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lApppnd Life 94-0.2 未知との遭遇

「徳を積むだけじゃ説明できないな。どうやったら、俺達と同じ年齢で、あのビジュアルなんだ?」

「僕にも分からない。でも、それが僕の妻だから。うらやましい?」

「...お前は一生犯罪者みたいな扱いになるよ。育ててる子の姉が奥さんで、その奥さんが育ててる子よりも若いビジュアルって、どうなんだよ。」

「どう?と言われてもね。ま、そういうことなんだよ。我が家は。」


僕が社会復帰する前、原因の究明とともに、いつも接している数人には、僕の病理を理解して貰う必要があった。

妻の会社にはもうバレている。なんなら病人に感謝を伝えられている。これはよくわからない。


そしてもう一人、ほぼほぼ毎日顔を合わせている人間がいる。僕の会社の、相棒と呼ぶべき存在。妻子がいながら会社でウマ娘をずっとプレイしているような不謹慎な男だが、DX日輪刀を子供のために探したり、奥さんにはマメにスイーツを買って帰るような、家族想いな一面が僕には見える。彼には事情を知って貰う必要があった。それは、いつ、僕が発作を起こしたり、僕が精神的におかしいと直感で感じることが出来る人間だと、僕自身がよく知っていたからだ。彼との付き合いはまだ4年と浅いが、減らず口を叩きあうことで、会社の仕事が進むのであれば、僕らはそれでいいと勝手に思っている。

前にも言った通り、ここの営業はお国柄もあり、強引で適当だ。その上でサイト更新と、受発注のシステム管理を任されているのが僕ら。僕らが二人で辞めると言えば、あっという間に会社はなくなる。つまり、転職先がなければ就労ビザは更新出来ない。僕らが辞めるといった瞬間に、彼らは苦境に立たされ、場合によっては本国へ送還される。幸い、僕はこの会社の会計上の不正を知っていて、経理や会計士には真実を伝えているため、僕がこの会社から離れたときに、会社が潰れるリスクは高くなるし、お偉方や営業がしている不正を処理できなくなる。まあ、これが令和の世の中でよくまかり通っているなと思うし、それを正当化して、偽の社内向け決算報告書をでっち上げるのが僕の仕事であり、会社の決済報告にはこれが使われる。税務署や会社資料は税理士さんたちが作成した公式の資料が掲載される。会社の中で、会社の人間を欺くのが、僕の仕事だった。

一方で彼はなぜこの会社にいるのかわからないほど、ITエンジニアとしては高いレベルの人間だ。システムとは別にネットワーク構築などは彼が行い、さらに検閲のないネットワーク網をこの区画にVLANで構築したのは彼である。だから、彼はウマ娘で遊んでいられる。加えて、僕が会計上の不正に加担しているという錯覚をしている連中は、僕らがたかだか50人規模の会社であっても、インフラ周りに文句を言わせないような空気を作り出している。だから、WiFi6EのAPが欲しいと言えば、雑費で落とす。それぐらいの融通が利く。持ちつ持たれつと言いながら、Ciscoの古いL2スイッチを知り尽くしている彼と、そこにLANケーブル1本で勝手にAPを作ってしまう僕。無法地帯がすぎるわけだが、それが事実だった。


つまらない話はさておき、彼は、僕が相槌を打たないとき、それは自分自身のときだと言った。僕以上に、僕のクセを見抜けている。彼を信用している理由はそこにある。だからこそ、妻と状況を共有してもらい、僕が異変を起こしたときに、連絡を取れるようにとしたわけだが...。



「えっと、奥様?であってます?」

「ご迷惑をおかけしています。彼の妻です。この度は休職までさせていただいて、本当に申し訳なく思います。」

「あ、それは、彼も俺も適当に仕事してるんで、いてもいなくてもいいレベルです。二人いなくなったときが問題なだけです。」

「そうですか...、もし業務に支障をきたすようなことがあれば、早めに復帰させることも出来ますから、おっしゃってください。」

「ああ、まあ、その必要はないですし、今は休職と言いつつ、彼は気晴らしとばかりに資料を作っている。それを共有スペースにアップしてくれてるから、実質それほど問題ないです。」

「言わなくていいことは言わないで欲しいな。心の病ってのは、無心状態が一番健全なんだよ。」

「あら、それが分かってて、外に出ることすら出来ない人が私の隣にいるけど、それはどうなのよ?」

「だから、こうやって君がテレワークの日に、彼にも頼んでいる。平時の僕らの仕事を理解できないのは、お互い様だろ?」

「......おいおい、二人がいちゃつく場面を見せつけるために、わざわざLINE通話してるんじゃないだろうな?」

「申し訳ない。ちょっと家庭内のパワーバランスが崩れててな。僕にとって、彼女は主みたいなものだ。」

「そんなことを言っていますけど、気にしないでください。それでは本題に入りますが...」


彼女は、僕の病気、現在の状態、そして取るべき対応を同僚に説明していく。さすが、中堅企業で人事部長代理をやっているだけある。プレゼン資料がなくても、僕のことは手に取るように分かるようだった。そして、相槌を挟みつつも、興味深そうに聞く彼の顔は、今まで見たことのないような真剣な顔...いや、DX日輪刀の予約に付き合わされたときぐらいか?


「事情は分かりました。奥様がそうおっしゃられるのであれば、私は会社での彼の様子を、責任を持って見ることにします。ただ、一つだけ出来ないことがあります。」

「言ってください。それが致命的ではない限り、私たちだけで対処するつもりです。」

「俺の業務は、システムの運用保守と、ウマ娘の育成です。これらに支障をきたす場合は、彼のサポートは出来ません。それだけは、申し訳ないですが、本人で立ち回ってもらうしかない。」

「ありがとうございます。夫のことは、会社の次で構いません。お手数をおかけしますが、どうか彼のこと、よろしくお願いします。」

「こちらこそ。異変があれば、LINEに連絡を入れます。それで構いませんか?」

「はい、ありがとうございます。お手数ですが、些細な変化があった場合もいただけると、精神科の先生にも説明ができますので、連絡をいただけると助かります。よろしくお願いします。」

「分かりました。しかし、奥様もご苦労ですね。コイツ、意外とめんどくさいけど、使える人間ですからね。」

「評価いただいて感謝します。まあ、めんどくさいのは同意ですね。でも、彼には、自らが命を断つだけの行動を起こしかねないとも言われています。多少面倒くさくても、面倒を見るのが、私が彼の妻としての責務だと思っています。」

「こりゃ、立派な奥様だ。最後にもう一度確認。本当に奥様ですよね?失礼な物言いですが、俺には、あなたが20歳そこそこの女性にしか見えない。」

「それは、......ちょっとした身体的な問題がありまして。」

「ああ、無理に説明しないでいいです。コイツの育てている子と瓜二つの写真を見たことがありましたが、その時より若い方が奥様と名乗っていたので、どうしたものかと思っただけです。」

「説明は出来るんですが、いかんせん信じてもらえないんですよ。私は20歳ぐらいから、見た目がほぼ変わりません。でも、嬉しいものですね。そうやって夫を気にかけてくれる。二人育てている子がいると思ったのでしょう?」

「失礼ながら。でも、理解が出来ましたし、コイツの奥様だとどういう方だと想像が出来なかった。話して分かりましたけど、あまり自身を責めないほうがいい方だと感じました。これは長年ITエンジニアをやって、潰れていく人間と性格が似ているから、あなたにも当てはまると思います。無理せずに、コイツに甘えていいと思いますよ。」

「ふふふ、褒め上手ですね。改めて、挨拶はさせていただきます。画面越しで申し訳ありませんでした。」

「いえいえ、それに、彼に聞くことがいっぱい出来た。休職明けが楽しみですよ。」



で、そんな話になったわけだけど、下世話なんだよ。コイツは。

「で、娘さんも同じ顔して、自分でも見分けがつかないとか言ってたけど、さすがに分かるんだよな?」

「今は娘のほうが大人っぽい。妻はだんだんと幼く見えてきてる。実際に最初にあったときの写真と比べて、どんどん若返ってるというか。」

「身体的な問題とは言っていたけど、サッカー選手でいうメッシみたいな、ホルモンが足らなくてみたいな感じ?」

「それが分かれば苦労はしない。正直、医者や美容整形外科なんかもわかんないらしい。肌年齢は20代前半、おまけに前の彼氏の影響で、永久脱毛してる。」

「そこまで話せとは言ってないが......、犯罪者予備軍だな、お前は。」

「犯罪者ねぇ。世の中には信じてもらえないが、実際にこう起きちゃってることに対して、耐性が付くな。」

「ということは、成長していないってこと?」

「言うほどじゃないが、うちの娘がフェロモンを撒き散らして、大学の友人に無防備すぎだと注意されているほどだけど、彼女はあの通り、まんま可愛い感じ。」

「他人事とは言え、自分の娘のような奥さんがいて、それがまんま20歳ぐらいから成長すら止まっていると。バイオリレーションでも体内に持ってるんじゃないか?どうなの?営みとかは?」

「誰もがエルガイムを分かると思うな。しかし、あんまり考えたことなかったな。僕は襲われる方だから、余計に情けなくなるのが現状。」

「喜んで抱いてるのかと思った。意外と淡白なんだな。」

「蛋白にもなりたくなる。俺も40過ぎだし、もともと前の同居してた彼女にも言われたが、性生活に満足はしていなかったらしいからな。」

「赤裸々に話すが、なんか変わったか?」

「変わった...というか、今回、あらためて知らされたんだよ。本能と理想は別なんだってね。」

「ふぅ~ん。まあ、それだけ屁理屈を言えるなら、メンタル的にはそれほどダメージはなさそうだな。頼りにしてるぞ。」

「お前の頼りは、ウマ娘を業務時間中にやるための頼りだろ?そこは頼らないで欲しい。」


ま、コイツとの関係はそれでいいんだ。僕は特に心配することなく、ここで仕事をして、二人のいる家に帰れればいい。それだけが今の願い。

......嘘ついた。やっぱり、あの人は僕の理想の女性だから、変わらないで欲しい。



今日はこの辺で

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