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Append Life 96.9 僕が拾ったのは、恋人だから

「ねぇ、オトーサン。この前、Abemaでこんなの見たんだけど。」

スマホの画面を見せてきた。なになに、「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。」か。ああ、そう言えば、数年前にアニメでやってたな。

「はぁ。なんか言いたいことが分かったんだけど。」

「あ、そう思う?これって、私みたいじゃない?」

「いやいや、君は体を売って宿を確保してたの?親友が自殺したりしてるの?家が...いや、いいや。」

「あ~、ごまかした。ねぇ、私を保護したとき、体で払ってもらうとか考えてた?」

「考えてないと言えば嘘になるけど、そういう気にならなかったよ。とにかく必死だったからね。君の場合、色々ごまかしたり、ちゃんと役所で戸籍復古させたり、やることが一杯ありすぎたし、君のさじ加減で僕は警察沙汰になるわけだからさ。それに、君はその頃からずっと恋人だって言ってたじゃん。」

「そうだったっけ?あ、でも、そうかもしれない。勝手に運命とか言ってた。私にとって、あの約束は2年とちょっと前ぐらいだったし、高3だったんだから、そのぐらい言ってても可愛いことだったでしょ?」

「僕はただただ驚きしかなかったし、君の親になろうと頑張ったからさ。その後だよ。僕が君を見つけたことって、なんかすごいことだったのかなって思ったのは。」

「そうなんだ。その割に、私を見た時に、それほど驚かなかったよね。」

「驚いたよ。だけど、そこは見せないようにごまかしたのが、当時の僕。君と生活し始めて、あらためて自分が結構ヤバいことをやってると分かったよ。」

「え、ヤバいこと?別に、私の意思で、一緒に暮らしてたんだから、そういうことにはならないんじゃないの?」

「まあ、18歳になれば、その通りだけど、君と暮らし始めたのって、17歳だっただろ?10月が誕生日だったし。それに、君の両親に許可が取れる状態じゃないから、どこかで告発されたら、僕は本当に捕まる。君が2ヶ月ぐらい、現代に馴染むまで家にいてくれたから、僕は助かった側面もあるよ。」

「ふぅ~ん。親は親なりに、一生懸命考えてくれてたんだね。」

「その時よりは親っぽくなったと思うけど、どう?」

「良い親なのかはわからないし、今じゃオトーサンのほうが甘えん坊じゃん。でも、一緒に暮らしてたことは、良かったと思ってるよ。」

そんなもんか。ま、でも、これ幸いだったよね。僕も、同じ部屋に、女の子が住んでることに、やっぱりドギマギしてたような気もするし、この娘だったら、愛してあげられると思ったからね。前の彼女に言われたときに、恋人は愛せないと言われたけど、娘なら愛せると、そのときは確信があったわけじゃないけど、そう思ったしね。

「でも、それ以上に良い彼氏かな。親として頼りに出来るところもあるけど、大半は恋人だから許せてる気もする。私の親が、あんなにメンタルをやられてたら、私は呆れちゃうと思う。彼氏だから、見捨てられないし、なにより力になりたいって思った。その違いは大きいかも。」

「情けない親でごめんなさい。」

「責めてないよ。私のために頑張って、そのせいで発作を起こして、私がなだめる。やっぱり、好きじゃないと出来ないよね。」

「その頃から、実は彼氏と彼女の関係だったのかもね。まあ、そうか。好きでもない娘を、家で一緒に暮らすとまでは言わないか。」

「ほらほら、やっぱり私のことが好きだったでしょ?下心より、親心が勝っちゃうあたりは、やっぱりオトーサンだったなとは思うけどね。そっか。じゃあ、あの頃は毎日追い出されたらどうしようと思ってたけど、逆だったんだ。」


「で、今更その話をしてくるってことは、何かするってことだよね。」

「触れるFカップ、私も持ってるんだけどなぁ。」

そう言えばそんな話だったっけかな。何人と、そういう関係を持って、東京にたどり着いたのか。そっちを思うあたり、やっぱり親側の立場になっちゃうな。

「それは武器になるけど、僕は君を一人にしないよ。だから、その武器は残念ながら使えない。まあ、使いたければ、使ってもいいと思うけど、本当にパパ活とかになりかねないからね。さすがに、もういい大人だし、踏み外すことはして欲しくない。するなら、僕が相手をしてあげたほうが、君もいいんでしょ?」

「ずるいよなぁ。そう言われると、絶対にやれないもん。惚れた弱みかな。そっか。やっぱり私、みんながいうように、いやらしい体なんだね。」

あんまり自覚がないあたりが、やっぱり怖い。友人達がしっかり守ってくれるうちは、あの子達になんとかしてもらいたいところだけど、この娘はその辺にピンと来てない。

「僕が知ってる中...と言っても、4人か。エッチした中では、一番いやらしいかな。褒め言葉だよ。」

「ふぅ~ん、そうなんだ。それじゃあ、私が例えばこのアニメの主人公みたいに、エッチしながら転々として、オトーサンのところに来たら、一緒に暮らす?」

「どうだろう。それこそパパ活になっちゃうからね。モラルが許さない気もするけど、一泊ぐらいなら泊めてあげると思う。もちろん、君との約束は守るから、その場合は、一緒に暮らす。まあ、今も性生活にはだらしない感じするし、僕も反省してるところではあるよ。」

「じゃあ、私もパパ活はしない。だって、オトーサンは金銭で私を援助してくれることは、ほとんどないもんね。」

「出かけたとき、メシ代を出してあげないよ?」

「ごめんなさい。しっかり援助してもらってます。」

「まあ、でも金銭で援助することは、もう厳しいからね。あの人には悪いけど、僕も頼らないと生きていけないしね。」

「え、じゃあ、無理して私と暮らしてた?」

「知っての通り、僕は借金してるからね。でも、君と暮らしてて、それは必要経費だし、僕の娘だったから、子供に心配は掛けたくなかった。」

「それでも、私との生活を優先したってこと?」

「当たり前だよ。娘を放り出す親がいますかって。それに、あの人と結婚してなければ、多分君と結婚してたと思うよ。」

「え、え、おねえちゃんがいなければ、私と結婚?今からでも遅くはないし、結婚しようよ。」

「彼女の気持ちを考えようね。僕は、あの頃、君のことを娘だと思ってた。でも、年齢が経つにつれて、恋人になり、結婚して、僕の奥さんになるんだろうなって思ってた。あの時でも、十分おじさんだったけど、そんな空絵図を描いてたんだ。」

「おねえちゃんがいなかったら、私がオトーサンの奥さんだったのかぁ。それはそれでうれしいけど、今の生活もなかったってことだよね。」

「そうだろうね。まあ、君と結婚しても、式も出来ないし、おそらくは借金返済に必死に働くことになってたと思う。その生活が幸せかどうかわからないけど、もっと慎ましい生活になってただろうし、大学生活もさせてあげられなかったと思う。だから、今の家族が、僕らにとっては幸せだったんだと思う。」


「う~ん、そうなると、私が一番じゃないんだよね。複雑な気持ち。」

「前にも説明したかもしれないけど、僕と君では20歳の差がある。結婚してれば、それで良かったのかもしれないけど、やっぱり20年の差っていうのは大きすぎる。同じ時代を生きてないし、生きていけない。君に看取られる最後もいいとは思うけど、それで君が悲しむところまで考えるとね。耐えられないんだよ。今ですらそう思うんだからさ、僕が歳を取って、その時が近づくにつれて、僕は精神を病んでしまうと思うんだ。そんなところまで、君を苦しめたくないんだよ。」

「あれ、じゃあ、おねえちゃんは別にいいって思うの?」

「彼女も一緒だけど、僕があの人を選んだのは、同じ時間を生きてきたし、何より君にちゃんとした家庭も、両親も与えてあげたかった。今思うと偽善的だなと思うけど、君の負担をなるべく軽くしてあげたかった。それに、君が離れていくのも、怖かったんだ。」

「そう聞くと、なんか都合よく聞こえちゃうよね。じゃあ、おねえちゃん以外の人だったら、結婚してた?」

「してないだろうね。それなら、君と結婚する。彼女は、僕と同じ時代を生きている君だから、結婚に踏み切れた。幸い、嘘つき呼ばわりもせず、君のこともすんなり受け入れてくれたし、最近はどうか知らないけど、ちゃんと親をしてくれる。あとは、最初に会った時に、君が懐いただろう。君のことで、真剣に考えてくれたし、君を、自分と同じように見て欲しいと言った。だから、君の母親、いや、君が言ってる「おねえちゃん」と結婚しようと思えた。それでいいと思ってたしね。」

「思ってた?ということは、もしかして今は違うの?」

「特に変わったことはないよ。強いて言えば、今までは君が恋人と言ってたのが、彼女にも恋人だと言われるようになった。これが、同じように見て欲しいという意味だったのかって、ようやく分かったところだよ。贅沢な三角関係。それでも家族だし、三人とも共依存しちゃってるから、もう運命共同体みたいなものだよ。」

「そっか。オトーサンも幸せになれたってことだよね。」

「幸せなんだろうね。僕も初めてのことが多すぎて、実は良く分かってない。けど、僕がこの前、心を病んで、君が本当に大切な存在だったことも知れたし、二人のことを考える時、君が一番に来てしまうから、やっぱり親なのかな。」

「そこは恋人って言ってほしかったな。でも、オトーサンだもんね。」

「君が恋人だと、刺激が強すぎるかな。簡単に手放すことはしないけど、君が自分の意思で動くのなら、僕は止めることはしないだろうと思ってる。ごめん、やっぱり、僕は父親役が染み付いてるみたいだね。」

「こんなにダメな父親、見たことないよね。でも、頑張ってることは知ってるし、私もおねえちゃんも、オトーサンには感謝してる。むしろ、私が父親と恋人を混合してるから、オトーサンが難しい立場になってるよね。そこを変えるべきなのかな?」

「いや、いいんじゃない。妻が恋人に戻った以上、君も恋人でいいと思う。まあ、大っぴらに出来ないけど、二人で出かけるぐらいなら、バチは当たらないだろう。」

「なんか、ごまかされた気分だけど、オトーサンが恋人なのは事実だし、そう思ってくれてるなら、私はもう少し、甘えるね。」


「ところで、もし、私が、そうだなぁ、あの主人公みたいに、遠くの人に預けられたり、あるいは養子として、別の家族に行ったりしたら、追いかけてくれた?」

「追いかけるというよりは、ついて行くかな。少なくとも、僕が育てると決めた以上、僕より君を愛してあげられる人がいない限りは、どこにも行かせる気はない。」

「だから、私が別の好きな人を連れてきた時には、止めないってことなんだね。」

「もう、完全に思考が父親なんだけど、自分の娘が嫁いでいくのであれば、やっぱり悲しい。それでも、君が決めたことなら、僕は祝福するだろうね。」

「安心してよ。その気は全然ないし、今からでも、オトーサンの奥さんになる努力だってするもん。」

「それはうれしいけど、それなら、大半の家事を僕がやってるこの状況を、少しは手伝ってほしなぁ。洗濯物を洗濯乾燥機から出して、たたむだけの家事じゃあ、君を妻に迎えるのは難しいね。彼女みたいに、それを収入で殴ってくるなら、僕も大人しく従うしかないけどね。」

「じゃあ、私がオトーサンのこと、ヒモに出来るぐらい稼げるようになったら、結婚してくれる?」

「彼女は20年掛けて今のキャリアを形成したけど、大学生活を謳歌してる君には、何か特殊なスキルでもあるのかな?」

「それは...、う~ん、ないかな。」

「そういう心配を先にしよう。ただ、贔屓目なしに、君には、僕も彼女も期待してしまってる。君は何か、そう思わせる何かがあるよ。何と言われると、難しいけどね。」

「励ましてくれてる?」

「いや、事実を言ったまで。家事はさほど大事なことじゃない。それより、君が持ってる何かを開花させることのほうが大事だよ。言葉は悪いが、お金があれば、大抵の生活は解決出来るけど、君の才能を開花させることは、お金を出しても出来ないことだよ。だから、彼女も金銭面では支援してるんだと思うよ。恩返しは別にしなくてもいい。自分の娘を誇りに思えれば、僕らはそれで十分だと思えるよ。いや、出資者は、元を返して欲しいって思ってるのかもね。」

「今の私は、自慢の娘?」

「自慢の娘というよりは、自慢の恋人かな。ま、それはあの人でも同じか。こういう時、娘と呼べないから、父親役にしかなれないんだろうね。」

「それで十分だよ。恋人だと思ってくれてるのがうれしい。なんか、お互いに難しい立場だね。」

「難しい立場だから、楽しいんじゃない。家族で三角関係なんて、普通の家族ならしない。僕は不安だけど、そう思ったほうがいいだろう?」

「そうかも。ま、私が一番って言ってくれれば、もっとうれしいけどね。」

「君には、ずっと我慢させてきたけど、それでも僕のことが好き?」

「もちろん。それに、もう4年以上も一緒にいる。いてくれてるってことは、まんざらでもないんでしょう?」

「困ったな...。僕は君のこと、好きだからね。」

「私も、おねえちゃんがいなければなぁ。あ、じゃあ、いっそ駆け落ちしちゃう?」

「駆け落ちしても、見つけられちゃうだろうね。それに、君と二人で暮らしてると、本当に僕がダメになる。彼女がいることで、僕にスイッチが入る。アメとムチとは言うけど、それが共依存ってことなんだろうね。」

「うれしいやら、悲しいやら。う~ん、オトーサン、昔のオトーサンに戻ってほしいけど。」

「ごめんね。僕がこんなになってしまったのは、僕の責任だから。君に僕がしてあげられることは一生懸命するけど、それでも君には足りないかもしれない。そこで君に甘やかされると、どんどん僕はダメになってしまう。その自覚があるから、君には、僕らから自立して欲しいとも思ってる。恋人の立場だと離れてほしくないけど、親の立場だと自立して欲しい。この矛盾。僕は、何が正解なのかわからない。分からないから、一緒に生活して、良い答えが出るといいんだけどね。」

「複雑だけど、私が好きなのは、オトーサンだからね。」

「その期待には応えるよ。可愛い娘ではなく、可愛い恋人のお願いだから、もう少し頑張ってみる。」


しかし、あの話は、最後にまた東京に会いに来る話だったな。もし、この娘が他の場所で暮らしても、最後には三人、いや、人数は増えてるかもしれないけど、家族に戻るのかもしれないな。それも、楽しみな話かもしれない。




つづく

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