が凍るのを感じた。「支配する者の名の下に…?」その意味はすぐに理解できなかったが、言葉に宿る圧倒的な力に、全身が震えた。
「お前のような存在が、この世界を支配するだと?」
アレンが怒りに震える声で言い返したが、アザリウスは冷徹な眼差しを向けただけで、何も答えなかった。
「貴様らが立ち向かおうとするなら、無駄だ。」
アザリウスの言葉と共に、彼は手を一振りした。その瞬間、周囲の空間が歪んだように感じられ、次の瞬間には、私たちの周りに無数の黒い影が現れた。それらは、まるで生きているかのように動き回り、私たちを取り囲んだ。
「時間停止の能力を持つ者よ、お前の力も所詮、この程度だ。」
アザリウスは、冷酷に私を見下ろしながら言った。その言葉の通り、私は時間を停止しようと試みたが、何かがうまくいかない。周囲の空気が、時間停止の力を吸収しているような感覚がした。
「どういうことだ…!」
私は自分の能力に異常を感じ、アレンに向かって叫んだ。
「アレン!何かが変だ、何かがこの力を封じている!」
アレンは必死に周囲を見回しているが、すでに周りには無数の黒い影が迫っており、私たちの行動を封じ込めようとしていた。
「くっ…!」
アレンが魔法を使い、影を撃退しようとするが、次々と新しい影が現れ、数を増していく。私たちの力だけでは、この圧倒的な力に立ち向かうのは難しいことを、私は痛感していた。
「お前たちが持っている力は、すでに私の支配下にある。」
アザリウスの言葉に、私たちは完全に圧倒されているように感じた。しかし、その時、私は一つの決意を固めた。
「このままでは終わらせない。」
私は、自分の能力を改めて集中させ、全力で周囲の影を打破することに決めた。しかし、アザリウスの力に立ち向かうためには、何か他の方法が必要だと感じていた。
その時、遠くから一つの声が聞こえた。
「待て、アザリウス!」
その声は、まるで天から降り注ぐように響き、アザリウスはその声に振り向いた。その瞬間、私たちは一瞬の隙を見逃さず、反撃の機会を得た。