Life 123 人生の岐路はどこから生まれるかわからないものである
「あのね、宇都宮駅のお店、閉めることになったの。」
それは突然の電話だった。今年は行けないなと思っていた矢先の電話だったから、ちょっと驚いた。
「業績不振とか、そういう感じじゃないような気がするけど。」
「単純にテナント更新料が高くなったから、維持するのが難しいって。幸い、みんなに来てもらった本店で、私はマスターとそのまま働く感じ。アルバイトの子達をどうしようって話をしてるところ。」
「ふぅ~ん、まあ、そりゃそういうこともあるかと思うけどね。しかし、わざわざ電話じゃなくても良かったと思うけどね。」
「君には直接伝えておきたかった。知らないまま、君が宇都宮に来て、どうしようって迷わないように。」
「それだけじゃないでしょ?」
「そういうところだよ。にぶいくせに、勘がいい。あのね、当事者同士で話をするべきだと思ってるんだけど、君ならどう答えるのかなって聞きたいことがあるの。」
ん?この話自体がオマケ?どうしたもんかな。
「娘はちょっと母親が入院しててさ、今は妻と二人でいるけど、二人で聞いたほうがいい?」
「うん、そうしてもらえると、ありがたいかな。私も色んな人の話を聞いてみたいと思ってるから。」
僕が好きな妻と、僕を好きだった君が、こうやって僕を介して話をする。不思議なことだと思うけど、しかし、なんなんだろうか。
「娘さんには黙ってて欲しい。二人だから話せる。」
「信頼してもらえてありがたいわ。それで、どういう話?」
「実は、...ごめん、内の中で収めたかったんだけど、答えがわからなくなってしまって。」
「...結構重い話のようですね。私たちで大丈夫?」
「逆に二人じゃないと、...その...、話せない。」
どういうことだろうか。娘には話せない、そして僕らにしか聞けない話とは?
「私の家族、旦那様と18になる長男、15歳の長女の4人ぐらしなのは、前に話したと思うの。」
「うん、幸せだって言ってたね。」
「話というのは、長男のこと。もうすぐ高校を卒業するんだけど、......ごめんなさい、なんか、気持ちが固まらないね。」
「落ち着いて話してくれて大丈夫よ。それに、あなたの声、何かに怯えてる声をしてる。」
うちの妻は、こういう察しが分かる。人望の厚さと、人に好かれる要素は、こういうところなんだろうなぁ。
「あの、うん、ごめんなさい。大丈夫です。」
全然だいじょうばない顔をしている。それだけ重い出来事があったってことだろうなぁ。
「実は......、長男がね、付き合っている女の子を妊娠させちゃったんです。それで、両家で会議があったんだけど、二人がどうしたいのかがわからないままなの。」
「よくある話...、あれ、なんか、こんな話、誰かから聞いたことあったわね。でも、それは家族の一大事ですよね。」
「さすがの夫も、今回ばかりは許せなかったようで、勘当するとまで言い出してしまったんだけど、私がなんとか説得したの。」
「それで、向こうの親御さんはどうなの?」
「幸い、事情は汲んでくれたんだけど、堕ろすにしろ、育てるにしろ、二人で出来ないから、援助しないと難しいって話になってる。」
「ふむ。デキ婚だったらいいんだけどなぁ。僕の友人にも似たようなやつがいたっけな。でも、それは成人してからの話だし、未成年...、彼女さんは同級生?」
「同じクラスの子。会ったこともあるし、今どきの可愛いお嬢さんだったよ。でも、家に来た時、娘がすごく嫌がっていたのを覚えてる。本能的にダメだったのかも。」
「なんとなくって言うとよくないけど、娘さんには何か感じるものがあったのよね。許せる範囲じゃなかったのよ。」
「......まあ、君の娘さんの気持ちはともかくだけど、どちらもイバラの道ってのは、本人たちは理解できてるのかな?僕はどっちかというと、その当事者意識で、結果を変える必要があると思うんだ。」
「ふたりとも、そこは自分で決めてないで、両親に従うって言ってる。だから、夫は勘当すると言い出したんだと思う。君の言ってることが、逆鱗に触れたんだと思う。」
「私の知ってる知り合いの話だけど、そこで二人が生みたいってお願いしたから、両親は許したって言ってた。言葉が悪くて申し訳ないけど、息子さんも、その彼女さんも、自分たちは妊娠しないって勝手に思ってたってことなんだと思うのよね。私ですら、この年齢でも相変わらず避妊薬を飲んでる。子供を生んで、育てるって、ある意味人生を子供に捧げられるか、そういう覚悟が必要だと思ってるのだけど、やっぱりそうなの?」
「どうだったか、あんまり覚えがないんです。初めてだったし、その...同居してすぐだったから、頭が回らなかった。」
しっかりした考えの割に、彼女はそういうところが少し抜けている。今でも可愛い証拠だよ。ずるい。
「今でこそ夫がいなくても、家族で助け合って生きてたと思ってたんだけど、この機会に考えてみると、息子はあまり家族と協力していない感じはあるんだなって思ったの。多分、自分勝手にしても、私たちがなんとかしてくれるって思ってたんじゃないかって。娘には家事を手伝ってもらってるし、夫は不定休、不規則労働だから仕方ないにしても、息子はお風呂掃除ぐらい。それも受験生だから免除してたってぐらいだから。」
「聞いたことあるシチュエーションだけど?」
「悪かったわね。どうせ家事出来ないわよ。お金を稼いでる分、免除してもらってて助かってる。」
「でもね、自分の息子なのにこういうことを言うのはちょっとおかしいんだけど、この子が子育て出来るのかな?って思ったの。私は、受験勉強の息抜きで、エッチなことをした結果だと思ってるんだけど、そういう大切な時期に家族が犠牲になっていることを知りながら、避妊もしなかったことに、少し息子に失望しちゃった。」
「......分かる気もするんだけど、当然彼女もそのノリだったわけでしょ?どこでエッチしてたか知らないけど、高校生、しかも受験生ともなれば、自分が置かれている立場って分かると思うのよね。二人ってどうだったの?」
「僕は何にも考えてなかったな。受験勉強の合間というより、受験勉強に聞くラジオに相当救われたし、それが今の僕の一部を形成している。結果、志望校には落ちたけど、生き方に幅を持たせてくれたのは、あの時だったと思うんだよね。」
「私は、留年してたし、専門学校へ進学したから、その分特殊な勉強をしてきたの。息抜きする時間もないぐらいだった。けど、今ももし、あの時に君について行って、予備校に通いながら、大学を目指してたら、同じことになったかもしれないかなって、今回思うようになってきた。」
「その頃、僕はエッチしたことなかったんだけどな?」
「ふふふ、お互い様。」
「あの、二人の世界に入れてしまった私が言う話じゃないんだけど、やっぱり私たちの時代と違って、大学全入時代だからこういう結果になったのかしらね?」
「それもあるとは思うけど、それ以前に進学前提だとして、いままでエッチなことをしてたとしてもだよ、この時期にエッチしたら、普通は逆算して、妊娠が発覚するところまで想像出来ないものなのかな?いや、出来ないから、こうなったんだと思うんだけど、それにしてもだよなぁ。」
「あなたはある意味責任から逃げることが生き方みたいなものじゃない。避妊具を付けていても、私に避妊薬を飲めって。でも、私たちは二人して子供を育てる責任から逃げているだけだから、そういうことをしてるのかもね。」
「ある意味、今までの避妊で子供が育てられるって?」
「そんなに甘くないわよ。そうですよね?」
「私も、息子を妊娠した時、最初に考えたのが、責任よりお金のことだったと思う。夫が夢追い人で、貯金はすべて自分で映画を撮るためにしてたから。それでも結果的になんとか撮ることが出来て、今はテレビマンとして生涯生きていこうって話てたぐらいだから、そこは良かったと思ってる。でも、息子と娘には悪いと思うけど、この子達が生まれてなければ、夫はもっと早くに夢を叶えていただろうし、もしかしたら映画監督になれたのかもしれない。自分の夢と子供。二者択一になるのは、経済的な問題でそうなってしまうのだと私は思うの。」
「やっぱり、母は強いですね。こういう時に、非情になれる。私はそこに情が入る。まだまだ子供だと思うわ。」
「しかし、目を逸らせない問題であることは事実だ。相手の親御さんだって余裕はないだろうし、君の娘さんの将来にも影響が出る。じゃあ、援助出来るかと言っても、出産にすらお金が掛かる。そして生まれてきた子は、どうしても本人たちより、君たちのほうが面倒を見ることになると思う。いいのか悪いのかわからないけど、ある程度自分の意志がないと子育ても、子供への援助も、やっぱり温度感が違うと思う。断言するけど、産まない方が、今の息子さん達には正しい選択だと僕は思う。」
「カッコいいね。断言するって。でも、うれしいな。そうやって、私の悩みも真剣に聞いて、答えてくれる。」
「この人はそういう人なんですよ。知ってると思うけど、解決策までは与えることをする。でも、それ以上は本人に委ねるって、一番ズルい発想の持ち主なのよね。」
「ズルいですか?私もそうでしたけど、結婚する時とか、やっぱり自分の意志で結婚を決めたりしたと思うんですけど。」
「あなたの負けだよ。僕らは一応籍を入れてるけど、現実的には家族としての体裁を整えるためなんだ。だから、結構ふわっとしたまま結婚してる。本当に結婚するって思う時は、あの娘が僕らから自立する時か、あの娘が僕を寝取る時かな。」
「寝取る...?なんで?」
「気にしないでいいよ。この二人の姉妹は、隙あらばお互いを出し抜くようなことをする。一方で、二人だけの姉妹だから、絆も深い。ただ、好きな相手がふたりとも僕で、娘として生きていたほうが、何かと都合がいいからって理由で、僕はこの人と結婚した。でも、僕はこの人が理想の女性だから、一生添い遂げるつもりだよ。」
「改めてこういう場で宣言されると、なんか恥ずかしいものね。でも、そういうところが、あなたのいいところよ。ま、あの娘があなたと蒸発しても、私は探そうと思わないし、今でこそ母親らしいことが出来るようになってきたけど、やっぱり姉妹ぐらいのレベル、下手すれば友人関係ぐらいなのよ。あの娘を信じてるから、あの娘を裏切れないっていうのが、事実よね。」
「でも、それは三人で決めたことだし、おかしな家族だとは思うけど、会って話をした時、なんとなく直感で理解できたんです。あなたと娘さん、ふたりとも、思考が同じなんだなって。お互いがお互いを尊重してるし、君に対しても、さっき出し抜くって言ってたけど、アンフェアなことは絶対にしないんじゃないかな。そうですよね?」
「すごい。わかるんですね。あの娘は私の生涯のライバルだけど、生涯の妹で、生涯を見届ける義務が双方にある。私が先に死ぬことになっても、あの娘とこの人の意志は、あの娘が受け継いでくれる。勝手にそう思ってるんです。もし、仮にあの娘がこの人と子供を作ったとしても、私はその子を自分の子だと思って育てると思う。私たちは、両親が失踪してしまっているから、そう思っちゃうんです。」
「あなたの決意表明、ちゃんと聞かせていただいたところで、さて、問題はそこじゃないってことで。」
「にぶいよ。そこは、しっかり受け止めるのが、夫の役目。でも、ありがとう。私の話に戻してくれて。
しかし、現実は厳しい。仮に出産出来たとして、問題はその先だ。子供が生まれるだけで、責任感が湧いてくるものなのか?僕も、妻も、そこは未知の領域だったりする。
「教えてもらっていい?やっぱり、子供が生まれると、責任感って湧いてくるものなのかな?」
「当たり前だけど、責任感と、ある種の義務感に苛まれることがあるの。この子を育てていく責任とともに、この子を育てるのは義務になっちゃうんだなって。責任と義務、義務を持つから、責任が生まれる。解釈って言うのもおかしいんだけど、義務感だけで子供は育てられないと思う。そこに、この子の将来を守る責任だとか。う~ん、君と話してると、こういうテンポになりやすいよね。」
「この人の空気がそうさせるのかもしれませんね。理屈バカだから、納得するのに自分でも材料を必要とする。そこに言葉遊びが必要になる。不謹慎極まりないですよね。」
「私はそういう会話に救われますし、心理的にも落ち着いてきました。そして、あなたにも、同じ女性としての意見が聞きたいと思いますけど、やっぱり彼のように、堕ろすべきだと思いますか?」
「私は、少し自分に重ねてしまうところがあるんです。子供を生んで育てるって経験は、人生では多かれ少なかれ、それほど多くない。もちろん育児放棄するのは論外だと思いますけど、私自身がそこまで子供を育てることに興味を持てなかった。もし、この人が本当に18歳、高校を卒業したときに、私を迎えにきてくれて、そのまま順調に暮らしていけてたとして、子育てはしてたと思うんです。......ごめんなさい、あなたの前で言う事じゃないですね。」
「いえ、どちらにしても、あの時に私は彼とは離れることを決めてたから、ありうる未来だったと思います。一つ、大きな違いがあれば、子育て出来る環境が年々厳しくなっているから、ここまで問題になっているというのもあると思います。息子が生まれた時に、夫と二人の夢のために貯金していたお金を、息子に使えた。もちろんそれは娘が生まれた時にもそうだったし、夫の両親も、私の両親も、孫可愛さで、あれこれ支援がしてもらえた。」
「でも、今の経済状態で、共倒れしてしまう可能性が高い...、産んだ両親だけではなく、孫一人を育てるための経済力を得ることが、なかなか難しい。物価は上がり、義務や責任が仮に息子さんたちにあっても、問題はそこにある。」
「あら、愛さえあれば、借金しちゃうような人がそこまで考えてるとは思わなかった。でも、あの娘を本当に一人で育てて、自分だけ潰れる覚悟をしてたんでしょ?」
「あの娘の進学費用は責任を持てると思ってなかったけど、やっぱり18歳ぐらいから25歳ぐらいまでが、人生の中ではあらゆる意味でいい時期だと思ったから、僕はあの娘の生活だけでも守らなきゃいけないと思った。義務感かもしれないけど、それよりも、同じ年齢の子たちと、同じ体験をさせてあげたかったんだ。でも、給料は減らされ、転職して安月給になった。18歳の娘を家に置いて、1ヶ月も出張に出ることは僕には出来なかった。でも、それで良かったと思えるし、あの娘の笑顔だけで、僕は借金をした甲斐があったかなとおもってたよ。あなたが現れる前はね。」
「はいはい、私はあなた達からしたら、便利なATMだものね。でも、あの娘に肩入れしていた理由も分かったわ。単純に、私にゆかりのある人間だったからだと思ってたけど、そうじゃなくて、あの娘を本当に娘として見てたのね。だから、私と結婚するまで、あの娘とエッチをしなかったんだ。」
「僕が借りた借金を自分で返してるのはそういう理由だよ。あの娘を娘だと本気で思ってたから、僕を好いてることを知ってても、僕は彼女を娘として見続けたんだよ。それに多分、言えばあなたはお金を出してくれるけど、そのお金をあの娘のために使って欲しい。あの娘への先行投資だと思えば、僕も少しは働く気になれるんだよ。そうじゃなきゃ、主夫をやってる。」
「自然と知ってる。君も立派な親心を身に着けてると思うよ。自分でそう思わなかっただけで、それは義務と責任そのものだと思う。だけど、結婚すると分かってて、急に娘って目線が消えるのには、少し幻滅したかも。」
「それが正しい反応だよ。出来れば、そのままにしておきたかったけど、僕が彼女に負けた。それぐらい、僕を好いてくれてたから、気持ちに応えてあげたかった。」
「あ、誤解のないようにいっておきますけど、私は結婚が決まってから、私と同じように、娘のことは見て欲しいって言ったんです。娘と言ってますけど、妹ですから。さっきも言いましたけど、彼女には、私と同じことを体験させてあげたいんです。私は好きな人と初めてが出来なかった。それぐらい、夢見がちな女の子へのプレゼントとして与えてあげたかったんです。あとは、あの子の決意次第だったってだけです。まあ、実際に半年だっけ?交際期間も短いけど、お互いに知った仲...そうでもなかったか。本当にこの人、そういうところがダメなんですよね。」
「にぶいですよね。でも、妹さんに自分の夢を重ねてるのって、私が夫の夢を自分の夢に重ねているところに似ている感じがしますね。あなたも、十分に母親になっていますよ。」
「ありがとう。そう言ってもらえると、すごく自信になります。」
「しかし、答えがなかなか出せない。この場合、最善が答えなんだろうけど、難しいよね。すべてが本人達の事流れ主義というか、主体性の無さというか、そういうところから始まってるから、外野が答えを与えるのは、僕は良くないと思う。君の旦那さんも同じ気持ちなんだろうと勝手に思ってるけど。」
「そうだと思う。当事者なのに、あまりにも他人事だから許せないんだと思う。そう思うと、今ってセフレって言葉があるぐらい、身体の関係って他人事になってるのかもしれないね。」
「両親の言う事を聞きますか...。本当なら説教したいけど、知り合いとはいえ、部外者が口を突っ込むのは無粋よね。勘当されて当然の考え方だもの。若いうちほど、避妊なんて慎重にするものでしょ?」
「保健の授業で、女子だけやるアレ、避妊具とか配られるんでしょ、今って。」
「そんなの、多分小学生の高学年とかにやってると思う。色々聞いたけど、息子も曖昧で、彼女さんも、その辺にあまり興味がなかった。避妊しなくても、その時に気持ちよければいいやって思ってたんじゃないかな。だから、他人事に思えてるのかもしれないね。これが自分の息子だと思うと、やっぱり悲しいものだね。」
「言うことを聞くんだったら、堕ろしてあげる費用ぐらい、とりあえず折半したら。お互いの両親の監督不行き届きってことでね。でも、それを返すのが、彼らの最初の仕事だ。学校には言ってるの?」
「言うわけないよ。多分、彼女さんが退学になっちゃうだろうし、息子も退学でしょ?幸い、中絶手術の費用は、進学費用から出せるけど...。」
「そこで娘さんの話がでてくるわけか。大学も2年ぐらいまではバイトしながらってのは、なかなか難しいし、まして進学先によっては、バイトの時間の捻出すら出来ないだろうし、その前に、娘さんが自由に大学を受けられなくなると。」
「数十万単位だとしも、そこの制約で入学金が支払えないとか、あるいは奨学金を使うにしても、社会人になって、いい大学を出てるのに、最初からマイナスのスタートは可哀想。しかも、あの子は私の家事を手伝ってくれてるし、出来るだけ、進学先を絞らせたくないの。」
「高校は公立に行くの?」
「そうなると思う。私立の高校って、私たちが知ってる通り、意外にお金がかかるからね。無償化って言っても、私立の学校って、今は色々な手でお金を取ってるみたいだよ。」
「学問を学ぶべき場所が、資金集めに奔走する時代になるとはなぁ。国が出すお金ってのは、一律で決まってるのかね。」
「そこまで調べてないし、言われるまで気が付かなかった。やっぱり、ズレてるよね。」
「そのズレた考えが、妹さんを救う手立てになればいいんだけどなぁ。」
「ともあれ、まずは、息子さんとその彼女さんに事の重大さを理解させるべきね。別にエッチをするなとは言わないけど、そういうシチュエーションであっても、責任を取れると思う時期まで避妊はするべきだし、出来てしまったけど両親の言うことに従いますじゃ、多分同じことを繰り返すか、あるいは育児放棄になると思う。その時、あなたの家庭や相手の家庭で支えられるのかまで考えさせるべきだと、私は思う。あ、偉そうなこと言ってごめんなさい。」
「ううん、正論ですよ。堂々巡りにはなりますけど、本人達がどう考えているのかが、やっぱりふわっとしすぎてると、二人と話してて良く分かった。こういう時、どうしても息子ってフィルターがかかるから、なんとかしてあげたくなっちゃうけど、それは親の務めじゃないよね。」
「子供がいない夫婦に、社会的な話をされて、困っちゃった?」
「そんなことないし、やっぱり、こういうことは冷静に見られる誰かに知ってもらう必要があったと思う。私、立場的に相談に乗ってくれる人が、お店のオーナーぐらいしかいないから、二人がいて、本当に良かった。」
実家、娘は僕の母親に付きっきり、そんな中で、まさか彼女からそんな話をされるとは思ってなかった。
お店が閉まるのも地味にショックだな。本店、雰囲気は好きなんだけど、結構街外れで、車社会だから流行ってるお店っぽいもんなぁ。
「しかし、そう言ってはみたものよね。私たちですらその可能性はあるってことだもんね。」
「でも、僕はある意味心配してない。避妊具や避妊薬を使ってて、それでも出来てしまったら、それはもう育てるしかないという運命だと思ってる。」
「あら、私は堕ろすつもりよ。毎回言ってるけど、あなたが主導でするエッチで生まれる子供ならともかく、私は日常の中でエッチしてるから、ある意味セックス、ドラッグ、ロックンロール的な。」
「享楽的な生き方ってやつね。まあ、それで君のストレスが解消されるなら、僕はいくらでも付き合うよ。」
「本当、理想の女性よね、私って。まあ、そのときは、あの娘も含めて考えましょう。私たちで育てるにしても、あの娘が案外助けてくれるかもしれない。」
「お互い、気を付けよう。週に何回もエッチしてる40代も珍しいのかもしれないけど、まして君がその身体だからね。お互いの人生のためにもね。」
「同感。とは言え、私、閉経するのかしら?理屈だけで言えば、私は一生この身体のままだから、閉経もなさそうだけど。」
「......すっぽんとか、マムシとか?」
「その頃には落ち着いてるわよ。多分、あなたと一緒にいる時間さえ増えれば、私は落ち着くと思う。そうなるといいね。」
「......経済DVかな?」
つづく




