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Life 117 人肌恋しいときもある

ふと思ったことがある。家族とは一体なんなのだろうかと。

僕らは娘とは5年、妻とも2年以上暮らしている。でも、家族なのかと言われると、ただ好きで一緒に暮らしているような気がしてならない。


「で、大将はまたそんなくだらないことで考え事をしていると。」

「くだらないことだと思うし、言葉遊びだと思うよ。だけどさ、僕らの生活って、本当に家族というものなのかなって。」

最近、会社で彼とこんな話ばかりしている。きっと嫌がってるだろうなと思いつつ、彼は自分の考えを言ってくれるからいいヤツだと思う。

「そうだなぁ。俺は、奥さんと結婚して、子供がいるから、世間一般には家族に見えると思うし、お前さんもそう思ってるだろ?」

「そうだね。家族思いでいいヤツだと思ってる。同僚としても、相談相手としてもいいヤツだ。」

「褒めるのがうまいよな。まあ、それはともかくとしてさ、家族になるってことは、案外契約みたいなもので、単に関係を縛るために作っているもののような気がするんだよ。」

「まあ、理屈的にはわかる。」

「大将の家族は少しどころではなく異常だ。娘さんはもう23歳、しかも自分の血とは繋がっていない。そして奥さんは同い年とは言え、その子とは姉妹。そしてその3人でひとつ屋根の下で暮らしている。当然間違いも起こしている。あ、世間一般での間違いだから、お前の家では普通のことなのかもな。」

「いや、ズレてるのは知ってる。だからこそ、関係として家族は正解なのかと言うのが、僕の今の疑問なんだよ。」

「ふむ...。まあ、おとぎ話にも近い状態の大将にとって、現実が夢の世界みたいなもので、実感がないのも確かだよなぁ。育てた娘が恋人、そして奥さんも恋人。当然ながら世間一般には不貞行為に当たるわけだが、姉妹丼というか、その類だよな。AVとかでよくあるやつだ。」

「僕はAV男優にでもなっているわけか?」

「いいんじゃないか。AV男優。ま、とは言えお前の奥さんに、お前の面倒を託されている以上、俺も少しはアドバイスしてやるのが正しいよな。」

「アドバイスとは言うけどさ、結局一緒に暮らしていれば家族なんだろ。そんなところで僕はいいと思ってる。」

「シェアハウスって見方も出来るけどな。ま、いずれにしろ、40過ぎの冴えないおっさんが、実年齢23歳の娘と、見た目が20代前半の奥さんと暮らしてると言うのが、まず事実として受け入れがたい。だから、お前が変に悩むことになる。気にするなよ。気にしたところで、奥さんとはしょっちゅうエッチしてるんだろ?」

「...誰情報?」

「奥さんからたまにくるよ。今日は無理させたからお願いしますって。無理ってことは、ああ、こいつは今日は半分寝てるなって。で、出社しているのを見ると、死んだ目をしてレッドブルを飲んでる。」

「これで人並み以上に性欲があればね、僕も元気なんだろうけどな。」

「わからんでもない。俺も淡白なほうだし、今は息子と鬼滅の刃を見るほうが楽しい。あ、ウマ娘もな。」

「早熟のオタクを増やしてどうするんだよ。まあ、君の息子がいる限り、日本のオタク文化はまだまだ安泰だな。」

「違いないかな。」

彼のいいところは、適当に話を切り上げることがうまいところだと思う。私見を述べて、適当に切り上げることが出来る。うまく出来ている人間だと思う。

「それはそうと、マック2人分のクーポン使いたいから、マック食ってくれよ。」

「ま、それぐらいなら。あ、シェイクな。あとポテトはL。バーガーは小さいのがいい。」

「細かいな。まあ、善処する。大将はこの席で昼寝してれば、マックが勝手に出てくるから、気にせず寝ててくれ。」

お前のようなやつがいるから、会社じゃ暇なんだよ。マックでも食ったら、秋葉原散策にでも行くか。どうせ、今日は出荷量も少ないだろうし、倉庫番だけで終わるだろう。

営業でもないやつが市場調査して、それを資料に起こしても、営業が仕事を取ってこれない。甘い汁を吸っている立場ではあるが、この職場、いや、この業界が厳しいんだろうな。



定例会って言葉、久々に使ってるけど、今でもやってる。夜中に妻が帰って来ることでもない限り、3人で変なことを話していることが多い。

「割とくだらないことを考えてるのが、あなたらしいというか。言いたいことはわかるけどね。」

「でも、言われてみると、家族と言ってる割に、家族かと言われると、私はなんか違うのかなっていつも思うかもしれない。」

これがこの娘の独特の感覚。僕の性格に近いながらも、ベースはもう一人の彼女。つまり、僕の理想の女性だ。この娘は理想を超えることが出来る存在といえばいいのだろうか。

「まあ、それが普通の感覚だと僕は思うんだけど、あなたはそう思わない?」

「う~ん、どうなんだろう。勘違いしないでほしいんだけど、この娘が感じてることは多分正しい感覚でだと思う。でも、成人したとは言え、娘とは言いつつも、やっぱり自分なのよね。だから、自分の考えが揺らぐというか、そういうことがあるとしたら、この娘の発言によることが多いのかなって。」

「そうなの?おねえちゃんはおねえちゃんで好き勝手にオトーサンとお風呂に入って色々してたりするけど、いい加減罪悪感みたいなのが出てきたってこと?」

「罪悪感...う~ん、それはないのよ。だって、この人のことが好きで、アンタとは同じ人間だから、やっぱりライバル視してる。してやったりみたいなことが多いかもね。」

「してやったりか。してやったりされた結果、毎日あなたの素肌が見られるのだから、僕は役得ということか。」

「そこで役得って言ってほしくなかった。だって君は私の恋人なんだから、私のことだけを見ててほしいって気持ちはあるよ。でも、今の私は、おねえちゃんではないし、オトーサンの恋人という立場だけど、娘であることが重要になってる。それが、私にとって居心地がいいし、君も私に溺れてくれる。そういうときだけ、おねえちゃんに負けてないなと思う。」

「意外としたたかよね。で、あなたはなんでそんなに家族って言葉にこだわったわけ?」

「言葉遊びがしたかっただけだと思う。対外的に僕らは家族として暮らしているけど、実際に家族かといえば、実のところお互いに依存しているだけの関係に近い。家族ってそういうものなのかなって思っただけなんだよ。」

「要は、たまには三人で家族ごっこがしたいわけ?」

「家族ごっこ...。う~ん、家族ごっこじゃなくて、家族なのかなって。」

「三人でマンションを借りて、朝家からそれぞれの行き場所に行き、生活をして戻って来る。そして明日への英気を養う場所。そこで暮らしてるだけで、家族でいいと私は思うけど。」

「ついでに言えば、こうやって毎日オトーサンが髪を乾かしてくれて、他愛のない話をして、ベッドの中に入って三人で寝る。格好は違えど、それだけで家族じゃないかな。」

いわゆる、小さな幸せというやつと考えればいいのだろうか。わかるけど、それがマンネリ化してしまって、気持ちを冷ましているような気もする。


「ねぇ、ちょっとお願い、聞いてくれる?」

「何よ、改まって。どうせ大したことじゃないでしょ?」

「ま、恋人の頼みだもんね。なんでも聞いてあげちゃおうかな。」

「う~ん、なんか言いづらいんだけど、今晩だけ、三人で裸になって寝ない?」

二人の落胆というか、安心というか、僕には不思議な感じを覚える反応だ。

「なんか、拍子抜けというか。散々人の裸を堪能してて、まだ足りないんだ?」

「おねえちゃんはそうかもしれないけど、私はたまのことだし、別にいいよ。あ、元気になったら、運動しよう。明日も早いおねえちゃんに変わって、私が相手しちゃう。」

「いや、相手とかそういうんじゃなくて、なんか、ただ体温を感じたくなった。パジャマやTシャツ越しに感じる体温と変わらないのかもしれないけど、素肌で感じる体温に恋しさを感じたんだ。それで僕が大きくしてしまったら、二人の魅力に負けたってこと。でも、別に僕が悶々とするだけでいいんだ。」

「あなたがそれで家族だと感じられるなら、今夜はそうしましょう。別に夜ふかしすることもないわけだしね。せいぜい、あなたが硬くした下半身を勝手に一人で処理するのか、私たちに押し付けてくるのか、それぐらいの違いでしょ?」

「私には押し付けてくれていいよ。何なら、胸の中で抱きしめてあげる。布団の中で静かに動けるかな?」

「なんでアンタはエッチなことをする前提なのよ。」

「そりゃ、おねえちゃんみたいに週3回もエッチしてる人は満足かもしれないけど、私は月に1回出来るかどうかなんだから。」

「...確かに都合のいいって意味もあるね。理想の女性。」

「それでも、私はあなたの理想の女性って自信で生きていられる。いつまでも抱いてもらえる身体だから、私が先に見捨てられるかもしれないかな。」

「...ねぇ、おねえちゃんが理想の女性なら、私はなんなんだろう?」

「君は、僕らの予想を超えた君自身で、君いわく僕の恋人なんだろ?だったら、理想の恋人になるのかもね。」

「うまく言い回したわね。理想の女性と、理想の恋人か。そんな人間と不倫関係なんだから、そりゃ家族を疑いたくもなるわね。少し反省する。」

「私は家族っぽいと思うけど。おねえちゃんだって、理想の女性なんだから恋人なんでしょ?」

「当然よ。アンタにこの人をやすやすと渡すわけないでしょ?それに、前にも言ったけど、私はまだこの人に愛してるって言うのは早いと思ってる。本当に愛してもらえるときは、理想の恋人がこの人から離れたとき。ま、そんなことは簡単にならない。だから、しばらくはアンタとこの人を取り合う少女に戻るわよ。」

「少女かぁ。勝てるかなぁ。私は歳を取るわけだし。」

「何言ってんのよ。アンタのほうが魅力的。いつまでも18歳だか20歳だかの身体じゃ、この人もいい加減飽きてくるかもよ?」

「...僕の気持ちは無視ですか。まあ、それでもいいや。君たちが許してくれるなら、今日はお願い。」

「まったく、ただの変態だよね。仮に娘を裸にして一緒に寝てほしいって。虐待じゃない?」

「同意。私も40代とは言え、身体年齢が20歳ぐらいなんだから、あなたの娘みたいな女性に挟まれたってことよ。AVでも見すぎなんじゃないの?」

「AVより甘い生活をしてる人がよく言うよ。ま、僕は理想の女性と、理想の恋人の肌の温もりを感じたい。それだけ。君たちの中より、君たちの素肌の体温のほうが、僕は心地いいんだよ。ずるい言い方だけど、人肌が最大の癒やしなのかもね。」

「言い方よね。あ、明日の朝、ゆっくり寝ててよね。朝に裸を見られるの、一番恥ずかしい。」

「じゃあ、私が見せないように...、あれ?なんかさっきも同じことを言おうとしたような。」


その日、ただ素肌だけで三人でベッドに入り、本当にただ寝ただけだった。でも、気持ち程度だけど、彼女たちの素肌と体温が、僕をリラックスさせてくれたのかもしれない。おかげで、僕は妻の裸を見ることなく、娘の柔らかい胸の中で目を覚まし、娘にさらに抱きしめられる朝を迎えることになった。

「あれ、結局私の身体のほうが魅力的ってこと?だったら嬉しいなぁ。」

ベッドの中、裸なのを知ってて、無邪気な寝起きの笑顔でこう言っちゃうんだから、この娘には全く勝てる気がしない。

「あの人、朝日に照らされた身体のラインが綺麗なのに、見るなっていうからさ。怒られたくなかっただけだよ。さ、君も学校行くだろ?なんか作るよ。」

「うん、今日は平日だもんね。私に溺れる日じゃないから、オトーサンに溺れてあげる。」

ベッドルームを追い出された僕は、リビングで着替えて、娘の分まで朝食を作る。うらやましい?


つづく。

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