タイトル未定2025/03/20 08:38
俺はスマホを握りしめたまま、改めて考える。
異世界では美少女勇者として時間を止め、好き放題できる。
現実世界では普通の男として暮らせる。
しかも、どちらの世界にいる間も、もう片方の時間は止まっている。
「……これ、無敵じゃね?」
セレスティアが優雅に微笑む。
「ええ、勇者様はまさに”二つの世界を手にした存在”ですわ。」
エリスが少し困ったように頬をかく。
「でも、勇者様……本当にこの力をどう使うか、お考えになりましたか?」
「……どう使うか?」
俺は思わず聞き返した。
リヴィアが腕を組んで真剣な顔をする。
「確かに、異世界と現実世界を行き来できるのは素晴らしいことです。しかし、それがずっと続くとは限らないのでは?」
「……え?」
俺はスマホを見つめる。
まるで万能の鍵のようなこのアイテム。でも、本当にこの力は永遠なのか?
「勇者様、この力が”何のために与えられた”のか、考えたことはありますか?」
セレスティアの言葉に、俺は言葉を失う。
「……楽しく生きるため、じゃないのか?」
異世界で美少女勇者として無双し、時間を止めて好き放題。
現実世界では普通の生活を送り、何事もなかったかのように過ごせる。
こんな最高の環境があるか?
「確かに、楽しむことは大切ですわ。」
セレスティアは微笑む。
「ですが、それだけではないはず。なぜなら、勇者様は”選ばれた”のですから。」
「選ばれた……?」
俺はまた、その言葉を反芻する。
――選ばれた存在。
俺は、何者かの意思でこの力を手にしたのか?
「まあまあ、難しく考えすぎない方がいいのでは?」
エリスが苦笑する。
「だって、勇者様は”美少女勇者”なんですよ? 楽しんでしまえばいいんです。」
「そうそう!」
リヴィアが肩をすくめる。
「悩むくらいなら、まずは存分にこの力を試してみるべきです。」
「……確かに。」
俺はニヤリと笑った。
「よし、だったらさっそく試してみるか!」
スマホを握りしめ、俺は”現実世界へ戻る”と念じた――。