第十話
湖畔での試練を乗り越え、新たな力を手に入れた私は、次の試練に向けて足を踏み出した。体に流れ込んできたエネルギーは、まるで新たな血潮が私の中を駆け巡るような感覚だった。これまでの力とは一線を画す、強力な力を感じ取ることができた。
「これで…もう力を抑制されることはないはずだ。」
私はその新たな力を試すかのように、手をひらひらと振ってみる。周囲の空気が微妙に揺れるのを感じ、力の支配ができる感覚が得られた。この力は、ただの暴力的なものではない。私がどれほど慎重に、そして意識的に使うかによって、その威力は無限に引き出せるものだと感じた。
「次の試練は…?」
私は周囲を見渡した。しかし、そこには何も見当たらない。まるで何もない広大な空間。風の音も、湖のさざ波も消え、ただ静けさだけが支配していた。
その瞬間、空間が歪んだ。
「きた…!」
突然、空間の中に亀裂が走り、目の前に現れたのは、青白い光を放つ巨大な鏡だった。鏡の中には、私が映し出されている。しかし、その私の表情はどこか違っていた。鏡の中の私は、目を見開き、何かに怯え、恐怖に満ちている。
「これが次の試練か…?」
私は鏡を凝視し、じっとその映像を見守った。鏡の中の私が次第にその恐怖を強調するように動き出す。私が鏡に映る自分を見つめていると、鏡の中の私が突然、手を伸ばして私の元に迫ってきた。
その手は、私の身体を強く掴み、引き寄せる。私は必死にその手を振り払おうとしたが、鏡の中の自分の力が非常に強く、次第に私を引き寄せていく。
「なぜ、こんなことが…?」
私は鏡の中の自分を見つめ、恐怖に感じた。それは、私が自分自身に抱えている不安や恐れ、過去の後悔の象徴のように思えた。自分がどこかで感じていた恐れが、目の前の敵となって具現化しているようだった。
「これが…私の試練?」
その瞬間、鏡の中の私は微笑みながら言った。
「お前は、まだ弱い。強さとは、力だけでなく、内面の強さも必要なのだ。」
その言葉に、私は胸を突かれるような気がした。私はこれまで、力を手に入れることで、すべてが解決すると思っていた。だが、力を持つだけでは乗り越えられないものがあることを、試練が教えてくれた。
「私が恐れているもの、私が逃げているもの…それが、この試練で私に向かってきている。」
鏡の中の私は、さらにその力を強めて私を引き寄せようとしてきた。その手が私を捕らえ、私は完全にその力に飲み込まれた。しかし、その瞬間、私は目を閉じて心を落ち着けた。
「私を捕らえることはできない。」
私は深呼吸をし、自分の心を見つめ直すことにした。今まで逃げてきた感情や、恐れを、私はもう無視することはできない。自分自身と向き合わなければならないのだ。
「私は、私を恐れない。」
その瞬間、鏡の中の私が一瞬、動きを止めた。そして、鏡の中の私が微笑みながら言った。
「そうだ…それこそが、真の強さだ。」
その言葉と共に、鏡が砕け散り、私はその場から解放された。恐れや不安を乗り越えたことで、試練は終わりを迎えたのだ。
その後、空間がまた静寂に包まれ、次の道が開かれた。私は振り返りながら、一歩踏み出す。
「これが私の成長だ。力だけではなく、内面の強さも手に入れた。」
私は新たな自信を胸に、次の試練に向かって歩き出した。