第十一話
試練を乗り越え、内面の強さを手に入れた私は、次の道を進むべく足を踏み出した。今までとは異なる自信と力を胸に、私は次なる試練に向けて歩き続けていた。心の中で感じる新たな成長は、私をさらに強くした。
周囲の景色は、試練を終えるごとに変化していく。前に進むたびに、新たな風景が広がり、そこには見たこともないような異世界の姿が現れる。だが、いくら美しい景色であろうと、私にとってはそれが試練の一部であることは変わらない。
「次は何が待っているのか…?」
私は自問しながら歩を進めた。その時、ふと、目の前に大きな扉が現れた。それは金色に輝く装飾が施され、どこか神聖な雰囲気を漂わせている。
扉には不思議な文字が刻まれていたが、それはどこか見覚えのある文字のように感じた。私はその文字をじっと見つめ、少し考えると、ふとその意味が頭に浮かんだ。
「これは…試練を超えし者に与えられる、最後の試練か?」
私はその言葉を心の中で繰り返し、扉に手を伸ばした。扉の金の取っ手を握ると、すぐにその重さが感じられ、扉は静かに開き始めた。
中には、広大な空間が広がっていた。その中心には、一つの大きな石座があり、その上に一人の人物が座っているのが見えた。その人物は、長い髪を持ち、白い衣を纏っていた。顔は穏やかで、どこか神々しい雰囲気を放っている。
「ようこそ、試練の終わりへ。」
その人物は静かに言った。声は優しく、耳に心地よく響いた。私が進み出すと、その人物は微笑みながら立ち上がり、私に向かって歩み寄ってきた。
「あなたは多くの試練を乗り越えてきた。今、あなたはその力を試されるべき時を迎えている。」
「私は、もうすでに力を手に入れたと思っていました。でも…それが本当に力なのか、まだ分からない。」
私はその言葉を吐きながら、自分が進んできた道を思い返していた。今までの試練で、私は自分の力を深め、成長してきた。しかし、それでもどこかで不安が残る。まだ足りないものがある気がしてならなかった。
その人物は穏やかに微笑んで言った。
「力とは、単に自分を守るためのものではない。真の力は、自分以外のものを守るために使うべきものなのだ。」
その言葉に、私は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。今まで私は、ただ自分の力を高めることに必死で、他者を守るという意識が欠けていた。試練を通して、自分を守るために力を使うことは学んだが、他者を守るためにその力を使うという概念は、まだ私の中に明確に存在していなかった。
「他者を守るために…」
その言葉が私の心の中で響き渡り、私は静かに頷いた。確かに、力は自分のためだけに使うべきではない。他者のために使える力こそ、真の力なのだと気づいた。
「さあ、最後の試練だ。」
その人物は静かに言うと、私の目の前に一つの短剣を置いた。その短剣は、煌めくように美しく、刃先には何か不思議な光が宿っているように見えた。
「この短剣を使い、あなたの前に立つ者と戦いなさい。その戦いで、あなたがどれだけ他者を守るために力を使えるかが試される。」
その言葉と共に、私は静かに短剣を手に取った。次の瞬間、空間が歪み、目の前に現れたのは、私が過去に試練で倒した数々の強敵たちだった。彼らが一斉に私に向かって攻撃を仕掛けてきた。
私はその姿を見て、もう一度心を落ち着けた。過去の敵を倒すことが目的ではない。今、目の前にいるのは、私が守るべきものだ。自分の力を、他者のために使うために戦うのだ。
「行こう。」
私は短剣を握りしめ、周囲を見渡しながら立ち向かう決意を固めた。試練の最後、私はどんな選択をするのだろうか?