Life 114 二人が恋人なのも幸せなのか?
立派な娘に、立派な妻。
僕は不安と幸せを持ち続けながら、二人と生活してる。と言いたいところだけど、面白いぐらいに、僕らの生活はバランスを失ってきてしまった。
[私、今日は接待。22時ぐらいになりそう。帰ったら、慰めて欲しい。]
嫌なものだ。自分の妻が組織のために接待をしているのに、自分はのうのうと家で帰りを待ち、娘を除け者にして、二人で抱き合う。
あの娘はそれを許容するだけの強さがあるけど、恋人を寝取られている気分を味わっているのだから、いい気分ではないのは分かる。
「...どうしたの?」
「ん?ああ、ごめん。どうしても君をおざなりにしてるんじゃないかって思いが強くてさ。どうすればいいのか、ちょっと考えてた。」
「嬉しいけど、今はおねえちゃんについていたほうがいいんじゃないかな。私は、弱音も悩みも聞いてくれる友達がいるし、おねえちゃんの事情は後輩さんからも聞いてる。おねえちゃんが本当に弱音をぶつけられるのが、オトーサンなんだから。」
「出来た娘、と言いたいところだけどね。ワガママを言っていいよ。」
「ワガママか...。う~ん、ワガママじゃないのかな?私は色々な人にお願いを聞いてもらってるし、私が返せることはあまりないって思う。そんなにワガママ言って欲しいと言うなら、たまにはおねえちゃんの前で、私を抱いて、見せつけて欲しいかな。」
「う~ん、また、変な空気にならない?」
「なると思うけど、それぐらいかな。君にと暮らせるだけで、私は幸せだと思ってるけど、どうせ愛人の身なら、本妻に私を見せつけたい気持ちも、たまには思うよ。」
「一応モラルというか、そういうところは今も持ち続けてるのね。」
「嫉妬に狂うってほど、私は強い気持ちを持ち続けていないよ。私は二人が大好きだし、二人が私から求められていることもわかってるしね。」
この娘は、こういうときに優等生的な発言をしてしまう。多少のワガママというのは、願望ではなく、すごく些細なこと。例えば、あの人が帰ってくる前に、彼女の欲求を満たすことも出来るけど、それを望まない。僕にはわからないけど、同じ人だった二人が、少しのきっかけでこれほど変わるものとは思えない。生きている時間の長さと、僕との再会の時間が、この娘の違う一面を引き出しているのかもしれない。
「じゃあ、もし今夜、あの人の前で見せつけることが出来るとしたら?」
「う~ん、私も分からないかな。だって、おねえちゃんはオトーサンが受け止めなきゃ、私も辛い。変なことを言うけど、私に溺れてる君をおねえちゃんが見たら、前の君みたいになるでしょ?私達がおねえちゃんを裏切る行為だと思うんだ。私はおねえちゃんだから、おねえちゃんが私だったら、同じことを考える。」
なんか面白い。溺れるぐらいに惚れ惚れする身体を持っている自信はあるのに、あの人の思いを考えたら出来ないという思考にたどり着けるのだから、僕らより大人に見えてしまう。僕らの今の関係を俯瞰して見ることが出来る。自分には自信があるってことなんだろうな。
思わず、彼女の手を引っ張って、抱き寄せてしまった。不甲斐ない恋人の気分になってしまう自分が情けない。
「えっ、ちょっと、どうしたの?」
「こうしてあげたかった。衝動的にそう思ったんだよ。自信の裏返しもあるだろうって。」
「少しは分かるようになってきたんだ?」
「自覚した。僕の恋人は、やっぱり強いんだなって思ったよ。これぐらいしか出来ないかなと思って。」
「でもね、その気にさせちゃうのはダメなの、分からないかな?」
「...無理してるよね。その気にならないように、どこか自制してる。あの人に教えてあげたいよ。」
「自制しちゃうよ。今は私の番じゃないの、分かるもん。」
耳元で囁き合うぐらいでいいってこと?君が正しいよね。僕の茶番にもこうやって付き合ってくれるんだから、どこまでも優しい娘だと思う。
「自制してるところで、そんなに押し付けられても困るんだけどなぁ。」
...僕が我慢出来ていない。僕が子供すぎるか、彼女に溺れたくなっているか、どちらにしろ情けない。
「まったく、おねえちゃんの相手じゃ、我慢できなくなってるの?」
正座で娘に怒られてる僕。身体が反応しちゃうのは、やっぱり言い訳できないこの娘の魅力にやられている証拠。この感情が厄介だ。
「そりゃあ、僕も男だし、反応しちゃうよ。君には弱い。理想じゃないから、よりリアルに君を感じる。」
「自信を付けてくれるようなセリフを言ってくれるのは嬉しいよ。でもさ、さっきも言ったけど、今は私の番じゃないの。おねえちゃんの番。おねえちゃんを助けられるのは、夫であるオトーサンの役目でしょ?その分、おねえちゃんがいない休日に、いっぱい私の気持ちに応えてくれれば、それでいい。」
「それって抜け駆けみたいなものだと思うけど、君が一番嫌な付き合い方じゃないの?」
「良くないと思うけど、これが私なりのワガママってことでいいの。それに、どうせ私達がランニングして、そのまま単にシャワーを浴びてるだけじゃないの、知ってるでしょ?」
「自白しなくていいところなんだけどな。君は親の受け皿になってるって考え方だとしたら、それはそれで僕らが苦しいけど。」
「そう?別に3人で一緒じゃなくてもいいし、私達には私達にしか出来ないこともあるよ。一緒に住み始めたときには、3人でも楽しいと思ったけど、オトーサンが興味津々なことだって、私達同士で済んじゃうことがわかったし、お互いがお互いを認めあってるってところかな。だから、おねえちゃんの声が聞こえても、私に同じことをしてくれれば、私は満足。ううん、1日一緒に過ごせることのほうが贅沢かもしれない。」
甘えることに息苦しさを感じる。あの人が僕に甘えるように、僕はこの娘にも甘えている。そして、この娘が僕らの気持ちを知ってて、同じように受け止めようとしてることに、どこか不自由さを感じる。遠慮がちにしてるのが、ただ自分の順番を守ってるだけだとしたら、申し訳なく感じてしまう。ジレンマのようなものだ。
「あの人が同じようなことを言ってた。一日僕と過ごせることは、特別なことだって。」
「やっぱりそう思うから、私とおねえちゃんは同じ人間だって分かる。オトーサンは無理しなくても、私達のペースに乗っていればいいだけだと思う。もちろん、求められることに悪い気はしないから、いつでも来ていいけど、今日はダメだってオトーサンもわかってるでしょ?」
娘か...。娘だと思えないな。僕の親みたいな物言いだ。オカンから色々聞いてるだろうから、そこを理解した上での思いなんだろうな。
「ごめん。惨めな思いをさせてる。」
「惨めな思いをさせてると思うなら、抜け駆けぐらいするのはありでしょ?」
「...随分と言いくるめるのがうまくなった。嬉しい反面、僕が親でいられる時間がもう少ないって実感する。」
「親離れって言うけどさ、私は親離れ出来ないよ。親が恋人なんだから。」
ここまで来ると、本当に茶番に付き合わせてるようなものだな。立派な娘というより、尊敬できる女性と言うのが、いまの彼女には合う言葉だろう。
「でも、どうしようかな。おねえちゃん、10時まで帰ってこないんだよね。」
「うん。とりあえず僕は先にお風呂掃除でもしておこうかな。その後、君が一番風呂で。僕らのことは軽蔑していいから。」
「ふぅ~ん。軽蔑ねぇ。さっきまで私を抱きしめただけで固くしちゃってる人には、愛想すら尽きるよ。普通はね。」
「返す言葉もない。」
「じゃあ、私も軽蔑される側に混ざろうかな。」
「いや、いやいや、それってもっとダメじゃない。さっき自分で言ってたことと正反対だよ。」
「だからだよ。疲れて慰めて欲しいおねえちゃんに火をつけてあげる。私もおねえちゃんも一緒に抱けるんだよ?」
くそ、そういう流れになるとは思わなかった。前言撤回。やっぱりこの娘はまだまだ無邪気な子供だ。性行為を覚えたての女の子でもあるまいし。
「にひひ、帰ってきたおねえちゃんの目の前で、君と私の乱れる声。多分怒るだろうなぁ。」
「なんか楽しそうだね。だけど、僕はもうちょっと平和的に解決したいかな。」
「楽しいよ。だって、私で固くしちゃって、それを我慢したとしても、おねえちゃんで固くできるかなぁって。もう見飽きたでしょ?」
なんか似たようなAVを見たことがあるな。もっとも、ああいうのは寝取る話であって、我が家ではそんなことはしょっちょうだからなぁ。風紀が乱れるというか。まあ、今更か。
「からかってる?」
「その気になってる。このままここで被さって襲って欲しい。」
「また、もの好きだよなぁ。ここじゃ匂いでバレるって。」
「バレるのがいいの。嫉妬に狂うおねえちゃんを、私が見たい。大好き。」
座っている僕の唇を強引に奪う彼女。こういうところは、しっかり大人の仕草だよ。その気になっちゃうよ。
「で、大好きな夫の元に戻ってきた妻には欲情出来ずって。私が理想じゃなかったの?」
「理想だよ。だから一緒にお風呂に入ってるじゃない。」
「そうじゃない。ただ入るだけなら、あなたとじゃなくてもいいのよ。私も疼いてるの。」
「それを、僕の上に乗って、湯船の中で、僕と密着して、包んでる人がいう?」
「聞いてよ、接待で、私達と同じぐらいの年齢の男達が、私を視姦してるようなものなのよ。あなたも嫉妬に狂ってほしいわよ。」
「嫉妬に狂うというより、僕は君の会社に憎悪を抱いてるよ。僕らの生活がかかっているとは言え、君をそうやってご機嫌取りに使うのが許せない。」
「その気持ちを、私にぶつけないの?」
「ぶつけてどうするの?明日から見られなくなるならそれでもいいよ。でも、僕がどんどん惨めになっていくだけだよ。」
奥様は黙ってしまった。僕の理想の女性だから、誰もが理想の女性だと見ると思う。視姦されてると言われると、僕の弱さが鮮明になってしまう。
「ごめんなさい。私が嫉妬に狂ってるのよね。今頃、私の後輩とビデオ通話してるあの娘に、あなたを取られたことが悔しかったのよね。」
「軽い挑発に乗って、あの娘の相手をしてしまった僕も良くなかった。」
「あの娘に迫られたら、自然とそうなるのは私が一番理解してる。2日に1回はあの娘の身体を見ているけど、あの娘も女性の理想の体型になりつつあると思う。」
「なぐさめにもならないけど、それでも君が、僕の理想の女性。親なのに、その色気にやられた僕がいけないんだよ。」
「......私達、親のフリして、あの娘の手の中で踊らされてるのかもね。」
「だとしたら、あの娘は本当に場を支配する力があるってこと。君の親友がそんなことを言ってたけど、そう思えてくる。」
「思いっきり踊り続けるのもいいよね。その分、あなたを独り占めできる。あの娘が1日なら、私は毎日3時間でも独り占めする。」
「僕はあいにく一人しかいないんだけどね。でも君が踊るなら、僕も一緒に踊る。」
そう思うと、彼女の中は熱くなり、僕も強くなってきた。なんの感情が、僕にそんな力を持たせたのだろうか?
「ああ、そのまま、二人で束の間の快感を味わおう。君だから、何をされても許せちゃう。」
「そこは明日に響かないように。僕がいうのもなんだけど、お互いに合わせながら、一緒に。」
......いつも思ってしまうことがある。理性と本能で、求めている君が違う。同じ人、理性は目の前の彼女を理想としているのに、本能はあの娘を渇望している。僕はどうしたらいい?このままこんな生活を送り続けていいのだろうか。
「バッチリ声聞こえてたよ。恥ずかしいね。」
「アンタねぇ、そうやって、私の束の間の休息を乱さないで欲しいのよ。」
「たまにはいいでしょ?嫉妬に狂うおねえちゃん、どうだった?」
「...嫉妬に狂ってても、僕の理想の女性だよ。自分の力の無さを痛感するね。」
「うれしいこと言ってくれちゃって。でも、その前にこの娘の雰囲気に飲み込まれたのは、夫として失格よね。」
「本当だよね。オトーサンがもう少し自制出来たら、もっとカッコいいんだけどね。」
「自制出来ないほど誘惑してきたのは、どこの誰だっけ?」
「それは私に決まってるじゃん。いやらしいって言ってるぐらいなんだから、たまには見せつけてあげないとね。」
「......明日、アンタをしごいてあげるわよ。不忍池を一周して戻って来るんだからね。」
「こんなこというんだよ?オトーサン、助けてよ。」
「それで君の魅力が増すなら、この人に鍛えてもらったほうがいいんじゃない。僕はそっちのほうが嬉しいけどね。」
「なんで味方がいないわけ。ねぇ、オトーサン。」
「はいはい、軽い挑発に乗って、雰囲気でしちゃった僕が悪かったよ。もっと鍛えて、僕を溺れさせるんだろ?」
「言いくるめるんだから。ま、そういうことにしてあげる。明日はよろしくね、おねえちゃん。」
「...なんか前向きで嫌。やっぱり普通のランニングでいいわ。」
「全然モチベーションを保てない。どっちかにしてよ、もう。」
知られれば、世間からは軽蔑される。それで笑い合える僕らが、常軌を逸しているのは分かる。それでも、この生活は刺激的だ。
僕だけの特権と言えばそうだけど、僕は彼女に溺れ、理想を重ねる。それが別々の人間となっている。事実は小説より奇なり、そんな生活を2年半もしていれば、感覚も麻痺する。
現実に戻らないとダメだな。でも、意志の弱い僕は、当分この生活を送るのだろうな。うらやましい?そうだよね。
「あの、先輩、昨日はどうでした?」
心配してくれる後輩がいるって、結構ありがたい。事情を知ってるこの子の存在は、やっぱり大きい。
「...最悪よ。私はマスコットじゃないっての。まあ、会社のためだからね。」
「...違います。おねえちゃんから聞きましたよ。お父様と仲良くしてたって。先輩、今日はスッキリした笑顔で安心しました。」
「仲良く...ああ、あの娘。あとで絶対後悔させてやるわ。あなたも、あんな娘とは連絡を取らなくていいわよ。」
あんまり仲良くさせるのも良くないわね。この子が変な偏見をしないで助かってるけど、親の情事まで話すなっての。
つづく




