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Life 113.5 真剣40代なんとか その2

※前回のあらすじ、43歳になった同級生の男女がファミレスで世間話をしているだけです。


「自分の娘じゃないのに、あの子には幸せに生きて欲しいって思っちゃう。危うさとか怖さとか、そこのアンバランスさが、あの子の魅力なんだろうね。彼氏さんはどう思うわけ?」

「無論、あの娘には、幸せに生きて欲しいと思うんだけど、あの娘自身が、今が幸せの絶頂に近いことに危惧しているのも事実かな。」

「大学3年生、22歳だっけ?ま、色々あったにしろ、君達3人が一緒に楽しく暮らせる日々は、あと1年ちょいってことだね。」

「娘ちゃんは何かこの先のことを決めてるの?」

「彼女の会社の後輩に、同世代の子がいるんだけど、その子に色々相談したり、大学の友人とも情報交換したり、インターンも積極的に参加してる。でも、反応がイマイチなんだ。」

「本人の夢は、この人と結婚することだしね。でも、それは叶わぬ夢になってしまった。あの娘に思い入れの強さがあるとすれば、私達の時代ではまともに就職出来なかったことに対して、もっと自由に生きて欲しいということかしらね。あの娘の夢を奪ってしまった以上、私には、あの娘にはやりたいことをやってほしいと思ってる。」

「じゃあ、就職浪人でも、フリーターでも、特に影響はないってこと?」

「本心を言えば、期待以上の会社に入れるだけの実力がある。でも本人がピンと来てない。僕らは就職氷河期で、まして僕は就職浪人だったし、明確にやりたいことなんて、目的意識が強くない限りはあり得ない。君のように舞台に立って、演じることに一生懸命だったら、僕にアドバイス出来ることがあったかもしれない。いや、それは君に求めるかな。」

「この人の場合は、割と極端なのよ。あの娘の容姿を活かして、セクシー女優として短期間稼働し、その中で自分がやりたいことを事業化出来る資金を持った上で、一歩ずつ進むことも、今の世の中では問題ないって言うのよね。資本的な部分では正しいけど、倫理的だったり、デジタルタトゥーだったりを考えるとね。」

「親バカかもしれないが、あの娘なら大手と専属で契約して、3年そこらで1億ぐらい稼ぐことも出来ると思う。中絶も経験するだろうし、色々な人を受け入れる覚悟も必要だと思う。だけど、その中でコネを作れば、あの時頑張ってくれたから、応援しよう、一緒に仕事をしようと思ってくれる人が必ずでてくるはず。人付き合いってそういうものだろ?」

「そうだね。私、バツイチで、職場の人も、両親も、私の立場を理解してもらえたけど、私も興味本位でしか首を突っ込まない性格だったはずなのに、気づいたら色々な人を支えていたってことに最近気づいたんだ。日頃、なにかをしているだけで、自分は、ううん、みんな誰かを支えて、支えられてる。そのことが、個人単位なのか、それとも家族単位なのか、あるいはもっと大きなコミュニティの中のものなのかがわからないけど、誰かに寄り掛かれるってことは、自分が支えることをしていることだと思えるようになった。」

「きっと、合ってる。あなたのその感覚って、やっぱり普通の家庭で生まれるべきものなのよね。私とこの人が、いかに自分勝手に生きてきて、人が支え合ってることを忘れてたか、最近は身に沁みて分かるようになったわ。」

「気づけただけいいよ。私は、まだその感覚にはなれてないなぁ。良くて旦那と二人で生きていければ、それでOKな感覚だから。」

「君が強いからじゃないの?僕らは、一時的ではあるけど、気持ちに余裕がなくなって、自分を強く保つことが出来なくなっていた。うまく生きてるなら、それで十分。」

「なんだかんだで、考え方が柔軟というか。君が好かれる理由は、なんとなく欲しい言葉をいいタイミングでくれるところだよね。」

「そうね、あなたは、いいところで、私の掛けて欲しい言葉を、ちゃんと言える子。出来る子なんだよ。」

「何?その出来る子って?」

「僕、なんか昔も言われてたんだけど、出来る子だって。君のいう、出来る子っていうのは、何を指してるの?」

「う~ん、深い意味はないのよね。だけど、あなたの場合って、常に自信もないし、自我も強くないし、おまけにちょっと面倒な性格だし。でも、本当は何でも出来る。タダで資料を作って、私の会社の後輩にそれを渡したら、取引先の会社さんが素人ではなく、技術者が書いた立派なシステム設計だったと言ってるのよ。技術も知識も、おまけに家事まで出来るし、何ならやってることがマニアック過ぎてわけがわからない。それをひっくるめて、あなたは出来る子なのよ。」

「受験前に励ます親のような感じ?」

「そうそう、それよ。あなたも、来年はそういう気持ちになるんじゃないかな?」

「うちの子は出来るほうではないけど、楽しそうならそれでいいかなって。でも、出来る子って思ってあげようかな。」

「受験かぁ。...いい思い出はないな。」

「そうなの?あなたが一番楽しかった時代って、その辺なんでしょ?」

「まあ、昔あなたと一番接近してた時期ってその辺でしょ?多分、今よりも確実に子供だったけど、勝手に僕はあの時、あなたと近い気持ちだったと思うよ。」

「不安に押しつぶされそうで、誰かに受け止めて欲しかったんだ。そうしたら、彼女は都合の良い女性になっちゃうね。」

「でも、すがりたくなる思いも分かる気がするよね。大人になれば、ほぼ毎日が選択の連続だけど、公立の学校に通ってる人間にとって、高校受験は最初の人生の選択みたいなものだもんね。うちの子も、君の娘ちゃんも、人生の岐路に立っているけど、私達は代わりになれない。本人たちが乗り越えていくものだよ。」

「高校受験はまだいいと思うわ。就職活動とか、ふたりともどうしてたわけ?」

「私はその頃はまだ役者をやってたからね。役者で生きていくっていいながらバイトと掛け持ち。」

「どうだったかなぁ。新卒で入ったのもこの辺の会社だけど、成り行きで入れてもらえた感じだったかな。あの頃は東京以上にこっちでは職がなかったから、ちょっと親のコネを使ってね。そこで離婚した夫と出会ったけど、まあ、色々あったから辞めちゃった。で、今の会社にはパートで行ってたけど、今は正社員で働いてるよ。」

「私も正社員で働いてみるべきなのかな?パートとは言え、週4の8時間だから、あんまり変わらない感じなんだよね。」

「なんかもったいないわね。でも、それが趣味への対価だと思えば、妥当ってところ?」

「そうそう。旦那の都合にも合わせやすいし、重宝してるよ。シフトさえ調整出来れば4連休も出来るからね。」

「...いっそ、僕もフリーランスでなんかやればいいのかな?」

「あなたは無理ね。フリーランスじゃ、割りに合わない仕事ばかり引き受けて、損する一方よ。」

「でも、それっぽい雰囲気はあるよね。口もうまいし、豆腐メンタルじゃなければ、案外強気に行けたりすると思うよね。」

「そう言われてもなぁ。豆腐メンタルだからこうなるわけで。」

「だから君なんでしょ?君がこれだけ不安定だから、実は奥様も面白い、って感じじゃない?」

「人ごとよね。でも、この人はそういう状態だから、面白い目線で物事を見られる。これが魅力っていうのは、的を得てると思うのよね。それを私も見ていたい。夫にそれを求めるなんて、ずるい女だと思う。」

「なんでずるいの?僕が自然とそうなってしまうのなら、別に求めてるわけではないと思うけど。」

「そうなるのが危険だからでしょ?それでも見たいと思うから、私はずるい女なのよ。あなたの危うさが、私に実感を持たせてくれる。あなたを利用して、私はその実感を得ることができる。まあ、それは体の関係と同じよね。」

「お盛んなようで。しかし、鈍いというか、良くも悪くもその部分、ヤキモキするし、恐さを感じるのも仕方ないよね。私の場合、夫も役者だったわけだから、そのへんをうまく隠しちゃうし、それを演じる彼も、また自分に酔ってしまう部分がある。仮面夫婦というのは、こういう生活を本来言うものなのかもしれない。」

「単純に強いんじゃないかな。うちの夫は大きな子供だったり、しっかりとした父親だったり、不思議と使い分けができるし、何より私に苦言を呈することができる。私達の夫はそれぞれタイプが違うから比較は出来ないけど、君の危うさというのが、人を惹きつける要素なら、逆に個性にもなると思うよね。」

「個性ねぇ。僕はどうであれ、あなたがそばにいてくれて、僕を甘やかしてくれるなら、それだけでいいと思ってる。旦那としての僕は機能しないけど、せめて恋人としての僕ではいたいと思っているよ。」

「ね、めんどくさい人でしょ?」

「いいと思うけどね。この歳になって、まだ恋人として頑張ろうと思えるのは素敵だと思う。」

「変に感性が若いんだよ。私も人のこと言えないけど、大人ではない何かなんだよね。私達は。」

「立派な大人だと思うんだけどなぁ。僕は、まだ子供のままだと思う。必死に大人になろうとして、何度も失敗したけど、あの娘のおかげで大人になれるかもしれないチャンスがあった。でも、先に彼女が大人になっていく様を見ている。親の立場でこんなことを言うのはおかしいけど、あの娘が大人になってしまったとき、僕はどう接していいのか。」

「不安になるのもわかる。ある日、突然あの娘が大人に見えるときが必ず来ると思うのだけど、私も娘として接するべきか、姉として接するべきか、同じ立場の女性として接するべきか。」

「実の娘ではないけど、あなたとは同じ両親から生まれた20歳離れた妹なんだもんね。そういうときは、お姉さんがうまく聞き出してあげるよ。」

「特別扱いしてほしくないのは分かるんだけど、彼女だって母親としてのあなたを求めるときも、女としてのあなたを求めるときもあるわけで、そこに最適解を見つけることは出来ないと思う。それに、母親と言っても、姉と言っても、もう娘ちゃんのほうが、見た目だけなら大人に見える。でも、それは周りの人間の意見だから。」

「子供が子供を育てている。今の時代、大人になりきれず、だからといって子供を見捨てることも出来ないで、形だけ大人にならなきゃいけない若い人も多い中、僕らはある意味運が良かったとも言える。あの娘を不幸にさせてないだけ、ギリギリ親のメンツは保ててるかなと思ってるんだ。まあ、彼女は僕と一緒にいることが、今は一番楽しいと言う。親だから信じているけど、恋人の立場としては、そこに不甲斐なさを感じることがあるのも事実なんだ。」

「何言ってるのよ。未だにあの娘は、あなたのキャップやらスニーカーやらを身につけてるときがあるじゃないの。盲目的に、あなたにすがって、頼りにされてるのよ。そこには自信を持って欲しいわ。それが、私の夫の役目よ。あの娘に弱みを見せてもいいけど、その分自信、...う~ん、過信でもいいかな、そういうものを、あの娘はあなたに求めてるのよ。」

「君の娘ちゃんはガラス細工じゃない。少なくとも君が性的に溺れちゃうぐらい、ちゃんとした実態があるんだから、もっとアドバイスをしてあげていいと思うよ。」

「...あのさ、なにげにサラッと言ってるけどさ、あの娘に僕が溺れてるって言うのは、誰情報?」

「本人情報だよ。おねえちゃんにも出来ないって、自分で言ってる。」

「そういう自信はあるのよね。やっぱり、どこかで間違えた貞操観念を植え付けてしまったかしら。」

「傍観者からしたら興味深いよ。平然と姉妹で同じ人と性的な関係まで持てるほど、あなた達3人は欠けることを許されない関係になっている。共依存者の集まりって言うのが正しいのかな?」

「お恥ずかしい話、原因は私よね。しっかり線引が出来ればよかった。けど、あの娘を知った時点で、さっき話した通り、あの娘には勝てない感情を、彼が持っていることを知っている。結果、あの娘がこの人を選んだなら、私はそこに口出しをすることは出来ないのよ。私がそうであるように、あの娘も私達の行動には一切の制限をしていないし、あの娘が抜け駆けなり、この人と蒸発したとしても、許せてしまうのよね。」

「律儀というか、僕の妻は、僕の理想の人であるにもかかわらず、平気で敵に塩を送る行為をする。そこにけじめをつけることができない僕も良くないんだけど、二人がそれぞれに考える僕のイメージを一致させたいとか、そういう理由があるとするならば、僕はいくらでも振り回されようかなと思う。」

「良くない態度だと思うけど、まあ、それがあなたの望むこと?」

「そうね。この人を好きでいる以上、私が体験したことは、あの娘にも体験して欲しいし、その逆もしたい。だから、たまにワガママを言うの。鈍感だから気づいてないもんね。」

「旦那として申し訳なく思うよ。でも、君達を愛してて、こういう関係になってしまったのは、誰の問題でもない。優柔不断な僕、あの娘に自分の体験を共有させたいと思うあなた、その体験から、少しずつ大人になっていくあの娘。このいびつな関係でも、しっかり生活...は出来てる。誰かさんにおねだりされちゃうと、僕も頑張って見ようって思うけどね。それをあの娘に怒られるのは、そろそろ親として情けないかなって。」

「お盛んなこと。2回も言うことじゃないけど、そりゃこんな可愛い妻が抱いて欲しいと言ってくれば、抱かずにはいられないよね。」

「若さの秘訣?私も息子に怒られない程度に、旦那を襲ってみようかな。」

「やめておいたほうがいいよ。この人は、自らの気持ちを安定させるために、僕を求めてくると思ってる。辛いことを、一時の快楽で乗り越えるのは、危険だと思う。」

「なら、永続的に私の気持ちを安定させるぐらい、立派になってみなさいよ。でも、立派になったあなたは、あなたじゃないのよね。今のあなたが、私には一番魅力を感じる。」

「のろけか。ったく、本当に中身が中学生みたいだね。でも、そういう気持ちを持ちつつ、自分の娘へも愛情を注げる。立派だよ。」

「ま、それなりに親もやってこれたし、これからもそれなりに夫もするし、恋人もする。不甲斐ないと思うけど...。」

「頑張らなくていいわよ。私達が三人で成り立っているのは、あなたの脆さに起因するところがある。不甲斐なさを感じる必要はないわよ。」

「カッコいいね。君が頑張らなくても、彼女が頑張ってくれる。だから君は君の出来ることをするだけでいいと思う。そうしないと、君じゃないんだよ。」

「言えてるかもね。私達が三人で話してた時、若さもあるけど、何より無理せずに噛み合ったから、楽しい話が出来た。今もそう。4人でこうやって話せるということは、誰も無理をしていないってことかもね。」

「えっ、私、多少は気を使ってるけど?」

「初対面に近いとは言え、これだけ盛り上がれるなら、気を使ってないと思うよ。」

「そうそう。それに、誰よりも若く...?若いで表現あってる?」

「僕は君達が年相応に見えるけど、それでも若く見える。自分の親が同じころの年齢を考えると、どうもね。」

「気持ちが若いのかな。でも、今は本当に外見じゃよくわからないからね。あ、君はちゃんとおじさんになってる。」

「そりゃどうも。この年齢でも、まだまだアニメを見られるだけ、幸せだよ。」

「あの、そこで完結させられても困るんだけど。」

「あ、そうそう。僕の理想の女性だから、彼女が急に老けても、別に驚かないよ。だいたい、結婚する前は、もっと疲れた顔してた。」

「言ってくれるわね。あなたも、あの娘に相当やられた顔してたわよ。お互い様よ。今のあなたは、あの娘を一人で育ててたときより、ずっと若く見える。」



気がつけば、もう夜も更けていた。1:00か。なにげに最近のファミレス、閉店が3:00とかで、開店が8:00とか。無理しすぎだし、3:00に放り出されても、行き場にこまる。

幸い、ここは僕の生まれた街、野木だから、そんな心配...あ、連中がいるな。起こすと面倒だな。

「やばいかな。親にも、夫にも怒られそう。」

「いいね、その反応。やっぱり、ちゃんと母親やってるね。私はどうしようかなぁ。帰ったら親起こしそうだし、家の近くのコンビニで夜を明かすかな。」

「旦那さんがいないと、そういうことできちゃう度胸はあるんだ。舞台に上がっていた人は強いな。僕も昔はそんなことをやってたけどなぁ。」

「で、二人はどうするの?」

「どうもしないと思う。帰るわよね?」

「っても、妹家族が寝てるところを起こすのも悪いし、どうせオカンが起きてしまう。だから、少し悩んでる。」

「宿泊施設もなければ、ラブホもない。おまけにインターネットカフェもない。どうせだから、私と延長戦、する?」

「いや、それはいい。引き際の重要性を一番理解してるのは君だろ?」

「一本取られたね。ま、帰ってあげなよ。娘ちゃんの元へ。」

「そうね、あの娘のことだから、律儀に待ってそうで怖いわ。」

「そうする。また、みんなでどうでもいいこと、話そう。僕はいつでもいいよ。」

「いつでもよくないって分かってないんだよなぁ。変わってないね。君は。」

「堂々巡りだけど、その変わらないところが、こんなに立派な奥さんを捕まえられた秘訣だよ。変わったらダメなところだと私は思うよ。」

「あんまりこの人を褒めちゃダメよ。今は気分で強がってるだけなんだから。」

「知ってる。」

「妻というより、母だな、こりゃ。」

「へいへい。じゃ、僕らは歩いて帰るよ。二人とも、夜だから運転は気をつけてね。」

「言われるほどじゃないよ。」

「毎日乗ってるよ。さすがに夜中は運転しないけどね。」

「じゃ、またそのうち。」

僕と妻は家に、二人は自分の車で、それぞれ家路についた。



ファミレスから自宅までは10分そこらだ。まあ、面倒な連中も絡んでこないだろうし、特に心配はないだろう。田舎って、暴走族ですら早寝早起きだからね。暴走族?合ってる?

「意外なものよね。年齢相応の話をしてる割に、盛り上がり方は若い。三人の関係って、そういう普遍的なもの?」

「たった1年だけクラスが一緒だったけど、200日以上も一緒にいれば、自然とそうなってしまったのかもね。」

「私とは?」

「だって、君とは3年のときにクラスが一緒だったけど、僕が明確に意識したのって、半年ぐらいだと思うよ。人を好きになるって、そういうことじゃない?」

「そうかもね。でも、あの頃より、私は今が楽しい。こうやって、隣を歩いてる。」

「僕にしか見えない景色か...。本人が理解出来ないことが悔しい。」

「見える景色ってそういうものよ。私は、同じものを見たい。けど、やっぱり同じものが見えないんだと思う。それでも見たい。」

「感じ方の違いとか、そういうものなのかもね。あるいは僕の感受性の問題。君と二人でいるのに、少し寂しい。」

「そりゃ、大の大人が4人でファミレス、何時間喋ったと思ってるのよ。さみしくなるし、名残惜しさもあるわよ。でも、あなた達のおしゃべりってそういうものなんでしょ?」

「そうだね。だから、次が楽しみなんだ。それで十分だ。」

「私抜きでやらせないわよ。今は4人の中年が、バカな話をする時間も必要よ。」



次があるか。その次が、生きる糧になるなら、やっぱり気安く死ねないね。君のためにも、あの娘のためにも。



つづく

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